SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

平成26年度秋期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 データセンタの運用に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。 U社は、首都圏の数社の顧客からシステム運用を受託し、自社のデータセンタで運用サービスを提供している。U社では、データセンタで災害が発生しても運用サービスの提供に支障を来さないように、自家発電装置と無停電電源装置の設置、免震装置の導入などによって災害対策を強化している。 データセンタ全体は運用管理者が管理している。データセンタの組織には権限及び責任に対応して専門部署があり、電源及び空調設備関係についての専門部署にはファシリティ担当が割り当てられている。また、データセンタのオペレータは、受託したシステムの運用状態を表示するシステム監視コンソール、及び空調設備関係の状態を表示する空調監視コンソールを使い、日常監視を行っている。 〔オペレータが行うインシデント対応手順〕 オペレータは、システム監視コンソールと空調監視コンソールに表示されるメッセージによってインシデントの発生を認識し、対応を行う。インシデント発生時の対応手順を、表1に示す。 表1 インシデント発生時の対応手順 なお、目標復旧時間は、優先度“高”が2時間以内、優先度“低”が8時間以内と決められている。 システム監視コンソールと空調監視コンソールに出力される表示メッセージは、統一した基準に従って種類分けされている。例えば、空調監視コンソールの表示メッセージの種類は、表2のとおりである。 表2 空調監視コンソールの表示メッセージの種類 注1)サーバルームに設置してある温度センサを用いて温度を測定している。 〔空調機に発生したインシデントとその対応〕 データセンタでは、10台の空調機を使用していて、そのうちの1台にインシデントが発生した。そのときの対応は、次のとおりであった。 ① 22時に、警告メッセージ“空調機の一つが冷房設定から送風設定に切替え”が空調監視コンソールに出力された。 ② オペレータは、インシデント管理システムにインシデントを登録し、優先度を割り当てて記録を更新した。 ③ オペレータは、障害対応マニュアルを参照したが、当該メッセージについての対応指示の記載はなかった。 データセンタでは、毎日8時に運用管理者主催の運用会議を行っている。この会議には、オペレータとファシリティ担当が参加し、議題はオペレータの引継ぎ、インシデントの報告などである。 空調機にインシデントが発生した翌日の会議で、オペレータがインシデントの状況を報告した。報告を受けて、ファシリティ担当のS氏がサーバルームの温度変化の状況を調査した。その結果、想定以上の上昇傾向がみられた。この傾向が続くと、サーバルームの温度がデータセンタで定めた温度基準値を超え、重大な事態になる状況であったことから、運用管理者はS氏に改善の検討を指示した。 〔データセンタの入室管理〕 データセンタは幾つかの区画に分かれていて、各区画には多くの部屋がある。入室管理は次のとおりである。 ・区画ごと、部屋ごとにアクセス権が設定されていて、入室が制限されている。 ・入室場所には電子錠を設けていて、ICチップ付きの入室カードを使って開錠する。 外部関係者がデータセンタを訪問する際には、最初に入室受付で入室時の手続を行う。外部関係者の入室については、表3に示す手順を定めている。 表3 外部関係者の入室の手順 〔空調機の臨時保守作業〕 S氏は、運用会議の後に、インシデントが発生した空調機の臨時保守作業を保守会社に依頼した。S氏は、当日10時から作業を開始するように依頼した後、保守作業者T氏の入室の事前申請を行い、承認された。入室場所は、インシデントが発生した空調機の設置場所であるサーバルームとした。予定時刻に到着したT氏は入室受付を行い、空調機の保守作業を実施した。 〔新規システムの受入れに伴う変更〕 データセンタでは、サーバ、ストレージ、保守端末などの機器類をラックに収容している。これらの機器をラックに収容するに当たっては、機器の重量、電源容量などを考慮する必要があり、V氏が専任のラック管理者として任命されている。