AUシステム監査技術者試験 午後Ⅰ

平成28年度春期 システム監査技術者 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 システムの移行判定の監査に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 D社は,クレジットカード会社であり,現在,同業E社との合併に伴うシステム統合プロジェクト(以下,本プロジェクトという)を推進している。 D社は,5年前にも同業F社との合併に伴うシステム統合を行っている。そのときには,移行判定が不十分なまま本番移行を実施した結果,大規模なシステム障害が発生した。こうした経験を踏まえて,D社内部監査部長は,システム監査チームに対して,本プロジェクトにおける移行判定の適切性を監査するよう指示した。 〔本プロジェクトの概要〕 システム監査チームが予備調査で把握した本プロジェクトの概要は,次のとおりである。 (1)システム統合委員会は,本プロジェクトの重要事項を決定する会議体であり,D社及びE社(以下,両社という)役員,両社システム部門長,両社利用統括部門長などで構成される。 (2)システム統合は,E社のシステムをD社のシステムに片寄せして行う。 (3)システム統合スケジュールの概要は,図1のとおりである。 図1 システム統合スケジュールの概要 (4)各移行判定の概要は,次のとおりである。 ① 移行判定は3段階に分け,中間移行判定は12月末,最終移行判定は翌年2月末,本番移行判定は3月末に実施する。 ② 各移行判定では,判定項目,判定条件,及び必要とする判定根拠資料で構成される各移行判定基準が策定され,各移行判定の10日前までにシステム統合委員会が承認する。 ③ 各移行判定基準のほか,判定項目ごとに判定条件を満たしているかどうか,判定根拠資料に基づいて確認するために,各移行判定手続が策定される。 ④ 各移行判定結果は,システム統合委員会が承認する。 なお,各判定根拠資料について,本プロジェクトの管理基準では,“本プロジェクトの各プロセスについて,部門長などの責任者が承認した証跡を,各判定根拠資料に記録する”と定めている。 (5)統合後のシステムは,両社の合併当日(4月1日)から稼働させる。 (6)両社システム部門担当者は,システム統合に伴う顧客への影響告知の必要性を検討し,その結果に基づき,顧客影響一覧を作成した。表1にその一部を示す。 表1に関する両社システム部門担当者の判断は,次のとおりである。 ① 表1の項番1,2については,両社利用部門担当者に対して,顧客への影響に関する告知計画書の作成を依頼する。 ② 表1の項番3については,顧客への影響が極めて限られているので,顧客への影響告知は不要である。 表1 顧客影響一覧(一部) 〔中間移行判定後の監査〕 システム監査チームは,中間移行判定結果の適切性を確認するために,中間移行判定後の1月上旬に,表2の中間移行判定基準,判定結果などを閲覧し,関係者にインタビューを行った。 表2 中間移行判定基準と判定結果(抜粋) 監査結果は,次のとおりである。 (1)両社利用部門担当者にインタビューしたところ,表1の項番3について,顧客への影響告知を行うべきであると考えていることが分かった。続いて,追加の監査手続を行った結果,顧客影響一覧が適切に作成されていないことが判明した。 (2)STで検出された不具合の一部(以下,ST不具合という)が,未対応であった。その結果,システム統合委員会は,表2の項番2の判定として,“ST不具合への対応を完了し,両社システム部門長が1月末までに承認することを条件として可とすること”を承認していた。 (3)UAT中間報告書には,“テストケースの実施率が12月末時点の目標に対して,約50%にとどまっている”と記載されている。すなわち,最終移行判定までに全てのテストケースを実施することは困難な状況であった。その結果,システム統合委員会は,表2の項番3の判定として,“テストの項目・方法・スケジュールなどの計画を見直し,両社利用統括部門長が1月末までに承認することを条件として可とすること”を承認していた。 〔最終移行判定前の監査〕 システム監査チームは,各移行判定の概要,中間移行判定結果などを踏まえて,監査目的を次のように設定し,2月上旬に監査を実施した。 (1)最終移行判定基準案の判定項目,判定条件,及び必要とする判定根拠資料は,整合がとれているか確認する。 (2)中間移行判定でも使用された判定根拠資料の内容が,[a] (3)最終移行判定基準案が適切に策定されていることを確認するだけでなく,[b] 監査において,システム監査チームが閲覧した最終移行判定基準案は,表3のとおりである。 表3 最終移行判定基準案(抜粋) 監査における主な指摘事項は,次のとおりである。 (1)〔中間移行判定後の監査〕の監査結果(3)への対応結果について,両社利用統括部門長が承認したことは,システム統合委員会議事録には記録されているが,UAT計画書には記録されていない。表3の項番1の判定手続においては,適切なUAT計画書を用いる必要がある。 (2)表3の項番2については,訓練が行われたことを確認する判定手続だけでは,判定条件を十分に満たしていない。追加の判定手続が必要である。 設問1 〔中間移行判定後の監査〕の監査結果(1)について,システム監査チームが追加の監査手続において確認したと考えられる事項を,50字以内で述べよ。 設問2 〔中間移行判定後の監査〕の監査結果(2)について,システム監査チームが閲覧したと考えられる監査資料を二つ挙げ,それぞれ15字以内で答えよ。 設問3 〔最終移行判定前の監査〕の監査目的(2),(3)中の[a],[b]に入れる適切な字句を,それぞれ35字以内で述べよ。 設問4 〔最終移行判定前の監査〕の指摘事項(2)について,システム監査チームが必要と考えた追加の判定手続を,判定根拠資料と確認事項を含めて50字以内で述べよ。
図1 システム統合スケジュールの概要。X年5月から翌年4月までの要件定義、設計、開発・テスト、総合テスト、移行・稼働と、各移行判定やCP策定の時期を示す工程図。
図1 システム統合スケジュールの概要。X年5月から翌年4月までの要件定義、設計、開発・テスト、総合テスト、移行・稼働と、各移行判定やCP策定の時期を示す工程図。
表1 顧客影響一覧(一部)。システム統合に伴う顧客影響の例と、顧客への影響告知が必要か不要かを項番別に示す一覧表。
表1 顧客影響一覧(一部)。システム統合に伴う顧客影響の例と、顧客への影響告知が必要か不要かを項番別に示す一覧表。
表2 中間移行判定基準と判定結果(抜粋)。顧客影響告知、システムテスト、ユーザ受入テストについて、判定項目、条件、根拠資料、判定結果を示す表。
表2 中間移行判定基準と判定結果(抜粋)。顧客影響告知、システムテスト、ユーザ受入テストについて、判定項目、条件、根拠資料、判定結果を示す表。
表3 最終移行判定基準案(抜粋)。UATの完了とコンティンジェンシープランの実効性確保について、判定条件と根拠資料を示す表。
表3 最終移行判定基準案(抜粋)。UATの完了とコンティンジェンシープランの実効性確保について、判定条件と根拠資料を示す表。
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システム移行監査の証跡評価

