SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

平成27年度秋期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 サービスデスクに関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 部品製造会社のF社では,工場での部品生産を管理する生産管理システム,全国の営業所からの注文受付と発送指示を行う受注発送システム,及び業績管理を行う会計システムを運用している。情報システム部のサービスデスクでは,これらのシステムに関するサービス利用部門からの問合せにオペレータが電話で対応している。 〔サービスデスクの概要〕 ・サービス提供時間帯には,統括者(以下,スーパバイザという)1名とオペレータ数名が在席し,問合せに対応している。 ・情報システム部は,サービスデスクに関わるSLAをサービス利用部門と合意している。その一部を表1に示す。 表1 サービスデスクに関わるSLA(抜粋) ・ITサービスマネージャのT氏は,情報システム部の管理課に所属し,SLAの達成状況を管理している。 ・管理課は,SLAの達成状況をサービス報告の一部としてサービス利用部門に定期的に報告している。 〔問合せ対応手順〕 サービスデスクでは,問合せを含むサービス要求に関する対応手順を表2のように文書化している。問合せ発生時の対応フローは,図1のとおりである。 表2 サービス要求に関する対応手順 図1 問合せ発生時の対応フロー ・サービスデスク内で解決できない場合(段階的取扱いを行う場合)は,対処方法を後で連絡する旨を伝え(1次回答),一旦電話を切り,システム保守課からの調査の回答を得た後に,対処方法を回答する(2次回答)。 ・サービスデスク内で解決できる場合(段階的取扱いを行わない場合)は,通常,問合せに対して回答は1回で終了する。ただし,サービスデスクで対処手順書の参照に時間が掛かる場合は,段階的取扱いと同様に,1次回答,2次回答の手順をとる。 〔サービス窓口の計算〕 利用者の問合せに対応するサービス窓口の数は,オペレータの席数で決まる。必要なオペレータ席数は,呼量と呼損率の関係から表3の呼損率早見表を参照して求める。 表3 呼損率早見表(抜粋) (1)呼量 呼量は,次の式で求める。 呼量 = 平均利用時間 × 平均呼数 ここで,平均利用時間(単位:時間)とは,問合せ及び回答で利用する1回当たりの通話時間である。また,平均呼数とは,1時間当たりの電話受付数である。2次回答が必要となった場合には,2回目以降の通話も呼数に加えて計算する。 (2)オペレータ席数 今期のオペレータ席数は,次の手順で求める。 ① 平均利用時間は,今までの実績から5分とする。 ② 今期の1時間当たりの平均問合せ件数の見通しは,表4のとおりである。 表4 今期の平均問合せ件数の見通し ③ 呼量の計算式に基づいて,①と②から呼量を求める。ただし,2次回答を必要とする問合せがあることから,平均問合せ件数の1.5倍を平均呼数とする。したがって,①と②の値から呼量は1.5アーランとなる。 ④ 呼量が1.5アーランで,SLAで定められた呼損率の目標値(表1)が5%以下であることから,表3を参照して席数を求めると,4席となる。 なお,サービスデスク全体のオペレータの要員数は,要員の勤務体制,稼働率などを考慮して算出している。 〔生産管理システムの更新〕 生産管理システムは今期末に更新が予定されていて,来期の問合せ件数が増加することが予測された。T氏はサービス利用部門と調整し,生産管理システムの「来期の平均問合せ件数の見通し」を8と見積もった。また,来期からは,SLAで呼損率の目標値が3%以下に変更される。 なお,サービスデスクに関わる他の内容については,今期と同様である。 〔段階的取扱い作業の調査〕 サービスデスクは,管理課と情報システム部内の支援協定である運用レベル合意書を締結し,SLAの目標値を達成するための活動を行っている。活動の一環として,スーパバイザは,問合せ対応の進捗を管理している。例えば,段階的取扱いが必要な場合に,回答期限を過ぎたときは,システム保守課に対処方法の回答を催促している。 T氏はサービス報告の活動として,サービスレベル項目の回答完了時間の遵守状況を調査している。サービス報告の対象となっている全ての問合せの回答完了時間は,SLAの目標値を達成していた。