SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

平成29年度秋期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 ITサービスの可用性に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。 U社は,POSシステムを小売業者に販売している電気通信機器メーカである。扱っているPOSシステムの構成は,表1のとおりである。 表1 POSシステムの構成 POSシステムを設置した店舗では,POSシステムが提供するサービス(以下,POSサービスという)によって,レジ業務の初心者でも精算ミスが発生せず,かつ,効率的な現金管理が可能である。POSサービスには,レジでの精算待ち時間の短縮が求められており,高い可用性が必要である。 〔Z社のPOSシステムの利用〕 Z社は,全国に100店舗をもつ小売業者であり,3年前にU社のPOSシステムを導入した。Z社のPOSシステムの利用状況は,次のとおりである。 ・1店舗当たり1台のストアコントローラを設置し,1台以上のPOSレジが稼働している。 ・本社に設置されている販売システムでは,店舗のPOSシステムのストアコントローラから販売データを収集・集計している。 また,Z社はU社との間でPOSサービスのSLAを締結している。SLAの可用性については,店舗ごとにサービス稼働率を計算して求める。店舗にPOSレジが複数台設置されている場合は,POSレジごとにサービス稼働率を計算した値を設置台数で平均して,店舗のサービス稼働率とする。SLAの抜粋を表2に示す。 表2 POSサービスのSLA(抜粋) Z社では,全ての店舗のPOSシステムの監視を含む保守サービスを,U社に委託している。U社では,監視センタから監視システムを利用してPOSシステムの稼働状況を監視する。全体のシステム構成を図1に,Z社の各店舗に設置したストアコントローラがPOSレジから収集している稼働状況のデータを表3に示す。 図1 全体のシステム構成 表3 ストアコントローラがPOSレジから収集している稼働状況のデータ 〔U社のPOSシステムの保守サービス〕 U社では,次に示す予防保守及び事後保守の2種類の保守サービスを提供している。 (1) 予防保守は,定められた時間計画に従って実施される時間計画保守と,POSシステムの監視に基づく状態監視保守に分かれる。さらに,時間計画保守には,次に示す2種類の保守がある。 ・定期保守:予定の時間間隔で部品の検査・交換を実施する。 ・経時保守:予定の累積動作時間・累積動作回数に達したときに,部品の検査・交換を実施する。POSシステムの構成部品には,稼働状況や消耗度合いに応じて交換が必要な部品がある。 (2) 事後保守は,POSシステムに故障が発生し,監視システムで故障を検出した場合に緊急で修理を行う保守である。POSレジに故障が発生した場合の回復手順は,表4のとおりである。 表4 POSレジに故障が発生した場合の回復手順 U社は,これらの保守サービスのうち,店舗で行う作業をC社に委託している。C社では,修理用部品の在庫を確保し,サービス拠点に保守員を配置している。新規にPOSサービスを開始する店舗がある場合,U社は,事前にC社に連絡する。C社は,POSシステムの設置場所及び機器の設置数に応じて,修理用部品の在庫及び保守員の配置を見直すことにしている。 〔POSシステムの監視〕 (1) 予防保守で行うPOSシステムの監視は,次のとおりである。 ・監視システムは,ストアコントローラに蓄積された表3のデータから必要な情報を受信する。具体的にはストアコントローラが,POSレジから表3のデータを収集した直後の処理として,監視システムに通知情報を送信する。 ・通知情報には,POSレジの自動釣銭機の釣銭詰まりなど,故障ではないが店舗で対応可能な軽微な障害に関する機器の状態情報,部品の累積動作時間が一定時間以上,又は累積動作回数が一定回数以上になったことを示す経時保守に必要な情報が含まれる。 (2) 事後保守で行うPOSシステムの監視は,次のとおりである。 ・ストアコントローラからの異常通知を契機として行う。具体的には,ストアコントローラがPOSレジ故障を検出したとき,故障した機器の情報と異常通知を監視システムに送信する。 ・U社で対応が必要な通知の一覧は,監視システムに登録されている。 ・監視システムでは,異常通知を受信すると,監視端末で警報を鳴らし,監視センタのインシデント担当者に対応を促す。 ・異常通知を受信した場合,インシデント担当者は,POSレジ故障と判断し,表4に示す回復手順に従って対応する。 ・異常通知は監視システムに記録され,後日,担当者が分析に利用する。 〔Z社のPOSレジ故障の事例〕 ある日,Z社のある店舗で自動釣銭機が故障し,POSレジを利用できなくなった。この店舗では,POSレジ1台でPOSシステムが運用されていた。U社のインシデント担当者のV氏は,表4に示す回復手順に従って①~⑤の対応を行った。 ① ストアコントローラがPOSレジ故障を検出し,U社の監視システムに異常通知を送信した。監視端末で警報が鳴り,V氏はインシデントとして記録した。 ② V氏は,Z社の店舗担当者にヒアリングを行った。店舗担当者は,「21時から自動釣銭機が故障し,POSレジを利用できない。前日から,釣銭詰まりが複数回発生しており,その都度対応していたが,今回は店舗だけでは対応できない。」と回答した。V氏は,釣銭詰まりの通知情報が監視システムに記録されていることを確認し,次のように対応した。 ・情報収集ツールを利用して,店舗のストアコントローラから当該POSレジに関する,表3の全てのデータを収集した。 ・当該POSレジは利用期間が長く,利用頻度も高かったので,通常は10分程度で終了する情報収集に30分掛かった。 ・情報収集後,故障部位の特定のための診断を行った。機器の状態のデータと故障エラーログのデータから,自動釣銭機の硬貨搬送ベルトが正常に動作していないことを特定した。 ・収集したその他のデータには,診断に役立つ情報はなかった。 ③ C社はV氏の依頼を受けて,保守員をZ社の店舗に派遣した。C社保守員が店舗に到着して,硬貨搬送ベルトを確認したところ,硬貨搬送ベルトが破損していることが分かった。硬貨搬送ベルトは定期保守で一定期間ごとに交換しているが,当該POSレジは利用頻度が高く,自動釣銭機の硬貨搬送ベルトが摩耗して破損したことが故障の原因であった。C社保守員は,持参した修理用部品に交換して自動釣銭機の修理を完了した。 ④ C社保守員は当該POSレジを再起動して復旧させた。データの修正は必要なかった。 ⑤ Z社の店舗担当者は,V氏の依頼を受けて当該POSレジが回復していることを確認した。 Z社の店舗の対応は,当該POSレジの故障発生から3時間後の24時に終了した。 〔監視データの分析〕 U社のITサービスマネージャのD氏は,表4の各回復手順を短縮するために,故障対応記録と,監視システムに蓄積された過去数年間の監視データを分析した。監視データは膨大なデータ量なので,ビッグデータの解析手法を適用し,今回の故障に関する次の知見を得た。 ① 異常通知の受信から,C社保守員の派遣手配までの平均時間は,20分である。 ② 経時保守で交換している部品の故障発生頻度は低い。 ③ 自動釣銭機が故障する前に,店舗で対応可能な釣銭詰まりの障害が頻発している。 これらの分析結果から,D氏は今回と同様の故障が発生する兆候を捉えることができると考えた。