SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

平成28年度秋期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 インシデント管理に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 M社は,中堅の通信販売会社である。M社では,数年前からインターネット経由で注文を受け付ける販売サービスを開始した。サービス提供時間は24時間365日である。最近では,インターネット経由の注文が増えており,更なる売上拡大のために販売サービスの充実が課題となっている。また,受注した商品を顧客に配送する業務を支援する配送管理サービスがM社の社員向けに提供されている。サービス提供時間は毎日6時から23時までである。 〔システムの概要〕 システム部では,販売サービスを提供する販売システム,及び配送管理サービスを提供する配送管理システムを開発し,運用している。システムの開発は開発チームが担当し,運用は運用チームが担当している。 ① 販売システムは,外部の顧客が利用するM社の重要システムであり,5台のWebサーバで冗長システムを構成している。M社では,Web管理端末からWebサーバにコンテンツを登録している。また,外部の顧客との連絡手段として電子メールを使っていることから,社員間でも利用するメールサーバを販売システムのコンポーネントとして管理している。 ② 販売システム及び配送管理システムは,運用チームが監視システムを利用して常時監視し,インシデントが発生した場合は1次対応を行っている。インシデントはインシデント管理システムで管理している。 ③ 監視システムに表示されるメッセージ(以下,表示メッセージという)は,M社の統一基準に従って分類されている。表示メッセージの種類を表1に示す。 表1 表示メッセージの種類 〔システム部のインシデント管理〕 システム部では,表示メッセージの種類が“警告”又は“異常”の場合,インシデントとして扱い,インシデント管理システムに記録する。また,サービスを早期に回復させるために,既知の誤りのデータベース(以下,KEDBという)を利用している。KEDBには,過去のインシデントの発生原因と,サービスの回復方法又はサービスへの影響を低減する有効な回避策が登録されている。運用チームはインシデントの対応手順の中で,KEDBを参照する。 運用チームが実施するインシデントの対応手順を表2に示す。 表2 インシデントの対応手順 表3 販売サービスの優先度判定ルール 表4 配送管理サービスの優先度判定ルール 表5 優先度に基づく目標復旧時間 発生したインシデントが情報セキュリティインシデントに該当するおそれがある場合,運用チームの担当者は,システム部の情報セキュリティ担当要員に連絡して,指示に従って対応する。情報セキュリティ担当要員は,インシデントが情報セキュリティインシデントに該当するかどうかを判断する。該当する場合は,M社の情報セキュリティ管理プロセスの規程に従って対応を指示し,自ら迅速に対応策を実施して被害を最小限に抑える。 〔販売サービスのインシデント〕 ある日,販売システムの5台のWebサーバのうち,1台のCPU使用率がしきい値を超え,監視システムで“警告”のメッセージが表示された。監視していた運用チームのY氏は,インシデントの対応手順に従って対応した。対応状況は次のとおりである。 ① インシデントをインシデント管理システムに記録した。 ② 表3及び表5を参照し,優先度を“中”と割り当て,目標復旧時間を2時間に設定した。その後,分類したカテゴリの内容で記録の更新を行った。 ③ インシデントの解決を図るために,解決策を立案し実施することにした。そこで,必要な回復処理を行うためにKEDBを参照したところ,特定の条件の下で販売システムのバッチ処理プログラムの負荷が高くなって,CPU使用率が上昇した事例を見つけた。回避策として,バッチ処理プログラムを強制終了させる方法,又はWebサーバの再起動を行う方法が記載されていた。そこで,Webサーバを確認したが,バッチ処理プログラムは稼働していなかった。 ④ CPU使用率のしきい値超過は,販売システムのWebサーバ1台だけで発生しており,他の4台のWebサーバでは発生していない。Y氏は,サービス継続の観点から,利用者への影響は小さいと判断し,インシデントの原因を調査することにした。Y氏は,CPU使用率のしきい値超過が発生しているWebサーバを調査し,CPU使用率が高いプログラムを特定した。 ⑤ CMDBに登録されている販売システムのプログラム一覧を確認したところ,特定したプログラムはCMDBには登録されていなかった。そこで,Y氏は開発チームのZ氏に調査を依頼した。 Z氏は,稼働環境で販売サービスを利用したところ,応答遅延が発生する場合があることを確認した。次に,Z氏は,CMDBを確認し,当該プログラムはCMDBに登録されておらず,M社が開発したプログラムではないことが分かった。更に調査したところ,不正プログラムであることが判明した。Z氏はY氏に調査結果を回答し,強制終了する手順を伝えた。Y氏はZ氏の指示に従って,不正プログラムを強制終了した。その結果,WebサーバのCPU使用率の低下を確認できたことから,Y氏はインシデントが解決したと判断した。 なお,Z氏は,CMDBに登録されていないプログラムが稼働していた場合に強制終了する手順を回避策として整備し,後日KEDBに登録することにした。 〔標的型攻撃メールの検出〕 Z氏は,インシデントの根本原因を特定するために調査し,次の事実が判明した。 ① Web管理端末にも不正プログラムがあった。 ② 不正プログラムは,販売システムの5台のWebサーバのうち,1台のWebサーバだけに存在していた。 ③ メールサーバのログには,不審なファイルが添付されたWeb管理者宛ての電子メールの受信記録があった。また,同じファイルが添付された電子メールが社内の他部署の社員にも送信されている記録があった。 そこで,Z氏は,“外部から送付された標的型攻撃メールに添付されたファイルをWeb管理端末で開封した。