SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

平成26年度秋期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 キャパシティ管理に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。 R社は、カード決済システムをITサービスとして提供している。R社が発行するクレジットカードの利用者(以下、カード利用者という)は、R社のクレジットカード決済を行う店舗(以下、加盟店という)及びオンラインショッピングサイト(以下、オンラインサイトという)で、クレジットカードを使って決済することができる。 〔カード決済システムの構成〕 R社が発行しているクレジットカードの情報は、R社のシステム部が運用するカード決済システムで管理されている。カード決済システムの構成を、図1に示す。 図1 カード決済システムの構成(2012年12月末現在) データセンタには、業務サーバ(2台)、DBサーバ(1台)、ストレージ(ディスク装置3台)が設置されている。ディスク装置にはカード利用者の会員情報の他にカード利用者ごとの利用履歴が1年分保管されている。これらのデータはDBサーバで管理されている。業務サーバ1、2では、カード決済システムのアプリケーションが稼働しており、L3SWを経由して加盟店及びオンラインサイトとIP-VPNで接続されている。 加盟店には、IP-VPNに接続する決済端末が設置されている。決済端末は処理装置、メモリ、クレジットカードの読取りを行うカードリーダ、及びカード利用者が暗証番号を入力する際に利用するPINパッドで構成されている。 〔加盟店向けサービス〕 加盟店は、クレジットカードを利用して決済するために、加盟店向けの決済サービス(以下、加盟店決済サービスという)を利用する。システム部での対応は、次のとおりである。 ・加盟店では顧客との対面販売が中心で短時間での応答が求められるので、システム部は加盟店決済サービスの応答時間については特に考慮し、営業部と合意している。 ・クレジットカードが利用されると、決済要求が業務サーバにリアルタイムに送信される。このとき、業務サーバに対して要求が均等になるよう、加盟店ごとに送信先サーバを決めている。 ・業務サーバが要求を受け付け、カード利用者の情報についてDBサーバを経由して参照し、応答を返す。 ・加盟店でのカードの利用頻度と決済処理時の通信データ量を考慮して、加盟店とIP-VPN間は64kビット/秒の回線で接続している。 〔オンラインサイト向けサービス〕 最近、カード利用者によるオンラインサイトの利用が増えている。そこでR社では、オンラインサイト向けの決済サービス(以下、オンライン決済サービスという)を強化している。システム部での対応は、次のとおりである。 ・オンライン決済サービスでは、オンラインサイト経由のカード利用者からの決済要求をリアルタイムに処理する。業務サーバに対して要求が均等になるよう、オンラインサイトごとに送信先サーバを決めている。 ・加盟店決済サービスと同様、短時間での応答が求められる。特に、昼休み、夜間などの繁忙時間帯に、オンラインサイトで大量の決済処理が集中する場合を考慮して、オンラインサイトとIP-VPN間は、オンラインサイトごとの決済要求量に応じて、128kビット/秒以上の回線で接続している。 ・一部のオンラインサイトでは、有料登録会員に対して月額基本料を毎月継続して請求している。そこで、オンライン決済サービスでは、複数のカード利用者の月額基本料をまとめて処理するための一括決済サービスを提供している。一括決済サービスでは、オンラインサイト側が任意のタイミングで、業務サーバにデータを送信できる。業務サーバでは、一括決済サービスのためのバッチ処理を1時間に1回起動し、全てのカード利用者の決済処理終了後に、送信元の全てのオンラインサイトに一括して処理結果を回答している。 〔キャパシティ計画〕 営業部では、2012年にカード利用者の拡大を計画し、その後3年間の需要予測を行い、業務計画値として管理を開始した。業務計画に基づいて、カード利用者数、加盟店数、オンラインサイト数の12月末時点での予測値を、表1に整理した。 表1 カード利用者数、加盟店数、オンラインサイト数の予測値 システム部のITサービスマネージャであるL氏は、営業部が策定する業務計画に合わせて、毎年1月にキャパシティ計画を作成している。サーバ及びディスク装置については、これまでのサービス運用実績に基づき、要求基準に従って計画する。具体的には、当該年の12月末の予測値に基づき、業務サーバ、DBサーバ及びディスク装置の増強計画を策定する。キャパシティの増強が必要と判断された場合のサーバ及びディスク装置の増設作業は、あらかじめ決められたサービス停止期間中に行う。表2に、サーバ及びディスク装置の容量・能力と要求基準を示す。 表2 サーバ及びディスク装置の容量・能力と要求基準 〔加盟店向けサービスの応答時間悪化〕 2013年1月のある日、加盟店から、“サービスの応答時間が時々長くなる”という苦情があった。L氏が調査したところ、昼休みの時間帯に遅延が発生していること、及びオンラインサイト数の増加に伴って、オンラインサイトでの一括決済サービスのデータ量が多くなっていることから、データセンタとIP-VPNを接続する回線が遅延の原因になっていることが分かった。