SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

平成22年度秋期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 可用性管理に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。 C社は、全国に約 100か所のホテルを運営する大規模ホテルチェーンである。ホテ ルの宿泊予約の受付は、表1に示す三つの方式で行っている。 C社では今後、代理店手数料の掛からない予約方式1の取扱比率を拡大していく方針である。 〔宿泊予約システムの構成〕 全ホテルの宿泊予約は、C社データセンタに設置された宿泊予約システムで集中管 理されている。宿泊予約システムの構成を図1に示す。ファイアウォール(以下、FW という)及び負荷分散装置(以下、LB という)は、二重化されている。 〔予約方式1の処理概要〕 C社 Web サイトの利用者からの要求は、LBでWeb サーバに振り分けられ、AP サ ーバで処理される。AP サーバで空室の検索処理や予約処理を行い、DB サーバの客室 在庫データを参照し、更新する。 LBは、利用者からの要求を2台のWeb サーバに均等に振り分けるとともに、Web サーバの稼働状態を5分間隔で監視し、正常と判断したWeb サーバに要求を割り当て る。LBは設定を変更することで、特定のWeb サーバへの処理割当てを一時的に取り やめることができる。同様にWeb サーバに振り分けられた要求は、各Web サーバの 設定に従って、APサーバ1又はAPサーバ2に割り当てられる。この設定はオンライ ン中でも変更できる。Webサーバ1,Webサーバ2のリソースには十分な余裕があり、 1台のサーバで障害が発生した場合はほかの 1台で処理できるように設計されている。 また、AP サーバ1、AP サーバ2もWeb サーバ1、Webサーバ2と同様に設計されて いる。予約方式1では、利用者が予約を取るまでに,予約処理のほかに空室の検索処 理や料金参照処理が多数要求されるので、DB サーバの処理負荷が高い。 〔予約方式 2,予約方式3の処理概要〕 旅行代理店システム,ホテル予約サイトシステムと接続し、それぞれのシステムか ら,確保している客室在庫に関する予約・変更・取消し情報を受信する。これらの情 報は、AP サーバ3だけで処理されている。AP サーバ3のリソース増強が必要となっ た場合は、表2に示す増強方式が選択可能である。現在,C社では、内蔵ディスクや 電源などのサーバを構成するハードウェアの二重化を行ってサーバの 信頼性を高めていることから、増強方式1を採用している。 なお、予約方式2,予約方式3による予約処理では、予約方式1と異なり、DBサーバの処理負荷は低い。 〔宿泊予約システムの運用〕 宿泊予約システムの運用は、システム運用部が24時間体制で行っている。宿泊予約 サービス提供に当たって、システム運用部では、予約方式 1について、サービスの可 用性及びサービスの回復時間の観点で表 3に示すサービスレベルの管理項目を設定し、 運用している。システム運用部では、C社宿泊予約サービスを管轄している営業部に 対して,サービスレベルの達成状況を月次レポートにまとめて報告している。 C社では、宿泊予約システムの定期メンテナンスのために、毎月1日の午前2時か ら午前 4時までの間はサービス停止時間とし、機能増強や定例の修正プログラム(以 下、パッチという)の適用、DB サーバのデータのフルバックアップなどの計画的な 保守作業を行う時間としている。データのフルバックアップ作業には 1時間が必要で ある。C社では、機能増強などを行うためにDB サーバの変更が必要な場合は、変更 作業中に発生する障害に備えて、データのフルバックアップを取得してから変更作業 を行うルールになっている。 また、定期メンテナンスの終了後は、C社 Web サイトから疑似的に空室検索や予約 を行うツールを使用して,予約方式1で予約処理が正常に行われていること、及び、 応答時間に問題がないことを確認している。 〔システム障害の発生と復旧〕 ある日、監視装置が Web サーバ1の障害を検知した。ほかのサーバは正常に稼働し ていた。システム運用部のH氏は、障害が拡大することによるサービスへの影響に配 慮して,直ちに対処する必要があると判断した。LB が導入されていることから、Web サーバ2だけでサービスを継続できると判断し、予約方式1での予約処理に影響を与 えないように、あらかじめ準備された図2に示す手順書に従って復旧作業を行った。 