SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

平成24年度秋期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 サービスレベル管理に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。 Z社は,消費者向けのスポーツ用品を製造する中堅企業であり,商品は全国の小売店で販売されている。 〔オンラインショッピングサイトの新規開設〕 Z社では,売上拡大を図るために,消費者向けオンラインショッピングサイトを新規に開設し,営業管理部が企画・運営を担当することになった。オンラインショッピングサイトのWeb注文受付システム(以下,Wシステムという)は,情報システム部が新規に構築し,ITサービス(以下,Wサービスという)として提供する予定である。 情報システム部のM部長は,Wシステムの構築と,Wサービスとして提供するために必要なマネジメントを,ITサービスマネージャのU氏に指示した。 〔Wサービスのサービスレベル目標〕 U氏は,営業管理部に,Wサービスに関する要望をヒアリングし,サービスレベル要件としてまとめた。その結果を基に,U氏は表1のサービスレベル目標を設定した。 表1 Wサービスのサービスレベル目標 〔クラウドサービスの活用〕 U氏は,Wシステムのプラットフォームを,社外のクラウド事業者が提供するクラウドサービスから調達することにした。また,アプリケーションは,情報システム部が自社開発する方針とした。この方針に基づいたシステム構成要素ごとの責任分担を,図1に示す。 図1 システム構成要素ごとの責任分担 U氏は,毎月第3日曜日の23時から翌日8時までをシステムの計画停止時間とする前提で,Wシステムを設計することにした。そして,別途算出したアプリケーション部分の稼働率を踏まえると,稼働率に関するサービスレベル目標を達成するためには,プラットフォーム部分の稼働率を99.9%以上にする必要があると判断した。また,Web画面の応答性能が低下した場合には,CPU,メモリなどを迅速に増強して改善することにした。 〔クラウド事業者の選定〕 U氏は,Wシステムのプラットフォーム調達に当たって,クラウド事業者であるA社及びB社のプラットフォーム提供サービスの内容を比較し,評価した。その結果,両社のサービスでは,いつでもリソースの追加依頼が可能で,システムを停止させずに,CPU,メモリ及びディスク容量を追加できることが分かった。 なお,B社では,標準サービスに加えて選択可能なオプションを提供しており,追加料金を支払えば,必要なオプションを選択できる。U氏が収集した情報を,表2及び表3に示す。 表2 A社及びB社の標準サービスの内容 表3 B社のサービスで選択可能なオプション A社及びB社のプラットフォーム提供サービスの内容を比較し,評価した結果,U氏は,(ア)A社の標準サービスでは,表1に示されたサービスレベル目標を達成できないと判断した。そして,Z社の予算の範囲内であることを確認した上で,B社のサービスを採用し,表3の二つのオプションを選択することにした。情報システム部は,表2及び表3のサービス内容についてB社と合意し,クラウドサービスの利用契約を締結した。 〔オペレーション体制の確立〕 U氏は,サービスレベル目標を達成するためには,オペレーション管理を適切に行うことが重要であると考えた。情報システム部のオペレーションチームは,24時間365日体制を採っていて,既に他システムのオペレーションの実績がある。そこで,Wシステムのオペレーションを,情報システム部のオペレーションチームに依頼することにした。 〔オンラインショッピングサイトの提供〕 Z社では,システム障害によって消費者向けサービスが中断した場合の社内ルールを,次のとおりに規定している。 ・障害診断の後,必要な対応を行ってシステムを回復させる。 ・回復後,全機能が正常であることを自社内で確認してから,消費者向けサービスを再開する。 U氏はこれらの社内ルールを踏まえ,アプリケーションの障害だけでなく,プラットフォームの障害などが発生した場合にも使用すべき“共通の正常稼働確認手順書”を作成し,オペレーションチームに配付した。 情報システム部と営業管理部が合同で,Wシステムの運用テストを実施し,全機能が問題なく動作することを確認した。また,オペレーションチームがWシステムの全機能について正常であることを確認する作業も,滞りなく実施できることを確認した。しかし,確認作業は1時間30分も掛かることが判明した。U氏は,確認作業の時間短縮のために,(イ)一部のオペレーションを自動化し,1時間以内で確認できるように改善した。 運用テストが無事終了し,Z社では,8月1日から消費者向けにオンラインショッピングサイトを提供することを決定した。ただし,8月1日から9月30日までの2か月間は,オンラインショッピングサイトの初期提供期間として位置付け,Z社のメールマガジン購読者だけがアクセスできるようにして,オンラインショッピングサイトを公開する。