SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

平成23年度秋期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 セキュリティ管理に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 A社では,カタログで紹介している健康食品の注文を,電話,メールで受け付けて,販売してきた。販売管理システムを利用して販売実績管理を行っており,運用及び保守はシステム部が担当している。 〔販売管理システムのアカウントの管理〕 販売管理システムへのアクセスは,利用者IDとパスワードによって認証する方法が採られている。 社員の利用者IDの付与プロセスは,次のとおりである。 (1) 利用者IDを必要とする社員が,自身の上長に利用者ID付与申請書を提出する。 (2) 上長は,社員への利用者ID付与が必要と判断した場合,社員からの利用者ID付与申請書を承認した上で,システム部の利用者ID管理者であるC氏に送付する。 (3) C氏は,利用者ID付与申請書に基づいて,システムに利用者IDを登録し,当該社員及び上長に利用者ID付与完了通知を送付する。 A社では社員の退職などによって利用者IDが不要になった場合には,上長が,利用者IDの削除を申請する。 利用者IDの削除プロセスは,次のとおりである。 (1) 上長がC氏に利用者ID削除申請書を送付する。 (2) C氏は,毎月月末のID一覧表更新作業に合わせて,削除申請のあった利用者IDをシステムから削除する。 (3) 利用者IDを削除した後,C氏は,上長に利用者ID削除完了通知を送付する。 システムの保守作業には,サーバの起動・停止,格納データの変更など,あらゆる操作が可能な特権IDが必要である。管理を簡素化するために,システム部全員で,一つの特権IDを共用している。特権IDを使用する場合は,個人の利用者IDでサーバにログインし,切替コマンドで個人の利用者IDから特権IDに切り替える仕組みにしている。 〔注文受付システムの検討〕 顧客の利便性を考慮して,今後はWebサイトで注文を受け付けることになった。そのための注文受付システムの構成を,システム部のK氏が検討した。 検討した注文受付システムの構成は,図1のとおりである。 注文受付システムのためのWebサーバ,アプリケーションサーバ,データベース(以下,DBという)サーバを新たに導入し,注文情報を注文DBに,顧客情報を顧客DBに保存する。 また,インターネットからの利用は,ファイアウォール(以下,FWという)を経由し,Webサーバにアクセスして注文ができるようにする。このとき,FWのパケットフィルタリング機能で,HTTPSのパケットだけを許可する。 図1 注文受付システムの構成 〔セキュリティ要件〕 A社では,注文受付システムのセキュリティ要件を,次のように規定している。 (1) インターネットからの不正アクセスを防止する。 (2) 情報漏えいなどの問題が発生した場合に,アクセス元,アクセス者,アクセスされた情報などを調査するために,全てのサーバのアクセスログを1年間保存する。 (3) アクセスログとして保存する項目のうち,顧客情報などの個人情報は,必要最小限にする。 (4) 保存したアクセスログの改ざん・削除の防止対策を実施する。 〔注文受付システムの見直し〕 システム部のB氏は,K氏が検討した注文受付システムを,セキュリティ要件に基づいて,次のように見直した。 (1) 外部からの攻撃の監視 ・FWのログを取得し,外部からの攻撃の有無を調査する。 ・次の手順に示すように,図2の形式で保存されているFWのログを毎日,分析し,ポートスキャンの有無を調査する。 ① FWのログから,アクションがDrop又はRejectである外部からのパケットを抽出する。 ② 同一の[a]から複数の[b]へのログが短時間に大量に発生している場合,ポートスキャンの有無を調査する。 図2 FWのログ (2) ログの管理 ・当初の検討ではリカバリ用に保管されているDB更新ログをDBサーバのアクセスログとして流用し,保存期間を1年間に延長することを考えていたが,DB更新ログを流用せず,新たにDBアクセスログを作成して,利用者ID,イベントタイプ,日時,成功/失敗,対象データのキー項目などを保存する。 ・FWのログ,Webサーバログ,APサーバログ,DBアクセスログを一元管理するために,ログサーバをLAN2に導入する。 ・ディスク容量の制約から1か月ごとに,アクセスログをログサーバのディスクに直近1か月分を残したまま,磁気テープに退避して保管する。 〔Webサーバのコンテンツ改ざん〕 Webサーバのコンテンツが改ざんされる事件が発生した。インターネットからWebサーバのセキュリティホールが攻撃可能な状態になっていたので,Webサーバに侵入され,コンテンツが改ざんされてしまった。システム部で調査したところ,FWの設定は正しく行われていたが,HTTPSを利用して改ざんされていたことが判明した。 A社では,再発防止策として,脆弱性対策及び不正プログラム対策と併せて,新たに侵入検知システム(以下,IDSという)を導入することにした。IDSでは,接続しているネットワークセグメントのトラフィックを監視し,ネットワークを流れるパケットのプロトコルヘッダやデータをあらかじめ定義されたルールに基づいて解析する。不正なパケットを検知した場合は,管理者の端末に異常を通知する。 ただし,解析処理に多くのCPU資源を使用することから,ネットワークトラフィックが増加すると,侵入検知機能が停止してしまうおそれがあるので,IDSの設置場所と,その設置場所に応じた処理能力の検討が必要である。 設問1 〔販売管理システムのアカウントの管理〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1) 現状の利用者IDの削除プロセスには問題がある。その問題の解決策を具体的に,30字以内で述べよ。 (2) アカウントの管理を補完する目的で,定期的に実施すべき作業がある。C氏が,各上長に依頼すべき作業内容を,40字以内で具体的に述べよ。 (3) 個人の利用者IDでサーバにログインし,切替コマンドで個人の利用者IDから特権IDに切り替える仕組みにしている理由を,25字以内で述べよ。 設問2 〔注文受付システムの見直し〕の外部からの攻撃の監視について,[a],[b]に入れる適切な字句を,図2の項目から選択して答えよ。 設問3 〔注文受付システムの見直し〕のログの管理について,(1)~(3)に答えよ。 (1) DB更新ログを流用せず,新たにDBアクセスログを作成することにした理由は何か。セキュリティ要件から,30字以内で述べよ。 (2) 保存したログを磁気テープに退避する目的は何か。セキュリティ要件から,35字以内で述べよ。 (3) ログサーバをLAN2に設置することには問題点がある。この問題点を40字以内で具体的に述べよ。 設問4 〔Webサーバのコンテンツ改ざん〕について,IDSを設置する最も適切な場所を,LAN1,LAN2及びLAN3の中から一つを選択して答えよ。また,その理由を40字以内で述べよ。
図1 注文受付システムの構成。インターネットからルータを経てLAN1(外部接続セグメント)に入り、FWがLAN2(非武装セグメント)とLAN3(内部セグメント)を分ける構成図。LAN2にWebサーバとWebサーバログ、LAN3にAPサーバ(APサーバログ)とDBサーバ(注文DB・顧客DB、DB更新ログ)がある。LAN3はルータ経由でPCのつながるLAN4(社内LAN)に接続している。
図1 注文受付システムの構成。インターネットからルータを経てLAN1(外部接続セグメント)に入り、FWがLAN2(非武装セグメント)とLAN3(内部セグメント)を分ける構成図。LAN2にWebサーバとWebサーバログ、LAN3にAPサーバ(APサーバログ)とDBサーバ(注文DB・顧客DB、DB更新ログ)がある。LAN3はルータ経由でPCのつながるLAN4(社内LAN)に接続している。
図2 FWのログ。FWのログの形式を示す1行の表。項目は、日時、発信元IPアドレス、発信元ポート番号、宛先IPアドレス、宛先ポート番号、プロトコル、アクションの七つである。
図2 FWのログ。FWのログの形式を示す1行の表。項目は、日時、発信元IPアドレス、発信元ポート番号、宛先IPアドレス、宛先ポート番号、プロトコル、アクションの七つである。
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検討の前提と対象範囲をそろえる

