AUシステム監査技術者試験 午後Ⅰ

平成30年度春期 システム監査技術者 午後Ⅰ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 システムの投資対効果の検証制度を対象とした監査に関する次の記述を読んで, 設問1~5に答えよ。 Z社は,建設機械,自動車などのレンタル会社である。Z社では,近年,老朽化したシステムの再構築が続き,システム関連の投資が膨らんできている。また,個人客向けのサービスを拡充するために,新規のシステム開発を積極的に行っている。 経営陣は,システム関連の投資に見合った効果が得られているかどうかを判断し,経営資源を有効に活用することが重要だと考えた。そこで,システム開発プロジェクトの途中,及びシステムのリリース後に,投資対効果を検証するための制度(以下,ステージゲートという)を導入した。また,ステージゲートを実現するためのシステム(以下,ゲートシステムという)も構築した。 ステージゲートの運用開始から1年が経過し,システムのリリースが完了したプロジェクトも出始めている。Z社監査部は,ステージゲートの導入目的が達成されているかどうかを確認するために,監査を実施することにした。 〔ステージゲートの概要〕 Z社が導入したステージゲートの概要は,次のとおりである。 (1)システム開発プロジェクトを五つのステージに分け,各ステージが完了して次のステージに進む前の時点(以下,ゲートという)において,新たに設けた投資委員会が審査を行い,次のいずれかの判定を行う。 ① 承認 ② 条件付承認 ③ 差戻し ④ 問題が解決するまで停止 ⑤ 中止 (2)各ステージとゲートの概要は,表1のとおりである。各ステージで検討した結果は,ゲートでの審査のためにゲートシステムに登録する。 表1 各ステージとゲートの概要 (3)対象となるシステムの主管部署は,システムオーナとしてプロジェクトを提案する。 (4)ステージゲートの対象は,投資見積総額が3、000万円を超えるプロジェクトである。 (5)制度変更対応のプロジェクトなど投資対効果が見積もりにくいプロジェクトは対象外とする。 (6)既存システムに対する改修・機能追加のプロジェクトもステージゲートの対象とし,システムオーナを明確にする。 (7)プロジェクト計画時に,投資による効果が得られるまでの期間を設定し,ステージ5で,その期間の効果を測定してプロジェクトを完了する。 〔予備調査の概要〕 Z社監査部は,ステージゲート導入の経緯・目的について,投資委員会の委員長である企画部のR部長へのヒアリング,及びステージゲートの導入計画書の査閲によって確認した。その結果は,次のような内容であった。 (1)従来のシステム開発では,計画時に投資対効果を試算していたが,システム開発プロジェクトの途中,及びシステムのリリース後に投資対効果を検証するプロセスはなかった。また,これまで計画時に見積もられた効果は,システムのリリース後に個別に確認した効果に比べて,大きめに見積もられる傾向があった。 (2)これまでの業務系システムの改修では,システム部がシステムオーナとなってプロジェクトを推進することが多かったので,投資対効果を検証する責任部署が明確でなかった。 (3)当社のビジネス環境の変化は激しく,プロジェクトの途中で方針を変更したり,プロジェクトを中止したりすることも必要になってくる。 (4)以上のことから,ステージゲート導入の目的は,次のとおりである。 ① システム開発プロジェクトの途中,及びシステムのリリース後に,投資対効果を検証できるようにすること ② 投資対効果についての責任部署を明確にすること ③ プロジェクトの途中でも,ビジネス環境の変化に柔軟に対応できるようにすること 〔本調査の概要〕 Z社監査部が実施した本調査の概要は,次のとおりである。 (1)〔予備調査の概要〕(4)②を達成できるような制度になっているかどうかを確認した。そのために,ゲートシステムのステージ1の登録内容について確認した。 (2)費用見積りのプロセスが適切かどうかについて,ステージ2の登録内容を確認した。確認したプロジェクトの一つであるインターネット受付システムの再構築プロジェクトでは,機器導入費用,システム開発費・運用費が見積もられていた。監査部は,費用項目が不足している可能性があるのではないかと考え,費用項目の不足が発生しないようにするためのコントロールが存在するかどうかを確認するための監査手続を実施した。 (3)ゲート3については,これまでに審査の対象となったプロジェクトのうちの1件が,“差戻し”の判定を受け,システムオーナから判定理由を求められ,R部長が理由を説明したことがあった。また,複数のプロジェクトが“条件付承認”の判定を受け,システムオーナから,“承認”の判定を受けたプロジェクトとの違いが分からない,という意見もあった。監査部は,このようなケースが増えると,プロジェクトの進行が阻害されるのではないかと考えた。そこで,各ゲートでの審査の観点について確認した。 (4)ステージ5については,制度の運用開始から1年では,ゲート5での審査を受けたプロジェクトが少なく,まだ監査部が審査の状況を確認する時期に至っていない。したがって,ゲート5での各プロジェクトの審査時期について確認することにした。 (5)ステージゲート導入の目的を達成するためには,各ゲートでの審査が適切に実施されることが重要である。審査が適切に実施されなければ,表2のようなリスクが想定される。そこで,各ゲートでの審査の内容を確認するために,表2に示す監査要点を追加した。 表2 監査部が想定したリスク及び監査要点 設問1 〔本調査の概要〕(1)について,監査部がステージ1の登録内容について確認した具体的な内容を,40字以内で述べよ。 設問2 〔本調査の概要〕(2)について,(i),(ii)に答えよ。 (i)監査部が不足している可能性があると考えた費用項目を,15字以内で述べよ。 (ii)監査部が実施した監査手続を,45字以内で述べよ。 設問3 〔本調査の概要〕(3)について,監査部が確認した具体的な内容を30字以内で述べよ。 設問4 〔本調査の概要〕(4)について,監査部が確認した具体的な内容を40字以内で述べよ。 設問5 〔本調査の概要〕(5)について,表2中のアに入れる監査要点を30字以内で述べよ。
表1 各ステージとゲートの概要。五つのステージと各ゲートについて、ステージ名と主な登録内容を一覧にした表。
表1 各ステージとゲートの概要。五つのステージと各ゲートについて、ステージ名と主な登録内容を一覧にした表。
表2 監査部が想定したリスク及び監査要点。ゲートのすり抜け、審査タイミングの遅れ、実効性のある審査が行われないリスクと、それぞれの監査要点を示す表。
表2 監査部が想定したリスク及び監査要点。ゲートのすり抜け、審査タイミングの遅れ、実効性のある審査が行われないリスクと、それぞれの監査要点を示す表。
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監査要点と制度目的の対応