〔パッチの適用〕 ある日、サーバの基本ソフトウェアを提供しているベンダから連絡があり、Web サ ーバを除く全サーバに対して、定期メンテナンスを待たずに緊急でパッチを適用する 必要が生じた。システム運用部では、サービスレベルを維持するために、可用性を極 力落とさずにパッチの適用を行う必要があった。 H氏は、パッチの適用と宿泊予約システムの正常稼働の確認に必要な時間を検討し た結果、毎月1日のサービス停止時間に行っている定例のパッチの適用は、通常 30分 程度で完了していることから、サーバ 1台当たりのパッチ適用に必要な時間は今回も 30 分と想定し、緊急のパッチ適用に必要な時間を試験環境で検証した。その結果,緊 急のパッチは定例のパッチよりも大幅な変更が必要になることから、サーバ 1台当た りの緊急のパッチ適用に必要な時間は50分であることが分かった。また、最大5台ま でのサーバに並行してパッチの適用が可能であった。システム運用部は、緊急のパッ チを適用する臨時の保守時間帯を、サービスの利用が少なくなる午前2時から午前3 時までの1時間とした。 〔予約方式1での販売拡大〕 営業部ではC 社の方針に沿って、予約方式1の取扱比率を拡大するために、来月か ら、予約方式 1で予約した場合には特別割引を行うという内容のバナー広告を出すこ とになった。バナー広告によって、予約方式 1による予約件数が大幅に増加すること が見込まれた。営業部では、予約件数の増加に備えて、表 3に示すサービスレベルの 管理項目に新たな項目を追加するように、システム運用部に要請した。 システム運用部では、予約方式1による予約件数の増加に合わせて、予約方式 1の 利用者が快適に空室検索や予約を行えるように,システムの構成,運用方式の見直し を行った。 設問1 〔予約方式 2,予約方式3の処理概要〕について、AP サーバ3の更なる増強が 必要となった場合,表 2の増強方式のうち、可用性の観点から優れている方式は 増強方式 1,増強方式2のいずれか。答案用紙の“増強方式1・増強方式2”のい ずれかの文字を●印で囲んで示せ。また、その理由を30字以内で述べよ。 なお、調達リードタイムや管理コスト、サーバ以外の機器の稼働率は考慮しな くてよい。 設問2 〔システム障害の発生と復旧〕で、Web サーバ障害時の復旧手順として、図2の[a]に入れる作業内容を、40字以内で述べよ。 設問3 〔パッチの適用〕について、(1),(2)に答えよ。 (1) 夜間作業での作業リスクを減らし、可用性を低下させないためにできるパッ チの適用方法を、50字以内で述べよ。 (2) システム運用部が設定した臨時の保守時間帯では、実施上の問題がある。問 題点を50字以内で述べよ。 設問4〔予約方式1での販売拡大〕について、(1),(2)に答えよ。 (1) 予約件数の増加に伴い,DB サーバの処理性能の確認が必要となる。その理 由を、40字以内で述べよ。 (2) 営業部からの要請に伴い,システム運用部が月次レポートに追加すべき項目 を20字以内で述べよ。
C社ホテルの宿泊予約方式1〜3について、予約経路の概要、予約比率、サービス時間、旅行会社への手数料を比較する表。
C社ホテルの宿泊予約方式1〜3について、予約経路の概要、予約比率、サービス時間、旅行会社への手数料を比較する表。
C社Webサイト、旅行会社及びホテルの各サイトからインターネット又はIPネットワークを介し、FW、LB、Webサーバ1・2、APサーバ1〜3、DBサーバへ接続する宿泊予約システム構成図。
C社Webサイト、旅行会社及びホテルの各サイトからインターネット又はIPネットワークを介し、FW、LB、Webサーバ1・2、APサーバ1〜3、DBサーバへ接続する宿泊予約システム構成図。
APサーバ3の増強方式として、現行サーバへのハードウェア追加方式と、専用負荷分散装置及び複数サーバを設置する方式を比較する表。
APサーバ3の増強方式として、現行サーバへのハードウェア追加方式と、専用負荷分散装置及び複数サーバを設置する方式を比較する表。
予約方式1のサービスレベルとして、サービス可用性99.5%以上と、障害検知からサービス回復まで15分以内を示す表。
予約方式1のサービスレベルとして、サービス可用性99.5%以上と、障害検知からサービス回復まで15分以内を示す表。
Webサーバ障害時に、空欄aの作業、障害箇所の確認、Webサーバ再起動へ進み、その後の手順が省略されている復旧手順書の抜粋図。
Webサーバ障害時に、空欄aの作業、障害箇所の確認、Webサーバ再起動へ進み、その後の手順が省略されている復旧手順書の抜粋図。
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検討の前提と対象をそろえる