この分野を考えるときは、判断の前提と対象範囲がそろっているかに注目しましょう。扱う場面や条件を整理し、その条件が検討の途中で変わっていないかを確かめると、考えを落ち着いて進められます。

この問題で問われていること

問われている内容について、どの範囲までを対象に考えるかを意識してください。一般的な知識をそのまま当てはめる前に、与えられた条件の範囲で考えているかを確認し、根拠と前提のつながりを整理しましょう。

視点

判断は、その判断が成り立つ条件と合わせて整理すると捉えやすくなります。検討の対象範囲をそろえ、与えられた条件と自分で補った想定を区別して考えましょう。

確認ポイント

  • 検討の対象範囲を把握しているか
  • 与えられた条件に独自の想定を加えていないか
  • 考える途中で前提や対象範囲が変わっていないか
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解説

不要な利用者IDの即時削除と定期確認、共用特権IDの利用者特定、ポートスキャンのログ分析を理解する問題です。ログ管理では個人情報の最小化、1年間の保存、改ざん・削除防止を区別し、IDSの配置は監視対象と処理負荷から判断します。

問題の全体像

A社は、電話やメールで受け付けていた健康食品の注文をWebでも受け付けるため、注文受付システムを導入します。既存のアカウント管理に加え、顧客情報の保護、攻撃の監視、調査に必要なログの保存が課題になります。公式の出題趣旨では、アカウント管理、インターネットからのアクセスログ分析、セキュリティ改善を通じた実務管理能力を問うとしています。各設問では、一般的な対策を列挙するのではなく、本文の手順、セキュリティ要件、図1の配置に結び付けて説明することが重要です。

設問1(1)

