SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

令和元年度秋期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 ヒューマンエラーに起因する障害管理に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。 ITサービス会社のX社は,自社のデータセンタを使ってクラウドサービスを提供している。X社のサービス運用部は,クラウドサービスを運用するとともに,クラウドサービスで稼働する数十社の顧客のシステムを対象として,24時間365日のシステム運用監視サービスを提供している。 サービス運用部は,サービス全体の管理を担当するサービスグループ,システムの運用監視を担当するオペレータグループなどで編成されている。オペレータグループはチームaからチームeまでの5チームで構成されている。各チームは,チームリーダと数名のオペレータで構成され,それぞれ数社の顧客のシステムを運用している。 X社では,サービスに対する計画外の中断や,顧客へのサービスに影響のあるサービス品質の低下事象をインシデントと定義している。最近はヒューマンエラーに起因するインシデントが多発しており,ヒューマンエラーへの対策がサービス運用部の課題となっている。 〔チームbで発生したインシデント〕 X社の顧客であるZ社は,X社の提供するクラウドサービスを使って,スケジュールやファイル共有を行うZ社のアプリケーションソフトウェアを,24時間365日稼働させている。当該アプリケーションソフトウェアは,サーバ#1とサーバ#2の2台に配置されており,少なくともどちらか1台のサーバで稼働させておく必要がある。Z社を担当するチームbでは,サーバにセキュリティパッチを適用する必要などから,オペレータが2台のサーバを月次で再起動する作業(以下,再起動作業という)を行う。再起動作業はオペレータ1名によって実施される。 10月19日にチームbのオペレータが再起動作業を実施したところ,2台のサーバが,数分間,同時に停止するというインシデントが発生した。再起動作業の手順と10月19日のオペレータの作業内容を表1に示す。 表1 再起動作業の手順と10月19日のオペレータの作業内容 後日,サービスグループで問題管理を担当しているITサービスマネージャのY氏は,チームbのチームリーダと協力して,インシデント発生の原因を分析した。分析の結果,表1の項番4における“オペレータの錯覚によるヒューマンエラー”が原因との結論から,次の再発防止策を検討した。 方策①:二つのサーバ名を間違えにくい名称に変更する。 方策②:表1の項番4で運用監視画面を確認する前に,コンソール画面で“再起動が完了しました”というメッセージを確認する作業手順を追加する。 方策③:【ア】 Y氏は,方策①は対象サーバ数が多く作業量が多くなることから,リスクが高いと判断し,方策②及び方策③を実施することにした。 〔ヒューマンエラーの状況〕 Y氏は,今回のインシデントがヒューマンエラーに起因することから,過去のヒューマンエラーの状況を調査した。その結果,システムの運用監視業務において,インシデントの扱いとなっていない事象(以下,ヒヤリハットという)も含めると,ヒューマンエラーが多い実態が分かった。表2は,2018年度に発生したチーム別の,ヒューマンエラーによるインシデント及びヒューマンエラーによるヒヤリハット(以下,これらをヒューマンエラー事象という)の集計表である。 表2 チーム別のヒューマンエラー事象の集計表 表2に示すチーム稼働率は,各チームが担当する顧客に依存している。チーム稼働率が全チーム平均よりも高いチームには,次の共通の特徴がある。 ・担当する顧客から臨時で追加の作業依頼を受けることが多い。 ・【イ】 Y氏は,表2の状況をサービス運用部長に報告した。サービス運用部は,2018年度に発生したヒューマンエラー事象の合計件数の半減を目指した改善活動を行うことにした。 〔ヒューマンエラー事象の原因分類〕 サービス運用部では,ヒューマンエラー事象の原因を9種類に分類している。分類は,図1のとおりである。 図1 サービス運用部で分類するヒューマンエラー事象の原因 Y氏は,表2のヒューマンエラー事象を,図1を用いて分類した。Y氏が,チーム別原因別に集計した結果を表3に示す。 表3 チーム別原因別のヒューマンエラー事象の集計表 〔パレート図の作成による分析〕 Y氏は,ヒューマンエラー事象の削減に向けて,ヒューマンエラー事象の原因に着目し,パレート図を用いて分析することによって,改善すべき対象を特定することにした。