SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

平成22年度秋期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 サービスデスクに関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。 旅行代理店のD社では、国内旅行の企画商品などを販売するシステム(以下、販売 システムという)を運用している。全国 100か所の営業店舗では、店舗に設置されて いる端末から販売システムを利用して販売業務を行っている。また、D社は、インタ ーネット上に Webサイトを公開し、一般会員及び法人会員向けに販売を行っている。 Web サイトを含む販売システムの管理は、D 社の情報システム部で行っている。情 報システム部に設置されているサポートセンタでは、営業店舗及び法人会員からの販 売システムに関する問合せ(障害対応依頼を含む)を、インシデントとして受け付け ている。 なお、一般会員からの問合せ窓口は、サポートセンタとは別に設置されている。 〔サポートセンタの概要〕 サポートセンタは、リーダ1名と窓口担当者 20名の社員で構成されている。窓口担 当者のうち 16名が営業店舗チームに、4名が法人会員チームに配置され、9時から18 時まで問合せを受け付けている。 サポートセンタでは、対応マニュアル、FAQ, インシデント履歴、操作マニュアル、 障害情報,構成情報,会員情報を参照して、利用者からの問合せに対応している。 問合せ内容がFAQに適合した場合は、問合せ内容と参照した FAQ 番号を、インシデン ト履歴に記録する。適合しなかった場合は、問合せ内容,回答内容及びFAQ 不適合の 旨を、インシデント履歴に記録する。 〔FAQの改訂〕 サポートセンタにとって、FAQ は利用者からの問合せに的確に対応するために不可欠な情報であり、次の二つの方法によって改訂を行っている。 ① [a]を基にして定期的に内容の分析を行う。一定期間以上にわたって参照されていない項目を抽出して、FAQから削除する。 ② システムの更新や新サービスの開始によって問合せが増えると想定される項目を、過去の実績などを参考にしながら事前に予想して、FAQに反映させる。 FAQの内容について、窓口担当者からは、“FAQ が問合せ内容に適合しない場合が 多く、記録に手間が掛かるので、FAQを改善してほしい”という要望が出ている。 〔インシデント発生時の対応〕 インシデント発生時の対応業務フローを図に示す。 (1)利用者からのインシデントは、サポートセンタの該当する営業店舗チーム又は法 人会員チームが受け付ける。 (2) 1次窓口であるサポートセンタでは、受け付けたインシデントを解決するため に,診断スクリプトを使用してインシデントの初期診断などを行う。また、FAQな どの情報に基づいて調査し、サポートセンタで回答できる場合は、速やかに回答す る。 (3) サポートセンタで回答できない場合,業務に関することはアプリケーション保守 課に、ネットワークに関することはネットワーク保守課に、その他に関すること及 び不具合箇所を特定できないときはシステム運用課に、それぞれ対応を依頼する。 対応を依頼された各課では、サポートセンタから得た情報を基にして、各課で整備 されている診断手順によって原因と対処方法を特定し、サポートセンタに対処方法 を回答する。サポートセンタは各課からの回答結果を基にして、利用者に回答する。 なお、多くの利用者が販売システムを利用できないといった状況など、インシデ ントが重要トラブルと判断される場合,サポートセンタではインシデントの解決時 間に目標値を設定し、対応を開始する。重要トラブルの定義や解決時間の目標値に ついては、あらかじめD社の関係者と合意されている。 〔発生したインシデントへの対応例〕 ある日、サポートセンタは営業店舗から“販売システムに接続できない”という問 合せを受け付けて、次のように対応した。 (1) 営業店舗からの問合せ内容を、インシデント履歴に記録し、状況をヒアリングし た。 (2) サポートセンタでは、不具合箇所を特定できなかったので、システム運用課に連 絡し、対応を依頼した。 (3) システム運用課では、販売システムの稼働状況を確認したが、営業店舗のルータ の不具合が疑われたので、営業店舗に直接連絡し、ルータの状態を確認してもらっ たところ、ルータの異常を示すランプが点灯していることが分かった。 (4) システム運用課は、ネットワーク保守課に連絡し、対応を依頼した。 (5) ネットワーク保守課は必要な調査を行い、サポートセンタに対処方法を回答し た。 (6) サポートセンタは営業店舗にその内容を回答した。 この対応例の場合,図中の矢印で示される連絡経路は、“営業店舗→サポートセンタ”,“サポートセンタ→システム運用課”,“システム運用課→営業店舗”,“システム運用課→ネットワーク保守課”,“ネットワーク保守課→サポートセンタ”,“サポートセンタ→営業店舗”で、連絡経路数は6となる。 〔サポートセンタの管理指標〕 サポートセンタでは、管理指標を表 1のように定め,チームごとに各管理指標を測 定し、管理している。サポートセンタは、重点施策として利用者満足度の向上に取り 組んでいる。利用者満足度の調査は、サポートセンタを利用したことのある営業店舗 及び法人会員の中から、調査対象として 10%を無作為に抽出し、満足度調査票を配布 し、回収している。満足度調査票には、“サポートセンタの満足度”などの質問項目と 5段階評価(5:大変満足、4:満足、3:普通、2:不満、1:大変不満)の回答欄及び 意見記入欄が設けられている。 サポートセンタのリーダであるM氏は、表1の管理指標について今年6月の測定結 果の分析・評価を行った。各管理指標の実績値については、表2に示す。 〔営業店舗チームの改善〕 利用者満足度及び平均応答時間については、両チームとも目標値を達成していた。1 次窓口解決率については、営業店舗チームが目標値を達成していなかったので、M氏 はその原因を調査した。その結果、(ア)今年5月以降、営業店舗から、端末の業務ア プリケーションに関する問合せが多く寄せられていて,その都度アプリケーション保 守課に対応を依頼していたことが分かった。そこで、M 氏は、営業店舗チームの1次 窓口解決率を向上させるための対策を実施することにした。 〔法人会員チームの改善〕 D社では、今年8月に,法人会員が利用するWeb サイトを再構築し、9月に利用者 満足度の調査を実施した。その結果,満足度調査票の意見記入欄に“問合せの受付か ら回答までに時間が掛かりすぎている”という不満の声が散見された。 M 氏がその実態を調査した。法人会員からの問合せに対して、サポートセンタで解 決できない場合、問合せ内容によって該当する課に対応を依頼する。この際、依頼を 受けた各課で対処方法を回答するときに時間が掛かっていることが分かった。 そこで M 氏は、法人会員からの問合せに対する回答までの時間を短縮するための対 策を各課に依頼した。また、M氏は、(イ)サポートセンタで実施すべき内容を整理し、管理することにした。 設問1〔FAQの改訂〕について、(1),(2)に答えよ。 (1) 本文中の[a]に入れる適切な字句を答えよ。 (2) 窓口担当者からの要望に対応するための FAQの改訂方法を、55字以内で述 べよ。 設問2〔発生したインシデントへの対応例〕について、(1),(2)に答えよ。 (1) 営業店舗から“販売システムに接続できない”という問合せを受けた際のサポートセンタの対応方法を見直すことによって、連絡経路数を削減できる場合 がある。この対応例において、サポートセンタが見直すべき内容を、50字以内 で述べよ。 (2) (1)の見直しによって、連絡経路数は幾つになるか。 設問3 本文中の下線(ア)について、サポートセンタからアプリケーション保守課に 対応を依頼せずに、サポートセンタだけで対応できるようにして 1次窓口解決率 を向上させたい。そのために、情報システム部で実施すべき対策を、40字以内で 述べよ。 設問4 本文中の下線(イ)について、サポートセンタでどのような内容を管理すべき であるか。40字以内で述べよ。
本部会員・店舗利用者、サポートセンタ、アプリケーション保守、システム運用、ネットワーク保守の間で、問合せ受付、切分け、対応依頼、復旧確認を行うインシデント対応業務フロー図。
本部会員・店舗利用者、サポートセンタ、アプリケーション保守、システム運用、ネットワーク保守の間で、問合せ受付、切分け、対応依頼、復旧確認を行うインシデント対応業務フロー図。
サポートセンタの管理指標として、利用者満足度、平均応答時間、一次解決率の定義と目標値を示す表。
サポートセンタの管理指標として、利用者満足度、平均応答時間、一次解決率の定義と目標値を示す表。
店舗チームと本部チームの6月実績を比較し、利用者満足度4.0・4.1、平均応答時間5秒・8秒、一次解決率72%・90%を示す表。
店舗チームと本部チームの6月実績を比較し、利用者満足度4.0・4.1、平均応答時間5秒・8秒、一次解決率72%・90%を示す表。
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検討する対象と範囲をそろえる

