SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

平成21年度秋期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 キャパシティ管理に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。 D社は、中堅の通信機器販売会社であり、日中はオンライン業務を行い,夜間はバ ッチ業務を行う販売管理システムを運用している。 8時から19時までのオンライン業務のサービス時間帯には、営業店から入力された データに基づいて受注処理や入出庫処理が行われている。オンライン業務終了後の夜 間のバッチ業務では、各種の実績集計処理やマスタファイルのメンテナンス処理が行 われている。 販売管理システムの構成は、図のとおりである。業務サーバは、業務サーバ A と業 務サーバ Bの2台のサーバ構成で、どちらか1台に障害が発生した場合には、もう1 台の縮退構成で運用する方式(以下、片寄せ運用という)になっている。片寄せ運用 の場合でも、2009年度のピーク時トランザクション数の予測値を処理できるようにリ ソース設計されており、2009年の稼働当初に性能テストを行い、実機で検証している。 〔キャパシティ計画〕 D社のITサービス部では、次の方針で、キャパシティ計画を策定している。 (1) ビジネス面では、IT サービスに対するビジネス要件を検討し、キャパシティを確 保するのに必要なリソースを適切なタイミングで実装する。 表 1に示す予測(指標)を販売管理システムのビジネス要件の一つとしている。 この予測は、2009年度のピーク時トランザクション数を基準(1.0)とした指標で、 2012年度までを予測している。 (2) サービス面では、IT サービスのパフォーマンスを測定することによって、サービ スレベルの要求水準を達成しているかどうかの記録・監視を行う。 販売管理システムのサービスレベルのうち、応答性能に関する評価項目について は、要求水準を“オンラインレスポンスが5秒以内の遵守率を1日当たり 99%以 上”と定めている。遵守率は、オンライン業務終了後に、販売管理システムのログ ファイルを分析して確認している。 (3) リソース面では、IT インフラストラクチャの個々の構成要素の使用状況について 定常的に測定・監視を行う。適切なキャパシティを確保できていないことに起因す るインシデントが発生した場合は、チューニングを実施するとともに、必要に応じ てハードウェアやソフトウェアのリソースを増強する。 〔キャパシティ管理の実施状況〕 D社のITサービス部では、次のようにキャパシティ管理を行っている。表2にリソ ース管理項目の基準値と警告値を示す。 (1) リソース管理項目として、Webサーバと業務サーバのCPU使用率及び磁気ディス ク使用率を把握し、表2に示す基準値を上限として管理している。基準値を超える と,パフォーマンスが急に悪化するおそれがある。 (2) 運用管理システムを使用し、システムの監視を行っている。表2に示すリソース 管理項目ごとに設定されている警告値を超えると、運用管理システムから警告が出 される。 (3) 適切なキャパシティを確保できていないことに起因してサービスレベルの要求水 準を達成できない事態が発生した場合は、隘路となっている部位を調査し、パフォ ーマンスを改善するためのチューニングを実施することにしている。 ある日のオンライン業務終了後,オンラインレスポンスの遵守率を調査したとこ ろ,要求水準を下回っていた。しかし、運用管理システムから警告が出されていな かったので、必要な改善を検討している。 (4) インシデント管理及び変更管理などの、ほかのサービスマネジメントプロセスと、 次の内容で連携して、キャパシティ管理を行っている。 ① インシデント管理 ・パフォーマンス不足によって発生したインシデント数の推移を把握する。 ② 変更管理 ・パフォーマンス改善の変更要求を提案する。 ・[a] 〔販売管理システムの運用変更〕 D社では、営業店からの要望にこたえて、オンライン業務のサービス時間を延長す ることになった。現状では、バッチ業務の終了から翌日のオンライン業務開始までの 空き時間が少なく、単純にバッチ業務の開始時間を遅らせた場合には、バッチ業務で のトラブルなどの発生時にオンライン業務の開始が遅れてしまうリスクが生じる。そ こで、一部のバッチ処理を切り出して、オンライン業務中に業務サーバ A で実行する ことにした。 