SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

平成21年度秋期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 システムの運用管理に関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。 E社は、全国10か所に大型小売店舗をもち、日中はオンライン処理及びバッチ処理 を行い、夜間にはバッチ処理を行う販売管理システムを運用している。 〔販売管理システムの1日の運用スケジュールとオペレーション体制〕 販売管理システムは、オンライン処理を9時に開始し、20時に終了する。その後、 バックアップを取得する処理を 21時まで行う。バックアップは、磁気ディスク上に取 得する方が処理時間は早く済むが、災害に備えて遠隔地保管を行うために、磁気テー プに取得する。取得した磁気テープは、宅配業者に委託して、毎翌朝9時発で遠隔地 に配送している。 21時からは夜間バッチ処理を実行する。夜間バッチ処理は 6時に終了し、その後の 3時間は、システム変更やバッチ処理のトラブルなどへの対応のための予備時間とし ている。また、オンライン処理は毎朝9時に開始する必要があることから、オンライ ン立上げ処理は、夜間バッチ処理の最後に実施している。 オンライン処理中は、運用管理端末に出力される各種メッセージに対応するために 2人の運用オペレータが必要である。バックアップ取得時は、ジョブ起動コマンド投 入オペレーションと磁気テープ装置オペレーションとの連携が必要である。1人で実 行すると2時間が必要であり、1時間以内で終わらせるためには2人の運用オペレー タが必要である。夜間バッチ処理中は、運用管理端末への出力メッセージは少ないの で、運用オペレータは1人となっている。 1日の運用スケジュールとオペレーション所要人数は、図1のとおりである。 運用オペレータは、チーム体制を組み、シフト制でローテーションしながら勤務し ている。1シフトは8時間で、7時から 15時、15時から 23時、23時から7時の3シ フトで1日の運用を行っている。各シフトには1人1時間の休憩時間があり、1シフ トの勤務時間は1人7時間である。チーム数は、販売管理システムが年間 365日稼働 できるように設定している。各チームの人数は同一とし、運用オペレータの休暇取得 やピーク時の応援などのために、常に1チーム当たり 1人分の余裕を見込んだ体制と している。 〔販売管理システムの運用方法〕 販売管理システムでは,システム運用の省力化,正確性の向上を目的に、運用管理 システムを使用している。運用管理システムでは、しきい値(CPU使用率、メモリ使 用率、磁気ディスク使用率)監視機能による稼働監視や,ジョブの自動起動機能によ るジョブの実行管理を行っている。しきい値を変更する場合は、システム運用部が実 施する。現在のしきい値は、1年前の,運用管理システム導入時に設定した値となっ ていて、その後は変更されていない。システム稼働中にしきい値を超えた場合は、運 用管理システムから運用管理端末に警告メッセージが出力される。この場合,運用オ ペレータは運用管理者に連絡し、運用管理者の指示に従って対応している。 また、運用管理端末には、警告メッセージ以外にも多くのメッセージが出力されて いて、運用オペレータはすべての出力メッセージに対応している。 〔オンラインサービス提供時間の拡大〕 現在、オンラインサービスの開始は9時となっているが、本社から、“開店時刻を早 めたいので、オンラインサービスの開始時刻を早められないか”という要望があった。 システム運用部では、3時間の予備時間は確保した上で、オンラインサービス開始時 刻を早めるために、夜間のバッチ処理時間の短縮を検討することとし、夜間バッチ処理の実行状況について分析した。取引先のX社からファイル転送によって納品データ を受け取って、販売管理システムに取り込む処理を行っている。X社の納品データは 毎日 22時ごろに到着するので、ジョブJ1の終了後、常に40分程度の待ち時間がある ことが分かった。 X社納品データ(E社でのファイル名を“X01”とする)の取込み処理の概要を図2 に示す。各ジョブ間やジョブステップ間の引継ぎは、中間ファイルを磁気ディスク上に作成して連携する。磁気ディスク装置には、十分な空き容量がある。 ジョブJ2は、ジョブJ1の終了とファイル“X01”の作成完了の両方が満たされた時 点で自動的に起動される。ジョブJ2の処理時間は1時間であるが、そのうち、ジョブ ステップS23の処理時間は30分である。 ジョブJ1、J2のジョブステップフローを図3に示す。 〔出力メッセージ対応業務の効率向上〕 システム運用部では、オペレーション業務の効率向上のために、オンライン処理中 に運用管理端末に出力されるメッセージへの対応業務について分析した。 出力メッセージの種類は、大きく分けると次の5種類であった。 (1) ハードウェア障害:各種ハードウェアの障害を表すメッセージ (2) ソフトウェア障害:各種ソフトウェアの障害を表すメッセージ (3) しきい値超過:運用管理システムから出力される警告メッセージ (4) 各種情報:各種プロダクトや業務プログラムから出力される情報メッセージ (5) テスト:開発担当者が行うテストなどによって出力されるメッセージ 各出力メッセージに対する対応方法は、次の四つに整理できた。 (a) 対応なし:メッセージを確認する。あらかじめ決められたメッセージの場合には、 特に対応は行わない。 (b) 連絡だけ:メッセージ内容を運用管理者に連絡したところ、対応不要と指示され たもの。 (c) ジョブ制御:運用管理者からの指示に基づいて、ジョブの停止,スキップ、再起 動などを手動で行う。 (d) 臨時処理:運用管理者からの指示に基づいて、ハードウェア障害時の技術者コー ルなど、臨時の対応を行う。 そこで、システム運用部では各対応方法における運用オペレータ1人1件当たりの 平均対応時間を確認するとともに、オンライン処理中の出力メッセージの種類と対応 方法について、最近 3か月間の件数分析を行った。その結果、1か月の平均出力件数 と運用オペレータ1人1件当たりの平均対応時間は、表のとおりとなった。 ハードウェア障害で対応方法を“対応なし”としている出力メッセージの大部分は、 店舗の端末障害を示すものであった。これは、オンラインサービス開始時に電源が入 っていなかったり、レジ係の交替時にいったん電源を切る運用になっていたりするこ と、などに起因するものであった。しきい値超過で対応方法が“連絡だけ”となった 出力メッセージのほとんどは、運用管理システムから出力される、CPU使用率のしき い値超過による警告メッセージであった。 システム運用部では、表中で、対応方法が“対応なし”及び“連絡だけ”である出力メッセージに対する運用オペレータの対応工数を削減するために検討を開始した。 まず、“対応なし”のメッセージ件数を削減することによってもたらされる工数の削減 について検討し、次に、“連絡だけ”のメッセージ数を削減することによって改善さ れる工数の削減について検討した。 設問1 現在の運用オペレータは、1週間に1日以上の非番の日を設けた上で、必要最 小限の人数としている。現在の運用オペレータの総人数は何人か。 なお、解答に当たって、休憩時間は考慮しなくてもよいものとする。 設問2〔オンラインサービス提供時間の拡大〕について、(1),(2)に答えよ。 (1) X 社納品データの取込み処理について、ジョブ構成を変更することによって 処理時間の短縮を図りたい。どのような変更を行えばそれが可能となるか。変 更内容を、具体的に60字以内で述べよ。 (2) (1)の変更によって、オンラインサービス開始時刻を、何時何分にできるか。 なお、X社納品データ取込み処理の実行中は、ほかの処理は実行していない ものとする。 設問3〔出力メッセージ対応業務の効率向上〕について、(1),(2)に答えよ。 (1) オンライン処理中の出力メッセージに対する運用オペレータの対応工数を半 減させるためには、対応方法を“対応なし”としている出力メッセージの件数 を、最低何%削減すればよいか。答えは小数第1位を切り上げて、整数で求め よ。 (2) 対応方法を“連絡だけ”としている出力メッセージに対する運用オペレータ の対応工数を削減するために調査すべき事項は何か。調査すべき事項を、30字 以内で述べよ。 設問4 今後の運用オペレータの省人化を目指して、オペレーション業務の効率向上を 図りたい。設問3の出力メッセージの件数削減以外で考えられる対策内容を、50 字以内で具体的に述べよ。 なお、機器の増設は行わないものとする。
9時から20時のオンライン・バッチ処理は2人、20時から21時のバックアップは2人、21時から翌6時のバッチ処理は1人、6時から9時は予備時間で0人と示す一日の運用スケジュール図。
9時から20時のオンライン・バッチ処理は2人、20時から21時のバックアップは2人、21時から翌6時のバッチ処理は1人、6時から9時は予備時間で0人と示す一日の運用スケジュール図。
X社から転送された納品データをX01として受信し、ジョブJ1とジョブJ2で処理するX社納品データ取込み処理の概要図。
X社から転送された納品データをX01として受信し、ジョブJ1とジョブJ2で処理するX社納品データ取込み処理の概要図。
ジョブJ1のF01、S11、F12、S12、F13、S13、F14と、ジョブJ2のF14、S21、F22、S22、F23、S23、F24及びX01入力の依存関係を示すジョブステップフロー図。
ジョブJ1のF01、S11、F12、S12、F13、S13、F14と、ジョブJ2のF14、S21、F22、S22、F23、S23、F24及びX01入力の依存関係を示すジョブステップフロー図。
1か月の平均出力件数と運用オペレータ1人1件当たりの平均対応時間を、情報・警告・異常終了などのメッセージ区分、連絡、ジョブ実行、手作業の対応方法別に示す表。
1か月の平均出力件数と運用オペレータ1人1件当たりの平均対応時間を、情報・警告・異常終了などのメッセージ区分、連絡、ジョブ実行、手作業の対応方法別に示す表。
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判断に使う前提条件をそろえる

