SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

令和6年度春期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 IoTを活用した駅務サービスの可用性に関する次の記述を読んで、設問に答えよ。 E社は、関西圏を中心とした中堅の鉄道事業者である。大阪の本社を中心として、 3路線50駅の運営を行っている。E社本社には駅業務部と情報システム部がある。駅 業務部は、E社が運営する各駅の業務を統括している。情報システム部では、発売し た乗車券などの集計を行う駅務システムを運用している。 駅では、ハードウェアメーカーのF社が提供する自動改札機、自動券売機及び窓口 端末(以下、これらを駅務機器という)を導入して、駅の出改札業務を行っている。 窓口端末は全ての駅に最低1台設置されており、自動券売機で取り扱う全ての出改札 業務に対応するほか、駅員が窓口端末を使って駅務システムを利用できる。また、 自動改札機と自動券売機は、駅構内の LANを経由して窓口端末と接続されており、駅 員は、窓口端末を使って、当該駅の駅務機器の稼働状態を確認することができる。 窓口端末で駅務機器の稼働状態の異常を検知し、故障などで保守員による対応が必 要と判断した場合、駅員は駅業務部に電話連絡し、駅業務部経由でF社保守員の手配 が行われる。 情報システム部は、駅務機器及び駅構内のLANの管理を行っており、駅業務部及び 各駅に対して、駅務システムの運用を含めて、駅務サービスとして提供している。E 社では、全ての駅の営業時間は同じ時間帯であり、駅務サービスでは、駅の営業時 間をサービス提供時間としている。 情報システム部では、駅務機器のシステム保全・点検作業の計画を立て、全ての 駅の駅務機器に対して定期的にシステム保全・点検作業を行うことで、故障前に対 応を行う予防保全に取り組んでいる。システム保全・点検作業はF社に業務委託され ており、駅務機器のシステム保全・点検作業の対象部品(以下、部材という)に対 して、必要に応じ、図1に示す交換作業が行われる。 【図1 システム保全・点検作業時に実施される交換作業】 システム保全・点検作業は、自動券売機と窓口端末については夜間の営業停止時 間帯に行われているが、自動改札機は点検作業の回数と台数が多く、営業時間内に 行われている。自動改札機のシステム保全・点検作業に伴う計画停止については、 駅の利用者に事前案内され、利用者は他の自動改札機を使うか駅員による改札を受 ける。 〔現状の課題と改善策の検討〕 情報システム部では、駅務機器の安定稼働を維持するために、F社に業務委託して システム保全・点検作業で必要となった部材の交換を行っているが、一部の駅務機 器では故障が発生しており、予防保全に取り組む情報システム部の課題となってい た。駅務サービスの可用性の一つの指標として駅務機器の稼働率を採用している。 2023年度の状況を表1に示す。 【表1 2023年度の駅務機器の故障と稼働率の状況】 駅務機器の年間稼働率は、年度ごとに種類別に次の式で計算する。ここで、年間 稼働率(%)は小数第3位を四捨五入するものとする。 全台の年間稼働予定時間の合計−全台の年間故障修復時間の合計 全台の年間稼働予定時間の合計 2024年度、情報システム部では、システム保全・点検作業コストの削減に取り組 む方針が示された。そこで、IT サービスマネージャのG氏を中心に、現状の課題及 びコスト削減の方針への対応を検討することにした。 まず、G氏は、課題となっている駅務機器の安定稼働の維持について、駅務機器の 稼働率の数値を確認した上で、駅務機器の故障発生を減少させる必要があると考えた。 次に、G氏は、システム保全・点検作業コストの削減について考えた。現在の定期 交換の対象部材には、実際にはまだ使えるものがあって、無駄が多い。そこで、データ分析を活用したCBM (Condition Based Maintenance: 状態基準保全)システムを導 入することでコストを削減できないかと考えた。G氏は、機器の動作状況を取得する IoT センサーを設置し、収集したデータを分析して故障の可能性が高まった時点で、 対象部材を交換することによって無駄なコストを抑えることができると考えた。また、 CBMシステムを導入した場合、現在行っているシステム保全・点検作業と比べて、(ア) サービス提供者としてのサービス可用性管理の観点からもメリットを期待できる。G 氏は、これらの仕組みをCBMシステムとして構築し、社内で活用する検討に着手した。 〔CBMシステムの構築準備〕 G氏は、CBM システムの構築に当たって、まず、どのデータをどのように取得する かを検討するため、F社に相談した。その結果、駅務機器の中でも故障頻度が高く、 全ての駅務機器に含まれている券片の搬送機構に着目し、券片が搬送機構を通過す る速度(以下、搬送速度という)のデータを取得対象に決めた。また、搬送速度を 取得するにはIoT センサーの設置が必要となるが、F社からは、既存の駅務機器を大 きく改造することなく設置が可能であり、少額の投資で搬送速度データを駅務シス テムに送信する仕組みを実現できるとの回答があった。 