SMITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ

平成25年度秋期 ITサービスマネージャ 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

サービスの運用に関する次の記述を読んで、設問1〜3に答えよ。 E社は、大手物流会社である。E社には、グループ会社が20社あり、グループ全体の経営効率向上を図るために、2年前にグループ会社の業務標準化を進めることになった。これに合わせて、各社が別々に構築してきたシステムの統合を進めている。 〔システムの運用体制〕 システムの統合は、グループ会社であるF社の開発チームが実施している。統合が完了したシステム(以下、統合システムという)は、F社のデータセンタで、F社のオペレーションチームによって24時間365日運用されている。運用全体の管理は、ITサービスマネージャのS氏が行っている。オペレーションチームはシフト体制を組み、4チームが3交代で運用している。シフト時間帯は6時から15時までの早番、14時から23時までの遅番、22時から翌朝7時までの深夜番となっている。各オペレーションチームは、運用責任者のリーダ1人とオペレータ3人の計4人で編成されている。 〔統合システムの監視〕 統合システムの監視には運用管理システムを利用する。本番運用されている各システムが出力するメッセージは、運用管理システムに集約される。集約されたメッセージは、F社の運用監視基準に従って種類分けされて、オペレータに通知される。オペレータは通知されたメッセージを監視し、対応が必要な場合は、定められた対応を行う。オペレータが監視するメッセージは、表1のとおりである。 [表1 F社のオペレータが監視するメッセージ] 警告のしきい値は、監視要件に基づいて設計・設定されている。統合システムの警告のしきい値については、F社開発チームのインフラ担当が設計・設定を行う。 〔E社のサービス要求管理プロセス〕 E社では、E社及びグループ会社各社のサービス利用者を対象としたサービスデスク(以下、SDという)を設けている。SDでは、サービス利用者からの電話及び電子メールによるサービス要求を、平日の9時から17時まで受け付けている。サービス要求には、問合せ、作業依頼などがある。SDでは、サービス要求が受入基準を満たしているかどうかを判断し、基準を満たしていれば要求を受け付ける。このとき、決められた診断手順に従い、要求の優先度を判断する。SDでは、サービス要求への対応を行い、サービス利用者に対応結果を回答する。必要に応じて、サービス利用者と対応時期について調整し、サービス要求の進捗状況をサービス利用者に通知する。また、サービス要求の内容がバッチ処理作業依頼の場合は、F社のオペレーションチームに転送して処理してもらう。バッチ処理の終了後、オペレーションチームはその旨を[a]に連絡する。サービス要求への対応について、サービス利用者に完了報告を行い、プロセスを終了する。 なお、サービス要求の内容がインシデントへの対応要求の場合、又はサービス要求への対応中にその内容がインシデントへの対応要求であると判明した場合は、別途規定されているインシデント管理プロセスに従って処理される。 〔経理システムの統合〕 E社では、グループ会社と調整し、各社で個別に稼働している経理システムを統合することにした。現在、E社の経理部の部門コンピュータで運用されている経理システムを、E社とグループ会社で利用する統合経理システムとして改修し、F社が運用する。改修後は、まず、E社とグループ会社のG社の2社で統合経理システムの利用を開始し、その後、グループ会社各社に利用を広げていく計画である。 統合経理システムの機能要件はF社開発チームのアプリケーション担当が、非機能要件はインフラ担当がそれぞれ設計を行う。E社の経理システムで出力されているメッセージの内容は、表2のとおりである。 [表2 E社の経理システムで出力されているメッセージの内容] F社では、表2を自社の運用監視基準と照合し、受入れ可能かどうか調査した。調査の結果、表2中の④のしきい値については、F社のシステム資源に合わせて設定を変更する必要があることが分かり、しきい値を新たに設計することになった。 また、E社の経理部は、現在は担当者が直接臨時バッチ処理を実行していることから、統合経理システムの利用に当たり、臨時バッチ処理をSD経由ではなく、直接オペレーションチームに作業依頼したいとのことであった。S氏は、次の二つの理由から、E社の経理部に対して、“SDを経由してほしい。SDの要員体制は確保されている。作業依頼の手順についてはSDと調整するように”と回答した。 ・E社のサービス要求管理プロセスに従い、SDでサービス要求を受け付ける必要がある。 ・利用開始までに(ア)準備作業が必要である。 統合経理システムの運用が開始され、E社とG社で1年間利用された。その後、新たにグループ会社のH社が決算月から利用を開始した。決算月は、昼のオンライン時間帯に臨時バッチ処理が発生する。