そこで,POSレジ故障を未然に防止するために,D氏は,(ア)ストアコントローラの機能変更と(イ)保守サービスの見直しを行うことによって,サービス稼働率を向上できると考えた。 〔修理時間の短縮〕 D氏は,サービスレベルを維持するためにC社と連携して,修理時間の短縮について,次のような対策を検討した。 ・修理用部品の欠品を防ぐことによって部品手配時間を短縮し,C社保守員を適正に配置することによって駆け付け時間を短縮することができる。そのために,U社からC社に,POSレジごとの利用状況と故障傾向に関する情報を提供する。 ・C社はU社からの情報を活用し,【a】を定期的に見直すとともに,POSレジの修理方法などの勉強会を開催する。 ・修理時間を確実に短縮するために,故障発生時の部品手配時間及び駆け付け時間について,新たにサービスレベルの目標値を設定し,C社とSLAを締結する。 設問1〔Z社のPOSレジ故障の事例〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) SLAに基づく可用性に関して,今回故障したPOSレジ故障発生月の当該店舗におけるサービス稼働率を%単位で求め,小数第2位を四捨五入して小数第1位まで答えよ。ここで,故障発生月の稼働日は30日とし,故障発生月には今回の故障だけが発生したものとする。 (2) 回復手順中の診断時間を短縮するための改善策を,情報の収集に着目して,40字以内で述べよ。 設問2〔監視データの分析〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) 本文中の下線(ア)でD氏が考えた機能変更の内容を,50字以内で述べよ。 (2) 本文中の下線(イ)でD氏が考えた見直しの内容を,30字以内で述べよ。 設問3〔修理時間の短縮〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) 本文中の【a】に入れる適切な内容を,20字以内で述べよ。 (2) U社がC社と目標値を設定するときに考慮すべき内容を,ITサービスマネジメントの視点から,40字以内で述べよ。
表1 POSシステムの構成。POSレジとストアコントローラの機器構成と、それぞれの役割を示す表。
表1 POSシステムの構成。POSレジとストアコントローラの機器構成と、それぞれの役割を示す表。
表2 POSサービスのSLA(抜粋)。POSサービスの可用性について、サービス時間と月間サービス稼働率の目標を示す表。
表2 POSサービスのSLA(抜粋)。POSサービスの可用性について、サービス時間と月間サービス稼働率の目標を示す表。
図1 全体のシステム構成。U社監視センタ、IP-VPN、Z社の店舗および本社を接続したPOSシステム全体の構成図。
図1 全体のシステム構成。U社監視センタ、IP-VPN、Z社の店舗および本社を接続したPOSシステム全体の構成図。
表3 ストアコントローラがPOSレジから収集している稼働状況のデータ。資源状況、機器状態、故障エラーログ、稼働履歴情報の内容を整理した表。
表3 ストアコントローラがPOSレジから収集している稼働状況のデータ。資源状況、機器状態、故障エラーログ、稼働履歴情報の内容を整理した表。
表4 POSレジに故障が発生した場合の回復手順。POSレジ故障時の検出、診断、修理、復旧、回復の五つの手順と内容を示す表。
表4 POSレジに故障が発生した場合の回復手順。POSレジ故障時の検出、診断、修理、復旧、回復の五つの手順と内容を示す表。
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判断の前提となる条件をそろえる