この場合,オンラインレスポンスに影響が出ることが懸念されたので、事前に通常 の本番構成でピーク時の性能テストを実施した。性能テストにおいて、オンライン業 務中にバッチ処理を実行しても,オンラインレスポンスへの影響が許容範囲内である ことを確認できたので、その後、運用変更を行った。 〔障害に伴うオンラインレスポンスの悪化〕 ある日,業務サーバ B に障害が発生し、片寄せ運用を行うことになった。片寄せ運 用された販売管理システムは、問題なく稼働していたが、切り出された一部のバッチ 処理が実行された直後に、オンラインレスポンスが大幅に悪化した。 業務サーバ A のメモリ使用状況を分析したところ、片寄せ運用時には、オンライン 業務の処理中にメモリ使用量がほぼ限界に達していた。そこにバッチ処理が起動され ると、バッチ処理用のメモリ領域を確保するために、ページングが多発していること が判明した。 そこで、オンラインレスポンスの悪化を回避するために、性能対策を検討すること にした。 本格対応のためには,メモリ所要量の再設計を行い,サーバの実メモリを増設する。 サーバの実メモリ増設に当たっては、変更管理プロセスを通して、機能性・可用性・ 保守性などの検証を行い,稼働中のサービスへの影響が最小となるようにリスクをコ ントロールする。 この本格対応実施までの暫定対応として、片寄せ運用になった場合は、オンライン 業務中はバッチ処理を実行しないように変更する。 〔販売キャンペーンの実施計画〕 D社では、2か月後の12月に新たに販売キャンペーンを行うことになった。今回の 販売キャンペーンが成功すれば、2010年度以降も6月と12月に販売キャンペーンを 実施する計画である。 IT サービス部では、キャパシティ計画への影響を確認するために、販売キャンペー ンを企画している企画部門に最新の販売計画について照会した。 企画部門では、販売計画の中で、販売キャンペーン実施を前提に、今後3年間の需要予測をしている。販売キャンペーン実施に伴い,キャンペーン期間中の業務量が 2割程度増加すると見込まれていた。 設問1〔キャパシティ管理の実施状況〕について、(1)~(3)に答えよ。 (1) 表2の各リソース管理項目の警告値は、対応する基準値よりも低く設定され ている。その理由を30字以内で述べよ。 (2) オンラインレスポンスが悪化しているにもかかわらず、運用管理システムか ら警告が出されていなかったのは、現在のキャパシティ管理に考慮不足がある からである。キャパシティ計画の方針に照らして、考慮不足の内容を、35字以 内で述べよ。 (3) 本文中の[a]に入れる適切な内容を、30字以内で述べよ。 設問2〔障害に伴うオンラインレスポンスの悪化〕について、(1)~(3)に答えよ。 (1) キャパシティ管理として、販売管理システムの運用変更前に確認しておくべ きであったことは何か。40字以内で述べよ。 (2) 日常のキャパシティ管理として、追加すべきリソース管理項目は何か。20字 以内で述べよ。 (3) 性能対策について、暫定対応を継続した場合のリスクは何か。35字以内で述 べよ。 設問3 〔販売キャンペーンの実施計画〕について、(1),(2)に答えよ。 (1) 需要予測の変化に伴って、キャパシティ計画への影響を確認する必要がある。 その際に考慮すべき点は何か。40字以内で述べよ。 (2)(1)の結果を基に、IT サービス部としてキャパシティ管理の観点から実施す べき内容を、40字以内で述べよ。
店舗端末からインターネットと負荷分散装置を介してWebサーバ1・2、業務サーバA・B、ディスク装置1・2へ接続する販売管理システム構成図。
店舗端末からインターネットと負荷分散装置を介してWebサーバ1・2、業務サーバA・B、ディスク装置1・2へ接続する販売管理システム構成図。
2009年度から2012年度までのピーク時トランザクション数の予測指標を1.0、1.1、1.2、1.3として示す表。
2009年度から2012年度までのピーク時トランザクション数の予測指標を1.0、1.1、1.2、1.3として示す表。
Webサーバと業務サーバについて、CPU使用率の基準値80%・警告値60%、ディスク使用率の基準値50%・警告値40%を示すリソース管理表。
Webサーバと業務サーバについて、CPU使用率の基準値80%・警告値60%、ディスク使用率の基準値50%・警告値40%を示すリソース管理表。
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需要の変化と監視結果を照合する視点