10月1日からは,本格サービスとして,全ての消費者向けにオンラインショッピングサイトを公開する予定である。 U氏は,8月1日からは,初期提供期間の利用者数に見合ったリソースで運用を開始する方針とした。そして,10月1日からは,本格サービスの利用者数に見合ったリソースを追加する計画である。 8月1日からのサービス提供開始に当たって,営業管理部からの要望を受け,情報システム部と営業管理部は,WサービスのサービスレベルについてSLAを締結することにした。SLA締結に向けた話合いの中で,営業管理部から,“オンラインショッピングサイトという新規サービスの提供に当たって,サービス稼働中は,利用者が快適に使用できる環境を提供したい。”との意見が出された。そこで,U氏は,初期提供期間のサービス利用者を対象として,アンケート方式による顧客満足度調査を行うことにした。 設問1 〔Wサービスのサービスレベル目標〕において,表1に示された稼働率に関するWサービスのサービスレベル目標を達成するためには,Wシステムの稼働率の目標値を,最低何%に設定する必要があるか。1年を365日とし,小数第3位を四捨五入して,小数第2位まで答えよ。 設問2 〔クラウド事業者の選定〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) 本文中の下線(ア)について,A社の標準サービスでは表1に示されたサービスレベル目標を達成できない理由を二つ挙げ,それぞれ30字以内で具体的に述べよ。 (2) U氏は,Wサービスのサービスレベル目標を達成するために,“リソース追加の所要時間”オプションを選択した。このオプションを選択した理由について,40字以内で具体的に述べよ。 設問3 〔オンラインショッピングサイトの提供〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1) 本文中の下線(イ)の対応を行わなかった場合には,オンラインショッピングサイトの提供開始後にプラットフォームの障害が発生したときに,Wサービスのサービスレベル目標に関して問題が生じるおそれがある。問題の内容を,50字以内で具体的に述べよ。 (2) Web画面の応答性能に関するサービスレベル目標について,初期提供期間に確認すべきことを,40字以内で述べよ。 (3) 顧客満足度調査のアンケートで質問すべき内容は何か。サービスレベル目標との関係から,20字以内で述べよ。
表1 Wサービスのサービスレベル目標。Wサービスのサービスレベル目標の表。Web画面の応答時間は3秒以内(超えたら2時間以内に改善)、稼働率は計画停止(毎月第3日曜23時~翌8時)以外の停止を年間50時間以内、障害時は5時間以内に復旧、障害検知から30分以内に営業管理部へ連絡。
表1 Wサービスのサービスレベル目標。Wサービスのサービスレベル目標の表。Web画面の応答時間は3秒以内(超えたら2時間以内に改善)、稼働率は計画停止(毎月第3日曜23時~翌8時)以外の停止を年間50時間以内、障害時は5時間以内に復旧、障害検知から30分以内に営業管理部へ連絡。
図1 システム構成要素ごとの責任分担。システム構成要素と責任分担を示す図。アプリケーションは情報システム部が担当し、プラットフォーム(ミドルウェア、OS、ハードウェア・ネットワーク)はクラウド事業者が担当する。
図1 システム構成要素ごとの責任分担。システム構成要素と責任分担を示す図。アプリケーションは情報システム部が担当し、プラットフォーム(ミドルウェア、OS、ハードウェア・ネットワーク)はクラウド事業者が担当する。
表2 A社及びB社の標準サービスの内容。A社とB社の標準サービスの比較表。リソース追加の所要時間はA社が依頼から30分以内、B社が1営業日以内。稼働率は両社99.5%以上、復旧時間は両社4時間以内。障害連絡はA社が規定なし、B社が障害検知から15分以内(監視・連絡の注記付き)。
表2 A社及びB社の標準サービスの内容。A社とB社の標準サービスの比較表。リソース追加の所要時間はA社が依頼から30分以内、B社が1営業日以内。稼働率は両社99.5%以上、復旧時間は両社4時間以内。障害連絡はA社が規定なし、B社が障害検知から15分以内(監視・連絡の注記付き)。
表3 B社のサービスで選択可能なオプション。B社で選択できるオプションの表。オプション1はリソース追加の所要時間を依頼から30分以内とするもの、オプション2はプラットフォームの稼働率を99.99%以上とするもの。
表3 B社のサービスで選択可能なオプション。B社で選択できるオプションの表。オプション1はリソース追加の所要時間を依頼から30分以内とするもの、オプション2はプラットフォームの稼働率を99.99%以上とするもの。
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判断の前提となる条件をそろえる