検討を始める前に、何を対象として、どの範囲や期間について考えるのかを整理しましょう。与えられた情報を同じ前提で捉え、途中で条件の取り方が変わっていないかを確かめることが大切です。

この問題で問われていること

この問題では、判断に使う情報の前提がそろっているかという一点に注目しましょう。対象や範囲、期間の捉え方を自分の中で固定し、考えを進める途中でも、その前提からずれていないかを振り返ってください。

視点

情報は、前提となる条件が変わると捉え方も変わります。まず与えられた条件を整理し、明示されていることと自分で補ったことを区別すると、考察の前提をそろえやすくなります。

確認ポイント

  • 判断の対象を途中で広げたり狭めたりしていないか
  • 範囲や期間を一貫した捉え方で扱っているか
  • 示されていない条件を無意識に付け加えていないか
正解と解説を見る

解説

本問は、POSサービスの可用性を、サービス稼働率の計算、診断情報の絞り込み、故障兆候の通知、経時保守の追加、修理体制の見直し、委託先とのサービスレベル合意から改善する問題です。

問題の全体像

U社はZ社にPOSサービスの保守を提供し、店舗での作業をC社に委託しています。事例の店舗ではPOSレジが1台だけで、自動釣銭機の硬貨搬送ベルトが摩耗して破損し、サービスを利用できなくなりました。故障は21時に発生し、対応は24時に終了しており、故障発生から対応終了までに3時間を要しました。公式解答例の出題趣旨では、障害回復手順の整備、修理時間の短縮、予防保守を通じた可用性と回復力の向上、供給者管理の実務能力が問われています。各設問では、停止時間の算定と、本文の事実に基づく具体的な改善策を考えます。

設問1(1)

表2のサービス時間は営業日の7時から23時までなので、1日16時間、30日間の計画サービス時間は480時間です。故障発生から対応終了までは21時から24時までの3時間ですが、サービス時間内の停止は21時から23時までの2時間です。したがって、サービス稼働率は(480-2)÷480×100=99.583…%となり、小数第2位を四捨五入すると99.6%です。公式解答例でも99.6と示されています。この店舗はPOSレジが1台なので、この値が店舗のサービス稼働率になります。

設問1(2)

V氏は表3の全データを収集したため、情報収集に30分掛かりました。しかし、故障部位の特定に役立ったのは機器の状態と故障エラーログで、その他のデータは役立ちませんでした。表4の注記には、情報収集ツールでデータの種類と期間を指定できるとあります。この機能を使い、診断に必要な情報に収集範囲を絞るのが改善策です。公式解答例では「情報収集ツールを利用するときに、データの種類と期間を指定する。」と示されています。40字以内の答案では、ツールの利用と種類・期間の指定を押さえます。採点講評でも、故障の切分けに必要な情報を優先して収集することが診断時間の短縮に直結すると指摘されています。

設問2(1)

監視データの分析で、自動釣銭機の故障前に釣銭詰まりが頻発することが分かっています。現在も軽微な障害の情報は通知されていますが、機能変更では、発生回数を基に故障の兆候を捉え、予防保守を促せるようにします。公式解答例では、釣銭詰まりの障害が一定回数以上になった場合、その情報を通知情報に加えると示されています。50字以内の答案例は「釣銭詰まりが一定回数以上発生した場合、予防保守を促す情報を通知情報に加える。」です。発生回数の条件と、予防保守につなげる通知の追加を具体的に書きます。

設問2(2)

硬貨搬送ベルトは一定期間ごとの定期保守で交換されていましたが、このPOSレジは利用頻度が高く、摩耗して破損しました。一方、分析結果では経時保守で交換する部品の故障発生頻度が低いとされています。経時保守は累積動作時間・累積動作回数を基準にするため、利用量に応じた点検につなげられます。公式解答例では「硬貨搬送ベルトの点検に経時保守を追加する。」と示されています。30字以内の答案では、対象部品と追加する保守方法を押さえます。採点講評でも、部品に適した予防保守を考えるため、定期保守と経時保守の違いに着目するよう求めています。

設問3(1)

空欄の直前では、部品の欠品防止によって部品手配時間を短縮し、保守員の適正配置によって駆け付け時間を短縮すると述べています。また、C社が従来見直していた対象も、修理用部品の在庫と保守員の配置でした。今回はU社から利用状況と故障傾向の情報を得て、この二つを定期的に見直すことになります。公式解答例の「修理用部品の在庫及び保守員の配置」は20字以内であり、空欄にそのまま対応します。

設問3(2)

U社はZ社に対して月間99.5%以上のサービス稼働率を約束しているため、C社との部品手配時間・駆け付け時間の目標値も、その約束を支えられる内容にする必要があります。公式解答例では、目標値をZ社のSLAと整合させ、サービスレベルについてC社と合意すると示されています。40字以内の答案例は「Z社のSLAと整合する目標値を設定し、C社とサービスレベルに合意する。」です。採点講評でも、顧客とのSLAを支えるために供給者とサービスレベルを合意することの理解が求められています。単に時間を短くするという説明ではなく、顧客とのSLAとの整合とC社との合意を押さえます。

学習のポイント

SLAに基づく停止時間の数え方、定期保守と経時保守の違い、顧客とのSLAを支える供給者管理を学びます。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成29年度秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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