SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

平成27年度秋期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 リリース及び展開管理に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。 E社は、中堅の化学薬品製造会社である。E社では、自社工場で製造した薬品を、取引先の小売店に販売している。生産部が生産管理業務を行い、営業部が販売管理業務を行っている。情報システム部は自社データセンタで生産管理システムと販売管理システムを運用している。 〔システムの概要〕 生産管理システムは、生産部が自社工場の端末を用いて操作する。生産管理システムの稼働時間帯は6時から翌日の4時までとなっている。 販売管理システムは、営業部と小売店が利用する。小売店へは販売サービスとしてインターネット経由で提供されており、情報システム部は、販売サービスのSLAを営業部と合意している。SLAではサービスレベル項目と目標値を表1のように設定している。 表1 販売サービスのサービスレベル項目と目標値 また、情報システム部は、販売サービスの利用に関する小売店からの問合せに対応するために、毎日9時から18時までサービスデスクを開設している。 システムの概要を表2に、システム構成の概要を図1に示す。 表2 システムの概要 図1 システム構成の概要 〔システム移行の概要〕 E社では、構成機器の老朽化に伴い、生産管理システムと販売管理システムを再構築することになった。 システムの移行計画は、情報システム部のITサービスマネージャのK氏が作成する。データセンタ内にそれぞれ新サーバを構築して、両システムを別々に移行させる。また、営業部からの要求を受けて、情報システム部の開発チームが販売管理システムの機能改善を行うことになった。このとき、移行後の稼働環境に使用する新サーバを機能改善の開発環境として利用する。 K氏は、社内だけで利用している生産管理システムを最初に移行し、その後、小売店が利用している販売管理システムを移行することにした。生産管理システムの移行は前月に完了し、現在は正常に稼働している。 〔販売管理システムの移行計画〕 K氏は、販売管理システムの移行計画を検討し、移行日は、業務の繁忙時期を避けて設定した。また、移行作業時間として3時間必要なので、移行日の1時から4時まで販売管理システムを停止する移行計画案を策定した。K氏は営業部に移行計画案を提示し、了承を得た。 販売管理システムの機能改善は、開発チームによって予定どおり完了した。そこで、K氏は、移行作業の内容と移行作業時間について検討し、詳細計画を作成した。移行作業では、販売管理システムの停止中に、移行対象情報をバックアップする必要がある。また、移行作業中に、生産管理システムと情報の連携を行うバッチ処理が必要である。これらの点を考慮し、表3に示す移行日の作業スケジュール案を作成した。 表3 販売管理システム移行日の作業スケジュール案 システムの移行は情報システム部が展開チームを編成して実施する。展開チームには、機能改善を行った開発チームの要員も参加する。移行後は展開チームが初期サポート活動を行う。初期サポート活動ではサービスのパフォーマンスデータを収集し、サービスの正常性を検証する。また、初期サポート活動期間中、展開チームはサービスの正常化に役立つよう改善を実施して問題を解決する。 既に移行を完了した生産管理システムでは、移行後初日から5日間は、1日当たりに発生するインシデント数が移行前の1日当たりに発生するインシデント数の平均値よりも多く、6日目以降は移行前のインシデント数と同程度となった。そこで、K氏は、生産管理システムの状況を参考にして、販売管理システムの初期サポート活動期間を移行後5日間とした。 なお、展開チームは、移行後に想定されるよくある問合せとその回答をFAQとして事前に作成し、サービスデスクに引き継ぐ。 〔初期サポート活動の確認項目〕 K氏は、初期サポート活動の確認項目について検討した。その結果、初期サポート活動期間中の販売管理システムの正常性に関する確認項目を、次のように設定した。 ① 販売管理システムが正常に稼働し、異常を示すエラーメッセージなどが出力されていない。 ② インターネットからの注文は、SLAのサービス性能の目標値である1分間に30件の注文を処理できている。 ③ 【イ】 〔販売管理システムの移行計画の承認〕 K氏が、情報システム部長に移行計画を提示したところ、「表3のスケジュール案には、計画どおりに作業が進まなかった場合に問題点がある。改善策を検討するように。」という指示があった。K氏は改善策を移行計画に反映させ、情報システム部長に移行の準備が整ったことを報告した。情報システム部長は問題点の改善を確認し、移行計画を承認した。 〔販売管理システムの移行〕 移行日を迎え、展開チームは移行計画に基づいて販売管理システムの移行を実施した。移行結果は「可」と判定され、予定どおり新販売管理システムでオンライン処理が開始された。 移行後5日間は、販売管理システムの利用方法・機能に関するインシデントが発生した。プログラムの修正が必要な問題など、期間を掛けて問題の対策を行う必要があるインシデントも発生したが、展開チームは、暫定的な回避策を作成してインシデントに対応した。利用者からの問合せに対しては、サービスデスクから依頼を受けて展開チームが回答した。 展開チームは、移行計画に従って、移行後5日間で初期サポート活動を終了する予定であった。しかし、1日当たりに発生するインシデント数が移行前の1日当たりに発生するインシデント数の平均値よりも多い状態が続いていること、及び事前に引き継いだFAQだけではサービスデスクで対応できない問合せが度々発生している状況であることから、サービスデスクは、初期サポート活動を継続してもらいたいとK氏に依頼してきた。 設問1 〔販売管理システムの移行計画〕の表3中の【ア】は、移行作業開始までに行っておくべき作業である。その作業内容を40字以内で述べよ。 設問2 〔初期サポート活動の確認項目〕の確認項目③の【イ】は、他システムとの連携に関する確認項目である。その確認内容を40字以内で述べよ。 設問3 〔販売管理システムの移行計画の承認〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1) 情報システム部長が指摘した問題点を、理由とともに40字以内で述べよ。 (2) (1)の問題点の改善策を30字以内で述べよ。 設問4 〔販売管理システムの移行〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1) 初期サポート活動について問題点がある。移行計画の検討における改善策を、40字以内で述べよ。 (2) サービスデスクがサービス利用者からの問合せに対応できるように、初期サポート活動の中で実施すべき内容を、40字以内で述べよ。
表1 販売サービスのサービスレベル項目と目標値。販売サービスについて、可用性と性能のサービスレベル項目および目標値を示す表。
表1 販売サービスのサービスレベル項目と目標値。販売サービスについて、可用性と性能のサービスレベル項目および目標値を示す表。
表2 システムの概要。生産管理システムと販売管理システムの処理概要を、名称別に整理した表。
表2 システムの概要。生産管理システムと販売管理システムの処理概要を、名称別に整理した表。
図1 システム構成の概要。小売店、インターネット、データセンタ内の販売管理・生産管理システム、社内ネットワークの接続構成を示す図。
図1 システム構成の概要。小売店、インターネット、データセンタ内の販売管理・生産管理システム、社内ネットワークの接続構成を示す図。
表3 販売管理システム移行日の作業スケジュール案。販売管理システムの停止、バックアップ、データ復元、連携処理、確認試験、可否判定の時刻と所要時間を示す表。
表3 販売管理システム移行日の作業スケジュール案。販売管理システムの停止、バックアップ、データ復元、連携処理、確認試験、可否判定の時刻と所要時間を示す表。
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判断の前提条件をそろえて考える