ただし,サービスデスク内で解決した場合は,目標値を大きく達成している状態であったのに対し,段階的取扱いを行った場合は,もう少しで目標値の達成が難しい状態であった。そこで,T氏がシステム保守課の作業を調べたところ,システム保守課では生産管理システムなどの業務ソフトウェアの保守作業は,主要業務として計画的に実施しているが,サービスデスクからの依頼に基づく調査活動は,支援業務として副次的に取り扱われていることが分かった。T氏は,(ア)調査を進めた。 その後,T氏は情報システム部内で調整を行い,システム保守課と管理課との間で,新たに(イ)運用レベル合意書を締結し,運用の確実性を向上させようと考えた。 〔サービス提供時間帯拡大の要望〕 一部のサービス利用部門から,サービスデスクのサービス提供時間帯の拡大を要望された。要望内容は次のとおりである。 ① サービス提供時間帯を2時間拡大し,9時から19時までとしてほしい。 ② サービス利用部門が出勤する休日も対応してほしい。 現在のオペレータ要員体制ではサービス提供時間帯を拡大できないので,よくある問合せとその解決策をFAQとして整備し,要望があった利用部門に提供した。 T氏は今回の対策の効果をアンケートによって確認した。FAQの利用は,サービス利用者の一部に限られていたが,FAQは,ある程度有効に機能していることが分かった。そこで,T氏は,FAQを継続して利用できるようにFAQを維持する仕組みを整えた。また,T氏は,(ウ)今後,FAQを社内のWebに公開することによって,サービスデスクに関わる利点が期待できると考えた。 〔顧客満足度の調査〕 情報システム部では,サービスデスクの利用者を対象に,顧客満足度の調査を行っている。T氏は調査内容を分析し,調査結果をサービス報告の一部としてサービス利用部門に報告している。 T氏が,今月の調査内容を分析していたところ,顧客満足度調査の回答の中に複数あった次のコメントに注目した。 ・サービスデスクの回答に従って操作しても解決できず,再度問合せることになった。 そこで,T氏は,(エ)サービスデスクが手順に従って作業をしているかについて,作業実態を調べることにした。 設問1〔生産管理システムの更新〕における席数について,〔サービス窓口の計算〕の計算方法を適用して,(1),(2)に答えよ。 (1)来期の呼量(アーラン)を求めよ。 (2)来期に必要なオペレータ席数を求めよ。 設問2〔段階的取扱い作業の調査〕について,(1),(2)に答えよ。 (1)本文中の下線(ア)で,T氏が調査すべき内容を,40字以内で述べよ。 (2)本文中の下線(イ)の運用レベル合意書に記述すべき内容を,40字以内で述べよ。 設問3〔サービス提供時間帯拡大の要望〕の本文中の下線(ウ)について,期待できる利点を,実施すべき活動内容とともに,50字以内で述べよ。 設問4〔顧客満足度の調査〕の本文中の下線(エ)の作業は,表2中の[a]に対応する。[a]に入れる適切な作業内容を,40字以内で述べよ。
表1 サービスデスクに関わるSLA(抜粋)。サービス提供時間帯、回答完了時間、呼損率など、サービスデスクのSLA目標値を示す表。
表1 サービスデスクに関わるSLA(抜粋)。サービス提供時間帯、回答完了時間、呼損率など、サービスデスクのSLA目標値を示す表。
表2 サービス要求に関する対応手順。記録、優先度の割当て、分類、段階的取扱い、解決、終了から成るサービス要求対応手順の表。
表2 サービス要求に関する対応手順。記録、優先度の割当て、分類、段階的取扱い、解決、終了から成るサービス要求対応手順の表。
図1 問合せ発生時の対応フロー。利用者からサービスデスクへ問合せを行い、必要に応じてシステム保守課へ調査依頼し、回答する流れを示す図。
図1 問合せ発生時の対応フロー。利用者からサービスデスクへ問合せを行い、必要に応じてシステム保守課へ調査依頼し、回答する流れを示す図。
表3 呼損率早見表(抜粋)。席数1~8と呼損率3%及び5%の組合せごとの呼量を示す表。
表3 呼損率早見表(抜粋)。席数1~8と呼損率3%及び5%の組合せごとの呼量を示す表。
表4 今期の平均問合せ件数の見通し。生産管理、受注発送、会計の各システムについて、今期の平均問合せ件数と合計を示す表。
表4 今期の平均問合せ件数の見通し。生産管理、受注発送、会計の各システムについて、今期の平均問合せ件数と合計を示す表。
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判断に用いる前提をそろえる