この問題では、投資対効果を確認する制度が、導入目的に沿って機能しているかを監査する視点に注目します。各設問の対象場面と、そこで確認すべき証拠の関係を整理してください。

この問題で問われていること

一つの視点に絞り、各ステージやゲートの確認内容が、制度の目的と監査上のリスクにどう結び付くかを考えます。具体的な項目や結論ではなく、確認の方向性を捉えてください。

視点

制度の設計、登録情報、審査記録、時期の管理などを、目的達成を裏付ける監査証拠として捉えます。問題文の各場面で、何を確認すれば判断の妥当性を評価できるかを考えてください。

確認ポイント

  • 確認対象が、制度導入のどの目的に関係するか
  • 登録内容や審査記録から、判断の根拠を評価できるか
  • 確認時点と監査手続が、想定リスクに対応しているか
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解説

Z社のステージゲート制度について、導入目的が実現できる仕組みか、各ゲートの審査が適切かを監査する問題です。

問題の全体像

Z社は、システム投資の増加を背景に、プロジェクトを五つのステージに分け、各ゲートで投資委員会が継続や中止を審査するステージゲート制度を導入しました。導入目的は、開発途中・リリース後の投資対効果の検証、責任部署の明確化、環境変化への柔軟な対応です。設問では、各目的やリスクに対応して、何を確認し、どのような監査手続を行うべきかが問われています。

設問1

予備調査で示された目的②は、投資対効果についての責任部署を明確にすることです。ステージ1の登録内容にはシステムオーナが含まれるため、単に部署名が登録されているかではなく、実際にシステムを利用して業務を行う主管部署がシステムオーナになっているかを確認します。公式解答例も、この対応関係を示しています。

設問2(i)

費用見積りには機器導入費用、システム開発費、運用費が登録されています。これら以外にも、利用部門側で発生する教育費用が考えられるため、公式解答例では「ユーザ部門の教育費用」としています。字数が短いため、費用の発生主体と具体的な費目を簡潔に示します。

設問2(ii)

監査部は、費用項目の不足を防ぐコントロールの有無を確認しています。したがって、ゲートシステムの登録内容を閲覧し、費用項目が網羅されているか、必要な項目の入力が必須設定になっているかを確認します。公式解答例も、登録内容の閲覧、費用項目の網羅性、入力必須設定の確認を挙げています。

設問3

差戻し、条件付承認、承認の違いが分かりにくいと、審査が担当者の判断に左右され、プロジェクトの進行を阻害するおそれがあります。そのため、監査部は、投資委員会による各ゲートの審査に明確な判断基準があるかを確認します。採点講評でも、審査基準を明確に示すことが重視されています。

設問4

制度では、計画時に投資効果が得られるまでの期間を設定し、ステージ5で効果を測定します。ただし、効果が現れる時期はプロジェクトごとに異なるため、プロジェクトの特性に応じて投資対効果を測定する時期が定められているかを確認します。公式解答例もこの点を示しています。

設問5

表2のリスクは、実効性のある審査が行われないことです。審査者にプロジェクト上の利害関係があると、判断の客観性が損なわれる可能性があります。そのため、プロジェクトに利害がある者が審査に関わっていないことを監査要点とします。採点講評では、利害関係者の排除に加え、対象業務やシステムに知見のある者が審査する観点も示されています。

学習のポイント

監査目的から確認対象と監査手続を具体化する力を身に付ける。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成30年度春期 システム監査技術者試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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