SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

平成28年度秋期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 キャパシティ管理に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。 F社は,通信事業者である。F社の情報システム部門では,F社の顧客が利用するインターネット受付サービス,代理店が利用する代理店サービス,及び社員が利用する顧客管理サービスを運用している。これらのサービスはF社の営業部門が統括している。 〔サービスの概要〕 インターネット受付サービス及び代理店サービスは,オンライン処理形態で提供されている。インターネット受付サービスはインターネット受付システムで,代理店サービスは代理店システムで処理されている。インターネット受付サービスのサービス提供時間帯は24時間365日で,代理店サービスは平日の8~21時である。 顧客管理サービスは,契約管理,課金管理,問合せ管理,請求・入金,受注分析の五つのサービスで構成され,顧客管理システムで処理されている。 ・契約管理サービス,課金管理サービス及び問合せ管理サービスは,オンラインでサービスを行っている。サービス提供時間帯は,平日の8~21時である。 ・請求・入金サービスは毎週1回提供されるサービスである。毎週日曜日の22時に起動する顧客管理システムのバッチ処理として運用されている。 ・受注分析サービスは毎日1回提供されるサービスである。請求・入金サービスのバッチ処理との競合を避けるために9時以降に処理を開始する必要があり,毎日9時に起動する顧客管理システムのバッチ処理として運用されている。 各サービスのSLA項目(抜粋)を,表1に示す。 表1 各サービスのSLA項目(抜粋) F社のシステム構成を図1に示す。 図1 F社のシステム構成 なお,受注分析サービスは,F社でサービス提供を開始した当初は,1時間で処理を完了していたが,処理対象データの増加に伴って処理時間が長くなり,現在では処理完了までに1時間30分掛かっている。 〔キャパシティ計画の策定〕 情報システム部門のL氏は,ITサービスマネージャとしてキャパシティ管理を担当している。L氏は,F社の規程に従ってキャパシティ計画を次のとおり策定した。 ・営業部門から入手した,現在及び将来のサービスに対する需要とサービス利用者の見通しから,データ処理量の増加を見積もる。 ・営業部門と合意したオンライン応答時間などの要求事項,データ処理量を基に,ハードウェア,ソフトウェアなどのコンポーネントのキャパシティ及び構成を計画する。 ・コンポーネントのキャパシティを増強するための方式及び構成を計画する。 なお,F社の規程では,サービス開始後は,実際のオンライン応答時間,キャパシティのニーズなどに基づいて,“毎年,キャパシティ計画を変更する”としている。 〔サービス運用段階のキャパシティ管理〕 L氏は,サービス運用段階のキャパシティ管理として次の活動を実施している。 (1)キャパシティ監視 ① サービスがオンライン処理形態の場合は,サーバのCPU使用率,サーバの処理件数及びオンライン応答時間を監視項目とする。これらの監視項目は,監視システムによって1分間隔で測定し,監視データとして収集される。一方,サービスがバッチ処理形態の場合は,サーバのCPU使用率及びバッチ処理完了時刻を監視項目とする。 なお,LAN及び社内ネットワークには十分なキャパシティがあり,サービス提供に支障がないので,監視項目を設定していない。 ② オンライン応答時間の測定値が,あらかじめ決められたしきい値を超えた場合は,監視システムがインシデントとして検知する。しきい値には,各サービスのSLA項目の目標値を設定しており,キャパシティに関わるインシデントが発生した場合は,直ちに監視システムからL氏に通知される。 (2)分析及び対策 ① 監視システムによって収集した監視データについて,各サービスのSLA項目の目標値の達成に影響を与える可能性がないか,キャパシティ計画どおりにコンポーネントのキャパシティが使われているかなどの視点で分析する。 ② キャパシティ不足が懸念される場合には,キャパシティの増強計画を作成する。キャパシティの増強は,サービス提供時間以外の計画停止時間帯に実施する。 〔顧客管理サービスのインシデントとその対策〕 ある月曜日の10時に,顧客管理サービスにおいてオンライン応答時間がしきい値を超えるというインシデントが発生し,監視システムからL氏に通知があった。その後,11時までの間に同一インシデントが数回発生した。また,営業部門からサービスデスクに,“サービスの応答が遅くなっている”とのクレームが寄せられた。