そこで、L氏は次のような対策を検討した。 ・オンラインサイト数の拡大に伴って一括決済サービス利用の増加が見込まれるので、(ア)データセンタとIP-VPNを接続する回線を増設し、一括決済サービスの要求と回答は、新規に敷設する回線を経由させる。 ・回線の敷設には時間が掛かるので、増設完了までの間、(イ)一括決済サービスの運用方法を工夫して回避する。営業部に一括決済サービスの処理結果の回答期限について確認したところ、0時から12時までに受け付けた要求は18時までに、12時から24時までに受け付けた要求は翌日6時までに回答すればよいことが分かった。 〔大口オンラインサイトの追加〕 2013年2月になって、営業部では、計画外であるが既存オンラインサイトと比べて利用量が多い大口オンラインサイトを獲得した。これによって、2013年12月末のオンラインサイト数が一つ増えて、21サイトとなる。大口オンラインサイトは、多数のカード利用者の利用が見込まれており、サービス要求数とカード利用者の利用頻度は、それぞれ既存オンラインサイトの1サイト当たりのサービス要求数と利用頻度の5倍であることが分かった。そこで、L氏は、2013年1月に策定した(ウ)キャパシティ計画の見直しを行った。 〔電子サインサービスの開始〕 2013年10月になって、R社では、加盟店向けの新規サービスとして、2014年7月から電子サインサービスを導入することを決定した。現在、加盟店では、カード利用者本人がサインした伝票を保管しているが、今後は電子データとして保管し、ペーパレス化を実現する。決済端末に電子サインパッドを接続し、カード利用者が電子サインパッドにサインすると、取引データとサインが電子データとして保管される。電子データは、利用履歴の一部としてディスク装置に保管される。L氏は電子サインの導入計画を営業部に確認したところ、“当初は加盟店の1割程度と見込んでいる。今後は2014年6月に需要予測を行い、詳細計画を策定する。”とのことであった。L氏は、1割の加盟店が利用する想定でデータ量を算出して2014年1月のキャパシティ計画の見直しに反映し、2014年5月に電子サインを保管するディスク装置を増設することにした。また、加盟店からの電子サインデータの送信について検討した結果、回線の見直しは必要ないと判断した。 電子サインサービスを利用するためには、加盟店が営業している日中時間帯にプログラムを決済端末に配付する。プログラムの配付が完了した後、決済端末に電子サインパッドを接続し、電子サインサービスの利用を開始する。決済端末に配付するプログラムのサイズは、1台当たり5Mバイトである。 電子サインサービス開始に当たり、営業部では電子サイン導入キャンペーンを実施し、多数の加盟店に対して積極的に営業活動を行い、導入を拡大していく予定である。 設問1〔加盟店向けサービスの応答時間悪化〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1)L氏が、本文中の下線(ア)で回線を増設した理由を、サービスのキャパシティ管理の観点から40字以内で述べよ。 (2)本文中の下線(イ)で実施する方策を、40字以内で述べよ。 設問2〔大口オンラインサイトの追加〕について、当初考えた2013年1月のキャパシティ計画で計画した構成品目ごとの台数に対して本文中の下線(ウ)で見直した内容を、増設が必要となった根拠とともに、50字以内で具体的に述べよ。 なお、回線の見直しは必要ないものとする。 設問3〔電子サインサービスの開始〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1)電子サインサービスの開始に伴い、〔キャパシティ計画〕の見直しが必要である。 (a)L氏が実施することにしたディスク装置増設計画のリスクを、40字以内で述べよ。 (b)リスクを低減するのに必要な対策を、40字以内で述べよ。 (2)決済端末にプログラムを配付する活動に含まれるリスクを、サービス運用の観点から40字以内で述べよ。
図1 カード決済システムの構成(2012年12月末現在)。加盟店とオンラインサイトがIP-VPNを介してデータセンタに接続され、業務サーバ、DBサーバ、ストレージで構成されるカード決済システムの構成図。
図1 カード決済システムの構成(2012年12月末現在)。加盟店とオンラインサイトがIP-VPNを介してデータセンタに接続され、業務サーバ、DBサーバ、ストレージで構成されるカード決済システムの構成図。
表1 カード利用者数、加盟店数、オンラインサイト数の予測値。2012年実績及び2013年から2015年までの、カード利用者数、加盟店数、オンラインサイト数の予測値を示す表。
表1 カード利用者数、加盟店数、オンラインサイト数の予測値。2012年実績及び2013年から2015年までの、カード利用者数、加盟店数、オンラインサイト数の予測値を示す表。
表2 サーバ及びディスク装置の容量・能力と要求基準。業務サーバ、DBサーバ、ディスク装置について、1台当たりの処理能力・容量と増設判断などの要求基準を示す表。
表2 サーバ及びディスク装置の容量・能力と要求基準。業務サーバ、DBサーバ、ディスク装置について、1台当たりの処理能力・容量と増設判断などの要求基準を示す表。
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判断の前提となる条件の整理