性能監視で得た傾向を、将来の利用量や業務上の要求と照らし合わせ、増強や見直しを考える順序を意識しましょう。個別の方式名や選択肢の表現ではなく、判断材料の関係に注目してください。

この問題で問われていること

一つの指標だけで結論を出さず、観測された負荷・応答の変化と、計画上想定した需要や余裕の関係を確認し、継続的に見直せるかという観点を中心に考えてください。

視点

監視値を単独で評価せず、時間的な傾向と利用状況の変化を並べて整理します。そのうえで、計画時の前提、現在の余裕、将来の見通しが同じ判断につながるかを確認すると、両者の連携を考えやすくなります。

確認ポイント

  • 監視対象の変化が、計画時の前提と対応しているか確認する。
  • 現在の余裕と将来の需要を、同じ時間軸で見比べる。
  • 観測結果を次の計画や見直しへ反映できる流れか確かめる。
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解説

D社の事例は、需要予測とサービスレベルを踏まえ、平常時だけでなく片寄せ運用や運用変更時も含めてキャパシティを管理する問題です。

問題の全体像

D社は、昼間のオンライン業務と夜間のバッチ業務を同じ販売管理システムで運用している。業務サーバは2台構成だが、障害時には1台に処理を集中する片寄せ運用となる。問題文では、警告値によるリソース監視、サービスレベルの確認、運用変更前の性能テスト、障害時のメモリ不足、販売キャンペーンによる需要増加が示されている。出題の狙いは、ビジネス要件とサービスレベルを満たすため、キャパシティ計画を実際の運用・変更・障害対応に結び付けて考える力を問うことです。

設問1(1)

警告値は、基準値に達した後の異常を知らせる値ではなく、性能が急激に悪化する前に対策を始めるための値です。したがって、基準値より低く設定して余裕を持たせる理由を、30字以内で「パフォーマンスが悪化する前に是正処置がとれるから」とまとめる。

設問1(2)

本文では、CPUや磁気ディスクの使用率は監視しているが、オンラインレスポンスの遵守率は業務終了後にログ分析して確認している。そのため、応答性能の要求水準を満たせない状態をリアルタイムに検知できない。キャパシティ計画のサービス面の方針に照らし、「サービスレベルの要求水準を達成するための監視になっていない」と述べる。

設問1(3)

変更管理との連携内容として、単に変更要求を提案するだけでは不十分です。本文後半では、運用変更前に性能テストを行っているため、変更の計画段階で性能への影響を検証する活動を入れる。公式解答例も「変更の計画段階でパフォーマンスへの影響を検証する」としている。

設問2(1)

通常の本番構成での性能テストは実施済みだが、実際の障害時は片寄せ運用で、オンライン処理中にバッチを業務サーバAで実行する条件になる。この条件ではメモリ余裕が異なるため、運用変更前に、片寄せ運用かつオンライン業務中にバッチを実行した場合のピーク時性能を検証しておく必要がある。

設問2(2)

障害時に業務サーバAのメモリ使用量が限界に達し、ページングが多発したことが原因です。CPU使用率やディスク使用率だけではこの危険を捉えられないため、日常のリソース管理項目に「サーバの実メモリ使用状況」を追加する。

設問2(3)

暫定対応は、片寄せ運用時にオンライン業務中のバッチ処理を止める方法であり、オンラインレスポンス悪化は避けられる。しかし、バッチ処理を実行できる時間が不足すると、バッチ業務のトラブル発生時に翌日のオンライン業務開始が遅れるリスクが残る。

設問3(1)

キャンペーンで業務量が2割増加するため、既存の予測指標のままでは実際のピーク負荷を表せない可能性がある。まずキャンペーンを前提にしたピーク時トランザクション数を算出し、現在の予測値との乖離を把握する点を書く。

設問3(2)

需要予測の変化を確認しただけで終わらせず、その結果をキャパシティ計画に反映する必要がある。具体的には、販売計画の需要予測に基づいて、必要なリソースや導入時期を含むキャパシティ計画を見直す内容を書く。

学習のポイント

使用率監視だけに頼らず、性能検証・障害時の余力・需要予測の反映を一連の管理として捉える。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成21年度秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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