L氏が監視データを調査したところ,10~11時の時間帯で顧客管理サーバのCPU使用率が90~100%で推移していたことが判明した。その調査結果を表2に示す。 表2 顧客管理サーバのCPU使用率の調査結果 顧客管理サーバの利用状況を調査したところ,1日のオンライン処理件数のうち約2割が10~11時のピーク時間帯に集中していた。L氏は,根本対策として,顧客管理サーバのキャパシティの増強が必要と判断した。しかし,増強には時間が掛かるので,暫定対策を策定し,営業部門と協議することにした。 〔代理店サービスのオンライン応答時間の悪化〕 ある日の22時に,負荷分散サーバ1の機器障害が発生した。機器障害の発生時刻はサービス提供時間帯ではなかったので,サービス利用者に影響しなかったが,翌日のサービス提供開始までには回復する必要があった。情報システム部門でサーバ運用を担当しているT氏は,負荷分散サーバ1の交換作業が必要と判断し,次の手順で対応した。 ・変更管理プロセスに従って,緊急変更の作業計画を策定し,実施の許可を得た。 ・翌日の6時から,負荷分散サーバのメーカ作業員とともに変更作業を実施した。 ・変更作業の最後の作業項目として,代理店システムの機能の確認作業を行った。 この作業で代理店サービスが利用できることを確認して,8時までに作業を終了した。 代理店サービスは,予定どおり8時に開始されたが,9~10時のピーク時間帯に代理店からサービスデスクに“サービスの応答が遅くなっている”というクレームが多数寄せられた。サービスデスクから調査を依頼されたL氏は,今回の緊急変更作業が影響したと判断し,T氏に調査を依頼した。 しばらくして,T氏から,“緊急変更作業で,負荷分散機能を実行するソフトウェアの負荷分散先サーバの登録を誤り,代理店サーバ1に処理が集中してボトルネックとなってしまった。直ちに,設定を修正する。”という回答があった。 〔キャパシティ計画の変更〕 インターネット受付サービスは,サービスを開始してから1年が経過し,F社では,キャパシティ計画を変更することになった。そこで,L氏はインターネット受付サービスの現状を次のとおり整理した。 ・オンライン応答時間は,SLA項目の目標値は達成しているが,サービス開始時に比べて悪化している。 ・インターネット受付システムはWeb型のシステムであって,主にサーバの処理能力がパフォーマンスに影響を与える。 ・オンライン応答時間のSLA項目の目標値を達成するために,将来の需要の予測が必要である。 そこで,L氏は,まず,(ア)サービスの需要と達成されているパフォーマンスの状況を調査することにした。 設問1 〔顧客管理サービスのインシデントとその対策〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1)キャパシティ監視でインシデントと認識するためのしきい値には問題があり,変更が必要である。しきい値の変更内容を,SLAとの関連性を含めて40字以内で述べよ。 (2)サービスの応答が遅くなっていることへの対策として,営業部門と協議して実施する暫定対策を35字以内で述べよ。 (3)(2)の暫定対策が有効であると考えた理由を,40字以内で述べよ。 設問2 〔代理店サービスのオンライン応答時間の悪化〕について,L氏は,緊急変更作業の終了後に,サービス提供開始から数分間の監視データを分析しておくべきであった。キャパシティ管理担当として,監視データを分析し,確認すべきであった内容を60字以内で述べよ。 設問3 〔キャパシティ計画の変更〕について,(1),(2)に答えよ。 (1)本文中の下線(ア)として実施すべき内容を,30字以内で述べよ。 (2)キャパシティ計画を変更するに当たって監視データ以外にL氏が入手すべき情報を,入手先を含めて40字以内で述べよ。
表1 各サービスのSLA項目(抜粋)。各サービスのSLA項目と目標値を一覧化した表。オンライン応答時間やバッチ処理完了時刻を示す。
表1 各サービスのSLA項目(抜粋)。各サービスのSLA項目と目標値を一覧化した表。オンライン応答時間やバッチ処理完了時刻を示す。
図1 F社のシステム構成。顧客管理、代理店、インターネット受付、監視の各システムとサーバ、ネットワーク、利用者の接続構成を示す図。
図1 F社のシステム構成。顧客管理、代理店、インターネット受付、監視の各システムとサーバ、ネットワーク、利用者の接続構成を示す図。
表2 顧客管理サーバのCPU使用率の調査結果。顧客管理サービスごとのCPU使用率を9~10時、10~11時、11~12時、12~13時別に示した表。
表2 顧客管理サーバのCPU使用率の調査結果。顧客管理サービスごとのCPU使用率を9~10時、10~11時、11~12時、12~13時別に示した表。
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検討の前提と対象範囲をそろえる