ラック管理者は、ラック内の機器収容状況をラック収容情報として管理し、CMDBに登録している。ラック収容情報の更新権限は、ラック管理者だけに与えられている。 ある開発プロジェクトで新規システムを稼働させることになり、準備が始まった。データセンタでは、新規システムの受入れに際し、サービス担当者を選定し、受入れとサービスの運用を担当する。今回は、W氏がサービス担当者となった。また、U社では、新規システムの受入れに際し、U社規定の変更管理プロセスが適用される。そこでW氏は、変更要求を起票した。 V氏は新規システムの受入れに伴う、W氏の変更要求に基づき、サーバ、ストレージ及び保守端末の重量、電源容量などを考慮し、ラック内の収容場所を選定した。W氏が変更要求を起票した後、変更審査が行われ、V氏も審査員として参加した。変更審査は完了し、変更が承認された。V氏は承認された変更内容に基づき、新規に収容する機器の情報をラック収容情報としてCMDBに登録し、更新した。 〔構成監査の実施〕 U社の構成管理プロセスでは、毎月、構成監査を行うように規定されている。構成監査の一つとして、CMDBに登録されているラック収容情報に基づき、当該機器がラックに適切に収容されているかどうかを確認する。新規システムについて確認した結果、(ア)ラック収容情報にはW氏の変更要求に基づく保守端末の登録があるにもかかわらず、ラックには保守端末が収容されていないことが分かった。 運用管理者が変更管理の記録を調査したところ、W氏の変更要求については、変更を展開する作業で作業ミスが発生し、保守端末のラック収容も中止され、元に戻されていた。記録では変更の失敗が記載されていて、変更要求は終了していた。 なお、本番稼働まで日程に余裕があることから、現在、変更計画を見直している。計画が確定した後、再度新規システムの変更要求を行い、作業を実施する予定である。 運用管理者は調査を進め、W氏の変更要求に伴うV氏の作業が、変更管理に関わるサービスマネジメントのプロセス規定どおりに実施されていないことを発見した。そこで、運用管理者は、データセンタに構築されている構成品目と構成情報とで不一致が発生する事象の再発防止に向けて、(イ)プロセス規定の活動項目を周知し、データセンタの関係者に徹底することにした。 設問1 〔空調機に発生したインシデントとその対応〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1)オペレータのインシデント対応における問題点を、理由を含めて50字以内で述べよ。 (2)温度の異常につながる温度の上昇を早期発見するために、表示メッセージを改善する場合、その改善策を60字以内で述べよ。 設問2 〔データセンタの入室管理〕について、表3中の作業手順④では、許可された者だけにアクセスを許すために、ある確認を行っている。【a】に入れる適切な内容を、30字以内で述べよ。 設問3 〔構成監査の実施〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1)本文中の下線(ア)の状況が発生した原因を、〔新規システムの受入れに伴う変更〕のV氏の作業内容に基づいて、50字以内で述べよ。 (2)本文中の下線(イ)で周知すべき活動項目の具体的な内容を、30字以内で述べよ。
表1 インシデント発生時の対応手順。インシデントの受付、優先度割当て、回復処理、段階的取扱い、解決・終了の手順を示す表。
表1 インシデント発生時の対応手順。インシデントの受付、優先度割当て、回復処理、段階的取扱い、解決・終了の手順を示す表。
表2 空調監視コンソールの表示メッセージの種類。空調監視コンソールの通知、警告、異常メッセージについて、内容、例、インシデントとしての扱いを示す表。
表2 空調監視コンソールの表示メッセージの種類。空調監視コンソールの通知、警告、異常メッセージについて、内容、例、インシデントとしての扱いを示す表。
表3 外部関係者の入室の手順。外部関係者の事前申請、承認、入室受付、カード発行・貸出し、返却までの手順を示す表。
表3 外部関係者の入室の手順。外部関係者の事前申請、承認、入室受付、カード発行・貸出し、返却までの手順を示す表。
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判断の前提となる範囲を確かめる

