SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

平成21年度秋期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 サービスレベル管理に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 A 社は中堅の日用雑貨販売会社であり、インターネット上で個人消費者向けに商品 カタログを公開している。A社では、売上を伸ばすための宣伝チャネルの強化として、 Webサイトのシステムを更新することにした。また,更新後のシステム(以下、Web サイトシステムという)の保守及び運用は、B社のWeb サイト運用サービスを利用す ることにした。 〔Webサイトシステムの概要〕 Webサイトシステムの構成は図のとおりである。 Web サイトシステムの利用者は、インターネット経由でWebサイトシステムにアク セスする。リクエストを受け付けた AP サーバは、必要に応じて,商品カタログが格 納されている DB サーバにアクセスし、商品カタログを利用者のブラウザ上に表示さ せる。 〔Webサイト運用サービスの概要〕 B社が提供するWebサイト運用サービスの概要は、次のとおりである。 (1) B 社はサービスデスクを開設し、A社に対して、Web サイトシステムに関する一 元的な窓口業務を行う。B社は、A社からの問合せや故障の申告を受け付けるほか に、Webサイト上の “お知らせ”のコンテンツを更新して、Web サイトシステムの 利用者への各種アナウンスも行う。 (2) B社はWeb サイトシステムの稼働状況を24時間365日体制で監視し、障害が発 生した場合には必要な対応を行う。 (3) B社はWebサイトシステムに関する保守全般を行う。Web サイトシステムを構成 するハードウェアの保守は、B社がハードウェアベンダのC社に委託する。ハード ウェアに故障が発生した場合は,C 社が修理や交換を行う。C社への連絡及び作業 依頼は、B社が行う。 なお、AP サーバのハードウェアに故障が発生した場合は、必要に応じて暫定的に 予備機を利用し、サービスを継続することができる。本番機から予備機への切替え に要する時間は60分間で、予備機から本番機への切戻しの際のサービス停止時間は 5分間である。(ア)予備機への切替えは、A社のシステム担当者であるK部長又は L課長の承認を得てから実施する。 Web サイトシステムの構築は予定どおり終了し、A社は Webサイトシステムの利用 開始日を1か月後とすることに決定した。B社は、Web サイト運用サービスの実施体 制として、サービスマネージャにT氏を任命した。 A社とB社は、Web サイト運用サービスの目標サービスレベルを取り決めて SLAと して締結する予定である。SLA 締結に先立って、B社では、表に示すサービスレベル の管理項目を、サービス開始時点から計測することにした。 〔AP サーバの障害〕 Webサイトシステムが稼働してから3か月後のある日、統合監視ツールが、AP サー バに障害が発生したことを検知した。サービスデスクが状況を確認したところ,(イ) Webサイトを閲覧できない状況が3分以上継続しており、AP サーバの磁気ディスク装 置(以下,HDD という)に障害が発生していることが判明した。サービスデスクから 連絡を受けて、T氏が障害対応を行うことになった。 T氏は障害内容を診断し、AP サーバを復旧するにはHDDの交換と、バックアップ からのデータのリストアが必要であり、復旧には 5時間掛かると判断した。この方法 では回復時間の目標値を達成できないことから、T氏はK 部長に電話連絡して実施許 可を得た上で、AP サーバを予備機に切り替えて,Webサイトシステムを復旧させた。 後日,B社は、(ウ)AP サーバの予備機から本番機への切戻しを行った。 〔HDD の冗長化〕 今回のAP サーバの障害対応の経験から、B社はHDDの冗長構成を提案し、A社に 了承された。冗長化方式には RAID 5を採用し、サービス提供を継続したままでHDD を交換できる構成とした。 なお、B社では、高可用性を確保するために、ホットスペア機能の利用を検討した が、導入期間との関係でこの案を見送った。 RAID 5では、多重障害が発生するとサービスが停止する場合がある。そこで、A社 はB社に対して、RAID 5を構成するHDDに故障が発生した障害の場合でも、5時間 以内で復旧するように要求した。B社は、A社の要求にこたえるためには、ハードウ エア故障の復旧において C 社から安定したサービスを受ける必要があると考え、C社 と連携して対応を検討することにした。 〔Webサイト運用サービスの実施状況〕 Webサイト運用サービスの開始当初は、サービスレベルの管理項目が目標値を達成 できないこともあったが,その後、B 社は必要な改善を行い、安定したサービスを提 供できるようになった。 このような中で、A社からB社に対して、SLA 締結の申入れがあった。そこで、B 社はSLA締結に向けて必要なプロセスを実施するとともに、SLA締結後も PDCAサイ クルを実行して、継続的にサービスレベルの改善を行う方針とした。 設問1 〔Webサイト運用サービスの概要〕について、(1),(2)に答えよ。 (1) SLA 締結に先立って、B 社がサービス開始時点からサービスレベルを計測し た理由を、30字以内で述べよ。 (2) 本文中の下線(ア)に示されている内容では、重大インシデントが発生した 場合にサービスレベルの目標値を達成できない可能性がある。B社が目標値を 達成するために、A社との間で取り決めるべき適切なルールを、50字以内で述 べよ。 設問2〔AP サーバの障害〕について、(1),(2)に答えよ。 (1) サービスレベルの目標値を達成するためには、本文中の下線(イ)に示され ている状況を確認した後、AP サーバの障害復旧方法を検討する前に実施すべき ことがある。B社が実施すべきことを30字以内で述べよ。 (2) 本文中の下線(ウ)を実施する前に、T氏が行うべきことを40字以内で述べ よ。 設問3 〔HDDの冗長化〕について、B社の立場で、(1),(2)に答えよ。 (1) A社の要求にこたえるためにC社との関係において行うべきことを、30字以 内で具体的に述べよ。 (2)(1) を実施する際に考慮すべき事項を、40字以内で述べよ。 設問4 〔Webサイト運用サービスの実施状況〕で、A社からB社に対してSLA締結の 申入れがあった。今後、SLA 締結に向けて必要となるプロセスを、40字以内で述 べよ。
Webサイト利用者からインターネット、ファイアウォールを経てB社データセンタ内のAPサーバ、DBサーバへ接続し、統合監視サーバと統合監視ツール及びAPサーバ予備機を配置したWebサイトシステム構成図。
Webサイト利用者からインターネット、ファイアウォールを経てB社データセンタ内のAPサーバ、DBサーバへ接続し、統合監視サーバと統合監視ツール及びAPサーバ予備機を配置したWebサイトシステム構成図。
Webサイト運用サービスの管理項目、内容、B社目標値を示す表。月間平均稼働率99%以上、重大インシデント連絡15分以内、回復90分以内を記載し、重大インシデントの定義を注記する。
Webサイト運用サービスの管理項目、内容、B社目標値を示す表。月間平均稼働率99%以上、重大インシデント連絡15分以内、回復90分以内を記載し、重大インシデントの定義を注記する。
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合意と改善のつながりを整理する視点