その際,不正プログラムが起動され,Web管理端末と,メンテナンス作業のために接続していた該当の1台のWebサーバに不正プログラムがコピーされ,動作するよう設定された。”と推定した。Z氏は,今回のインシデントが情報セキュリティインシデントに該当するおそれがあるとして,情報セキュリティ担当要員のK氏に連絡した。K氏は,情報セキュリティインシデントに該当すると判断し,Z氏に,1台のWebサーバとWeb管理端末をLANから切り離すように指示した。そこで,Z氏はY氏に,該当機器をLANから切り離すよう依頼した。 次に,K氏は,類似の標的型攻撃メールが送付された宛先を,[a]から調査し,標的型攻撃メールが届いた全ての社員に対して,次の内容を直ちに指示した。 ・社員が添付ファイルを開封していた場合,開封操作を行った機器をLANから切り離す。その後,指示に従って不正プログラムの確認をすること。 ・社員が添付ファイルを開封していない場合,[b]をすること。 そして,K氏は,社内に今回の標的型攻撃メールに対する注意喚起を行った。 〔標的型攻撃メールの対策〕 システム部の部長は,K氏から,“今回の標的型攻撃メールには,情報窃取を目的として,マルウェアを仕掛けたファイルが添付されていた。幸い外部への情報漏えいは確認されなかった。また,社内への注意喚起も完了した。”という報告を受けた。システム部では,標的型攻撃メールへの対策として,マルウェアが仕掛けられた標的型攻撃メールを検出した場合,電子メールから添付ファイルを削除したり,不正な通信を検出したりすることができるシステム(以下,防御システムという)を検討し,導入することにした。システム部は,防御システムを販売システムのコンポーネントとして管理する。また,システム部は,標的型攻撃メールを検出した場合の対応として,次のとおり決定した。 ① 検出された電子メールの添付ファイルは,調査用に防御システムのストレージに保存される。情報セキュリティ担当要員は,保存されたファイルの内容を定期的に調査し,対策が必要と判断した場合は,適切な対策を立案し実施する。 ② 防御システムで,特定の基準以上の危険性がある不正な通信を検出した場合は監視システムに通知する。(ア)通知された監視システムでは,“警告”のメッセージを表示する。 ③ 運用チームは,インシデントを記録し,管理する。 〔配送管理サービスの変更〕 M社では,顧客へのサービス充実を目的に,インターネット経由の注文について,配送時間を短縮することを決定した。そのためには,M社の物流拠点間で深夜に商品を配送する必要がある。営業部とシステム部は,配送管理サービスのサービス要求事項について,次のとおり合意した。 ① 物流拠点からいつでも配送管理サービスを利用できるように,配送管理システムを24時間稼働に変更する。 ② システム障害による配送業務の停止は,サービスの低下につながるので,システム停止を伴うインシデントが発生した場合には,インシデントの対応手順に従って,30分以内に回復させる。 システム部では,サービス要求事項を基に,サービス変更の活動を開始した。 設問1 〔販売サービスのインシデント〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) Y氏が実施したインシデント対応の問題点を二つ挙げ,それぞれ30字以内で述べよ。ただし,情報セキュリティに関する内容は除くこと。 (2) Z氏が,KEDBに回避策を登録した目的を,40字以内で述べよ。 設問2 〔標的型攻撃メールの検出〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) 本文中の[a]に入れる適切な字句を15字以内で答えよ。 (2) 本文中の[b]で指示すべき事項を,20字以内で答えよ。 設問3 〔標的型攻撃メールの対策〕について,本文中の下線(ア)で,監視システムに“警告”のメッセージを表示させる理由を,40字以内で述べよ。 設問4 〔配送管理サービスの変更〕について,サービス要求を満たすためにインシデントの対応手順を変更する必要がある。変更内容を40字以内で述べよ。
表1 表示メッセージの種類。表示メッセージを通知・警告・異常に分類し,それぞれの内容とインシデントとしての扱いを示す。通知は扱わず,警告と異常は扱う。各種類の事象例を表の下に示す。
表1 表示メッセージの種類。表示メッセージを通知・警告・異常に分類し,それぞれの内容とインシデントとしての扱いを示す。通知は扱わず,警告と異常は扱う。各種類の事象例を表の下に示す。
表2 インシデントの対応手順。記録,優先度の割当て,分類,記録の更新,段階的取扱い,解決,終了の手順と概要を示す。開発チームへの連絡,KEDBの参照,回復確認を含み,優先度と目標復旧時間の注記を付す。
表2 インシデントの対応手順。記録,優先度の割当て,分類,記録の更新,段階的取扱い,解決,終了の手順と概要を示す。開発チームへの連絡,KEDBの参照,回復確認を含み,優先度と目標復旧時間の注記を付す。
表3 販売サービスの優先度判定ルール。販売サービスの優先度判定ルールを項番,表示メッセージの種類,優先度の3列で示す。項番1の異常には高,項番2の警告には中の優先度を割り当てる。
表3 販売サービスの優先度判定ルール。販売サービスの優先度判定ルールを項番,表示メッセージの種類,優先度の3列で示す。項番1の異常には高,項番2の警告には中の優先度を割り当てる。
表4 配送管理サービスの優先度判定ルール。配送管理サービスの優先度判定ルールを項番,表示メッセージの種類,優先度の3列で示す。項番1の異常には中,項番2の警告には低の優先度を割り当てる。
表4 配送管理サービスの優先度判定ルール。配送管理サービスの優先度判定ルールを項番,表示メッセージの種類,優先度の3列で示す。項番1の異常には中,項番2の警告には低の優先度を割り当てる。
表5 優先度に基づく目標復旧時間。優先度に基づく目標復旧時間を項番,優先度,目標復旧時間の3列で示す。優先度が高の場合は30分,中の場合は2時間,低の場合は12時間とする。
表5 優先度に基づく目標復旧時間。優先度に基づく目標復旧時間を項番,優先度,目標復旧時間の3列で示す。優先度が高の場合は30分,中の場合は2時間,低の場合は12時間とする。
解き方のヒントを見る