この分野を学ぶときは、判断の前提条件がそろっているかという一つの観点に絞って考えましょう。目立つ用語から結論を急がず、与えられた情報のどこまでが判断の根拠になるかを丁寧に確かめます。

この問題で問われていること

検討の焦点は、ある判断を支える前提が、与えられた条件と合っているかどうかです。自分の経験や一般的な印象で条件を補っていないかを振り返り、明示された情報と自分が置いた仮定を区別して考えましょう。

視点

判断を検討するときは、その判断がどのような前提に基づいているかを意識します。明示された条件と、自分が補った仮定を区別すると、根拠の範囲を整理しやすくなります。

確認ポイント

  • 判断の前提は、与えられた情報のどこに示されているか。
  • 明示されていない条件を、自分で補っていないか。
  • 判断の根拠として使う情報と、置いた仮定を区別できているか。
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解説

販売管理システムの移行における、オンライン処理終了後・バックアップ前の注文情報送信、移行後の連携確認、切り戻しに備えた現システムへの生産実績情報の反映が要点です。初期サポート活動では、インシデントの発生状況に基づく終了判断と、回避策のFAQへの反映が求められます。

問題の全体像

E社は、相互に情報を連携する生産管理システムと販売管理システムを順次移行します。販売管理システムは小売店も利用し、移行日の停止時間は1時から4時までと合意されています。出題趣旨では、利用者への影響を最小限に抑える措置と、展開の判断基準及び初期サポート活動の終了基準の確認を重視しています。通常のバッチ処理が移行中にどう扱われるか、移行に失敗しても予定時刻にサービスを再開できるか、移行後の支援をどの状態で終了するかを読み取る問題です。

設問1

表2では、販売管理システムが毎日2時に、直前6時間に作成された注文情報を生産管理サーバへ送信します。一方、表3では1時にオンライン処理を終了し、バッチ処理の自動起動も停止するため、通常の2時の送信は自動実行されません。そこで、1時10分のアでは、前日20時以降に作成された未送信の注文情報を送信します。これはオンライン処理終了後、1時20分のバックアップ前に行う作業です。公式解答例では、注文情報の送信、又は通常2時に開始するバッチ処理の実施を挙げています。40字以内の答案例は「前日20時以降の注文情報を生産管理システムに送信する。」です。

設問2

表2には、生産実績情報を生産管理サーバから販売管理サーバへ送る連携と、注文情報を販売管理サーバから生産管理サーバへ送る連携があります。表3では移行中に生産実績情報を新販売管理システムへ反映しますが、移行後には注文情報の送信も正常に行えることを確認する必要があります。確認項目①の正常稼働や②の注文処理性能だけでは、他システムへの送信成功までは確認できません。公式解答例では、注文情報を販売管理サーバから生産管理サーバへ正常に送信できていることを示しています。40字以内の答案例は「注文情報を販売管理サーバから生産管理サーバへ正常に送信できている。」です。

設問3(1)

表3の3時の作業では、生産実績情報を新販売管理システムだけに反映し、現販売管理システムには反映していません。3時50分からの判定で移行結果が不可となった場合、現システムへ切り戻しても、そのままでは在庫情報が更新されていないため、生産実績情報の反映が必要になります。3時55分からの再開作業には5分しかなく、この追加作業によって合意した4時のサービス再開に間に合わなくなることが問題です。公式解答例では、切り戻し時のサービス開始の遅れ、又はSLAを満たせなくなることを挙げています。40字以内の答案例は「切り戻し時に生産実績情報の反映が必要となり、サービス開始が遅れる。」です。

設問3(2)

設問3(1)の原因は、切り戻し先の現販売管理システムに最新の生産実績情報が反映されていないことです。移行結果の判定前に現システムにも反映しておけば、不可と判定された後に追加の反映作業を行わずに済みます。公式解答例では、現販売管理システムにも生産実績情報を反映させておくことを示しています。30字以内の答案例は「現販売管理システムにも生産実績情報を反映しておく。」です。採点講評では、安易に移行作業時間を延長する答案が多かったと述べ、限られた時間内で利用者への影響を抑える対策を検討するよう求めています。

設問4(1)

K氏は、生産管理システムが移行後6日目から落ち着いた実績を参考に、販売管理システムの初期サポート活動を5日間としました。しかし、販売管理システムでは5日経過してもインシデント数が移行前の平均より多い状態が続いています。このため、日数だけで終了する計画では、安定稼働に達したことを確認できません。公式解答例では、インシデントの発生状況を加味して終了時期を判断することを示しています。40字以内の答案例は「インシデントの発生状況を加味して初期サポート活動の終了時期を判断する。」です。採点講評でも、システムの特性に応じ、安定稼働に達したと判断する終了基準を検討することを重視しています。

設問4(2)

事前に引き継いだFAQだけでは対応できない問合せが度々発生し、サービスデスクは展開チームに回答を依頼しています。また、展開チームは初期サポート活動中に暫定的な回避策を作成しています。その対応内容をFAQへ反映すれば、サービスデスクが問合せに対応するための知識を引き継げます。公式解答例では、初期サポート活動で実施した回避策をFAQに反映し、整備することを示しています。40字以内の答案例は「初期サポート活動で実施した回避策をFAQに反映し整備する。」です。採点講評でも、展開チームの対応内容をFAQへ反映する必要性に言及しています。

学習のポイント

通常運用と移行時の処理順序を照合し、切り戻し時の情報整合性、サービス再開期限、初期サポートの終了基準を具体的に検討する力を養います。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成27年度秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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