SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

平成24年度秋期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 ITサービス財務管理に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。 Y電鉄は,P市とQ市とを結ぶ列車を運行している鉄道会社であり,ホテルも経営している。Y電鉄の情報システム部では,これらの業務を支える基幹システムとして,総合予約システムを運用している。 〔総合予約システムの概要〕 総合予約システムの構成を,図1に示す。現在のハードウェア及びソフトウェアは,2009年4月の総合予約システムリリース時に使用を開始した。 図1 総合予約システムの構成 総合予約システムのサービス種別と要求の流れを表1に,サーバ1台当たりの性能を表2に,サーバ1台当たりの費用を表3に,それぞれ示す。 表1 総合予約システムのサービス種別と要求の流れ 表2 サーバ1台当たりの性能 表3 サーバ1台当たりの費用 表2の処理能力とは,Y電鉄が定めている“応答時間の目標を達成可能な要求数の上限値”を表している。 また,APサーバの処理能力は機能別に割当てが可能である。現在,APサーバ1台当たりの処理能力15要求/秒のうち,10要求/秒をインターネット予約に,5要求/秒を窓口予約に割り当てている。 総合予約システムは毎年8月に利用が最も集中し,アクセス要求がピークに達する。Y電鉄では,2012年度のピーク時のアクセス要求を次のように予測している。 ① インターネット予約及びサイト閲覧 過去3年間と同様の伸びを示すものと想定している。過去3年間のピーク時のWebサーバへのアクセス要求の推移を,表4に示す。 ② 窓口予約 過去3年間と同様に,ピーク時でも7要求/秒と想定している。 表4 ピーク時のWebサーバへのアクセス要求の推移 〔システム運営費用〕 情報システム部では,システム運用に関わる費用(以下,システム運営費用という)を,年度ごとに計算し,管理している。総合予約システムのシステム運営費用の費目を,表5に示す。 表5 総合予約システムのシステム運営費用の費目 取得したハードウェア資産は,使用開始から減価償却の対象となる。ハードウェア償却費については,耐用年数5年,償却率0.5の定率法の償却方式を適用している。5年目までの各年度のハードウェア償却費は次の式で計算し,6年目以降は償却費が発生しないものとしている。 ハードウェア償却費=(取得価額-前年度までの償却費の合計額)×0.5 なお,情報システム部では,総合予約システムのハードウェアの耐用年数にかかわらず,新規導入から7年間使い続けることを想定している。 〔予算の立案〕 2011年12月,情報システム部のS氏は,次年度の総合予約システムの予算に関して,経営企画部のT氏から相談を受けた。T氏の説明は,次のとおりであった。 “2012年度のインターネット予約とサイト閲覧を合わせたピーク時のWebサーバへのアクセス要求の予測値は,21.5要求/秒となる。これは,現在のWebサーバ群の処理能力18要求/秒とAPサーバ群のインターネット予約に割り当てられた処理能力20要求/秒のいずれも超過する。そこで,WebサーバとAPサーバをそれぞれ1台ずつ追加購入することを前提に,予算を立案した。” これに対してS氏は,“(ア)2012年度に,サーバを1台だけ追加購入すればよい。”と判断し,サーバの追加購入費用を[a]千円,追加購入分を含む年間の全サーバ保守費を[b]千円と算定した。後日,S氏の見直しに基づいた予算案は承認され,2012年4月から追加購入したサーバの使用が始まった。 〔システム運営費用の見直し〕 2012年の秋に,経営企画部から情報システム部に対して,“総合予約システムのシステム運営方法を2014年度までに見直し,2015年度以降の年間システム運営費用を大幅に削減してほしい”という指示があった。そこで,S氏が総合予約システムの計画を調査したところ,サーバ増強は当面不要で,サーバに関係する新たな保守費の増加,償却費の発生はないことを確認した。 次に,S氏は運用作業の改善を実施してシステム運営費用を削減する案の検討を行った。現在,総合予約システムでは,オペレーション要員が磁気テープにバックアップを実施し,複写を行っている。これに対し,大容量磁気ディスクシステム(以下,大容量ディスクという)を導入し,バックアップの実施と複写を自動化することでオペレーション要員を1名削減できることが判明した。大容量ディスクの導入には,15、000千円のハードウェアの購入と年間保守費2、000千円が必要である。(イ)S氏は,できるだけ早期に大容量ディスクの使用を開始することを考えて,2013年4月から稼働させる前提で案(以下,変更案という)をまとめた。 S氏の検討を受けて,“大容量ディスクを導入せずに現状どおりのバックアップ方式を継続する”案(以下,現行案という)と,変更案との比較が会議で行われた。 〔ネットワーク関連費用の管理方針変更〕 経営企画部は,財務管理をよりきめ細かく行うために,情報システム部が一括管理しているネットワーク関連費用を,社内システムに適切に割り当てることができないか,検討を始めた。総合予約システムに関わるネットワークを,表6に示す。 表6 総合予約システムに関わるネットワーク T氏は,専用線接続費用とインターネット接続費用の全てを総合予約システムに割り当てる案を策定し,S氏に打診したところ,S氏は“(ウ)T氏の費用割当て案には改善の余地がある。”と指摘した。T氏は,割当て案を見直すことにした。 