この分野を学ぶ際は、判断の前提となる条件が何かという一点に注目しましょう。扱われている事柄と、その判断が成り立つ条件を分けて捉え、条件が明示されているのか、自分で補っているのかを確かめます。

この問題で問われていること

判断に必要な条件を、与えられた情報の中で確かめることに集中してください。知識や経験から自然に思い浮かぶ前提も、ここで示された条件とは区別し、どの条件に基づく判断なのかを意識して考えましょう。

視点

同じ話題でも、判断の前提が異なれば検討の範囲は変わります。まず条件として示されている内容を押さえ、書かれていない条件を無意識に加えていないか振り返りましょう。

確認ポイント

  • 判断の前提となる条件を捉えているか
  • 示された条件と自分の想定を区別しているか
  • 考えている判断がどの条件に基づくかを意識しているか
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解説

本問は、合意した応答時間を守る回線・運用対策、需要増加に伴う必要台数の計算、新サービスの需要予測と配付時の影響を問う。設備増強の目的と数値的な根拠を示し、事業の変化に合わせて計画を見直すことが要点となる。

問題の全体像

R社は、加盟店とオンラインサイトにカード決済サービスを提供している。オンライン利用の拡大で共有回線に遅延が生じ、計画外の大口サイト追加で保管容量が増え、さらに電子サインサービスの導入も予定されている。出題趣旨では、事業計画を将来の要求に反映する事業のキャパシティ管理、合意した応答時間などを満たすサービスのキャパシティ管理、設備の能力・容量を計画するコンポーネントのキャパシティ管理を挙げている。各設問では、サービス目標、要求基準による計算、需要や運用の変化という観点を使い分ける。

設問1(1)

着目するのは、加盟店決済サービスの応答時間について営業部と合意している点と、一括決済サービスのデータ増加によって共有回線で遅延が発生している点です。一括決済の要求と回答を増設回線に通す目的は、加盟店決済サービスへの影響を抑え、合意した応答時間を保証することにある。公式解答例でも、このサービス目標の保証を理由としている。採点講評では、サービスのキャパシティ管理では応答時間などのサービス目標の達成が重要であると指摘している。40字以内の答案例は「営業部と合意した加盟店決済サービスの応答時間を保証するため。」となる。