宿泊予約システムの運用を考える際は、まず何を対象に、どのような条件の下で検討するかをそろえましょう。複数の情報に触れる場合も、同じ前提に基づく内容かを確かめ、条件の違いと内容の違いを混同しないことが大切です。

この問題で問われていること

検討する内容ごとに、対象となる範囲や前提条件がそろっているかに注目してください。条件が明示されている部分と、自分が補って考えた部分を区別し、示された情報を共通の前提で扱えるかを落ち着いて確認しましょう。

視点

同じシステムに関する情報でも、検討の対象や条件が異なると、そのまま結び付けて考えられるとは限りません。まず対象と前提を短く整理し、明示されていない条件を自分で付け加えていないかを見直しましょう。

確認ポイント

  • 検討の対象と範囲を確認したか
  • 判断に用いる前提条件を確認したか
  • 示されていない条件を補っていないか
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解説

本問では、複数サーバによるサービス継続、障害サーバへの処理割当て停止、パッチの段階的適用、バックアップを含む保守時間の確保を考えます。販売拡大に対しては、DB負荷の増加と利用者から見た応答時間の管理が要点です。

問題の全体像

C社は約100か所のホテルの宿泊予約を集中管理し、手数料の掛からない自社Webサイト経由の予約方式1を拡大しようとしています。WebサーバとAPサーバ1・2は、片方だけでも処理できる構成ですが、APサーバ3とDBサーバはそれぞれ1台です。出題の狙いは、この構成と運用条件から、サービスを継続できる増強・復旧・保守方法を判断することです。予約方式1の月間平均稼働率99.5%以上、障害検知後の回復時間15分以内という目標に加え、販売拡大時の処理性能と応答時間も検討します。

設問1

公式解答例画像では「増強方式2」に丸印が付いています。表2では、方式1は既存サーバへのCPUやメモリなどの追加、方式2は専用LBによる複数サーバへの処理分散とサーバ追加です。方式2なら、既存サーバでサービスを継続しながら増強できるため、可用性の観点で優れています。現在の方式1で部品を二重化していることは、サービスを継続したまま増強できる根拠にはなりません。公式解答例の理由は「サービス全体を停止させずにサーバの増強が可能だから」であり、30字以内ではこの要素を押さえます。

設問2

図2では、障害状況の確認と再起動の前に行う作業が問われています。着目するのは、LBの監視が5分間隔であることと、設定変更で特定のWebサーバへの処理割当てを停止できることです。監視装置が障害を検知しても、LBが直ちにそのサーバを割当て対象から外すとは限りません。そこで先にWebサーバ1への割当てを止め、正常なWebサーバ2でサービスを継続させます。公式解答例に沿った40字以内の表現は「LBの設定を変更し、Webサーバ1への処理割当てを取りやめる。」です。

設問3(1)

APサーバ1・2は、片方だけでも処理でき、Webサーバからの割当て設定もオンライン中に変更できます。この条件を使えば、一方への割当てを止めてパッチを適用し、その後もう一方を作業できます。公式解答例では、APサーバ1・2を昼間の時間帯に、サービスを停止させず1台ずつ適用する方法が示されています。昼間に作業することで夜間作業のリスクを減らし、残る1台でサービスを継続します。50字以内では「APサーバ1と2は昼間に1台ずつパッチを適用し、他の1台でサービスを継続する。」とまとめられます。

設問3(2)

問題文には、DBサーバの変更前にフルバックアップを取得するルールがあり、取得には1時間必要とあります。今回はDBサーバもパッチ適用対象で、適用にはさらに50分掛かります。最大5台への並行適用が可能でも、DBサーバではバックアップ完了後に変更する順序を守る必要があるため、午前2時から3時までの1時間では完了しません。公式解答例も、事前バックアップが必要なため保守時間内に作業が完了しない点を挙げています。50字以内では「DBサーバの事前バックアップとパッチ適用で1時間を超え、保守時間内に完了しない。」と表せます。

設問4(1)

予約方式1では、予約確定までに空室検索や料金参照が多数行われ、それらもDBサーバを利用します。問題文は、予約方式2・3よりもDBサーバの負荷が高いことを明示しています。したがって、予約方式1の件数が増えると、予約更新だけでなく検索・参照処理も増え、DBサーバの処理性能が不足する可能性があります。公式解答例では、空室検索や料金参照の増加による負荷増加を理由としています。40字以内では「空室検索や料金参照処理の増加でDBサーバの負荷が増えるから。」とまとめられます。

設問4(2)

表3の既存項目は、サービスの可用性と回復時間です。一方、販売拡大への対応では、利用者が快適に空室検索や予約を行えることが求められています。サービスが稼働していても応答が遅ければ、この要求を満たせません。そのため月次レポートには、利用者の操作に対して結果が返るまでの時間を管理する項目を追加します。公式解答例は「サービス利用者から見た応答時間」で、20字以内に収まります。サーバ内部の処理時間だけでなく、利用者から見た時間を示すことが要点です。

学習のポイント

機器単体の信頼性とサービスの可用性を区別し、冗長構成の活用方法、保守作業の依存関係、利用者視点の性能指標を学びます。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成22年度秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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