この分野を検討するときは、扱っている対象と範囲をそろえることに注目しましょう。同じ言葉が使われていても、どこまでを含めているかによって意味が変わるため、前提を丁寧に確かめることが大切です。

この問題で問われていること

考える際には、そこで扱われている内容がどの範囲を指しているかを意識しましょう。範囲を自分の思い込みで広げたり狭めたりせず、示された条件に照らして、同じ範囲の中で検討できているかを確認します。

視点

対象と範囲は、考察の出発点となる前提です。扱う範囲が途中で変わっていないかを意識すると、与えられた条件に沿って考えを整理しやすくなります。

確認ポイント

  • 扱う対象と範囲を確認したか
  • 示された範囲を思い込みで広げたり狭めたりしていないか
  • 検討の途中で範囲が変わっていないか
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解説

本問は、インシデント履歴を活用したFAQの改善、初期診断による連絡経路の削減、サポートツールの整備による一次窓口解決率の向上、回答までの時間の管理を扱う。各対策を、本文で示された問題と結び付けて具体化することが要点です。

問題の全体像

D社のサポートセンタは、営業店舗と法人会員から販売システムに関する問合せを受け付け、初期診断やFAQの参照を行い、必要に応じて専門部署に対応を依頼している。事例では、FAQの不適合、余分な連絡経路、営業店舗チームの一次窓口解決率の未達、法人会員への回答の遅さが改善対象となっている。公式の出題趣旨では、サポートツールの使用、インシデント管理、管理指標の設定・評価分析、顧客満足度を向上させる管理能力を問うとしている。

設問1(1)

公式解答例では、aは「インシデント履歴」です。本文の〔サポートセンタの概要〕では、FAQに適合した場合、問合せ内容と参照したFAQ番号をインシデント履歴に記録するとある。この記録を分析すれば、一定期間以上参照されていないFAQ項目を抽出できるため、〔FAQの改訂〕の分析元に当てはまる。

設問1(2)

窓口担当者の要望は、FAQが問合せ内容に適合しない場合が多く、記録に手間が掛かるというものです。本文では、不適合の場合に問合せ内容、回答内容、FAQ不適合の旨をインシデント履歴に記録している。公式解答例では、この履歴からFAQ不適合のものを抽出し、当該問合せと回答内容をFAQに追加する。既存の削除方法や事前予測だけでは補えていない、実際の問合せを反映する改善です。55字以内の答案例は「インシデント履歴からFAQ不適合の問合せと回答内容を抽出し、FAQに追加する。」となる。

設問2(1)

対応例では、サポートセンタが不具合箇所を特定できずにシステム運用課へ依頼し、その後、システム運用課が営業店舗にルータの状態を確認している。ルータの異常を示すランプが点灯していたことが、ネットワーク保守課への依頼につながっている。公式解答例では、サポートセンタが営業店舗にルータの状態を確認し、異常があればネットワーク保守課に対応を依頼する。受付時のヒアリングでこの確認を行えば、依頼先を早く特定できる。50字以内の答案例は「ルータの状態を営業店舗に確認し、異常があればネットワーク保守課に対応を依頼する。」となる。

設問2(2)

公式解答例では、連絡経路数は「4」です。設問2(1)の見直しによって、受付時にルータの異常を確認し、サポートセンタからネットワーク保守課へ直接対応を依頼する。経路は「営業店舗→サポートセンタ」「サポートセンタ→ネットワーク保守課」「ネットワーク保守課→サポートセンタ」「サポートセンタ→営業店舗」の四つとなる。システム運用課を介した依頼や確認が不要になるため、元の六つから四つに減る。

設問3

営業店舗チームの一次窓口解決率は、目標80%以上に対して72%です。下線(ア)では、業務アプリケーションの問合せが増え、その都度アプリケーション保守課へ依頼していたことが原因として示されている。サポートセンタだけで対応するには、専門部署の診断方法や回答内容を、窓口で使える情報にする必要がある。公式解答例では二つの案が示されている。第一案は「アプリケーション保守課の診断手順の一部を診断スクリプトに反映する。」で、初期診断の能力を高める対策です。第二案は「アプリケーションに関する問合せと回答内容をFAQに反映する。」で、蓄積した回答を窓口で利用できるようにする対策です。いずれも40字以内の別々の答案例であり、どちらか一方を具体的に書けばよい。診断スクリプトとFAQの両方を一つの答案に盛り込む必要はない。

設問4

法人会員の不満は、問合せの受付から回答までに時間が掛かることです。表1の平均応答時間は、着信から窓口担当者が電話に出るまでの時間なので、この不満を直接捉える指標ではありません。また、本文では専門部署からの回答に時間が掛かっており、解決時間の目標値を設定する対象は重要トラブルに限られている。公式解答例では、二つの案が示されている。第一案は「サポートセンタで受け付けてから利用者に回答するまでの時間を管理する。」で、利用者が回答を待つ時間全体を管理対象にする。第二案は「すべてのインシデントについて目標解決時間を設定して、管理する。」で、重要トラブル以外にも目標を設けて管理する。いずれも40字以内の別々の答案例であり、どちらか一方を記述する。両案を結合して書く必要はない。

学習のポイント

記録情報を改善に活用する方法と、初期診断・専門部署への依頼・回答時間の管理を学ぶ。複数の解答例は別々の案として理解する。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成22年度秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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