SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

平成29年度秋期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 問題管理及び変更管理に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 K社は金融機関である。K社の情報システム部では,顧客管理システムを運用しており,社内規程のプロセスに従って問題管理及び変更管理を行っている。ITサービスマネージャは情報システム部のE氏が務めている。 〔K社の問題管理プロセス〕 K社の問題管理プロセスの手順は,表1のとおりである。 表1 K社の問題管理プロセスの手順 問題管理プロセスにおいて決定した解決策が,CIの変更を必要とする場合は,RFCを起票し,変更管理プロセスに従って処理する。K社のRFC管理項目と起票時の記入要領を,表2に示す。 表2 K社のRFC管理項目と起票時の記入要領 〔K社の変更管理プロセス〕 RFCは,変更管理プロセスの手順に従って処理される。K社の変更管理プロセスの手順(抜粋)は,表3のとおりである。 表3 K社の変更管理プロセスの手順(抜粋) 〔問題管理の現状〕 情報システム部では,問題の記録を問題管理データベース(以下,問題管理DBという)で管理しており,インシデント発生ケースについての問題の解決状況を示す指標である問題解決率を問題管理会議で毎週確認している。問題解決率は問題の“優先度”ごとに次の式で求める。 問題解決率=(問題の総件数-終了していない問題の件数)÷問題の総件数 問題管理会議は実務担当者で構成され,E氏が議長を務める。E氏は,問題管理会議の決定事項を情報システム部の部長に報告する。 ある日,E氏は情報システム部の部長から““優先度”が“低”の問題について,全ての問題を一律に管理するのではなく,早期に解決できる問題又は早期に解決すべき問題が,どれだけ解決できているかを週次で確認したい。問題解決率の算出方法を工夫するように。”と指示された。そこでE氏は,部長の指示に従って,問題解決率の算出方法を工夫して,[d]を問題解決率の計算対象から除外する運用を始めることにした。 なお,現在,問題管理DBに登録されているインシデント発生ケースの問題で,かつ,“優先度”が“低”の問題は100件である。そのうち,終了していない問題の状況は,表4のとおりであった。 表4 終了していない問題の状況 〔月次集計プログラムの問題とその対応〕 顧客管理システムでは,開発元のQ社から提供されている月次集計プログラム(以下,P1という)を使用し,毎月20日の夜間バッチジョブで顧客別の月間取引集計処理を行っている。夜間バッチジョブはオンライン処理開始までに終了する必要がある。 本年10月10日にQ社から,顧客管理システムの運用を担当している情報システム部のG氏に対して,“P1の処理に問題があり,特定の条件において集計データの一部が後続の処理に正しく引き継がれないという不具合が発見された。”という連絡があった。 (1) Q社の対応 Q社は,問題が含まれるP1の版についての情報と,対策済みのP1の最新版を既に自社のWebサイトに公開していて,速やかな対応を促していた。また,Q社のWebサイトには,“最新版では対策ロジックの追加に伴い,従来の版よりも処理時間が長くなる場合がある。”という注意書きが掲載されていた。 (2) K社の対応 G氏は,CMDBを検索して,P1は顧客管理システムだけで使用していること,及び現在K社で使用しているP1が問題のある版であることを確認した。顧客管理システムではQ社が指摘する問題によるインシデントはこれまで発生していなかった。 ① 変更計画の立案 G氏は,Q社が推奨しているように速やかに対応を行う必要があると判断し,変更管理プロセスに従って,10月20日の集計処理までに対応を完了する変更計画を立てることにした。 G氏が考えた変更計画の概要は,次のとおりである。 ・10月19日までにP1を最新版に変更する。 ・対策済みのP1の最新版を稼働環境に展開する前に,K社のテスト環境でテストデータを用いて機能の確認テストを行う。 ・確認テストは,準備作業,テスト作業,確認作業で構成する。RFCの受入れが決定されてから速やかに確認テストの準備作業を開始する。準備作業に2日,テスト作業及び確認作業に3日の合計5日の日数が必要である。確認テストは,土曜日と日曜日も作業する。 ② P1の最新版への変更 G氏はP1を最新版に変更するRFCの起票に取り掛かり,表2の記入要領に従って次のようにRFC管理項目を記入し,10月11日にRFCを提起した。 ・RFC管理項目の(イ)“優先度”については“緊急”と記入した。 ・RFC管理項目の“リスク”についてはP1の最新版の機能の確認テストを実施し,処理結果が正しいかどうかを確認するので,“特になし”とした。 E氏は,G氏から提出されたRFCの内容を確認し,G氏に対して“事前に実施する確認テストは,テスト環境でテストデータを用いた機能の確認テストである。稼働環境とは機器の性能及び処理するデータ量が異なるので,(ウ)RFC管理項目の“リスク”については懸念される内容を記載すべきである。”と指摘した。 設問1 〔K社の問題管理プロセス〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) 表1中の[a]に入れる適切な字句を,10字以内で答えよ。 (2) 表2中の[b]に入れる適切な字句を,K社の変更管理プロセスの手順を参考にして10字以内で答えよ。 設問2 〔K社の変更管理プロセス〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) 表3中の下線(ア)において,開催を通知されたCAB要員が開催日時にCABに参加できない場合がある。このような場合にCAB要員がとるべき行動を,40字以内で述べよ。 (2) 表3中の[c]には,変更の展開が成功した後に,構成管理プロセスで実施する内容が入る。この内容を15字以内で答えよ。 設問3 〔問題管理の現状〕について,[d]に入れる適切な内容を,表4中の字句を用いて30字以内で答えよ。 設問4 〔月次集計プログラムの問題とその対応〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) 本文中の下線(イ)について,RFC管理項目の“優先度”を“緊急”とした理由を,40字以内で述べよ。 (2) 本文中の下線(ウ)について,E氏が懸念した“変更を実施することによって発生する可能性があるリスク”を,30字以内で述べよ。
表1 K社の問題管理プロセスの手順。問題管理プロセスの手順(1)識別~(8)終了とその内容を示す表。(7)解決には調査と診断,既知の誤りの文書化,問題の解決があり,空欄aが2か所ある。
表1 K社の問題管理プロセスの手順。問題管理プロセスの手順(1)識別~(8)終了とその内容を示す表。(7)解決には調査と診断,既知の誤りの文書化,問題の解決があり,空欄aが2か所ある。
表2 K社のRFC管理項目と起票時の記入要領。項番1~17のRFC管理項目(変更要求番号,件名,起票日,変更対象のCI,変更種別,優先度,リスクなど)と記入要領の表。項番8は空欄bで記入要領は網掛け。注記と,CIの属性がCMDBに記録されているという注1を含む。
表2 K社のRFC管理項目と起票時の記入要領。項番1~17のRFC管理項目(変更要求番号,件名,起票日,変更対象のCI,変更種別,優先度,リスクなど)と記入要領の表。項番8は空欄bで記入要領は網掛け。注記と,CIの属性がCMDBに記録されているという注1を含む。
表3 K社の変更管理プロセスの手順(抜粋)。変更管理の手順(1)RFCの記録と分類,(2)RFCの評価(CABの構成・開催・下線ア),(3)RFCの受入れ決定,(4)変更の実施(空欄c)を示す表。末尾の(省略)行と,CABを10月3・10・17・24・31日に開催するという例1を含む。
表3 K社の変更管理プロセスの手順(抜粋)。変更管理の手順(1)RFCの記録と分類,(2)RFCの評価(CABの構成・開催・下線ア),(3)RFCの受入れ決定,(4)変更の実施(空欄c)を示す表。末尾の(省略)行と,CABを10月3・10・17・24・31日に開催するという例1を含む。
表4 終了していない問題の状況。終了していない問題を原因の特定可否と再発インシデントの有無で分類した件数の表。特定できた・ありは3件,なしは5件,特定できない・ありは2件,なしは6件で,合計16件。再発インシデントの定義を示す注1を含む。
表4 終了していない問題の状況。終了していない問題を原因の特定可否と再発インシデントの有無で分類した件数の表。特定できた・ありは3件,なしは5件,特定できない・ありは2件,なしは6件で,合計16件。再発インシデントの定義を示す注1を含む。
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判断に用いる前提を確かめる