判断の根拠と前提を確かめる

対応を検討するときは、判断の根拠と自分が補った前提を区別しましょう。日常の経験や印象をそのまま当てはめず、与えられた条件のどこが判断を支えているかに注目すると、考えを整理しやすくなります。

この問題で問われていること

この分野では、知っている用語から先に結論を決めず、その判断を支える条件が示されているかを確かめることが大切です。考えを進める際は、明示された内容と、そうだろうと想像した内容を分けて捉えましょう。

視点

考えに自信があっても、経験から補った前提が混ざっていることがあります。判断を支える箇所を確かめ、明示された条件だけでどこまで考えられるかを意識しましょう。

確認ポイント

  • 判断の根拠を、与えられた条件に結び付けているか
  • 経験や印象から補った前提が混ざっていないか
  • 明示された内容と自分の推測を区別できているか
正解と解説を見る

解説

本問は、インシデント対応手順と実際の行動を比較し、緊急連絡と早期回復の不足を指摘する問題です。併せて、KEDBの活用目的、標的型攻撃メールへの初動対応、サービス要求の変更に伴う優先度判定ルールの見直しを確認します。

問題の全体像

M社は、24時間365日の販売サービスと、毎日6時から23時までの配送管理サービスを提供しています。販売システムのCPU使用率上昇を調べる過程で標的型攻撃メールによる不正プログラムが判明し、その対応と防御システムの導入が進められます。また、配送管理サービスには24時間稼働と30分以内の回復が新たに求められます。出題趣旨では、合意したサービス目標と時間枠内で回復するための一貫したインシデント管理を重視しています。対応手順の遵守、早期回復、セキュリティ対応への引継ぎ、要求変更に応じた手順の見直しが問われています。