削除プロセスの(2)にある「毎月月末のID一覧表更新作業に合わせて」に着目します。退職などで不要になった利用者IDでも、削除申請から月末まで利用可能な状態が続き、不正利用の機会が残ります。公式解答例では、削除申請のあった利用者IDをすぐに削除するとしています。30字以内の答案では、対象と実施時期を明確にし、「削除申請のあった利用者IDを直ちに削除する。」とまとめられます。

設問1(2)

IDの付与と削除が上長からの申請に基づく点に着目します。申請による管理だけでは、削除申請の漏れや登録内容の不一致を見逃すおそれがあるため、実際の登録内容を定期的に確認する作業が必要です。公式解答例では、システムに登録されている全ての利用者IDを抽出し、登録内容を確認することを挙げています。C氏は登録済みIDの一覧を基に、各上長へ担当社員の登録内容の確認を依頼します。40字以内では、「登録済みの全利用者IDを抽出し、登録内容を確認する。」という粒度で示せます。

設問1(3)

システム部全員が一つの特権IDを共用している点に着目します。共用IDだけでは、誰が特権を使用したのかを区別できません。個人の利用者IDでログインしてから切り替える仕組みは、特権IDの利用を個人に結び付けるためのものです。公式解答例では、特権IDの利用者を特定できるようにすることを理由としています。25字以内では、「特権IDを使用した個人を特定するため。」とまとめられます。

設問2(a)

分析手順②の「同一の[a]から」に着目します。ポートスキャンを疑う通信をまとめるには、同じ送信元から発生していることを確認します。図2の項目で通信の送信元を表すのは「発信元IPアドレス」です。公式解答例でも、aは「発信元IPアドレス」としています。発信元ポート番号ではなく、送信元の識別に用いるIPアドレスを選びます。

設問2(b)

「複数の[b]へのログが短時間に大量に発生」という条件と、調査対象がポートスキャンである点を結び付けます。ポートスキャンでは、相手の複数のポートへ通信を試み、利用可能なサービスなどを調べます。そのため、同じ発信元から異なる宛先ポートへの通信が集中しているかを確認します。公式解答例では、bは図2の「宛先ポート番号」です。宛先IPアドレスとの取り違えに注意してください。

設問3(1)

セキュリティ要件(3)の「顧客情報などの個人情報は、必要最小限にする」に着目します。リカバリ用のDB更新ログをそのまま流用すると、復旧のために記録された多くの個人情報をアクセスログとして保存することになります。公式解答例では、多くの個人情報を含み、セキュリティ要件に反することを理由としています。新しいDBアクセスログでは、利用者IDや対象データのキー項目など、調査に必要な項目を保存します。30字以内では、「DB更新ログは個人情報が多く、要件に反するため。」と示せます。

設問3(2)

セキュリティ要件(2)の「1年間保存」と、ログ管理の「ディスク容量の制約」を結び付けます。ディスクに長期間分を蓄積できないため、磁気テープへ退避して、必要な保存期間を確保します。公式解答例では、容量制約のある中でログの1年間保存に対応することを目的としています。採点講評では、直近1か月分がディスクに残るため、月ごとの退避は改ざん防止対策にはならないと指摘しています。35字以内では、「ディスク容量の制約下でログを1年間保存するため。」とまとめられます。

設問3(3)

図1でLAN2がWebサーバを置く非武装セグメントであることと、セキュリティ要件(4)のログの改ざん・削除防止に着目します。外部向けのWebサーバと同じセグメントにログサーバを配置すると、外部からの不正アクセスにより、調査の証拠となるログが改ざん・削除されるおそれがあります。公式解答例でも、この危険を問題点としています。40字以内では、「外部からの不正アクセスでログを改ざん・削除されるおそれ。」と、原因と被害を具体的に示せます。

設問4(場所)

図1のFWとWebサーバの位置関係を確認します。LAN1はFWで遮断される通信も流れる外部接続セグメント、LAN2はFWを通過してWebサーバへ届く通信が流れる非武装セグメントです。Webサーバへの通信を監視し、IDSの解析負荷も抑える配置として、公式解答例では「LAN2」を選んでいます。LAN3では、インターネットからLAN2のWebサーバへ向かう通信を直接監視する配置になりません。

設問4(理由)

本文末尾の、トラフィックが増加するとIDSの侵入検知機能が停止するおそれがあるという制約に着目します。LAN2では、FWが遮断した通信を解析対象から除き、許可された通信に対象を絞れるため、LAN1に置く場合よりIDSの負荷を軽減できます。公式解答例でも、この負荷軽減を理由としています。HTTPSだけを許可していても改ざんが発生した事例から、許可された通信も監視対象になると読み取れます。40字以内では、「FWが許可したパケットだけを解析し、IDSの負荷を軽減するため。」と示せます。

学習のポイント

各対策の目的をセキュリティ要件と対応付け、ネットワーク図と運用上の制約から具体的な答案を導く練習をしてください。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成23年度秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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