運用の工夫を検討するときは、まず判断に使う前提条件がそろっているかを確かめましょう。扱う状況や対象範囲が途中で変わっていないかに注目し、見えている情報と自分で補った仮定を分けて整理します。

この問題で問われていること

検討の焦点は、結論の根拠にする条件を一貫して扱えているかです。与えられた条件を確認し、明示されていない点を無意識に補っていないか振り返りながら、同じ前提の下で考えられる範囲を整理しましょう。

視点

前提条件は、判断の土台となる情報です。自分の経験から想像した状況も、与えられた事実と混ざると根拠が曖昧になります。両者を区別しておくと、どの条件に基づいて考えているかを確かめやすくなります。

確認ポイント

  • 判断の前提にした条件は明示されているか
  • 途中で対象範囲や状況の想定が変わっていないか
  • 経験から補った仮定を事実と混同していないか
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解説

本問は、365日稼働を支えるチーム編成、外部データ到着待ちを利用したジョブ構成の変更、監視メッセージ対応工数の削減、バックアップ作業の時間帯変更を扱います。予備時間や遠隔地保管などの条件を維持して改善することが要点です。

問題の全体像

E社は、日中のオンライン処理、バックアップ、夜間バッチ処理をシフト制で運用しています。サービス開始時刻の前倒しと運用オペレータの省人化に向け、チーム編成、ジョブ構成、監視メッセージ、バックアップ方法を見直す事例です。出題趣旨では、これらの具体的な改善策を通じて、オペレーション業務の生産性を向上させる実務的能力を問うとされています。

設問1

公式解答例では12人です。まず、1日3シフトなので、1週間に必要なのは3×7=21チーム分の勤務です。各チームは週1日以上非番とするため、担当できるのは週6日以下となり、必要チーム数は21÷6=3.5を切り上げた4チームです。次に、図1の最大所要人数は2人で、各チームの人数は同一、さらに常に1人分の余裕を見込むので、1チームは2+1=3人です。したがって、4チーム×3人=12人となります。設問の指示に従い、休憩時間は計算に含めません。

設問2(1)

図3では、X社のファイルX01が必要になるのはS23であり、S21とS22はJ1が作成するF14から実行できます。しかし現在は、J2全体の起動条件にX01の作成完了が含まれ、J1終了後に約40分待っています。公式解答例では、S21・S22を別ジョブに分離してJ1終了時に起動する方法、又は両ステップをJ1のS13の後に移す方法が示されています。60字以内の答案例は「J2のS21・S22を別ジョブに分離し、J1終了時に起動する。」です。分離後のS23は、F23とX01の両方がそろってから実行します。

設問2(2)

公式解答例では8時30分です。J2全体は60分、S23は30分なので、S21・S22の合計処理時間は30分です。この30分を、J1終了後の約40分のデータ到着待ち時間に実行できます。変更後は約10分待ってX01を受け取り、S23を実行するため、取込み処理の終了が30分早まります。取込み処理中にほかの処理は実行していないという条件から、夜間バッチ全体も30分短縮され、終了時刻は6時から5時30分になります。そこから必要な3時間の予備時間を確保すると、オンラインサービスは8時30分に開始できます。

設問3(1)

公式解答例では60%です。表の対応方法別の件数に平均対応時間を掛けると、月間の総対応工数は18、694×1+705×3+15×60+17×30=22、219分です。半減させるには11、109.5分以上を削減する必要があります。「対応なし」も確認に1件1分を要するため、この区分の工数は18、694分です。必要な件数削減率は11、109.5÷18、694×100≒59.43%となり、小数第1位を切り上げて60%です。出力件数全体の半分ではなく、対応時間で重み付けした総工数の半分を削減する点が重要です。

設問3(2)

公式解答例では「現在設定しているCPU使用率のしきい値の妥当性」です。本文には、「連絡だけ」となったしきい値超過メッセージのほとんどがCPU使用率の警告であり、しきい値は1年前の導入時から変更されていないとあります。連絡しても対応不要となる警告が多いため、現在の稼働状況に対して設定値が適切かを調査します。30字以内の答案では、対象をCPU使用率と明示し、しきい値の妥当性を確認するという要素を押さえます。調査前に、しきい値を引き上げると断定するのは避けます。

設問4

公式解答例では、磁気ディスクにバックアップを取得し、予備時間帯に磁気テープへコピーする対策が示されています。本文の「磁気ディスクへの取得は早い」「磁気ディスクには十分な空き容量がある」「テープは翌朝9時発で遠隔地へ配送する」という条件に着目します。20~21時はディスクへの取得とし、テープ装置の操作を予備時間帯へ移すことで、短い時間に2人の連携を要する作業を見直せます。テープへのコピーを配送前に完了させ、災害に備えた遠隔地保管も維持します。50字以内の答案例は「磁気ディスクにバックアップを取得し、予備時間帯に磁気テープへコピーする。」です。

学習のポイント

チーム数とチーム人数を分けた計算、ジョブステップの依存関係、件数に対応時間を掛ける工数計算を重点的に学習しましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成21年度秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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