サービスレベルに関する問いでは、関係者間の合意、発生時の対応、日常的な見直しを別々に覚えず、相互の関係と目的を確かめながら全体の流れを捉えましょう。各段階の役割を丁寧に読み分けることが大切です。

この問題で問われていること

一つの観点として、示された説明が、関係者との取り決めを起点にした対応と、その後の学習・見直しへどうつながるかを、目的の一貫性から丁寧に確認してください。

視点

個別の用語や手順を暗記するより、期待値をそろえる段階、状況に応じて扱う段階、得られた情報を次の改善へ生かす段階が、どのような目的で連関しているかを整理します。

確認ポイント

  • 各説明の目的がどこに置かれているか確認する
  • 前後の活動がどのようにつながるか整理する
  • 一時的な対応と継続的な見直しを区別する
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解説

Webサイト運用サービスを題材に、SLA締結前後のサービスレベル管理、重大インシデント対応、予備機運用、供給者管理、継続的改善を問う問題です。

問題の全体像

A社は商品カタログを公開するWebサイトをB社に運用委託し、B社は監視、障害対応、保守、サービスデスクを担う。SLA締結に先立って実績を計測し、APサーバ障害やHDD冗長化を経験した後、SLA締結とPDCAによる継続改善を目指している。出題趣旨では、SLA管理に加え、顧客関係管理・供給者管理と、障害時のリスク管理能力が問われている。

設問1(1)

SLA締結前であっても、本文ではサービス開始時点から管理項目を計測している。これは、実際のサービス実績を基に、目標値を達成できているか確認するためです。したがって、公式解答例の「サービス実績から目標値達成度合いを確認したい」という内容を、30字以内で簡潔に示す。

設問1(2)

下線(ア)では、予備機への切替えにA社担当者の承認が必要です。しかし重大インシデント時に担当者と連絡が取れなければ、切替えが遅れて回復時間の目標を超える。そこで、連絡不能時はB社の判断で切替え可能とするルール、または連絡・了承待ちの時間を回復時間の計算から除外するルールを、50字以内で示す。

設問2(1)

下線(イ)では、閲覧不能が3分以上続いており、表の定義上、重大インシデントに該当する。復旧方法を検討する前に、重大インシデント発生を顧客であるA社へ連絡し、関係者間で状況を共有する必要がある。公式解答例の「重大インシデントが発生したことをA社に連絡する」を30字以内で押さえる。

設問2(2)

下線(ウ)の本番機への切戻しでは、サービス停止時間が発生する。切戻しを一方的に実施すると利用者への影響が生じるため、事前にA社とサービス停止スケジュールを調整し、利用者へアナウンスする。40字以内では、調整と利用者への告知の両方を含める。

設問3(1)

A社は、RAID 5を構成するHDDの故障でも5時間以内の復旧を要求している。B社はC社にハードウェア保守を委託しているため、C社との間でもHDD故障時の回復時間の目標値を設定し、合意する必要がある。これは、供給者のサービスをB社のSLA要求に対応させるためです。

設問3(2)

C社との目標値を設定する際は、B社がC社に求める値だけでなく、A社がB社に要求した5時間以内という回復時間と整合させる必要がある。B社内の連絡・判断・作業時間も考慮し、C社の目標値が全体の要求を満たせる内容になっているかを書く。

設問4

SLA締結に向けては、まずサービスレベルの目標値を設定し、その内容をA社とB社の双方で合意する。その後、合意した目標値を継続的に管理するプロセスまで含めて述べる。本文のPDCA方針や採点講評の観点から、目標設定、合意、管理の流れを40字以内でまとめる。

学習のポイント

SLAの目標値と実際の運用手順を結び付け、顧客・提供者・供給者の責任分担を整理する。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成21年度秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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