このバッチ処理は経理部からの要求で臨時に実施され、業務の状況に応じて1日に数回実施される。バッチ処理中は、大量のデータを処理することから、突発的にメモリ使用率が増加する。H社では統合経理システムの習熟度が低いこともあって、臨時バッチ処理が頻繁に発生し、メモリ使用率のしきい値超過の警告が多く発生するようになった。 しきい値超過の警告が発生した場合、オペレータはインフラ担当に連絡する。インフラ担当は状況に応じて、サービス利用者からの問合せに対応できるようにSDに状況を連絡する。また、インフラ担当は、メモリの使用状況などを分析し、オンライン業務に影響が及ぶことが想定される場合は、S氏に連絡し、各社の経理部と臨時バッチ処理の使用制限について調整する。 決算月に入って警告状態が続いているが、その都度、オンライン業務に影響を与える事態ではないとの判断が出されている。そこで、オペレーションチームのリーダは、警告対応のオペレータの業務負荷を軽減するために、“決算時期は、しきい値を緩く設定することも考えられるのではないか”とS氏に打診した。しかし、(イ)S氏はシステムの安定稼働を保証できないので、しきい値の変更は安易には行えないと判断した。 〔オペレーション業務の見直し〕 E社では、グループ会社各社で物流業務の分析に利用しているデータウェアハウスの統合を進めることにした。S氏は、統合データウェアハウスの運用開始に当たり、F社のオペレーション体制で受入れが可能かどうかを検討した。 S氏は、オペレーションが可能な要員数(以下、可能要員数という)と、現在の通常のオペレーションに必要な要員数(以下、必要要員数という)を調査し、図1にまとめた。可能要員数は図1のAの点線で表される。現在、オペレーションチームは4人で編成されているが、0時〜4時、8時〜12時、16時〜20時の間は、交代で休憩をとるので、可能要員数は3人となる。その他の時間帯の可能要員数は4人である。また、6時、14時、22時にチームが交代し、引継ぎを行うが、引継ぎ時間中も可能要員数は4人である。現在の必要要員数は、図1のBの実線で示すとおりであった。 [図1 オペレーションの可能要員数と必要要員数] なお、障害などインシデントの発生に備えて、可能要員数に対する必要要員数の比率は常に90%以下に抑える必要がある。 S氏はシフト勤務の時間帯ごとの特徴を調べた。深夜番の勤務時間帯にはバックアップを取得する必要があり、0時から6時の間で実施している。バックアップの取得が失敗していた場合、再処理が必要となる。したがって、再処理時間を考慮し、早番の勤務時間帯でバックアップが取得できているかどうかを確認する必要がある。現在は、バックアップ処理完了後の6時から8時までの2時間で、この確認作業を平均して1人で行っている。 次に、統合データウェアハウスの運用方法について調べたところ、バッチ処理が多いことから、4時から8時までの間、平均して0.5人の要員数が必要なことが分かった。S氏は、統合データウェアハウスの受入れを可能にする解決策を検討した。 設問1 サービス要求管理プロセスについて、(1)、(2)に答えよ。 (1)本文中の[a]に入れる適切な字句を、10字以内で答えよ。 (2)本文中の下線(ア)の準備作業の具体的な内容を、30字以内で述べよ。 設問2〔経理システムの統合〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1)表2中の④以外にも見直す必要がある項目がある。 (a)見直す必要があるメッセージの内容はどれか。表2中の①〜⑥(ただし、④を除く)から一つ選べ。 (b)見直す必要がある理由を、30字以内で述べよ。 (c)改善策を、40字以内で述べよ。 (2)本文中の下線(イ)で、S氏が、しきい値の変更を安易には行えないと判断した理由を、40字以内で述べよ。 設問3〔オペレーション業務の見直し〕について、(1)、(2)に答えよ。 (1)現在のオペレーション方法では、統合データウェアハウスの受入れができない。その理由を40字以内で述べよ。 (2)現在のオペレーション体制で統合データウェアハウスを受け入れるための解決策を、40字以内で具体的に述べよ。ただし、バッチ処理の処理時間帯は変えられないものとする。
表1。F社のオペレータが監視する通知、警告、異常の各種類について、内容、例、オペレーションチームの対応を示す表。
表1。F社のオペレータが監視する通知、警告、異常の各種類について、内容、例、オペレーションチームの対応を示す表。
表2。E社の経理システムで出力されているメッセージの内容。種類、経理システムでの表示例、コメント及び注記を示す表。
表2。E社の経理システムで出力されているメッセージの内容。種類、経理システムでの表示例、コメント及び注記を示す表。
図1。時刻別のオペレーションの可能要員数(A・点線)と必要要員数(B・実線)を示す折れ線図。
図1。時刻別のオペレーションの可能要員数(A・点線)と必要要員数(B・実線)を示す折れ線図。
解き方のヒントを見る

