SAシステムアーキテクト試験 午後Ⅰ

平成26年度秋期 システムアーキテクト 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 物流センタのシステム構築に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 C社は,関東地方を中心に日用雑貨品の製造・販売を行っている。このたび物流センタの新設に伴い,物流センタシステムを新規に構築することになった。 〔現在の受注・出荷業務及びシステム化状況〕 (1)商品は,見込生産をしており,生産後,決められた配分割合で各営業所に配送し,各営業所で在庫を保持している。 (2)顧客は,雑貨卸問屋及び量販店が主であり,担当する顧客が営業所ごとに決められている。商品の注文は,営業担当者が直接顧客から受けるか,顧客から営業所への電子メール,電話,ファックスで受けている。 (3)受注は,各営業所で入力し,営業所サーバで管理している営業所在庫から引き当てる。在庫引当てができた受注は,システムで出荷関連の帳票を発行して出荷する。 (4)営業所在庫で引当てができなかった受注は,他営業所に在庫の有無を確認し,在庫があれば受注データをその営業所に送信し,出荷を依頼する。 (5)他営業所にも在庫がない場合は,工場サーバに自営業所への出庫依頼データを送信する。工場は,受けた出庫依頼を追加の生産計画として取り込み,その結果を営業所への出庫予定データとして送信する。営業所は,その出庫予定(営業所にとっての入荷予定)が,受注した納期に影響する場合は,営業担当者が顧客と納期調整を行い,その結果を受注変更として登録する。 (6)顧客への出荷データは売上データとして,営業所サーバから夜間に本社へ送信され,本社サーバで売上計上,請求・入金処理が行われる。売上は,受注した営業所への計上が原則であるが,他営業所から出荷した場合は,売上の一部が出荷手数料として,出荷した営業所に振替計上される。 〔物流センタ新設後の業務概要〕 新設した物流センタで商品在庫を集中管理し,顧客への出荷は全て物流センタから行う。物流センタには,物流センタサーバを導入し,営業所の受注処理を行う。 現在検討している,物流センタ新設後の業務概要は,次のとおりである。 (1)受注・在庫引当て ① 顧客からの受注は,各営業所から物流センタサーバに登録し,出荷予定,出荷実績,在庫引当てなどの状況を,随時照会できるようにする。 ② 受注登録時に,物流センタの商品在庫の引当てを行い,結果を出荷予定ファイルに出力する。 ③ 物流センタの商品別在庫を管理する在庫マスタの在庫関連項目として,実在庫,引当済実在庫,入荷予定在庫及び引当済入荷予定在庫を設ける。受注登録時の在庫引当ては,これらの在庫情報から算出した引当可能在庫に対して行われる。引当可能在庫は,次の式で算出する。 引当可能在庫=[a]-[b]+[c]-([c]のうち引当済みのもの) (2)入荷 ① 物流センタサーバは,工場サーバから入荷予定情報を受信し,在庫マスタの入荷予定在庫を更新するとともに,翌日分の入荷予定表を出力する。工場からの入荷時に,入荷予定表と現品の照合チェックを行う。 ② 入荷実績を物流センタの受入場の端末から入力し,保管庫に棚入れするための棚入指示表を出力するとともに,在庫マスタの実在庫,引当済実在庫,入荷予定在庫及び引当済入荷予定在庫を更新し,棚番別在庫ファイルの棚入指示済在庫を更新する。 (3)棚入れ・保管 ① 棚入指示表に基づき,商品を保管庫の棚に入れ,ポータブル端末から棚入実績を入力し,物流センタサーバに送信する。 ② 保管庫では,1種類の商品を一つ以上の棚に保管している。