設問1(1)(①)

表2の「段階的取扱い」には、優先度が「高」又は「中」の場合、開発チームへ直ちに緊急連絡することが定められています。Y氏は販売サービスの「警告」に優先度「中」を割り当てましたが、緊急連絡を行わず、KEDBの参照と原因調査へ進みました。後でZ氏に調査を依頼したことでは、直ちに連絡するという要件を満たしません。公式解答例では、この緊急連絡の欠落を問題点としています。30字以内では「優先度に従って開発チームに緊急連絡を行っていない。」と、連絡先と優先度に応じた行動の不足を示します。

設問1(1)(②)

表2の「解決」では、サービスを早期に回復させるために回復を試み、KEDBから回避策を探して必要な処理を行うことが求められています。一方、Y氏は他の4台で警告が発生していないことから利用者への影響は小さいと判断し、原因の調査を続けました。Z氏の確認では実際に応答遅延が発生しており、早期回復を優先すべき状況でした。公式解答例では、原因調査を回復より優先したことを問題点としています。30字以内では「サービスの早期回復を優先せずに原因の調査を続けた。」とまとめます。採点講評でも、段階的取扱いと解決に関する問題点の指摘を求めています。

設問1(2)

本文では、KEDBに過去のインシデントの発生原因、回復方法、有効な回避策を登録し、サービスの早期回復に利用すると説明されています。Z氏が強制終了の手順を登録する目的も、同類のインシデントが再発した際に、その手順を参照して迅速に回復できるようにすることです。公式解答例では、再発時の早期回復を目的としています。40字以内では「同類のインシデントが再発した場合に、サービスを早期に回復させるため」と示せます。回避策の登録を、根本原因の除去や再発防止そのものと混同しないことが重要です。

設問2(1)

〔標的型攻撃メールの検出〕の③には、メールサーバのログから、Web管理者宛ての受信記録と、同じ添付ファイルを含むメールが他部署の社員にも送信されている記録を確認したとあります。K氏が類似メールの送付先を調べる際も、この記録を利用できます。公式解答例では「メールサーバのログ」としています。15字以内の答案には、この調査元をそのまま示します。感染した機器の一覧ではなく、メールが届いた社員を特定するための記録に着目する設問です。

設問2(2)

添付ファイルを開封した社員には、開封した機器をLANから切り離し、不正プログラムを確認するよう指示しています。空欄bは、添付ファイルをまだ開封していない社員への指示です。この場合は、そのメールを今後開封して感染することを防ぐため、メールを削除させます。公式解答例では「標的型攻撃メールの削除」としています。20字以内ではこの表現を用いれば、本文の「をすること」にもつながります。開封済みの場合の機器隔離と、未開封の場合のメール削除を区別して読み取ります。

設問3

表1では「警告」は調査が必要な事象であり、インシデントとして扱います。今回の通知は、一定以上の危険性がある不正な通信の検出なので、情報セキュリティインシデントのおそれがあります。本文の規定に従い、情報セキュリティ担当要員へ連絡し、迅速な対応につなげる必要があります。公式解答例では、この連絡と早期対応の必要性を理由としています。40字以内では「情報セキュリティ担当要員に連絡して、早期に対応する必要があるから」と示します。採点講評では、単に「記録を残すため」とする解答を誤りとして挙げ、影響範囲の確認や被害拡大防止につながる対応の理解を求めています。

設問4

変更後の要求は、システム停止を伴うインシデントを30分以内に回復させることです。ところが、表4では配送管理サービスの「異常」の優先度は「中」であり、表5の目標復旧時間は2時間です。表5で30分の目標復旧時間に対応する優先度は「高」なので、配送管理サービスの優先度判定ルールを変更する必要があります。公式解答例では、「異常」の優先度を「高」に変更するとしています。40字以内では「配送管理サービスの優先度判定ルールで『異常』を『高』に変更する。」と示せます。採点講評でも、サービス変更に応じて優先度に基づく解決目標時間を見直す方法と必要性を重視しています。

学習のポイント

早期回復と根本原因調査の目的を区別し、優先度、緊急連絡、目標復旧時間を一連の対応として読み取ることが重点です。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成28年度秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

関連する過去問一覧

IPA Advancedは非公式の学習サイトです。解説にはAIによる補助生成を含む場合があります。公式の問題冊子・解答例・採点講評を優先し、誤りは確認後に訂正します。運営・編集方針