ITサービスについて検討するときは、判断の前提がそろっているかに注目しましょう。提示された情報がどの対象や状況について述べているかを確かめ、異なる前提を混ぜずに考えることが手掛かりになります。

この問題で問われていること

判断の対象と、その判断が成り立つ前提との対応に注目してください。用語の印象だけで結び付けず、与えられた条件を踏まえたときに、同じ対象について考え続けているかを自分の言葉で整理してみましょう。

視点

検討する対象と条件をひとまとまりとして捉えましょう。途中で対象や条件を置き換えていないかを確かめると、自分の考えのつながりを点検できます。

確認ポイント

  • 判断の対象を一定に保っているか
  • 与えられた条件を途中で変えていないか
  • 整理した内容に前提のずれがないか
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解説

本問の要点は、SLA違反前に対策できる監視、バッチ処理の時間変更によるCPU負荷の分散、変更後の負荷分散の確認、実績と将来需要に基づくキャパシティ計画の見直しです。

問題の全体像

F社は、インターネット受付、代理店、顧客管理の各サービスを運用している。顧客管理ではオンライン処理と受注分析のバッチ処理が同じサーバを使用し、ピーク時間帯にCPU負荷が高まって応答が遅くなった。代理店サービスでは、負荷分散サーバの交換時の設定誤りにより、一方の業務サーバへ処理が集中した。また、インターネット受付サービスでは、応答時間の悪化を踏まえて年間のキャパシティ計画を見直す。公式の出題趣旨では、利用量の変動によるキャパシティ不足を防止してSLAの目標値を達成する活動と、将来需要に対応して計画を変更する能力を問うとしている。各設問では、サービスの目標と具体的な監視データ、運用上の制約を結び付けて判断する。

設問1(1)

着目するのは、オンライン応答時間のしきい値に「各サービスのSLA項目の目標値」を設定している点です。顧客管理のオンライン処理の目標値は5秒以内なので、現在の設定では5秒を超えてから通知され、SLA違反前に対策を取る余地がない。公式解答例では、SLA違反となる前に対策できるよう、しきい値を目標値より下に設定するとしている。採点講評でも、応答時間の悪化を検知する監視項目を取り違えず、SLAの目標値をそのまましきい値にする問題を指摘することが求められている。40字以内では、「SLA違反前に対策できるよう、応答時間のしきい値を目標値より低くする。」という粒度で、目的と変更内容をまとめる。

設問1(2)

受注分析のバッチ処理は毎日9時に開始し、現在は1時間30分掛かるため、オンライン処理が集中する10~11時の一部と重なる。表2では、この時間帯のオンライン3サービスのCPU使用率は合計50%、受注分析は45%で、全体が95%になっている。一方、受注分析には「9時以降に開始」と「毎日13時までに完了」という条件がある。公式解答例では、バッチ処理開始時刻を11時に変更するとしている。現在の処理時間なら12時30分に完了し、開始条件と完了期限を満たしながらオンライン処理のピークを避けられる。35字以内では、「受注分析サービスのバッチ処理開始時刻を11時に変更する。」と、対象と変更後の時刻を具体的に書く。

設問1(3)

問われているのは、開始時刻の変更が有効な理由です。本文では、1日のオンライン処理件数の約2割が10~11時に集中し、この時間帯の顧客管理サーバのCPU使用率が90~100%で推移している。受注分析を11時開始にすれば、ピーク時間帯でオンライン処理とバッチ処理が同じCPUを取り合う状態を避けられる。表2でも、11~12時のオンライン処理のCPU使用率は合計15%、12~13時は5%と、ピーク後には負荷が低下している。公式解答例では、オンライン処理のピーク時間帯のCPU負荷を分散できるからとしている。40字以内では、「オンライン処理のピーク時間帯のCPU負荷を分散できるから。」と、対策の効果を示します。採点講評では、現状のキャパシティ制約の中で応答性能を維持する方法を見いだす点が評価されている。

設問2

図1の注記では、同じ処理能力を持つ代理店サーバ1と2へ、負荷が均等になるように処理要求を振り分ける構成が示されている。交換作業ではサービスを利用できることを確認したが、それだけでは両サーバへの振り分けが正常かは確認できない。実際には登録誤りによってサーバ1に処理が集中した。公式解答例では、それぞれのサーバのCPU使用率から、代理店サーバ1と2が有効に稼働していることを確認するとしている。サービス開始直後のCPU使用率を比較すれば、一方に負荷が偏り、もう一方が十分に使われていない状態を見つける手掛かりになる。採点講評でも、要求を正しく振り分けて処理していることを確認する具体的な内容が必要とされている。60字以内では、「両代理店サーバのCPU使用率から、処理が分散され両方が有効に稼働していることを確認する。」と、監視項目と確認対象を結び付ける。

設問3(1)

下線(ア)は、サービスの「需要」と「達成されているパフォーマンス」の状況を調査するという内容です。本文のオンライン処理の監視項目には、CPU使用率、サーバの処理件数、オンライン応答時間がある。このうち、実際に処理した件数はサービスの利用量を、オンライン応答時間は提供できている性能を把握する指標になる。公式解答例では、サーバの処理件数とオンライン応答時間の推移を調べるとしている。推移を見ることで、処理件数の変化と応答時間の悪化の関係を把握できる。採点講評でも、負荷状況と性能を確認できる具体的な監視項目を答えることが求められている。30字以内では、「サーバの処理件数とオンライン応答時間の推移を調べる。」と、二つの指標と調査内容を示します。

設問3(2)

着目するのは、当初のキャパシティ計画で、営業部門から現在及び将来のサービス需要とサービス利用者の見通しを入手し、データ処理量の増加を見積もっていた点です。監視データから分かるのは実績であり、今後のサービス需要や利用者数の見通しは、それだけでは把握できない。サービスを統括する営業部門から将来の情報を入手し、実績の分析と合わせて処理能力の計画に反映する必要がある。公式解答例では、将来のサービスに対する需要とサービス利用者の見通しを営業部門から入手するとしている。40字以内では、「営業部門から将来のサービス需要とサービス利用者の見通しを入手する。」と、入手先と二つの情報を漏れなく書く。

学習のポイント

SLA、処理時間、CPU使用率を結び付け、対策とその理由を区別して説明する力を身に付ける。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成28年度秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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