SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

平成30年度秋期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

〔インシデント対応のフロー及びインシデント対応の手順〕 インシデント対応のフローを図1に,インシデント対応の手順を表2に示す。 図1 インシデント対応のフロー 表2 インシデント対応の手順 〔エスカレーションの手順における問題点とその改善策〕 IaaS事業部のITサービスマネージャのS氏は,顧客に対するサービス責任者として,顧客に対して定期的にサービス報告を行っている。 ある日,サービス報告の一環として,インシデントの解決時間について調査したところ,タイプ1の場合は全て解決目標時間を達成していた。タイプ2及びタイプ3のインシデント対応に関しても,解決目標時間は達成していたものの,技術課はサービスデスクが定めた回答期限に遅れることがあった。S氏は,サービスデスクと技術課の対応状況について,次のように整理した。 (1) サービスデスクの対応状況 ・問題点:技術課の技術者の回答期限が迫っている場合,サービスデスクは技術者に回答を促していた。しかし,技術者からの解決手順の指示又は解決の結果の回答が回答期限に遅れることがあった。 ・改善策:解決目標時間を達成できないおそれがある場合は,エスカレーションの手順に,[a]を追加する。この場合,エスカレーション先は,顧客に対するサービス責任者であるS氏とし,インシデント対応の手順「解決」に関与することによって,組織的なインシデント対応を行うことにした。 (2) 技術課の対応状況 ・問題点:解決までに時間を要したインシデント対応の中には,難易度の高いものもあった。しかし,大半はサービスデスクが定めた回答期限内で対応できる内容であった。インシデントの解決を担当した数名の技術者へのヒアリングによって,次の状況が判明した。「ITインフラ群の変更作業を計画的に実施していることから,サービスデスクからインシデントの解決の依頼を受けた場合に,解決手順の指示,技術者自身での解決を後回しにしてしまうことがある。」 ・技術課への要請:S氏は技術課の課長に,「技術者が回答期限を遵守する対策を取ってほしい」と要請した。技術課の課長は,対策を検討することにした。技術者は,毎日始業時に当日の作業計画を策定し,作業を計画的に実施していた。そこで,技術課の課長は技術者が策定する当日の作業計画について(ア)調査を行った。 〔タイプ1の比率向上への取組〕 S氏は,解決時間について,タイプ1がタイプ2及びタイプ3に比べて短い点に着目し,「タイプ1の比率が増加すれば,インシデントの平均解決時間は短くなる」と考えた。サービス利用者にとって利点となることから,S氏は,タイプ1の比率向上への取組として,ノウハウDBに関する二つの改善活動を開始した。 (1) 検索容易性の向上 サービスデスクでタイプ2と判断されたインシデント対応の中には,ノウハウDBに解決手順が登録されていたものもある。しかし,解決手順の抽出に必要な条件の設定が複雑でノウハウDBの検索がうまく行えず,結果としてタイプ1と判断できていないことがあった。 そこで,ノウハウDBの検索にAIを活用し,入力したキーワードから適切にインシデントの解決手順を検索するシステムを開発し,経験の浅いサービスデスク担当者でも迅速かつ適切に対応できるようにする。 (2) 登録内容の充実 S氏は,技術者がサービスデスクからインシデントの解決の依頼を受け,解決までに実施した対応の詳細をヒアリングした。ヒアリング結果は,次のとおりである。 ・タイプ2については,技術者からサービスデスクに対して解決手順を速やかに指示できている。技術者は過去に同様のインシデントが発生したときでも同じ指示を行い,サービスデスクも同じ対応を行っている。 ・タイプ3については,技術者でなければ解決できないインシデントだけでなく,工夫をすれば,サービスデスクで解決できるものも含まれていることが分かった。サービスデスクで解決できるインシデントは主に二つに分類できた。一つ目は,再発性のあるインシデントであり,タイプ3全体の半数以上を占めていた。これらは,初回発生後に解決手順を文書化しておけば,2回目以降はサービスデスクで対応できる。二つ目は,ITインフラ群の使用状況を可視化している「ダッシュボード」の機能拡充のような,サービスを変更した際に発生するインシデントであり,タイプ3全体の3割程度を占めていた。これらはサービス変更後の短期間に集中して発生する。 S氏は,このような状況から,「ノウハウDBの登録頻度をこれまでよりも高めて,ノウハウDBの登録内容を充実する取組が必要である」と考えた。そのために,S氏は次の2点を技術課の課長に提案した。 ・サービスデスクにおいては,インシデントの再発に備えて,タイプ2及びタイプ3のインシデントが解決した後に,インシデントの解決手順をノウハウDBに登録し,技術課に登録内容の確認を依頼する。ここで,タイプ3のインシデントの解決手順は技術者があらかじめ文書化したものをサービスデスクが受け取って,ノウハウDBに登録する。 ・技術課においては,これら以外に必要な(イ)ノウハウDBへの登録を,業務として実施する。 技術課の課長は,「S氏の提案を実施するには,技術者の取組が必要となるが,(ウ)技術課にとっても利点がある」と考え,S氏の提案に同意した。 〔サービスデスクの業務拡大〕 IaaS事業部の業務拡大に伴い,技術課の技術者の業務量が増加した。そこで,技術課の業務の一部をサービスデスクに移行できないか,S氏が検討することになった。技術課の現在の業務について調査したところ,サービス利用者の要求によって実施するITインフラ群の変更作業の一部が,移行可能な業務の候補として挙げられた。具体的な内容は,次のとおりである。 ・サービス利用者がストレージリソースにアクセスするときの,アカウント作成及び更新についての変更作業である。 ・サービス利用者からの変更要求の頻度は高く,内容的に失敗するリスクが低い作業である。 ・変更要求は,A社の変更管理プロセスに従って,週1回実施している社内の変更審査会の前日までに申請が必要であり,変更審査会で承認を受けてから,翌日以降に行う作業である。 今後,サービスデスクで変更要求の処理を行えるようにするには,変更管理プロセスに従って,IaaS事業部として事前に認可を受ける必要がある。S氏は,該当する変更要求の処理をサービスデスクで作業可能となるよう検討を進めた。検討の結果,サービスデスクの体制強化及び必要な教育は,実施可能であることが分かった。サービスデスクで行う変更要求の処理は,優先度「低」として行うことにした。 S氏は,技術課に依頼して,(エ)技術課が実施すべき作業をまとめた。 設問1〔エスカレーションの手順における問題点とその改善策〕について,(1),(2)に答えよ。 設問2〔タイプ1の比率向上への取組〕について,(1),(2)に答えよ。 設問3〔サービスデスクの業務拡大〕について,(1),(2)に答えよ。
図1 インシデント対応のフロー。顧客のサービス利用者,サービスデスク,技術課の間で,インシデント発生通知,解決依頼,解決手順や結果の回答,解決連絡を行う流れを示す図。
図1 インシデント対応のフロー。顧客のサービス利用者,サービスデスク,技術課の間で,インシデント発生通知,解決依頼,解決手順や結果の回答,解決連絡を行う流れを示す図。
表2 インシデント対応の手順。インシデントの記録,優先度割当て,分類,記録更新,段階的取扱い,解決,終了までの手順と注記を整理した表。
表2 インシデント対応の手順。インシデントの記録,優先度割当て,分類,記録更新,段階的取扱い,解決,終了までの手順と注記を整理した表。
解き方のヒントを見る