保管庫の在庫管理は,物流センタサーバの棚番別在庫ファイルで行い,棚入実績によって,棚番別在庫ファイルの実在庫及び棚入指示済在庫を更新する。 ③ 適正在庫を維持するために,在庫マスタに在庫補充点を新たに設定する。在庫量が在庫補充点以下になると,システムで一定量の在庫補充のオーダを生成し,工場サーバに送信する。在庫補充点には,在庫補充のリードタイム内での欠品を防止するための安全在庫が含まれている。 (4)棚出し ① 保管庫で,翌日出荷予定の棚出指示表を出力し,棚番別在庫ファイルの棚出指示済在庫を更新する。棚出指示表に基づいて棚出しをした後,ポータブル端末から棚出実績を入力し,物流センタサーバに送信する。 ② 棚出実績によって,棚番別在庫ファイルの実在庫及び棚出指示済在庫を更新する。 (5)出荷 ① 出荷場で,翌日出荷予定の出荷予定表と出荷ラベルを出力する。棚出しされた商品を出荷場で段ボール箱に梱包し,出荷ラベルを貼り,納品先別にそろえておく。 ② 翌日,商品を引取りに来た運送業者のトラックに段ボール箱を積み込む。その出荷実績を出荷場の端末から入力し,受注の消込み,在庫マスタの実在庫,引当済実在庫を更新するとともに,納品伝票などの出荷関連帳票を出力する。 ③ 物流センタからの出荷時点で,受注した営業所の売上として計上される。売上データは,夜間に本社サーバに送信し,本社サーバで売上集計処理,請求・入金処理を行う。 棚番別在庫ファイルのレイアウトを図1に,(4)棚出しから(5)出荷までの業務フローを図2に示す。 図1 棚番別在庫ファイルのレイアウト 図2 棚出しから出荷までの業務フロー 〔棚出し関連及び出荷関連の処理記述書〕 棚出し関連の処理記述書を表1に,出荷関連の処理記述書を表2に示す。 表1 棚出し関連の処理記述書 表2 出荷関連の処理記述書 設問1 物流センタの在庫について,(1),(2)に答えよ。 設問2 表1の棚出し関連の処理記述書について,(1),(2)に答えよ。 設問3 表2の出荷関連の処理記述書について,(1),(2)に答えよ。 設問4 物流センタ新設後は,営業所別の売上集計を行うとき,現状の売上データの集計で発生している,あるデータが発生しなくなる。それは,どのようなデータか。25字以内で述べよ。
図1 棚番別在庫ファイルのレイアウト。棚番を主キーとし,商品コード,実在庫,棚入指示済在庫,棚出指示済在庫を配置したファイルレイアウト。
図1 棚番別在庫ファイルのレイアウト。棚番を主キーとし,商品コード,実在庫,棚入指示済在庫,棚出指示済在庫を配置したファイルレイアウト。
図2 棚出しから出荷までの業務フロー。出荷場,保管庫,物流センタシステム間で,棚出指示,棚出し,出荷予定表・ラベル作成,梱包,積込み,出荷処理を連携する業務フロー。
図2 棚出しから出荷までの業務フロー。出荷場,保管庫,物流センタシステム間で,棚出指示,棚出し,出荷予定表・ラベル作成,梱包,積込み,出荷処理を連携する業務フロー。
表1 棚出し関連の処理記述書。棚出指示表作成と棚出処理について,画面表示,レコード抽出,在庫更新,帳票出力,状態更新などの処理を示す表。
表1 棚出し関連の処理記述書。棚出指示表作成と棚出処理について,画面表示,レコード抽出,在庫更新,帳票出力,状態更新などの処理を示す表。
表2 出荷関連の処理記述書。出荷予定表・出荷ラベル作成と出荷処理について,レコード状態更新,在庫更新,ファイル出力,帳票出力などの処理を示す表。
表2 出荷関連の処理記述書。出荷予定表・出荷ラベル作成と出荷処理について,レコード状態更新,在庫更新,ファイル出力,帳票出力などの処理を示す表。
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在庫業務を整理する視点