検討を始めるときは、判断の根拠にする前提の範囲を確かめましょう。与えられた条件と、自分の経験から補った想定が混ざっていないかを意識すると、知識を当てはめる前の整理がしやすくなります。

この問題で問われていること

この話題を考える際は、何を前提として判断しようとしているかに注目してください。判断に関係しそうな情報でも、その場で与えられた条件に基づくものか、自分が追加した想定なのかを区別して整理しましょう。

視点

普段の経験から思い浮かぶ状況が、今回の判断にも当てはまるとは限りません。判断の根拠を整理するときは、与えられた条件に含まれる前提と、自分で補った想定を区別しましょう。

確認ポイント

  • 判断に用いる前提を明確にしたか
  • 与えられた条件と自分の想定を区別したか
  • 明示されていない条件を補っていないか
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解説

問題管理、変更管理、構成管理の連携を、K社の規程と変更事例から読み取る問題です。原因調査、RFCの評価情報、問題解決率の対象、変更期限から逆算した緊急性、オンライン処理への影響を結び付けて説明することが要点です。

問題の全体像

金融機関のK社は、顧客管理システムの問題管理と変更管理を社内規程に従って行っています。前半では原因調査、RFCの記入項目、CABによる評価、展開後の構成情報更新を扱い、後半では問題解決率の見直しと月次集計プログラムP1の変更を扱います。公式の出題趣旨では、問題解決、RFCの受入れ、意思決定での考慮点、構成管理との連携を通じた実務能力が問われています。各プロセスの役割を理解し、事例の期限やサービスへの影響に結び付けることが重要です。

設問1(1)

表1の手順(7)では、空欄aと解決方法が特定された時点で診断を完了するとされています。また、同じaが特定されている問題などを「既知の誤り」として記録します。表1の識別手順にも「インシデントの未知の根本原因の検知」とあるので、調査で明らかにする対象は問題を引き起こした根本原因です。公式解答例では「根本原因」とされています。この4字で、二つの空欄に共通する内容を10字以内で表せます。

設問1(2)

表2だけで空欄bを推測せず、指定された表3の手順(3)を確認します。変更の意思決定では、リスク、サービス及び顧客への潜在的影響、サービスの要求事項、事業利益、技術的実現可能性、財務的な影響を考慮します。このうち、表2には「サービスの要求事項」に対応する項目が見当たりません。公式解答例では「サービスの要求事項」と「変更の理由」が示されています。答案では、例えば9字の「サービスの要求事項」とすれば、変更の判断に必要な情報を10字以内で示せます。採点講評でも、表3の手順を読み取って解答を導くことが求められています。

設問2(1)

表3の手順(2)では、CABが変更の影響について助言し、E氏がRFCの内容を事前に送付するとされています。欠席する場合も、自分の専門分野から必要な評価を提供することが重要です。公式解答例では、事前にRFCを確認してリスクアセスメントの結果をCABに提出する方法と、代理者をCAB要員として登録して参加させる方法が示されています。40字以内の答案例は「RFCを事前確認し、リスクアセスメント結果をCABに提出する。」です。代理者による方法なら「代理者をCAB要員として登録し、CABに参加させる。」とまとめられます。単に欠席を連絡するだけでは、変更評価への貢献が表せません。

設問2(2)

設問は、変更の展開が成功した後に構成管理プロセスで行う内容を問うています。表2の注記には、CIの属性がCMDBに記録されているとあります。変更によってプログラムの版などが変わったら、その実際の状態を構成情報に反映する必要があります。公式解答例では「CMDBの記録を更新」とされています。15字以内の答案はこの表現で足り、後ろの「する」にもつながります。実際、G氏はCMDBを検索してP1の使用先と版を確認しており、変更後も正しい判断ができるよう記録を更新します。

設問3

部長が確認したいのは、優先度が低い問題のうち「早期に解決できる問題」又は「早期に解決すべき問題」の解決状況です。表4では、原因が特定できた問題は解決に向けた調査が進んでおり、再発インシデントがある問題は繰り返す影響への対応が必要です。これに対して、原因が特定できず、再発インシデントもない問題を計算対象から除外します。公式解答例では「原因が特定できないで、かつ、再発インシデントなしの問題」とされ、30字以内に収まります。「かつ」によって両方の条件を満たす問題と示すことが要点です。対象は表4の項番4の6件なので、総件数は94件、未終了件数は10件となり、解決率は84÷94で約89.4%です。除外した問題を解決済みと扱うのではなく、計算対象から外します。採点講評でも、原因の特定状況と再発の有無に着目した実務的な管理が求められています。

設問4(1)

RFCを提起したのは10月11日で、変更期限は10月19日です。表3によると通常のCABは毎週火曜日に開催され、次の定例開催日は10月17日です。一方、確認テストはRFCの受入れ決定後に開始し、土日も作業して合計5日を必要とします。17日の定例CABを待つと、19日までに必要な日数を確保できません。優先度が緊急なら受付から2日以内に臨時CABが開催されるため、受入れを早める必要があります。公式解答例では、速やかなCAB開催によって確認テストの5日を確保することが理由です。40字以内なら「速やかにCABを開催し、確認テストに5日間を確保するため。」とまとめられます。

設問4(2)

Q社は、最新版では対策ロジックの追加によって処理時間が長くなる場合があると注意しています。K社の事前テストは機能確認が目的で、稼働環境とは機器の性能とデータ量が異なるため、正しい処理結果を確認しても、本番での処理時間まで保証できません。本文の「夜間バッチジョブはオンライン処理開始までに終了する必要がある」と結び付けて考えます。公式解答例では「夜間バッチジョブがオンライン処理開始までに終了しない。」とされ、30字以内に収まります。採点講評では、処理時間が長くなるという事象だけでなく、顧客への影響の観点からオンライン処理開始に着目することが求められています。

学習のポイント

表同士の対応から必要な管理項目を導き、作業日数から変更の緊急性を判断する練習をしましょう。リスクは処理時間の増加だけでなく、サービスへの影響まで具体化することが重点です。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成29年度秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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