SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

令和元年度秋期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 アプリケーションソフトウェアの変更管理と構成管理に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。 P社は,従業員約500人の玩具メーカであり,玩具の製造,販売を行っている。P社では,従業員に1台ずつ貸与されたPCで,表計算ソフトウェアや文書作成ソフトウェア(以下,これらをOAソフトという)と社内業務用のアプリケーションソフトウェア(以下,社内ソフトという)を利用することができる。 P社の情報システム部の主な業務を図1に示す。 図1 情報システム部の主な業務 P社は,今年度の全社方針として,業務の効率化を進めるために,定型的な業務を自動化するロボティック・プロセス・オートメーションのソフトウェアツール(以下,RPAツールという)を導入することを決定した。 RPAツールは従業員のPCで稼働し,決められた手順に従って自動的に従業員の操作と同様にOAソフト・社内ソフトの処理をすることができる。RPAツールの導入によって,作業時間の短縮や人為的なミス防止の効果が期待できる。RPAツールの使用に当たって,自動化の対象とする業務の一連の操作手順と動作条件(以下,シナリオという)を作成する。シナリオを実行することによって,RPAツールで自動的に業務の操作をすることが可能になる。 〔RPAツールの導入〕 P社の情報システム部が,RPAツールの導入を推進することになり,ITサービスマネージャのS氏が責任者に選任された。 S氏は,P社の業務を調査し,RPAツールの導入で効率向上が期待できる業務を自動化対象の業務として選定した。自動化対象の業務の例は,次のとおりである。 ・社内ソフトで画面表示される売上数値を,OAソフトで作成する売上ファイルに入力する作業 ・OAソフトで作成された顧客リストから新製品の案内を送付する対象の宛先を抽出し,電子メールを作成する作業 S氏の考えた導入計画は,次のとおりである。 ① PCで稼働するR社のRPAツールを導入候補とする。 ② RPAツールは,段階的に導入する。第1段階では,自動化対象の業務を主に行う販売部の40人を候補者とし,候補者のPCを対象にRPAツールを導入する。RPAツールはPCごとにライセンスが必要である。第1段階で必要となる数のライセンスを購入する。 ③ 第1段階における課題の抽出や導入の効果を検証した後,第2段階として全部署を対象に定型的な業務を選定し,必要と想定される数のライセンスを購入し,全面的に展開する。 S氏は,P社の変更管理プロセスに従って変更審査会を開催した。S氏の考えた導入計画は,変更審査会で承認され,第1段階を実施することになった。 なお,変更審査会での指示事項は,次のとおりである。 ・販売部の40人の候補者全員に対して説明会を開催し,RPAツールの導入目的,期待される効果を説明すること ・説明会後に,候補者の意向を反映して利用者数の目標を計画すること S氏は販売部に対して説明会を開催した。説明会の主な内容は,次のとおりである。 ・RPAツールの導入目的,期待される効果を説明した。 ・RPAツールを利用する場合は,P社のファイルサーバから,販売部の従業員自らRPAツールをダウンロードして,PCにRPAツールを導入する。 ・情報システム部の従業員が,シナリオの作成を行う。作成したシナリオは社内ポータルサイトに掲載する。 ・販売部の従業員はシナリオの作成を行わず,社内ポータルサイトに掲載されているシナリオ(以下,ポータル掲載シナリオという)を利用する。 ・ポータル掲載シナリオ以外に自動化したい業務がある場合,利用者が直接シナリオの作成を行わず,情報システム部にシナリオの作成依頼を行う。 ・RPAツールの利用が不要になった利用者は,各自でRPAツールを削除する。 説明会後,出席者の40人にアンケート調査したところ,出席者の50%からRPAツールを使って業務の効率向上が期待できるとの反響があった。S氏は,変更審査会の指示事項に従って,第1段階の利用者数の目標を20人と計画した。 RPAツールでシナリオを実行すると,PC管理番号,RPAツール版番号,シナリオ名,シナリオ実行日時がRPAツールのログとして出力される。RPAツールのログは,シナリオを実行したPCのログ保存先フォルダに格納される。情報システム部は,PC管理サーバを使って全従業員のPCを管理している。PC管理サーバは,PCのログ保存先フォルダに格納されているOSのログ情報とRPAツールのログを収集している。OSのログ情報とRPAツールのログは,PC管理サーバへ送信される。 〔PCの構成管理〕 情報システム部は,従業員が利用するPCの構成情報をPC管理サーバで稼働する構成管理データベース(以下,CMDBという)に登録している。CMDBは,PC管理サーバで稼働するプログラムで更新される。PCには,エージェントプログラムが導入されている。エージェントプログラムは,PCから構成情報の管理に必要な情報を収集する。CMDBで管理している構成情報を表1に示す。 表1 構成情報 表1の情報種別がPCの構成情報のうち,PC管理番号は,PCの購入時にCMDBに登録され,従業員番号は,従業員にPCを貸与するときにCMDBに登録される。 CMDBの構成情報の更新処理は,次の手順で実施される。 ・PCに導入されているOS・OAソフト・社内ソフトの情報が更新された場合,エージェントプログラムが検知し,収集した最新情報をPCからPC管理サーバに送信する。 ・PC管理サーバでは,エージェントプログラムから送信された最新情報の受信を契機として,PC管理番号を基にCMDBの構成情報の更新を行う。 〔PCの構成監査〕 情報システム部は毎月,従業員のPCに対する構成監査を実施している。表1の情報種別がPCの構成情報については,PCに貼付された備品シールと<u>(ア)CMDBに登録されている構成情報</u>とを照合して棚卸しを行う。 表1の情報種別がPC以外の構成情報については,CMDBに登録されている版番号,適用されているパッチ情報と,情報システム部が調査して作成している最新のソフトウェア情報一覧とを照合し,適切であるかどうかを判定する。 S氏は,RPAツールの導入に向けて,RPAツールのライセンス購入数の棚卸しも必要と考えた。そこで,構成監査として<u>(イ)新たなチェック作業を追加</u>した。 〔RPAツールの導入後レビューと改善の実施〕 S氏は,全部署へのRPAツールの導入に備え,販売部を対象にRPAツールの第1段階導入後レビューを行うことにした。 S氏は,CMDBの構成情報と販売部の各PCから収集したRPAツールのログを基に,販売部のRPAツールの導入状況と利用状況を調査した。S氏が調査した結果を表2に示す。 表2 RPAツールの導入状況と利用状況 S氏は,<u>(ウ)RPAツールの利用が計画どおりに進んでいる</u>と考えた。S氏は,導入後レビューの結果,RPAツールの利用に関する研修を定期的に開催し,RPAツールの利用方法を習得してもらうことにした。 設問1 〔PCの構成管理〕の表1を使って,PCに導入され,現在利用可能なRPAツールの数を調査することができる。社内ソフト名がRPAツールの名称である構成情報を使って実施する具体的な調査方法について,35字以内で述べよ。 設問2 〔PCの構成監査〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) 本文中の下線(ア)で行う棚卸しに必要な構成情報を10字以内で答えよ。 (2) 本文中の下線(イ)について,S氏が追加したチェック作業の内容を40字以内で述べよ。 設問3 〔RPAツールの導入後レビューと改善の実施〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) ポータル掲載シナリオに関して, (a) 表2の調査後,各PCのRPAツールとポータル掲載シナリオが継続的に利用されていることを確認するために,RPAツールのログを使って調査する。必要となるRPAツールのログの調査項目を全て挙げ,40字以内で答えよ。 (b) ポータル掲載シナリオが幅広く有効活用されていることを測定するために,RPAツールのログから調査すべき内容を40字以内で述べよ。 (2) 本文中の下線(ウ)について,S氏が計画どおりと考えた理由を,表2の結果と利用者数の目標とを比較して40字以内で述べよ。
図1 情報システム部の主な業務。情報システム部の主な業務を枠内に箇条書きした図。社内システムの開発と保守、社内ソフトや社内ポータルサイトで使うサーバの運用、問題・変更・構成管理などのITサービスマネジメント、ハードウェア及びソフトウェアの資産管理。注1で社内ポータルサイトの掲載内容を、注2でPCに貼付する備品シールとPC管理番号を説明している。
図1 情報システム部の主な業務。情報システム部の主な業務を枠内に箇条書きした図。社内システムの開発と保守、社内ソフトや社内ポータルサイトで使うサーバの運用、問題・変更・構成管理などのITサービスマネジメント、ハードウェア及びソフトウェアの資産管理。注1で社内ポータルサイトの掲載内容を、注2でPCに貼付する備品シールとPC管理番号を説明している。
表1 構成情報。CMDBで管理する構成情報の表。項番1 PC(PC管理番号、MACアドレス、従業員番号)、2 OS(OS名、版番号、パッチ情報)、3 OAソフト、4 社内ソフト(名称、版番号、パッチ情報、導入日、削除日)。注記1は導入日と削除日の記録方法、注記2はRPAツールを社内ソフトとして登録すること、注1は従業員番号が5桁の数字であることを説明している。
表1 構成情報。CMDBで管理する構成情報の表。項番1 PC(PC管理番号、MACアドレス、従業員番号)、2 OS(OS名、版番号、パッチ情報)、3 OAソフト、4 社内ソフト(名称、版番号、パッチ情報、導入日、削除日)。注記1は導入日と削除日の記録方法、注記2はRPAツールを社内ソフトとして登録すること、注1は従業員番号が5桁の数字であることを説明している。
表2 RPAツールの導入状況と利用状況。販売部のRPAツールについて、導入状況と利用状況をクロス集計した表(単位は人)。導入済みは利用ありが22、利用なしが10。未導入は利用ありが0、利用なしが8。注1はCMDBに構成情報があれば導入済み、注2はPCから収集したログがあれば利用ありと計上することを示している。
表2 RPAツールの導入状況と利用状況。販売部のRPAツールについて、導入状況と利用状況をクロス集計した表(単位は人)。導入済みは利用ありが22、利用なしが10。未導入は利用ありが0、利用なしが8。注1はCMDBに構成情報があれば導入済み、注2はPCから収集したログがあれば利用ありと計上することを示している。
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評価の目的と確認対象をそろえる