設問1 〔予算の立案〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1) 本文中の下線(ア)について, (a) S氏が追加購入不要と判断したサーバの種類を,Webサーバ,APサーバのいずれかで答えよ。 (b) 追加購入不要と判断した理由を,総合予約システムの要求の流れに着目して45字以内で述べよ。 (2) 本文中の[a],[b]に入れる適切な数値を答えよ。ただし,サーバ1台当たりの費用は,表3を使用すること。 (3) 2012年4月に使用を開始したサーバについて,2014年度のハードウェア償却費を計算し,千円単位で答えよ。 設問2 〔システム運営費用の見直し〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) 本文中の下線(イ)について,2013年度の大容量ディスクに関わる費用が,削減できる運用人件費より高いにもかかわらず,S氏が大容量ディスクの早期使用開始を考えた理由を,減価償却費に着目して,40字以内で述べよ。 (2) 2014年度の総合予約システムのシステム運営費用に関して, (a) 現行案と変更案のどちらが有利か。答案用紙の現行案・変更案のいずれかを○で囲んで示せ。 (b) 両案の年間システム運営費用の差を,千円単位で答えよ。 設問3 〔ネットワーク関連費用の管理方針変更〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) 本文中の下線(ウ)について,S氏が指摘した理由を,40字以内で述べよ。 (2) 本文中の下線(ウ)の費用割当て案の改善には,どのような仕組みが必要か,40字以内で述べよ。
図1 総合予約システムの構成。利用者PCがインターネット・FWを経由し、負荷分散装置①配下のWebサーバ①~③、負荷分散装置②配下のAPサーバ①②、DBサーバに接続する。駅端末は専用線と負荷分散装置③を経由してAPサーバに接続する構成図。
図1 総合予約システムの構成。利用者PCがインターネット・FWを経由し、負荷分散装置①配下のWebサーバ①~③、負荷分散装置②配下のAPサーバ①②、DBサーバに接続する。駅端末は専用線と負荷分散装置③を経由してAPサーバに接続する構成図。
表1 総合予約システムのサービス種別と要求の流れ。サービス種別ごとの概要と要求の流れ。インターネット予約は利用者PC→Web→AP→DBサーバ、窓口予約は駅端末→AP→DBサーバ、サイト閲覧は利用者PC→Webサーバで完結する(注記あり)。
表1 総合予約システムのサービス種別と要求の流れ。サービス種別ごとの概要と要求の流れ。インターネット予約は利用者PC→Web→AP→DBサーバ、窓口予約は駅端末→AP→DBサーバ、サイト閲覧は利用者PC→Webサーバで完結する(注記あり)。
表2 サーバ1台当たりの性能。サーバ1台当たりの処理能力(単位:要求/秒)。Webサーバ6、APサーバ15、DBサーバ40。
表2 サーバ1台当たりの性能。サーバ1台当たりの処理能力(単位:要求/秒)。Webサーバ6、APサーバ15、DBサーバ40。
表3 サーバ1台当たりの費用。サーバ1台当たりの取得価額と年間保守費(単位:千円)。Webサーバ5,000と750、APサーバ10,000と1,500、DBサーバ20,000と3,000。
表3 サーバ1台当たりの費用。サーバ1台当たりの取得価額と年間保守費(単位:千円)。Webサーバ5,000と750、APサーバ10,000と1,500、DBサーバ20,000と3,000。
表4 ピーク時のWebサーバへのアクセス要求の推移。年度別ピーク時アクセス要求(要求/秒)。2009年度はインターネット予約10.0・サイト閲覧1.0・合計11.0、2010年度は13.0・1.5・14.5、2011年度は16.0・2.0・18.0。年度は会計年度を指すとの注記あり。
表4 ピーク時のWebサーバへのアクセス要求の推移。年度別ピーク時アクセス要求(要求/秒)。2009年度はインターネット予約10.0・サイト閲覧1.0・合計11.0、2010年度は13.0・1.5・14.5、2011年度は16.0・2.0・18.0。年度は会計年度を指すとの注記あり。
表5 総合予約システムのシステム運営費用の費目。費目と内容。サーバ保守費、通信機器保守費(年間4,000千円で一定)、運用人件費(要員4名・1人年間6,000千円)、ハードウェア償却費、ソフトウェア償却費(5年定額法・年4,000千円)。ネットワーク関連費用は含まない旨の注記あり。
表5 総合予約システムのシステム運営費用の費目。費目と内容。サーバ保守費、通信機器保守費(年間4,000千円で一定)、運用人件費(要員4名・1人年間6,000千円)、ハードウェア償却費、ソフトウェア償却費(5年定額法・年4,000千円)。ネットワーク関連費用は含まない旨の注記あり。
表6 総合予約システムに関わるネットワーク。ネットワークの種別と内容。専用線接続は駅端末と総合予約システム間を結び、総合予約システムだけで使用する。インターネット接続は総合予約システムのほか、電子メールシステムを使った営業部門と利用者間の情報授受にも使用される。
表6 総合予約システムに関わるネットワーク。ネットワークの種別と内容。専用線接続は駅端末と総合予約システム間を結び、総合予約システムだけで使用する。インターネット接続は総合予約システムのほか、電子メールシステムを使った営業部門と利用者間の情報授受にも使用される。
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比較の前提をそろえて考える