運用に関する事柄を検討するときは、判断の前提となる範囲に注目しましょう。対象や状況の捉え方が途中で変わっていないかを確かめ、与えられた情報と自分で補った想定を分けて考えることが手掛かりになります。

この問題で問われていること

考える際は、いま扱っている対象や状況が、与えられた条件のどこまでに含まれるかを確認しましょう。別の場面で得た知識を当てはめる前に、その知識が想定する範囲と今回の範囲が同じかを意識して整理してみてください。

視点

範囲を整理するとは、判断の対象がどこまでかを意識することです。与えられた条件に含まれる内容と、経験や印象から補った内容を区別し、同じ範囲を保って考えてみましょう。

確認ポイント

  • 判断の対象としている範囲は明確か
  • 与えられた条件を超える想定を加えていないか
  • 考える途中で対象の範囲が変わっていないか
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解説

本問は、データセンタの運用手順と実際の作業を照合し、専門部署への対応依頼、温度上昇の早期警告、入室者の本人確認、変更成功後のCMDB更新という管理上の要点を問う問題です。

問題の全体像

U社のデータセンタで、空調機のインシデント、外部保守作業者の入室、新規システムの受入れに伴う構成情報の不一致が発生しています。公式の出題趣旨では、インシデント対応、入室管理、設備・機器管理を通じて、ITサービスマネージャの実務的管理能力を問うとしています。解答では、表に定めた対応条件、入室を許可された人物の確認、変更作業とCMDB更新の順序を、本文の事実に結び付けることが重要です。

設問1(1)

表1の「段階的取扱い」と実際の対応を照合します。障害対応マニュアルに対応指示がなかったため、専門部署への依頼条件①に該当します。また、警告は優先度「低」で目標復旧時間は8時間以内なので、22時に受け付けた場合の期限は翌朝6時です。翌朝8時の会議まで依頼しなかった対応は、期限内に回復できないおそれがある場合の条件③にも反します。公式解答例では、①及び③の状況なのに専門部署へ回復処理を依頼しなかった点を挙げています。50字以内の答案例は「対応指示がなく目標復旧時間内の回復も危ぶまれるのに、専門部署に回復処理を依頼しなかった。」です。

設問1(2)

表2では、定期的な温度状況表示は「通知」であり、インシデントとして扱われません。一方、温度基準値を超えてからの表示は「異常」です。温度上昇を早期発見するには、異常になる前に注意を促す仕組みが必要です。公式解答例では、温度警告用のしきい値を設定し、定期表示の測定値がそれを超えた場合にメッセージの種類を「警告」に変更します。60字以内の答案例は「温度警告用のしきい値を設定し、定期表示時に測定温度がしきい値を超えたら、表示メッセージを警告に変える。」です。しきい値の設定と、超過時の表示種類の変更をセットで書きます。

設問2

表3の作業手順④では、入室受付票と承認済み申請内容の照合が既に規定されています。しかし、書かれた内容が一致しても、来訪した人物が承認された作業者本人とは限りません。そこで、入室カードを発行する前に本人確認を行います。公式解答例では「作業者が本人であることの確認を行う」又は「作業者の識別情報を認証する」としています。30字以内の答案例は「作業者が本人であることの確認を行う。」です。採点講評では、事前申請者への確認やアクセス権の設定内容確認は誤った解答として挙げられており、確認対象が来訪した作業者本人であることを明確にします。

設問3(1)

V氏がCMDBを更新した時点に着目します。本文では、変更が承認された後、変更を展開する前に、新規収容機器の情報を登録しています。その後の展開作業は失敗し、保守端末の収容も中止されて元に戻されたため、CMDBの登録と実物が食い違いました。公式解答例では、変更の展開前にラック収容情報を登録し、CMDBを更新したことを原因としています。50字以内の答案例は「変更の展開前に、新規収容機器の情報をラック収容情報として登録し、CMDBを更新したから。」です。作業ミスだけを述べず、設問が指定するV氏の更新作業とその時点を示します。

設問3(2)

再発防止では、変更の承認と展開の成功を区別する必要があります。承認は作業を実施してよいという判断であり、予定した機器が実際に収容されたことを示しません。成功する前にCMDBを更新すると、今回のように作業が失敗して元に戻された際、実際の構成と記録が一致しなくなります。公式解答例では「CMDBの記録は、変更の展開の成功後に更新する。」としています。この内容は30字以内に収まります。採点講評では、サービスマネジメントのプロセス間のインタフェースの理解不足を指摘しています。変更管理で確認した展開の成功を、構成情報の更新条件として明確にすることが要点です。

学習のポイント

手順の適用条件と時刻を照合する力、本人確認の役割、変更管理と構成管理をつなぐ更新順序を学びましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成26年度秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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