この分野を学ぶ際は、何を確かめるための情報なのかという観点に絞って整理しましょう。情報の名称だけで判断せず、評価の目的と確認する対象が対応しているかを意識すると、考える筋道を保てます。

この問題で問われていること

取り組むときは、いま確かめようとしていることと、その判断に使おうとしている情報の対象がそろっているかに注目してください。同じ用語が使われていても、それだけで目的との対応が分かったと考えないようにしましょう。

視点

確認したいことを一文で表し、扱っている情報が何についてのものかを添えてみましょう。目的と対象を並べて整理することで、言葉の印象だけに頼らず考えやすくなります。

確認ポイント

  • 確かめたいことを一文で表せているか
  • 扱う情報が何についてのものかを捉えているか
  • 評価の目的と情報の対象との対応を意識しているか
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解説

RPAツールの段階的な導入を題材に、CMDBから現在利用可能な数を把握し、購入ライセンス数との整合性を確認する問題です。さらに、実行ログでシナリオの利用範囲と継続性を分析し、利用者数の実績を目標と比較します。

問題の全体像

P社は業務の効率化に向けてRPAツールを導入し、販売部40人を候補とする第1段階を実施しています。利用者が各自で導入・削除するため、CMDBで現在の導入状態を把握し、PCごとに必要なライセンスを管理する必要があります。また、全面展開に向けたレビューでは、実行ログから利用状況を調べます。公式の出題趣旨では、ライセンスを含むソフトウェア資産の管理を重視し、変更管理と構成管理の能力を問うとされています。各設問では、調査目的に応じて構成情報とログを使い分けることが求められます。

