SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

平成23年度秋期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 キャパシティ管理に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。 F社は、高速バス運行会社であり、インターネット経由の予約システムを運用して いる。会員は、PC又は携帯電話からインターネット経由でアクセスして、高速バスの 空席照会・予約を行うことができる。F 社では、これらの会員をPC 会員と携帯電話 会員(以下、携帯会員という)に分けて管理している。毎日、5時から翌日1時まで、 会員向けのオンラインサービスを行っている。 F社は、携帯電話が幅広く普及している状況を踏まえ、携帯会員向けサービスを強 化し、携帯会員数の拡大を目指す戦略をとっている。今後数年にわたって、携帯会員 数が増加していくという見通しである。 〔予約システムの構成〕 予約システムの構成は、図1のとおりである。 (1) 負荷分散装置(以下、LB という)は、会員からのトランザクションをWeb サー バ1~3に振り分ける。 (2) 各Web サーバとアプリケーションサーバ(以下、AP サーバという)は、トラン ザクションを処理する。 (3) 磁気ディスク装置は、搭載された複数のディスクドライブにデータを記録できる タイプである。ディスクドライブは現在,10 台搭載されており、1台当たりの容量 は300GB である。磁気ディスク装置として使用可能な容量は、搭載されているディ スクドライブの容量の合計である。 〔キャパシティ管理〕 キャパシティ管理は,システム部が行っている。管理対象とその内容は、次のとお りである。 (1) ビジネス要件の一部として、会員数を管理している。会員数の予測を、表1に示 す。 (2) ピーク時トランザクション数を、表2のとおり予測している。この予測(指標) は、PC 会員の現在のピーク時トランザクション数を基準(1.0)とし、会員数の予 測値に比例すると仮定している。 なお、PC 会員及び携帯会員のトランザクションのピーク時間帯は、いずれも10 時から 11時までである。 (3) 安定したサービスを提供するために、予約システムの各サーバのCPU使用率、メ モリ使用率、磁気ディスク装置全体としての磁気ディスク使用率についてしきい値 を設定して管理している。また、これらの使用率を定期的に測定し、この測定結果 を基に,各リソースの増設要否を判断している。 〔Web サーバの性能〕 Web サーバ内の携帯電話向け処理機能は、PC向け処理機能よりも強化しているので、 携帯電話からのトランザクションの処理に必要な CPU使用時間は、PC に比べて増加 している。端末種類ごとのWeb サーバのCPU使用時間の比率を、表3に示す。 〔リソース使用状況の調査〕 システム部では、表1の会員数の予測及び表2のピーク時トランザクション数の予 測(指標)に示される今後の推移を踏まえて、予約システムの各リソースの使用状況 を調査した。予約システムのリソース管理のしきい値及び現在の測定値を、表4に示 す。 磁気ディスク装置については、装置内の現在のファイルごとの使用量を調査すると ともに、1年後のファイルごとの使用量を予測し、予約システムのリソース管理のし きい値に照らして、ディスクドライブの増設要否を検討した。磁気ディスク装置内の 各ファイルの使用量を、表5に示す。 〔新サービスの企画〕 (1) 企画部は、携帯会員向けの新たなサービスを企画した。その内容は、携帯会員が 予約した後、携帯電話に乗車票を表示するようにして、乗車時には乗車票を見せる だけで乗車できるサービス(以下、新サービスという)である。2か月後に一部の 携帯会員に対して新サービスの試行を開始し、各種評価を行った上で、6か月後に 全ての携帯会員に対して本格的に新サービスを開始する計画である。 (2) システム部は、新サービスに対応するために予約システムの機能改修を計画・実 施した。 〔新サービスに向けたテスト〕 システム部は新サービスに向けて、次に示すテストを行った。 (1) 予約システムの機能テストを行い、良好な結果を得た。 (2) トランザクションのピーク時間帯を想定した、予約システムの性能テストを計画 した。本番環境と同じシステム構成で、過負荷用シミュレータを用いた性能テスト を行い、良好な結果を得た。 (3) “販促活動を強化するために、1か月先までの座席予約状況リストをいつでも出 力できるようにしてほしい”という営業部からの強い要望を受けて,予約状況表示 プログラムを作成した。