費用について考えるときは、示された情報をすぐに結論へ結び付けず、検討の前提がそろっているかに注目しましょう。何を対象にした情報なのかを意識すると、条件を整理しながら落ち着いて考えられます。

この問題で問われていること

この問題では、費用の扱いを考える前に、それぞれの情報が同じ前提で捉えられているかを確認する視点を持ちましょう。記載された条件を手掛かりに、判断に使う情報の範囲がぶれていないかを確かめてください。

視点

情報を比較する際には、その情報がどの範囲を対象としているかを意識することが大切です。検討の途中でも同じ範囲を保っているか、与えられた条件に立ち返って整理しましょう。

確認ポイント

  • 判断の対象となる範囲を意識できているか
  • 情報の前提を記載された条件に基づいて捉えているか
  • 検討の途中で対象の範囲を変えていないか
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解説

要求の流れを踏まえると、追加購入が必要なのはWebサーバだけです。定率法による年度別の償却費と人件費削減を比較し、共用するインターネット接続費用はシステム間で配賦することが要点です。

問題の全体像

Y電鉄は、列車とホテルの業務を支える総合予約システムを運用しています。アクセス増加への設備投資、バックアップ自動化による運営費用削減、ネットワーク関連費用の割当てが検討課題です。公式の出題趣旨では、投資判断に関わるキャパシティ管理、費用の分類と明確化、予算の策定・管理の能力を問うとされています。要求の流れから必要な設備を判断し、減価償却を含めて年度別費用を比較し、共用費用の負担を適切に分ける問題です。

設問1(1)(a)

公式解答例では「APサーバ」です。表4ではインターネット予約が毎年3要求/秒、サイト閲覧が毎年0.5要求/秒増えているので、2012年度の予測はそれぞれ19要求/秒と2.5要求/秒です。表1によると、サイト閲覧はWebサーバだけで完結します。APサーバ群のインターネット予約用の処理能力20要求/秒は19要求/秒を処理でき、窓口予約用の10要求/秒も予測値7要求/秒を処理できるため、APサーバの追加購入は不要です。一方、Webサーバ群には合計21.5要求/秒が到達するので、現在の18要求/秒では不足します。

設問1(1)(b)