次に、G氏は、取得したデータから搬送速度の低下を検知するための(イ)しきい 値を設け、継続的に監視する仕組みを構築した。搬送速度がしきい値を下回った場 合には、アラームリストを出力し、その情報を、駅業務部及び当該の駅務機器が稼 働する駅に対して速やかに通知されるようにした。 また、現行の駅務機器のシステム保全・点検作業について、今回は点検対象の一 部にCBMシステムを導入することで、点検対象を削減し、点検作業時間も削減できる と考えた。 G氏は、社内の変更管理規程に従って、CBM システムを構築する変更要求を提出し た。情報システム部長は、"CBM システムは、(ウ)点検対象の機器数の削減及び点検 作業時間の削減以外のコスト削減効果も期待できる。また、今後対象機器を拡大し、 点検作業の頻度を減らしたり、無くしたりできれば、将来的に大きなコスト削減に もつながる”と評価した。変更要求は承認され、CBMシステムの構築が開始された。 〔SNSデータの分析を活用した障害検知〕 CBM システム構築中のある日、行楽イベントで混雑するある駅で、駅務機器が故障 するインシデントが発生し、駅構内が混雑した。当該駅では、駅の利用客対応を優 先し、駅業務部への障害連絡が遅れてしまった。インシデントの初動対応が遅れて 解決までに時間を要し、駅務サービスの可用性が悪化した。 情報システム部では、インシデント対応中にインシデントの影響の大きさを把握 するために、E社が提供する不特定多数の人が閲覧可能な SNSへの投稿内容から利用 者の反響を調査した。SNSへの投稿は、“情報源が不特定多数であって現場からの情 報より正確性は低いが、情報の早さは現場よりも早い場合がある”といった特性が ある。調査を担当したG氏は、調査の過程で、E社が当該インシデントの対応を開始 する前に、障害に関する幾つかの投稿があることに気付いた。当該インシデント対 応が終了した後日、投稿を時系列に整理して1分ごとに集計したところ、投稿件数が 図2のように推移していることが分かった。 【図2 障害発生日と通常日の投稿件数の推移】 情報システム部では、障害当日 20:10に駅業務部からの障害連絡を受け、20:15に インシデントの対応を開始していた。また、SNS上では障害に関する最初の投稿は 20:00であった。この結果を見て、G氏は、SNSの特性に着目し、自社の駅務機器に 関する障害発生を検知できないか検討することにした。 G氏は、SNSの情報を使って障害を検知する仕組みを、次のステップで考えた。 ① SNS上における障害に関する投稿(以下、障害投稿という)を定義する。 ② 障害が発生したと推定するための条件(以下、検知条件という)を定義する。 G氏は、①の障害投稿の定義として、“「E社」「(E社の)駅」などのE社に関する情 報”と”「通れない」「使えない」「障害」などのネガティブワード”の両方が含まれ る投稿とした。また、②の検知条件として、次のような条件を抽出した。 ・1分当たりの投稿件数が基準値以上であること ・1分当たりの障害投稿件数が基準値以上であること ・1分ごとに5分連続で障害投稿件数が増加傾向にあること G 氏は、三つの検知条件の全てを採用すると検知遅れや検知漏れが増え、(エ)一 つだけに絞ると誤検知が増えると考えた。そこで、三つの検知条件のうちの二つを 満たす場合に障害が発生していると判定することにした。 設問1〔現状の課題と改善策の検討〕について答えよ。 (1) 表1中の【a】に入れる適切な数値を答えよ。答えは小数第3位を 四捨五入して、小数第2位まで求めよ。 (2)本文中の下線(ア)について、期待できるメリットを、25字以内で答えよ。 設問2〔CBMシステムの構築準備〕について答えよ。 (1) 本文中の下線(イ)について、従来の点検作業と比べて、CBMシステムの しきい値を使った運用のメリットとは何か。駅務機器の故障の観点から、40 字以内で答えよ。 (2) 本文中の下線(ウ)について、情報システム部長がCBMシステムにコスト 削減効果を期待できると考えた理由を、45字以内で答えよ。 設問3 〔SNSデータの分析を活用した障害検知〕について答えよ。 (1) G氏の検討に従ってSNSへの投稿を活用した場合、今回のようなインシデ ントが発生したとき、どのような改善が期待できるか。20字以内で答えよ。 (2)G氏が、検知条件について本文中の下線(エ)のように考えたのは、どの ような理由からか。SNSへの投稿の特性を表した本文中の字句を使って、25 字以内で答えよ。
図1 システム保全・点検作業時に実施される交換作業。
図1 システム保全・点検作業時に実施される交換作業。
表1 2023年度の駅務機器の故障と稼働率の状況(注1を含む)。
表1 2023年度の駅務機器の故障と稼働率の状況(注1を含む)。
図2 障害発生日と通常日の投稿件数の推移。
図2 障害発生日と通常日の投稿件数の推移。
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可用性を整理するための視点