システム移行の監査では、手続の目的と実施結果が対応し、後から第三者が経緯を追える形で根拠が整理されているかを、全体の流れに沿って確認することが重要です。記録の作成時点や確認者も視野に入れます。

この問題で問われていること

ここでは、移行作業そのものの成否を先に決めるのではなく、監査手続と証跡の対応関係に注目し、何を確かめるための記録なのか、結果をどの資料で追跡できるのかを整理してください。

視点

監査証跡を読むときは、手続の目的、対象、実施時点、担当、得られた記録の関係を一つの流れとして眺めます。記録が存在するだけでなく、判断の根拠や確認範囲が読み手に伝わる構成かを考えると、妥当性を検討しやすくなります。

確認ポイント

  • 手続の目的と、残された証跡が同じ確認事項を扱っているか
  • 実施者や時点などの前提を、記録から追跡できるか
  • 第三者が記録のつながりを読んだとき、判断過程を再現できるか
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解説

本問は、システム統合における移行判定について、利用部門や顧客への影響を踏まえ、判定基準・根拠資料・手続・承認記録の適切性を監査する問題です。

問題の全体像

D社とE社の合併に伴うシステム統合で、過去に移行判定が不十分なまま本番移行して障害が発生した。今回は中間・最終・本番の3段階で判定し、判定基準、根拠資料、手続、システム統合委員会の承認を組み合わせて管理している。設問では、顧客影響の把握、未対応のST不具合、UATの遅れ、CPの実効性に着目し、移行判定の適切性を確かめる監査手続を考える。

設問1

表1の項番3は、システム部門担当者が顧客への影響告知を不要と判断した一方、利用部門担当者は告知すべきと考えていた。さらに、顧客影響一覧が適切に作成されていなかった。したがって、追加の監査手続では、両社システム部門担当者が告知の必要性を両社利用部門担当者に確認したかを確認する。

設問2①

ST不具合が未対応で、対応完了と両社システム部門長の承認を条件に判定を可としているため、STで検出された不具合の状況を確認できる資料が必要です。公式解答例では、監査資料として「ST中間報告書」を挙げている。

設問2②

条件付きで可とする判定が実際に承認され、その条件が記録されているかを確認する必要がある。公式解答例では、判定結果と条件の承認記録を確認する資料として「システム統合委員会議事録」を挙げている。

設問3(a)

中間移行判定では、ST不具合への対応完了と承認、UAT計画の見直しと承認が条件になっていた。最終移行判定前には、中間判定で使用した資料がその後更新され、付された条件を満たしたことを確認する観点が必要です。公式解答例は「更新されて,中間移行判定で付けられた条件を満たしたか確認する」としている。

設問3(b)

判定基準案の項目・条件・根拠資料の整合性だけを確認しても、実際に条件を確認する手続が不適切なら判定の信頼性は確保できない。そのため、最終移行判定手続が適切に策定されていることも確認する。公式解答例もこの点を示している。

設問4

表3の項番2は、訓練の実施だけではCPの実効性を確認できない。図1ではCPの策定・訓練・見直しが行われるため、判定根拠資料としてCPと訓練結果報告書を照合し、訓練結果を踏まえてCPが必要に応じて見直されたか確認する。

学習のポイント

条件付き判定のフォローアップと、根拠資料に基づく具体的な監査手続の立案を学ぶ。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成28年度春期 システム監査技術者試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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