判断を進める前に、扱う情報がどのような前提で成り立っているかを確かめましょう。同じ話題でも、前提が異なれば検討の意味は変わります。自分で補った条件と、与えられた条件を区別することが出発点です。

この問題で問われていること

この問題では、判断の根拠にしようとしている情報の前提に注目しましょう。普段の経験や一般的な印象を持ち込んでいないかを振り返り、与えられた条件の範囲内で考えているかを確認すると、検討の軸を保ちやすくなります。

視点

前提とは、判断を成り立たせるために置いている条件です。明示された条件と、自分が経験から補った条件を区別し、考えを進める途中で前提を変えていないか確かめましょう。

確認ポイント

  • 判断に用いている前提を把握できているか
  • 経験や印象から条件を補っていないか
  • 考える途中で前提を変えていないか
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解説

サービスデスクのサービスレベルを維持するために、問合せ増加と呼損率目標から必要席数を算出し、保守課の支援目標を合意する。さらに、FAQの利用促進と利用者による解決の確認を通じて、対応負荷とサービス品質を改善する問題です。

問題の全体像

F社のサービスデスクは、三つの業務システムの問合せに電話で対応し、内部で解決できない案件はシステム保守課に調査を依頼している。生産管理システムの更新による問合せ増加、保守課の支援業務の扱い、サービス提供時間帯拡大の要望、回答後も解決しないという利用者の声が課題となっている。公式の出題趣旨では、インシデント及びサービス要求管理の手順を遂行する能力と、サービスデスクの組織化に関わる能力を問うとしている。必要席数の計算だけでなく、SLA達成を支える内部調整、FAQの活用、終了時の解決確認を、事例の具体的な条件に結び付けて考える。

設問1(1)

着目するのは、表4の今期の平均問合せ件数と、来期は生産管理システムだけが8件に増えるという条件です。受注発送システムの5件、会計システムの3件は変わらないので、来期の平均問合せ件数は1時間当たり8+5+3=16件となる。2次回答の通話も含めるため、平均呼数はその1.5倍の24回です。平均利用時間5分を時間に換算し、呼量=(5÷60)×24=2アーランと求める。公式解答例では「2」と示されている。問合せ件数をそのまま平均呼数にせず、追加の通話を織り込むことがポイントです。

設問1(2)

来期の呼量2アーランと、呼損率の目標値が3%以下に変更される点に着目する。表3の3%の行では、5席に対応する呼量は1.88、6席では2.54です。この数値は、その席数で呼損率3%を満たせる呼量の目安なので、2アーランは5席の範囲を超え、6席の範囲に収まる。したがって、必要な最小席数は6席であり、公式解答例でも「6」と示されている。今期の5%の行を使うと結果が変わるため、来期の目標値を適用する必要がある。また、設問が求めるのは席数であり、勤務体制などを考慮した総要員数ではありません。

設問2(1)

段階的取扱いでは回答完了時間がSLAの目標値に近づいている一方、保守課がサービスデスクからの調査依頼を副次的に扱っている点に着目する。調査すべきなのは、その扱いが回答の遅れにつながる実態です。公式解答例では、依頼された問合せの優先度の扱い、主要業務と支援業務の割合、回答期限の遵守率と遵守できない理由が挙げられている。40字以内の答案例は「システム保守課での調査回答期限の遵守率と、遵守できない理由。」です。ほかの提示された観点なら、依頼の優先度や業務割合に対象を絞って表現する。採点講評では、サービスデスクのSLA目標値を意識した解答を求めている。現在は全件がSLAを達成していても、保守課の回答期限や業務配分を調べ、今後の達成を危うくする要因を把握する必要がある。

設問2(2)

表2の注記では、保守課への回答期限をSLAの回答完了時間と整合させて設定するとしている。しかし、期限を過ぎてから催促する運用では、利用者への回答時間を安定して確保しにくい。そこで、保守課と管理課の運用レベル合意書に、調査回答の期限に関するサービス目標を明記する。公式解答例では、回答期限に関する目標値の合意事項、又は回答期限の遵守率100%を設定することが示されている。40字以内の答案例は「サービスデスクからの調査依頼の回答期限遵守率を100%とする。」です。採点講評でも、内部グループとの運用レベル合意書とSLAの整合が重視されている。保守課から回答を得た後に利用者へ対処方法を伝える時間も踏まえ、内部の支援目標を利用者との約束につなげる。

設問3

FAQは一定の効果を上げているが、利用者の一部しか利用していない点に着目する。社内Webへの公開に加えて利用を推奨すれば、より多くの利用者がFAQを使って自己解決できる。公式解答例では、利用部門にFAQの利用を推奨する活動と、その結果としてサービスデスクの問合せ件数が減少する利点、又は利用者自身が要求を早期に解決できる利点が示されている。50字以内の答案例は「サービス利用部門にFAQの利用を推奨し、サービスデスクへの問合せ件数を減らす。」です。設問は活動内容と利点の両方を求めているので、問合せ削減だけを書くのではなく、利用を促す活動も含める。

設問4

利用者のコメントは、回答を受けても解決できず再度問合せたという内容です。表2では「解決」の手順で対処方法を回答しているため、続く「終了」の空欄aには、回答後に実際に解決したことを確認する作業が入る。公式解答例では「利用者が回答に基づき対処を行い,問合せが解決したことを確認する。」と示されており、40字以内に収まる。答案では、利用者が対処したことと、その結果として解決したことの確認を押さえる。採点講評では、手順書の更新などサービスデスク内の管理プロセス改善を答えた誤りが多かったとされている。ここで問われているのは、個々の問合せを終了する前の解決確認です。

学習のポイント

平均問合せ件数と平均呼数の違い、SLAと内部支援目標の整合、FAQ利用促進の効果、回答後の解決確認を押さえる。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成27年度秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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