そこで,図2に示すX社で規定されているパレート図の作成手順に従って,表3を基に作業を進めた。 図2 パレート図作成手順 Y氏は,図2の手順(ⅴ)の累積比率(%)が,(あ)80%となるまでの分類項目を重要なものとして特定し,これらを対象に改善を行うことにした。 設問1 〔チームbで発生したインシデント〕について,本文中の【ア】に入れる内容として,チームの特性を生かして実施できる再発防止策を40字以内で述べよ。 設問2 〔ヒューマンエラーの状況〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) 本文中の【イ】には,表2の集計表から判断できる特徴が入る。特徴として全チーム平均と比較した内容を30字以内で述べよ。 (2) 表2中で,インシデント件数が多い上位2チームに共通して見られる,全チーム平均と比較した特徴的なヒヤリハットの発生傾向を30字以内で述べよ。 設問3 〔パレート図の作成による分析〕について,(1)~(4)に答えよ。 (1) 手順(ⅰ)で決定すべき分類項目は何か。20字以内で答えよ。 (2) 手順(ⅳ)で作成する棒グラフの縦軸項目は何か。20字以内で答えよ。 (3) 本文中の下線(あ)で特定した分類項目は何か。表3中の記号①~⑨又はアルファベットa~eを用いて,対象となる全てを答えよ。 (4) 2018年度に発生したヒューマンエラー事象の合計件数を半減するためには,改善対象とした分類項目の合計件数の何%を削減する必要があるか。答えは,パーセント(%)で求めた値の小数第1位を四捨五入して,整数で求めよ。
表1 再起動作業の手順と10月19日のオペレータの作業内容。項番1~7の再起動作業手順と、10月19日のオペレータの作業内容を時刻付きで対比した表。オペレータは項番4でS102の正常表示をS101と錯覚した。コマンド、運用監視画面、再起動遅延の理由、作業ログに関する注1~4を含む。
表1 再起動作業の手順と10月19日のオペレータの作業内容。項番1~7の再起動作業手順と、10月19日のオペレータの作業内容を時刻付きで対比した表。オペレータは項番4でS102の正常表示をS101と錯覚した。コマンド、運用監視画面、再起動遅延の理由、作業ログに関する注1~4を含む。
表2 チーム別のヒューマンエラー事象の集計表。チームa~eについて、インシデント件数(重大・通常・合計)、ヒヤリハット件数(危険・軽微・合計)、チーム稼働率を示す表。全チーム合計はインシデント20件、ヒヤリハット200件、稼働率の平均は50%。分類とチーム稼働率に関する注を含む。
表2 チーム別のヒューマンエラー事象の集計表。チームa~eについて、インシデント件数(重大・通常・合計)、ヒヤリハット件数(危険・軽微・合計)、チーム稼働率を示す表。全チーム合計はインシデント20件、ヒヤリハット200件、稼働率の平均は50%。分類とチーム稼働率に関する注を含む。
図1 サービス運用部で分類するヒューマンエラー事象の原因。ヒューマンエラー事象の原因を9種類に分類した一覧。①不慣れ、②慣れ、③不注意、④近道、⑤パニック、⑥錯覚、⑦疲労、⑧意識低下、⑨その他と、それぞれの説明を記載している。
図1 サービス運用部で分類するヒューマンエラー事象の原因。ヒューマンエラー事象の原因を9種類に分類した一覧。①不慣れ、②慣れ、③不注意、④近道、⑤パニック、⑥錯覚、⑦疲労、⑧意識低下、⑨その他と、それぞれの説明を記載している。
表3 チーム別原因別のヒューマンエラー事象の集計表。チームa~e別に、原因①~⑨ごとのヒューマンエラー事象の件数を集計した表(単位:件数)。原因別の合計は①46、②67、③38、④16、⑤11、⑥25、⑦5、⑧6、⑨6で、総計は220件。
表3 チーム別原因別のヒューマンエラー事象の集計表。チームa~e別に、原因①~⑨ごとのヒューマンエラー事象の件数を集計した表(単位:件数)。原因別の合計は①46、②67、③38、④16、⑤11、⑥25、⑦5、⑧6、⑨6で、総計は220件。
図2 パレート図作成手順。パレート図を作成する手順(ⅰ)~(ⅵ)を示す図。分類項目の決定、データ収集、合計の算出、棒グラフ化、累積比率の算出、折れ線グラフ化の順に並ぶ。JIS Q 9024を参考にした旨の注記と、累積比率の四捨五入に関する注を含む。
図2 パレート図作成手順。パレート図を作成する手順(ⅰ)~(ⅵ)を示す図。分類項目の決定、データ収集、合計の算出、棒グラフ化、累積比率の算出、折れ線グラフ化の順に並ぶ。JIS Q 9024を参考にした旨の注記と、累積比率の四捨五入に関する注を含む。
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分析の根拠が何かを確かめる