判断に使う前提条件の確認

この分野を学ぶときは、判断の前提となる条件に着目しましょう。見えている情報から確かめられる条件と、自分で補っている条件を区別すると、思い込みに頼らず検討するための足場ができます。

この問題で問われていること

考える際には、ある判断がどの条件を前提としているかを意識してください。その条件が示された情報に基づくものか、普段の経験から補ったものかを確かめ、両者を混ぜずに扱うことに焦点を当てましょう。

視点

判断の前提とは、考えを進めるときに成り立つものとして置いている条件です。情報として明示された条件と、自分が仮に置いた条件を分けて捉えましょう。

確認ポイント

  • 判断の前提に置いている条件を意識できているか
  • その条件の根拠を示された情報から確認できるか
  • 経験から補った条件を、明示された条件と混同していないか
正解と解説を見る

解説

本問の要点は、インシデント対応を優先する組織的な調整と作業時間の確保、解決手順の共有によるサービスデスクでの解決率向上、標準変更の移行による変更要求の処理期間短縮です。

問題の全体像

A社のIaaS事業部では、サービスデスクが利用者の窓口となり、必要に応じて技術課にインシデントの解決を依頼している。タイプ1は登録済みの手順でサービスデスクが解決し、タイプ2は技術課の指示に従ってサービスデスクが解決し、タイプ3は技術課が解決する。S氏は、技術課の回答遅延への対策、タイプ1の比率向上、変更作業のサービスデスクへの移行を進める。公式の出題趣旨では、優先度の扱い、再発への備え、標準変更への対応を題材に、インシデント管理手順の遂行能力とプロセスの改善能力を問うとしている。各設問では、担当者の役割と改善によって得られる効果を具体的に捉えることが重要です。