運用設計の役割対応を確認

監視、サービス要求、要員配置を個別の用語として暗記せず、運用上の目的と担当する活動の対応関係に注目して、各記述が何を整えようとしているかという観点で読み分けることが重要です。

この問題で問われていること

一つの観点として、各記述が示す活動の「目的と責任の結び付き」に注目してください。用語の印象や名称の近さではなく、その説明が運用のどの成果を支えるためのものかを、文中の主体・対象・責任の関係から読み取ります。

視点

運用に関する記述は、活動名そのものよりも、誰が、何を対象に、どの目的で、どの範囲の責任を持つかを整理すると比較しやすくなります。表現の細部を先に決めつけず、目的と責任の対応を確認してください。

確認ポイント

  • 記述の主語と責任の所在を確認する
  • 対象となる活動や成果の範囲を整理する
  • 目的と責任の結び付きが自然かを見直す
正解と解説を見る

解説

システム統合後のサービス要求管理、監視メッセージの見直し、要員制約を踏まえた運用受入れを問う事例です。

問題の全体像

E社はグループ各社のシステム統合を進め、F社が統合システムを24時間365日運用しています。設問では、サービス要求を適切な窓口で管理する準備、統合経理システムのメッセージやしきい値をF社の運用基準に適合させる考え方、さらに要員数と作業時間を分析して新システムを受け入れる方法が問われています。採点講評では、一般的な手順だけでなく、サービス要求管理プロセスや運用監視基準に沿った具体性が重視されています。

設問1(1)

バッチ処理の終了後にオペレーションチームが連絡する相手を問うています。本文では、SDがサービス要求を受け付け、バッチ処理依頼をオペレーションチームへ転送し、完了後にその旨を連絡してサービス利用者へ完了報告する流れです。したがって、公式解答例の「SD」又は「サービスデスク」となります。

設問1(2)

E社経理部がSDを経由せず直接依頼したいと申し出た場面に着目します。統合経理システムの利用開始前に、臨時バッチ処理を通常のサービス要求として扱えるよう、優先度判定の診断手順、臨時バッチ処理の識別・処理手順、要求の受入基準を準備します。30字以内なので、これらの要素を過不足なく圧縮して書くことがポイントです。

設問2(1)(a)

表2の③は「売上の当日集計値」で、経理部担当者が確認する業務上の数値です。F社の表1では、通知は通常運用に必要なメッセージを対象とするため、顧客業務の確認用メッセージである③が見直し対象となります。公式解答例は③です。

設問2(1)(b)

③を見直す理由は、業務担当者の確認用メッセージであり、運用監視の通知対象として必要な種類に該当しないためです。公式解答例では、顧客業務用の確認メッセージであること、又は出力すべきメッセージ種類のどれにも該当しないことが示されています。

設問2(1)(c)

運用監視基準に合わせる改善が必要です。業務上必要な確認情報はアプリケーション側で作成し、運用管理システムから通知メッセージとして出力しない、又は運用に不要な通知を抑止します。単に担当者の負荷を下げるだけでなく、監視対象を基準に適合させる点が重要です。

設問2(2)

しきい値超過は現時点ではオンライン業務に影響していなくても、しきい値を緩めれば異常の検知が遅れ、安定稼働に影響する可能性があります。したがって、変更前後のオンライン業務への影響を再評価する必要があり、公式解答例もこの点を理由としています。

設問3(1)

統合データウェアハウスでは4時から8時に平均0.5人の追加要員が必要です。特に6時から8時は、バックアップ結果の確認作業を含む現在の必要要員数に追加負荷が加わり、可能要員数に対する必要要員数の比率が90%を超えます。障害対応用の余裕を確保できないため、現行方法では受入れできません。

設問3(2)

バッチ処理時間帯を変えられないため、4時から8時に発生する負荷のうち、バックアップ処理結果の確認作業をずらします。公式解答例は、現在6時から8時に行っている確認作業の開始を12時からに変更する案です。これにより、追加作業が集中する時間帯の必要要員数を下げられます。

学習のポイント

運用設計では、標準プロセス、監視基準、要員負荷を一体で評価する力が重要です。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成25年度秋期 ITサービスマネージャ試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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