物流センタの業務を考えるときは、物の流れと情報の流れを分けて捉え、各工程がどの目的や管理対象に関係するかを順に確認すると、選択肢の違いを落ち着いて比較できます。

この問題で問われていること

一つの観点として、入荷から保管、出荷までの各場面で、何を記録し、どの時点で状態を更新する想定かに注目し、業務のつながりを時系列で整理してください。前後の対応にも目を向けます。

視点

業務を判断するときは、担当者の作業だけでなく、対象物の状態、記録される情報、次工程へ渡る条件を切り分けて考えます。まず時系列を置き、各段階の目的と前後関係を確認しましょう。

確認ポイント

  • 物の移動と情報の更新を分けて整理する
  • 各工程の目的と前後関係を確認する
  • 記録される対象と更新のタイミングに注目する
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解説

物流センタ新設による業務変更を踏まえ、在庫情報の意味、棚出し・出荷処理、売上データの変化を読み取る問題です。

問題の全体像

C社は営業所ごとに在庫を持つ方式から、物流センタで商品在庫を集中管理し、全顧客への出荷を物流センタから行う方式へ変更する。したがって、受注時の引当可能在庫の算出、入荷・棚入れ・棚出し・出荷に伴う在庫更新、各ファイルの状態変更を業務の順序に沿って設計する必要がある。公式の出題趣旨でも、受注から出荷までの業務構造の変更に合わせた在庫情報処理と、物流センタ内の物の動きに沿った処理設計を評価すると説明されている。

設問1(1)

引当可能在庫は、現在すぐ使える実在庫から、既に他の受注へ引き当てた実在庫を差し引き、さらに出荷予定日までに入荷する予定在庫を加える。ただし、その入荷予定在庫のうち既に引当済みの分は重複して使えないため差し引く。この式の各項目に対応するため、公式解答例では、aを実在庫、bを引当済実在庫、cを出荷予定日までの入荷予定在庫としている。

設問1(2)(①)

入荷予定在庫を実際の入荷として実在庫へ振り替える際、その入荷予定が既に受注に引き当てられていた場合は、引当分も入荷済みの実在庫側へ移る。したがって、公式解答例では、引当済実在庫が加算更新されるとしている。20字以内では、対象となる在庫情報と加算更新を簡潔に書く。

設問1(2)(②)

入荷したことで予定段階の在庫ではなくなるため、入荷予定在庫から実績分を減らす。同じく既に引き当てられていた分は予定段階から解消されるので、引当済入荷予定在庫も減算される。公式解答例は、この在庫情報が減算更新されることを示している。

設問2(1)

棚出指示表作成では、翌日出荷予定レコードを抽出した後、保管庫で商品を探せるよう、棚番別在庫ファイルから出荷対象商品の棚番を特定する。図1では棚番が主キーであり、棚番別在庫ファイルが商品コードや在庫数量を棚番単位で管理している。そこで公式解答例は、dを棚番別在庫ファイルの出荷対象商品の棚番としている。

設問2(2)

ポータブル端末から棚出実績を受信した時点では、実際に商品を棚から取り出した結果を棚番別在庫ファイルへ反映する。業務概要にあるとおり、棚出実績によって実在庫と棚出指示済在庫を更新するため、公式解答例ではその二つを更新する処理としている。

設問3(1)

出荷実績入力では、出荷予定表の出荷番号から該当する翌日出荷予定レコードを特定し、その状態を出荷済みにして出荷実績ファイルへ出力する。表2の処理対象と図2のデータの流れから、fは出荷予定ファイルとなる。

設問3(2)

出荷実績を登録した後は、在庫更新だけでなく、どの受注が出荷完了したかを受注ファイルにも反映する必要がある。表2では出荷実績に該当する処理として、受注ファイルの受注レコードの状態を出荷済みにする。公式解答例もこの状態更新を示している。

設問4

現状では、受注した営業所とは別の営業所が出荷した場合、出荷した営業所へ出荷手数料分を振替計上するデータが発生する。新設後は全て物流センタから出荷し、出荷時点で受注した営業所の売上として計上するため、他営業所への振替計上は発生しない。公式解答例は、他営業所に振替計上する出荷手数料分のデータとしている。

学習のポイント

在庫項目と業務イベントの対応、ファイル状態更新の設計を重点的に学ぶ。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成26年度秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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