サービスの可用性を考えるときは、利用者が必要な場面で継続して使えるかという一つの評価軸に注目し、情報の流れ、利用条件、運用上の支えを同じ基準で照らし合わせて整理します。

この問題で問われていること

各記述を個別の機能や媒体の印象で判断せず、利用が必要な時点でサービス提供が途切れにくいか、またその状態を説明する内容になっているかという観点だけで確認してください。

視点

可用性を整理するときは、利用者が必要とする場面、情報が届く経路、継続利用を支える条件を同じ評価軸で見比べ、説明の範囲と前提をそろえて考えます。

確認ポイント

  • 利用が必要となる場面を基準にしているか
  • 継続利用に関係する条件を整理できているか
  • 説明の前提と評価する対象がそろっているか
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解説

駅務機器の稼働率を基に可用性の課題を把握し、CBMによる保全コスト削減とSNS分析による障害対応の早期化を検討する問題です。

問題の全体像

E社は駅務機器を使った駅務サービスを提供しているが、故障の発生と保全コストが課題になっている。そこで、稼働率を確認した上で、IoTセンサーによるCBMを導入し、部材の状態に応じた交換を目指す。さらに、現場からの連絡より早い場合があるSNS投稿を分析し、障害の初動対応を早めようとしている。出題の中心は、可用性の数値計算、状態基準保全の効果、SNS情報の特性を踏まえた改善策です。

設問1(1)

表1の自動券売機について、年間稼働予定時間は80台×7、000時間で560、000時間となる。年間故障修復時間は、80台×1台当たり平均故障回数7回×1回当たり平均修復時間5.0時間で2、800時間です。したがって、稼働率は(560、000−2、800)÷560、000×100=99.50%となる。

設問1(2)

本文では、自動改札機の点検作業が営業時間内に行われ、計画停止が発生している。CBMで故障の可能性が高まった部材だけを交換すれば、不要な点検や交換を減らせるため、公式解答例のとおり「計画停止時間を削減することができる」と考える。

設問2(1)

従来は点検作業員が目視などで交換の必要性を判断していた。一方、CBMでは搬送速度を継続監視し、しきい値を下回った状態を故障の前兆としてデータに基づき判断できる。したがって、公式解答例の要点は、目視判断していた故障の前兆をデータに基づいて判断できることです。

設問2(2)

定期交換では、まだ使用できる部材も一定期間ごとに交換していた。CBMでは部材を状態に応じて交換するため、定期交換と比べて部材を長期間利用でき、交換頻度を減らせる。その結果、部材費や交換作業に伴うコストの削減が期待できる。

設問3(1)

今回の事例では、SNS上の最初の障害投稿が20:00、駅業務部からの連絡が20:10、対応開始が20:15だった。SNSを検知に活用すれば、現場連絡を待たずに障害を把握できるため、公式解答例のとおり「インシデントの初動対応の早期化」が期待できる。

設問3(2)

本文では、SNS投稿は情報源が不特定多数で、現場からの情報より正確性が低い一方、早い場合があると説明されている。したがって、検知条件を一つだけにすると、正確性の低い情報によって誤検知が増える。答案では、公式解答例の「情報の正確性が、現場からの情報より低いから」という因果を押さえる。

学習のポイント

可用性指標の計算、予防保全の効果、情報の特性を答案に結び付ける力を身に付ける。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和6年度春期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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