このプログラムは,座席予約状況リストが必要になるたび に営業部が起動し、AP サーバ上で実行される。大量の座席予約データを参照するの で、CPU負荷が高い。処理時間は、通常 5分程度である。本番環境と同じシステム 構成で、予約状況表示プログラムの機能テストを行い、良好な結果を得た。 システム部は、これらのテストの結果、予約システムに問題がなかったことから、 一部の携帯会員に対する新サービスの試行を、予定どおり開始することにした。 〔応答遅延の発生〕 新サービスの試行を開始してから約1か月後,携帯会員から“応答が遅い”という 苦情があった。システム部で、応答遅延の発生状況を調査したところ、①新サービス 開始の約 1週間後から同様の事象があった、②トランザクションのピーク時間帯に、 AP サーバで予約状況表示プログラムが実行されていた、ということが分かった。 システム部では、応答遅延の再発防止のために、運用上の暫定的な回避策を検討し、 営業部と調整することにした。 〔キャパシティ管理の見直し〕 システム部は、応答遅延の問題を発見できるように、キャパシティ管理の管理項目 を追加することにした。 設問1〔リソース使用状況の調査〕について、(1),(2)に答えよ。 (1) 1年後のピーク時のWebサーバのCPU使用率(%)を求めよ。答えは小数第 1位を四捨五入して、整数で求めよ。 なお、Web サーバの CPU負荷は、各端末からのトランザクション数に比例 している。各端末からはトランザクションが均等に発生する。 (2) 1年後までに増設すべき、ディスクドライブの必要最小限の台数を求めよ。 なお、増設するディスクドライブの1台当たりの容量は、現在と同じ容量と する。磁気ディスク使用率は、リソース管理のしきい値を超えないものとする。 設問2〔応答遅延の発生〕について、(1),(2)に答えよ。 (1) 応答遅延の発生は、新サービスに向けたテストを工夫していれば防止するこ とができた。〔新サービスに向けたテスト〕において、実施すべきであったテス トの内容を、40字以内で述べよ。 (2) 営業部との調整を前提にした運用上の暫定的な回避策を、35字以内で述べ よ。 設問3〔キャパシティ管理の見直し〕について、(1),(2)に答えよ。 (1) 追加すべき管理項目を答えよ。 (2) 応答遅延の問題発生の予兆を検知して、是正処置をとれるようにしたい。ど のようにすべきか、内容を、30字以内で述べよ。
インターネットからFW、LB、Webサーバ1〜3へ接続し、別FWを介してAPサーバと10台のディスクドライブを搭載した磁気ディスク装置へ接続する予約システム構成図。
インターネットからFW、LB、Webサーバ1〜3へ接続し、別FWを介してAPサーバと10台のディスクドライブを搭載した磁気ディスク装置へ接続する予約システム構成図。
現在から3年後までのPC会員、携帯会員、合計会員数を示し、PC会員は10,000から7,000へ減少、携帯会員は5,000から26,000へ増加する予測表。
現在から3年後までのPC会員、携帯会員、合計会員数を示し、PC会員は10,000から7,000へ減少、携帯会員は5,000から26,000へ増加する予測表。
現在から3年後までのピーク時トランザクション数の指標を、PC会員は1.0から0.7、携帯会員は0.5から2.6として示す予測表。
現在から3年後までのピーク時トランザクション数の指標を、PC会員は1.0から0.7、携帯会員は0.5から2.6として示す予測表。
PCからの1トランザクションのWebサーバCPU使用時間を1.0とし、携帯電話からの処理を1.2とする端末種類別CPU使用時間比率表。
PCからの1トランザクションのWebサーバCPU使用時間を1.0とし、携帯電話からの処理を1.2とする端末種類別CPU使用時間比率表。
Web・APサーバのCPU使用率とメモリ使用率、磁気ディスク使用率について、しきい値80%又は50%と現在の測定値48%、32%、30%、28%、40%を示す表。
Web・APサーバのCPU使用率とメモリ使用率、磁気ディスク使用率について、しきい値80%又は50%と現在の測定値48%、32%、30%、28%、40%を示す表。
座席マスタ、会員マスタ、座席予約ファイルの現在使用量200GB、300GB、700GBと、1年後の予測倍率1.2倍、1.4倍、1.5倍を示す表。
座席マスタ、会員マスタ、座席予約ファイルの現在使用量200GB、300GB、700GBと、1年後の予測倍率1.2倍、1.4倍、1.5倍を示す表。
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性能予測と監視を整理する視点