設問1(1)

着目するのは、技術者への督促だけでは回答遅延を防げず、解決目標時間を達成できないおそれがある場合に、サービス責任者のS氏が関与するという改善策です。技術課では計画的な変更作業を優先し、インシデント対応を後回しにすることがあった。そこで、S氏を通じて技術課に対応の優先を依頼し、組織として作業の優先順位を調整する。公式解答例では「技術課に対してインシデント対応を優先してもらうための依頼」としている。30字以内の答案では「技術課にインシデント対応を優先してもらうための依頼」とまとめられる。採点講評では、本文の記述を抜き出すだけの解答も指摘されており、エスカレーション先の名称だけでなく、何を依頼するかまで示す必要がある。

設問1(2)

調査対象は、技術者が毎日始業時に策定する当日の作業計画です。回答が遅れたインシデントの大半は期限内に対応できる内容だったため、技術的な難しさだけでは遅延を説明できない。予定された変更作業で作業時間を埋めてしまい、途中で発生するインシデントへの対応時間を確保していない可能性に着目する。公式解答例では、計画策定時に想定されるインシデント対応の作業時間を確保していることを挙げている。40字以内の答案では「作業計画で想定されるインシデント対応の作業時間を確保しているか」とまとめられる。単に作業量や計画の進捗を調べるのではなく、突発的な対応に必要な時間の確保を調べる点が要点です。

設問2(1)

ヒアリング結果のうち、サービス変更に伴うインシデントがタイプ3の約3割を占め、変更後の短期間に集中して発生する点に着目する。再発性のあるインシデントへの対策は、既に「解決後にサービスデスクが手順を登録する」という提案に含まれている。設問は「これら以外」の登録内容を問うため、変更によって発生すると想定されるインシデントに備え、技術課がその解決手順を登録することになる。公式解答例では「サービスを変更した際に想定されるインシデントの解決手順」としており、そのまま30字以内で表現できる。採点講評では、ヒアリング結果から判明した発生傾向に対して適切な取組を考えることを求めている。

設問2(2)

技術課には、解決手順の文書化や登録内容の確認という作業が追加される。一方、その手順を使ってサービスデスクが解決できるインシデントが増えれば、技術課への解決依頼が減る。タイプ2で繰り返していた手順の指示や、タイプ3で行っていた解決作業の一部をサービスデスクに移せるため、技術課の対応負荷が低減する。公式解答例では「技術課が行うインシデント対応の作業負荷が低減するから」としており、40字以内でこの因果関係を示せばよい。採点講評でも、サービスデスクで解決できる比率の向上が、機能的エスカレーション先の業務効率化につながる点に言及している。

設問3(1)

移行候補は、ストレージ利用のためのアカウント作成・更新であり、要求頻度が高く、失敗するリスクが低い変更作業です。また、サービスデスクの体制強化と教育は実施可能とされ、事前認可を受ける方針も示されている。技術課が行うべきことは、サービスデスクがその変更を実施できるよう、具体的な作業手順を整えることです。公式解答例では「サービスデスクで実施できるように標準変更の手順を整備する」としている。40字以内の答案でもこの表現を使える。頻繁で低リスクの作業を事前認可された標準変更として扱い、担当を移すために必要な手順を用意する点が要点です。

設問3(2)

顧客側の利点は、変更要求を依頼してから実施されるまでの待ち時間が短くなることです。従来は週1回の変更審査会に申請し、承認後の翌日以降に作業していた。対象作業を事前認可された標準変更としてサービスデスクで処理できれば、個々の要求について週次の審査会を待つ時間を短縮できる。公式解答例では「変更要求の依頼から実施までの期間が短くなる」、又は「変更要求の依頼から実施までの期間が1営業日以内となる」としている。30字以内の答案では「変更要求の依頼から実施までの期間が短くなる」とまとめられる。技術者の負荷軽減ではなく、顧客が要求した変更を早く利用できる効果を述べる。

学習のポイント

設問が求める行為と対象を特定し、本文の原因・対策・効果を結び付けて、字数内で具体的に表現する練習を重視する。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成30年度秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

関連する過去問一覧

IPA Advancedは非公式の学習サイトです。解説にはAIによる補助生成を含む場合があります。公式の問題冊子・解答例・採点講評を優先し、誤りは確認後に訂正します。運営・編集方針