表1の要求の流れと、サイト閲覧はWebサーバだけで要求が完結するという注記に着目します。公式解答例では、APサーバが処理するWebサーバ経由の要求にサイト閲覧は含まれないことを理由としています。45字以内では「APサーバが処理するWebサーバ経由の要求にサイト閲覧は含まれないから。」とまとめられます。採点講評では、合計21.5要求/秒が全てAPサーバで処理されると誤解し、処理能力の割当て変更で対応する答案が目立ったとされています。Webサーバへの要求合計と、APサーバに到達する予約要求を区別することが重要です。

設問1(2)(a)

追加購入するのはWebサーバ1台です。表3のWebサーバの取得価額は1台5、000千円なので、空欄aは公式解答例の「5、000」となります。追加後のWebサーバ群の処理能力は6×4=24要求/秒となり、予測値21.5要求/秒を処理できます。ここで求めるのは購入費用なので、年間保守費は加えません。

設問1(2)(b)

空欄bは、追加購入分を含めた全サーバの年間保守費です。図1の既存構成はWebサーバ3台、APサーバ2台、DBサーバ1台なので、追加後はWebサーバが4台になります。表3から、4×750+2×1、500+1×3、000=9、000千円です。公式解答例も「9、000」です。表5で別の費目とされている通信機器保守費は、この全サーバ保守費には含めません。

設問1(3)

対象は2012年4月に使用を開始した取得価額5、000千円のWebサーバです。本文の定率法の式に従い、2012年度は5、000×0.5=2、500千円、2013年度は(5、000-2、500)×0.5=1、250千円です。2014年度は(5、000-2、500-1、250)×0.5=625千円となり、公式解答例の「625」に一致します。2014年度は使用開始から3年目であり、取得価額を毎年均等に割るのではなく、未償却の残額に0.5を掛けます。

設問2(1)

経営企画部の目標は、2015年度以降の年間システム運営費用を大幅に削減することです。大容量ディスクの償却費は定率法で年々減るため、早く使用を始めれば、目標年度の償却費負担を小さくできます。2013年度に使用を開始すると償却費は7、500千円、2014年度は3、750千円、2015年度は1、875千円です。公式解答例では、2015年度以降の減価償却費負担を減らし、費用削減効果を高めたいことを理由としています。40字以内では「2015年度以降の減価償却費負担を減らし、費用削減効果を高めるため。」とまとめられます。採点講評でも、特定年度の費用内訳だけでなく、定率法と早期使用開始に着目することが求められています。

設問2(2)(a)

公式解答例では「変更案」が選ばれています。2014年度について、変更案で増える大容量ディスクの費用は、年間保守費2、000千円と2年目の償却費3、750千円の合計5、750千円です。一方、オペレーション要員1名の削減によって年間6、000千円の運用人件費を減らせます。削減額が追加費用を250千円上回るので、変更案が有利です。購入額15、000千円をそのまま2014年度の運営費用に加えるのではなく、その年度の償却費として比較します。

設問2(2)(b)

両案で共通する既存設備などの費用は差額計算で相殺できます。変更案による運用人件費削減は6、000千円、大容量ディスクの年間保守費は2、000千円です。2014年度のディスク償却費は、2013年度の償却費7、500千円を差し引いた残額に0.5を掛け、(15、000-7、500)×0.5=3、750千円となります。したがって、差額は6、000-2、000-3、750=250千円で、公式解答例も「250」です。変更案の年間システム運営費用が現行案より250千円少なくなります。

設問3(1)

表6では、専用線は総合予約システムだけで使用される一方、インターネット接続は電子メールシステムにも使用されると記されています。そのため、インターネット接続費用の全額を総合予約システムに割り当てると、共用費用の負担が適切になりません。公式解答例も、インターネット接続費用は総合予約システムだけで使用している費用ではないことを理由としています。40字以内では「インターネット接続費用は電子メールシステムでも使用しているから。」と、共用されている事実を示します。

設問3(2)

改善には、共用するインターネット接続費用を総合予約システムと電子メールシステムに配賦する仕組みが必要です。公式解答例も、この二つのシステム間で費用を配賦する仕組みを挙げています。40字以内では「総合予約システムと電子メールシステムにインターネット接続費用を配賦する仕組み。」とまとめられます。採点講評では、システムごとの回線使用量を把握可能にすることだけを述べた答案が多かったとされています。使用量の把握にとどめず、サービスに費用を割り当てるところまで示すことが要点です。

学習のポイント

要求数を処理経路ごとに区別すること、定率法で年度別費用を計算すること、共用費用を適切に配賦することを学びましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成24年度秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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