この分野を検討するときは、判断に使う前提条件がそろっているかに注目しましょう。示された情報の意味を急いで決めず、どの条件の下で成り立つ内容なのかを整理し、考える範囲を確かめてください。

この問題で問われていること

考える際には、与えられた条件と自分が補っている前提を分けて捉えてください。情報を結び付ける前に、同じ前提で扱えるかを確認し、条件が明確でない部分については、決め付けずに保留することが手掛かりになります。

視点

情報の意味は、置かれた前提によって捉え方が変わります。明示された条件と、経験や印象から補った条件を区別し、判断の出発点をそろえて整理しましょう。

確認ポイント

  • 明示されている前提条件を押さえたか
  • 自分の推測を前提条件に加えていないか
  • 情報を結び付ける際に前提がそろっているか
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解説

顧客の要求から設定したサービスレベル目標を、クラウドの契約条件と自社の運用作業によって実現する問題です。稼働率の計算、性能改善と復旧の時間制約、初期提供期間の計画と実績の確認、利用者の満足度を関連付けて読み解きます。

問題の全体像

Z社はオンラインショッピングサイトを新設し、アプリケーションを自社開発、プラットフォームをクラウドから調達します。営業管理部の要求に基づく目標は、応答時間3秒以内、性能低下時の2時間以内の改善、年間の計画外停止50時間以内、5時間以内の復旧、障害検知から30分以内の連絡です。公式の出題趣旨では、顧客の要件を踏まえて目標値を設定・管理し、達成に必要なリソースを調達して適切に対応する能力を問うとしています。各設問では、サービス全体の目標と、事業者の提供条件、自社の確認作業、利用実績との関係を具体的に説明することが重要です。

設問1

表1の計画停止と計画外停止を分けて計算します。年間の総時間は365×24=8、760時間です。計画停止は毎月第3日曜日の23時から翌日8時までの9時間なので、年間9×12=108時間となります。計画停止を除く時間を分母にすると、稼働率は(8、760-108-50)÷(8、760-108)×100=約99.422%で、指定どおり丸めると99.42%です。一方、計画停止を含む年間総時間を分母にすると、(8、760-108-50)÷8、760×100=約98.196%となり、98.20%です。公式解答例では99.42又は98.20が示されています。計算過程では、計画停止を分母から除くか、停止時間として含めるかを明確にします。

設問2(1)①

〔クラウドサービスの活用〕にある、プラットフォーム部分の稼働率を99.9%以上にする必要があるという判断と、表2のA社の標準サービスを比較します。A社の条件は99.5%以上であり、必要な99.9%以上を満たす保証がありません。比較対象はWシステム全体の稼働率ではなく、アプリケーション部分の稼働率を踏まえて求められたプラットフォーム部分の条件です。公式解答例では、この稼働率の不足を理由に挙げています。30字以内の答案例は「プラットフォームの稼働率が99.9%未満だから。」です。

設問2(1)②

表1では、障害検知から30分以内に営業管理部へ連絡することを求めています。しかし、表2のA社の標準サービスには、障害発生時の連絡時間の規定がありません。この条件では、プラットフォームの障害について事業者から適時に連絡を受け、営業管理部への連絡目標を達成できる裏付けが得られません。B社には障害検知から15分以内という規定があります。公式解答例では、A社に連絡時間の規定がないことを理由に挙げています。30字以内の答案例は「障害発生時の連絡時間に規定がないから。」です。

設問2(2)

表1では、応答時間が3秒を超えた場合、システムを停止させずに2時間以内に改善することを求めています。本文では、その改善方法としてCPUやメモリなどの迅速な増強を選んでいます。B社の標準サービスはリソース追加まで1営業日以内なので、2時間以内の改善に間に合う保証がありません。表3のオプションを選べば、依頼から30分以内に追加できます。公式解答例では、3秒を超えた応答時間を2時間以内に改善する必要があることを理由としています。40字以内の答案例は「応答時間が3秒を超えた際に、2時間以内に改善するため。」です。

設問3(1)

表1の復旧時間5時間以内と、表2のプラットフォームの復旧時間4時間以内に着目します。社内ルールでは、システム回復後に全機能の正常動作を確認してからサービスを再開します。自動化しなければ、この確認に1時間30分掛かるため、プラットフォームの復旧に4時間掛かった場合、再開まで合計5時間30分となり、目標を超えます。公式解答例では、プラットフォームの復旧が3時間30分を超えると5時間以内に復旧できない、という説明などが示されています。50字以内の答案例は「プラットフォームの復旧が3時間30分を超えると、確認作業を含め5時間以内に復旧できない。」です。

設問3(2)

本文では、初期提供期間は限定した利用者数に見合うリソースで運用し、本格サービス開始時にリソースを追加する計画です。そのため、初期提供期間には、リソースの使用状況と応答時間の実績値が計画に見合っているかを確認します。応答時間が3秒以内かを確認するだけでは、利用者数に応じたリソース計画の妥当性まで判断できません。公式解答例では、リソースの使用状況と応答時間の実績値を計画と照合することが示されています。採点講評でも、計画や各種実績値への着目と、初期提供期間を設けた意図の理解を求めています。40字以内の答案例は「リソースの使用状況と応答時間の実績値が計画に見合っているか。」です。

設問3(3)

営業管理部の要望は、サービス稼働中に利用者が快適に使用できる環境を提供することです。これを表1の目標と対応付けると、利用者が操作した際のWeb画面の応答性能が該当します。顧客満足度調査では、応答時間の測定値とは別に、その応答性能を利用者がどう感じているかを質問します。公式解答例では「Web画面の応答性能に関する満足度」と示されており、この表現は20字以内に収まります。サイト全般の満足度ではなく、サービスレベル目標に対応する対象を明示します。

学習のポイント

サービス全体の目標を構成要素の条件と運用作業に分解し、時間制約や計画と実績の整合性を確認する力を養います。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成24年度秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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