設問1(2)

着目するのは、一括決済のバッチ処理を現在は1時間に1回起動していることと、処理結果の回答期限には余裕があることです。0時から12時までの受付分は18時まで、12時から24時までの受付分は翌日6時までに回答すればよく、毎時間結果を返す必要はない。したがって、回答期限を満たす範囲で繁忙時間帯を避けてバッチ処理を実行すれば、リアルタイム決済との回線利用の集中を緩和できる。公式解答例では、繁忙時間帯にはバッチ処理を起動しないとしている。40字以内の答案例は「一括決済サービスのバッチ処理を繁忙時間帯には起動しない。」となる。

設問2

表1の2013年12月末の予測値と、表2の要求基準を使って、当初計画と大口サイト追加後を比較する。当初の業務サーバへの要求は、加盟店200店×0.1件/秒+オンライン20サイト×1件/秒=40件/秒で、1台30件/秒なので2台必要です。追加サイトは既存サイトの5倍なので、追加後は45件/秒となり、2台のままで足りる。DBサーバはカード利用者500万人で、増設基準の750万人を超えないため1台のままです。ディスク容量は、会員情報が500万人÷1万人×20Mバイト=10、000Mバイト、加盟店の利用履歴が200店×100Mバイト=20、000Mバイト、オンラインサイトの利用履歴が20サイト×500Mバイト=10、000Mバイトで、当初は合計40Gバイト、4台を計画する。追加サイトの利用履歴は利用頻度5倍により2、500Mバイト増えるので、必要容量は42.5Gバイトとなり、当初計画より2.5Gバイト不足する。公式解答例では、この不足を根拠にディスク装置を1台増設するとしている。採点講評でも、単に余裕を持たせるのではなく明確な根拠を示すことを求めている。50字以内の答案例は「2013年12月末に容量が2.5Gバイト不足するため、ディスク装置を1台増設する。」となる。

設問3(1)(a)

着目するのは、L氏が加盟店の1割の利用を前提に容量を計算している一方、営業部は導入キャンペーンで利用を拡大する予定である点です。電子サインは利用履歴の一部としてディスク装置に保管されるため、利用加盟店が想定を上回れば必要容量も増える。さらに、増設予定は2014年5月だが、営業部の詳細な需要予測は6月であり、増設計画に最新の需要が反映されないおそれがある。公式解答例では、1割を想定した計画によるディスク容量の不足をリスクとしている。40字以内の答案例は「加盟店の1割を前提とした計画では、導入拡大でディスク容量が不足する。」となる。

設問3(1)(b)

対策は、営業部が更新する需要予測を必要容量に反映し、適切な時期にキャパシティ計画を見直すことです。本文では2014年6月に需要予測と詳細計画を策定し、7月からサービスを開始する予定なので、更新された需要と確保済み容量を比較する必要がある。また、増設作業はあらかじめ決めたサービス停止期間中に行う条件があるため、見直しの時期には必要な増設を実施できるかも考慮する。公式解答例も、営業部の需要予測に基づく適切なタイミングでの計画見直しを挙げている。40字以内の答案例は「営業部の需要予測に基づき、適切な時期にキャパシティ計画を見直す。」となる。

設問3(2)

着目するのは、加盟店が営業している日中に、1台当たり5Mバイトのプログラムを配付する点です。加盟店の回線は64kビット/秒であり、配付通信と通常の決済通信が同じ回線を利用すると、決済の応答時間に影響するおそれがある。電子サインデータの送信について回線見直しが不要という判断は、プログラム配付時にも影響がないことを意味しない。公式解答例では、配付開始による加盟店向けサービスの応答時間への影響をリスクとしている。採点講評では、リリース計画段階で影響や関連リスクを評価することに触れている。40字以内の答案例は「プログラム配付の通信が決済通信と競合し、加盟店向けサービスの応答が遅れる。」となる。

学習のポイント

サービス目標と設備増強を結び付け、処理能力・増設基準・保管容量を区別して計算する。需要予測の更新とリリース時の既存サービスへの影響も押さえる。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成26年度秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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