この分野を学ぶときは、分析の根拠として何が示されているかに注目しましょう。観察された事実と、そこから導かれた解釈を分けて捉えることで、印象だけに頼らずに内容を検討しやすくなります。

この問題で問われていること

検討する内容について、その判断を支える事実は何かを確かめてください。判断そのもののもっともらしさだけで受け止めず、示された情報と解釈のつながりを意識して、根拠を整理してみましょう。

視点

事実は確認できた内容、解釈はその内容に意味を与えた考えです。両者を区別し、どの事実を根拠にその解釈へ進んだのかを確かめると、分析を落ち着いて捉えられます。

確認ポイント

  • 確認できる事実はどこまでか
  • 解釈として述べられている内容は何か
  • その解釈がどの事実に基づいているか
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解説

本問は、サーバの状態を見誤ったインシデントの再発防止策を考え、ヒヤリハットの発生傾向と原因別件数を分析する問題です。複数人による確認、全チーム平均との比較、パレート図による改善対象の選定と削減率の計算が要点です。

問題の全体像

X社は24時間365日のシステム運用監視サービスを提供しています。チームbでは、少なくとも1台を稼働させる必要がある2台のサーバを順に再起動する際、担当者がS102の正常表示をS101の表示と見誤り、2台を同時に停止させました。この事例の再発防止に加え、全5チームのインシデントとヒヤリハットを分析して改善対象を絞り込みます。公式の出題趣旨では、問題管理における原因・傾向の分析を通じて、恒久的な解決策と改善すべき課題を確認する能力を問うとされています。

設問1

着目するのは、各チームが数名のオペレータで構成される一方、再起動作業は1名で実施されている点です。表1の項番4では、S101がまだ再起動中だったのに、担当者がS102の正常表示を見てS101も正常だと判断しました。ここで複数のオペレータが対象サーバと正常表示を確認すれば、1人の見誤りを検出でき、S102の再起動へ進む前に止められます。公式解答例では、項番4で「S101が正常」と表示されていることを複数のオペレータが確認するとしています。40字以内では「項番4でS101の正常表示を複数のオペレータが確認する。」と、確認箇所・対象・複数人という要素を押さえます。採点講評でも、「チームの特性を生かして」という前提への理解に言及しています。

設問2(1)

まず、表2のチーム稼働率が全チーム平均50%を超えるチームを特定します。該当するのはaの70%とbの65%です。この2チームのヒヤリハット合計は86件と44件で、どちらも全チーム平均40件を上回ります。公式解答例では「ヒヤリハットの合計件数が全チーム平均より多い。」としています。この表現で30字以内に収まります。採点講評では、稼働率が高いチームの特徴を答えるところで、稼働率が高くなる原因を述べた誤答が多かったとされています。既に示された追加作業依頼の多さを繰り返すのではなく、表から読み取れる発生件数の特徴を答えます。

設問2(2)

表2のインシデント合計件数を比較すると、上位2チームはaの8件とcの5件です。この2チームの軽微のヒヤリハットは59件と33件で、どちらも全チーム平均30件を上回ります。一方、危険のヒヤリハットは27件と5件、ヒヤリハット合計は86件と38件であり、いずれも両チーム共通で平均を超えるわけではありません。したがって、公式解答例では「軽微のヒヤリハット発生件数が全チーム平均より多い。」としています。この表現で30字以内に収まります。採点講評では、上位2チームに共通する傾向を抽出できない答案や、発生傾向の代わりに発生原因を述べた答案が指摘されています。設問2(1)とは対象チームが異なる点にも注意します。

設問3(1)

本文には、Y氏が「ヒューマンエラー事象の原因に着目」して改善対象を特定するとあります。また、図1で原因を9種類に分類し、表3で原因別件数を集計しています。したがって、パレート図の分類項目もこの原因とします。公式解答例の「ヒューマンエラー事象の原因」は20字以内に収まります。表3にはチーム別の行もありますが、今回の分析目的に合わせて原因別の列を使います。

設問3(2)

図2の手順(ⅲ)で分類項目ごとのデータ数の合計を求め、手順(ⅳ)でその合計が大きい順に並べて棒グラフにします。このため、棒グラフの縦軸は各原因に該当するヒューマンエラー事象の合計件数です。公式解答例の「ヒューマンエラー事象の合計件数」は20字以内に収まります。インシデントだけでなくヒヤリハットも含めた件数を用います。累積比率は手順(ⅵ)で折れ線グラフにする項目なので、棒グラフの縦軸とは区別します。

設問3(3)

表3の合計行を原因別に多い順へ並べると、②慣れ67件、①不慣れ46件、③不注意38件、⑥錯覚25件、④近道16件、⑤パニック11件、⑧意識低下6件、⑨その他6件、⑦疲労5件となります。全体は220件です。上位からの累積件数は67件、113件、151件、176件で、図2の指定どおり整数に丸めた累積比率は30%、51%、69%、80%です。4項目目の⑥までで80%になるため、対象は「②、①、③、⑥」です。公式解答例もこの4項目を挙げ、順不同としています。採点講評では、チームに着目した誤答が多かったとされています。ここではチームa~eではなく、分析目的である原因①~⑨を選びます。

設問3(4)

表3の全体220件を半減するには、110件を削減する必要があります。設問3(3)で選んだ改善対象4項目の合計は、67+46+38+25=176件です。問われているのは、この176件のうち何%を削減すればよいかなので、110÷176×100=62.5%となります。小数第1位を四捨五入すると63%で、公式解答例の「63」と一致します。全体に対する削減率50%と、改善対象に対する削減率63%では分母が異なる点を押さえます。

学習のポイント

設問ごとの比較対象と集計単位を正確に読み取り、原因別の累積比率と改善対象に対する削減率を区別して求める練習をしましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和元年度秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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