キャパシティ管理では、将来の需要や資源余力を見通す観点と、実際の状態を継続的に把握する観点を分けて整理し、テストで得た根拠との関係にも注目します。各活動の役割を混同しないことが大切です。

この問題で問われていること

一つの観点として、予測・監視・テストがそれぞれ何を明らかにする活動なのか、対象と得られる根拠の違いを問題文の表現と照らして確認してください。特に、扱う時間軸と観測方法に注目します。

視点

概念を整理するときは、将来を見通す活動、現在の状態を測る活動、条件を与えて確かめる活動を混同せず、それぞれの目的と得られる情報の役割を切り分けて考えます。

確認ポイント

  • 対象としている時間軸を確認する
  • 得られる情報の種類を整理する
  • 活動の目的と根拠の関係を確認する
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解説

将来の会員構成と端末別負荷を基に、WebサーバのCPU使用率やディスク増設量を計算する。さらに、ピーク時間帯の競合処理による応答遅延を防ぐテスト、暫定対策、応答時間の監視方法を問う問題です。

問題の全体像

F社はPC会員と携帯会員が利用する予約システムを運用し、携帯会員の増加と新サービスの導入を計画している。設問1では将来需要に対するCPU使用率とディスク容量を算出し、設問2ではピーク時に高負荷プログラムが同時実行される問題へのテストと暫定対策を考える。設問3では、既存のCPU・メモリ・ディスク使用率だけでは発見できなかった応答遅延を検知する管理項目と判定方法を問う。出題趣旨では、将来需要に適合させるキャパシティ管理と、性能問題への実務的な対策が重視されている。

設問1(1)

現在のWebサーバCPU使用率48%を基準に、端末別のピーク時トランザクション量とCPU使用時間の比率を反映する。現在の負荷をPC1.0+携帯0.5×1.2=1.6、1年後の負荷をPC0.9+携帯1.2×1.2=2.34と置く。したがって、48×2.34÷1.6=70.2%となり、小数第1位を四捨五入して70%です。携帯電話のCPU使用時間がPCより1.2倍である点を、単なるトランザクション数の増加に加えて考えることがポイントです。

設問1(2)

現在のディスク容量は300GB×10台=3、000GBで、ファイル使用量は合計1、200GBです。1年後は、座席マスタ200×1.2=240GB、会員マスタ300×1.4=420GB、座席予約700×1.5=1、050GBとなり、合計1、710GBになる。磁気ディスク使用率をしきい値50%以下にするには、必要容量は1、710÷0.5=3、420GB以上です。1台300GBなので12台必要となり、現在の10台から2台増設する。

設問2(1)

機能テストと、ピーク時間帯を想定した性能テストは実施されていたが、予約状況表示プログラムは性能テストの対象になっていなかった。実際の障害は、ピーク時間帯にこの高負荷プログラムがAPサーバで動作したことで発生したため、予約システムの性能テスト中に予約状況表示プログラムを実行するテストが必要です。40字以内では、ピーク時の通常処理と高負荷処理の同時実行を簡潔に押さえる。公式解答例もこの同時実行のテストを示している。

設問2(2)

応答遅延は、ピーク時間帯に予約状況表示プログラムが実行されたことが直接の発生条件です。したがって、営業部と調整した上で、予約状況表示プログラムをピーク時間帯に実行しない運用に変更する。公式解答例では、ピーク時間帯にかかる実行を禁止する内容としている。

設問3(1)

既存の管理項目はCPU使用率、メモリ使用率、磁気ディスク使用率です。しかし今回の問題では、これらの資源使用率だけでは、利用者が体感するサービスの遅さを直接把握できなかった。したがって、追加すべき管理項目は応答時間です。

設問3(2)

応答遅延の予兆を検知し、是正処置につなげるには、応答時間について許容範囲を定め、測定値がそのしきい値を超えたか判定できるようにする。公式解答例では、応答時間のしきい値を判定条件として設定する内容を示している。30字以内では、応答時間の測定、しきい値、超過時の対応という関係を意識する。

学習のポイント

需要予測、資源使用率の計算、性能テスト、応答時間の監視を重点的に学ぶ。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成23年度秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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