設問1

表1の注記1に着目します。ソフトウェアを導入すると導入日が記録され、削除すると削除日が記録されます。削除後も導入実績の構成情報は残るため、RPAツールの名称を持つ登録の総数だけでは、現在利用可能な数を求められません。再導入時には削除日の情報が消されるので、導入日の記録があり、削除日の記録がないものを数えます。公式解答例では、この二つの条件に該当する件数を調べるとしています。35字以内の答案では「導入日が記録され、かつ、削除日が記録されていない件数を調べる。」とまとめられます。採点講評では、削除日を意識していない解答が多かったと指摘されています。

設問2(1)

照合対象は、PCに貼付された備品シールとCMDBのPC構成情報です。図1の注2では、備品シールに会社名とPC管理番号が記載されると説明されています。表1のPC構成情報のうち、備品シールにも存在し、個々のPCを識別できる項目はPC管理番号です。公式解答例も「PC管理番号」であり、10字以内の答案にはこの項目名をそのまま記します。

設問2(2)

導入計画②の「PCごとにライセンスが必要」と、下線(イ)の直前にある「ライセンス購入数の棚卸し」に着目します。追加するチェックでは、現在利用可能なRPAツールの登録数が、購入したライセンス数を超えていないかを確認します。この登録数は設問1の条件で把握できます。公式解答例では、現在利用可能な登録数がライセンス購入数以内であることを確認するとしています。40字以内では「現在利用可能なRPAツール登録数がライセンス購入数以内か確認する。」と表せます。採点講評では、ライセンス数を意識していない解答が多かったとされており、比較対象まで明記することが重要です。

設問3(1)(a)

本文に示されたログ項目は、PC管理番号、RPAツール版番号、シナリオ名、シナリオ実行日時です。設問が求めるのは、各PCでポータル掲載シナリオが継続的に利用されていることの確認です。そのため、どのPCかを特定するPC管理番号、何を実行したかを特定するシナリオ名、いつ実行したかを示すシナリオ実行日時が必要になります。公式解答例では、この三項目を挙げています。40字以内の答案は「PC管理番号、シナリオ名、シナリオ実行日時」です。版番号は、今回の継続利用を確認するための調査項目には含まれていません。

設問3(1)(b)

「ポータル掲載シナリオが幅広く有効活用されている」という調査目的に着目します。シナリオごとに利用しているPCの数を調べれば、利用の広がりを把握できます。さらに実行日時を調べれば、利用の時期や継続状況を確認できます。同じPCによる複数回の実行を、複数のPCによる利用として数えないことにも注意します。公式解答例では、ポータル掲載シナリオごとにPC管理番号の数とシナリオ実行日時を調べるとしています。40字以内では「ポータル掲載シナリオごとにPC管理番号の数とシナリオ実行日時を調べる。」とまとめられます。採点講評では、ログの分析が必要なのに、ログの出力だけを指摘する解答が多かったとされています。

設問3(2)

説明会後に設定した利用者数の目標20人と、表2の利用状況「あり」の人数を比較します。表2では、導入済みで利用ありの22人と、未導入で利用ありの0人を合わせ、利用者の実績は22人です。導入済みの合計32人には利用なしの10人も含まれるため、利用者数の実績としては使いません。公式解答例では、実績22人が目標20人を達成していることを理由としています。40字以内の答案は「利用者の実績が22人で、目標の20人を達成しているから。」とまとめられます。採点講評でも、具体的な利用者目標と実績の理解が確認されています。

学習のポイント

導入履歴、現在利用可能な状態、実際の利用を区別し、調査目的に合う情報と集計方法を選ぶことが重点です。削除日の条件、ライセンス数との比較、ログの分析単位を押さえましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和元年度秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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