AUシステム監査技術者試験 午後Ⅰ

平成22年度春期 システム監査技術者 午後Ⅰ 問4

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問4 ポイント管理システムの監査に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 D社は,家電品の量販店を全国に80店舗展開しており,店舗はすべて営業本部の管轄下にある。D社では,販売促進のため,昨年からポイントサービス制度を導入した。ポイントサービスの利用顧客は,商品購入時に獲得したポイントを,ほかの商品の購入金額に充当できる。また,D社のポイントを提携先企業のポイントと交換できたり,提携先企業のサービス申込み時にD社のポイントを獲得できたりする。 監査部は,ポイントサービス制度の運用を支える重要な情報システムであるポイント管理システムを監査することにした。 〔情報システムの概要〕 (1) ポイント管理システムの概要 ① ポイント管理システムは,ポイントサービス制度の導入に伴い,昨年から稼働している。店舗の担当者は,顧客からの申込みに基づいて,顧客の氏名,連絡先などをポイント管理システムに入力する。この入力によって顧客コードが取得され,入力した内容は顧客ファイルに設定される。 ② 商品購入時の獲得ポイントは,(商品購入金額×商品別基本ポイント率)+(商品購入金額×店舗ごとの特別ポイント率)で計算し,顧客ファイルに設定される。 (2) 商品管理システムの概要 ① 商品管理システムは,ポイント管理システムとデータ連携しており,D社が営業を開始した10年前から稼働している。家電品の入替えや販売方針の変更などがあると,商品管理本部の担当者が商品コード,販売期間などを商品管理システムに入力する。これらのデータは,商品マスタファイルに設定される。 ② 商品管理システムで更新したデータは,日次バッチ処理でポイント管理システムに転送され,ポイント管理システムのファイルにも設定される。 (3) 基本ポイント率の設定 ① 営業本部は,利益率,他社の販売状況などを考慮し,商品の販売開始前に基本ポイント率及び適用日を商品別に決定する。基本ポイント率は,販売期間内に変更されることがある。 ② 決定又は変更された基本ポイント率及び適用日は,ポイント率設定書に記入され,営業本部長が承認する。 ③ 営業本部の担当者は,ポイント率設定書に基づいてポイント管理システムに基本ポイント率及び適用日を入力する。入力した基本ポイント率及び適用日を基に,商品コード別基本ポイント率及び適用日がポイント率ファイルに設定される。 ④ 設定された基本ポイント率及び適用日は,ログファイルに記録される。 (4) 特別ポイント率の設定 特別ポイント率の設定ルールは,前年の12月に決定される。例えば,今年の場合は,“同一月に1回だけ,1年間に3回まで,設定できる”と規定されている。 特別ポイント率の範囲,設定回数などは,ポイント率ファイルに設定される。 ① 3%未満の特別ポイント率は,店長の権限で決定・入力される。 ② 3%以上,5%以下の特別ポイント率は,営業本部長の権限で決定・入力される。 ③ 特別ポイント率に関するチェックは,入力時にポイント管理システムで行う。今年の場合,コントロール目標及びチェック内容は,表のとおりである。問題がなければ,店舗ファイルに特別ポイント率が設定される。 表 特別ポイント率に関するチェック 〔提携に伴うポイント処理〕 (1) 提携に伴うポイント交換処理 D社の商品を購入して獲得したポイントは,提携期間内であれば,ビデオレンタル業者,航空会社などの提携先企業のポイントと交換できる。提携期間及びポイント交換率などは,営業本部の担当者がポイント管理システムに入力している。これらのデータは,提携先ファイルに設定される。顧客は,D社のWebサイトの専用ページから,提携先企業の企業コード,顧客コード,交換ポイントなどを入力し,ポイント交換を申し込む。システム上の処理は,次のとおりである。 ① D社のポイント管理システムは,提携先企業の企業コードと交換ポイントについて,正確かどうかをチェックする。 ② チェックの結果,問題がなければ,提携先企業のシステムに顧客コード,交換ポイントなどを送信する。 ③ チェックの結果,問題があれば,エラーメッセージを専用ページに表示し,顧客に再入力を促す。表示されたエラーメッセージは,ログファイルに記録される。 (2) 提携に伴うポイント獲得処理 D社は引っ越し業者5社と提携している。その内容は,“D社の顧客は,提携期間内に提携先の引っ越し業者のWebサイトから引っ越しサービスを申し込むと,D社の一定のポイントを自動的に獲得できる”というものである。提携先の企業コード,提携期間,獲得ポイントなどは,営業本部の担当者がポイント管理システムに入力している。これらのデータは,提携先ファイルに設定される。システム上の処理は,次のとおりである。 ① D社の顧客は,引っ越し業者のWebサイトの専用ページから,D社の顧客コードを入力する。 ② 引っ越し業者のシステムは,自社の企業コード及び入力されたD社の顧客コードを,D社のポイント管理システムに送信する。 ③ D社のポイント管理システムは,引っ越し業者のシステムから受信したデータをチェックした後,顧客のポイントを加算する。 〔監査の内容(抜粋)〕 (1) 基本ポイント率に関する監査 ① 監査担当者は,基本ポイント率が適切にポイント管理システムに設定されているかどうかを確かめるために,ポイント管理システムのファイルを用いて監査手続を行った。 ② 監査担当者は,ポイントサービスのシステムのインタフェースにおいて,基本ポイント率に関し,データが整合しているかどうかを確かめるために,監査手続を行った。 (2) 提携に伴うポイント交換処理に関する監査 監査担当者は,ポイント交換の申込みにおいて,提携先企業の企業コードの入力ミスを防止するためのコントロールについて,整備状況及び運用状況に関する監査手続を行った。 (3) 提携に伴うポイント獲得処理に関する監査 監査担当者は,提携に伴うポイント獲得処理で,D社のシステムが,受信データについて,ポイント管理システムのファイルを参照し,提携内容に対応したチェックを行っているかどうかを確かめた。 設問1 表中の[a],[b]に該当するチェック内容を,それぞれ30字以内で述べよ。 設問2 〔監査の内容(抜粋)〕の(1)-①,②において,監査担当者が行った監査手続を,それぞれ45字以内で述べよ。 設問3 〔監査の内容(抜粋)〕の(2)において,監査担当者が運用状況に関して行った監査手続を,40字以内で述べよ。 設問4 〔監査の内容(抜粋)〕の(3)において,監査担当者が確かめたチェック内容を,35字以内で述べよ。
表 特別ポイント率に関するチェック。特別ポイント率の入力時チェックを示す表。コントロール目標とチェック内容の2列からなる。正当性は空欄a、正確性は「5%以下の正の数か。」、準拠性は空欄bとなっている。
表 特別ポイント率に関するチェック。特別ポイント率の入力時チェックを示す表。コントロール目標とチェック内容の2列からなる。正当性は空欄a、正確性は「5%以下の正の数か。」、準拠性は空欄bとなっている。
解き方のヒントを見る

監査手続と確かめたい事項の対応を考える

監査手続を検討する際は、まずその手続で何を確かめたいのかをはっきりさせることが出発点です。手続の名称や作業内容だけで判断せず、確認したい事項と、手続から得られる証拠が噛み合っているかという一つの観点に絞って考えてみましょう。

この問題で問われていること

この問題の中心は、入力段階と連携段階のそれぞれで、監査人が確かめたい事項と実施する手続の目的が一致しているかという観点です。手続が見ている対象範囲と、確かめたい事項との間にずれがないかに注意しましょう。

視点

監査手続は、確かめたい事項に対して証拠を集めるための手段です。同じように見える作業でも、何を対象にどの範囲を見るかによって、得られる証拠が支える結論は変わります。そのため、手続の良し悪しは作業内容だけでは決まりません。確かめたい事項と照らし合わせて初めて判断できます。まず確かめたい事項を言葉にし、次にその手続がそこへ届いているかを考える順序で整理すると、検討がぶれにくくなります。

確認ポイント

  • その手続で何が適切に行われていることを確かめたいのかを、自分の言葉で説明できるか
  • 手続が実際に見ている対象や範囲が、確かめたい事項を過不足なくカバーしているか
  • 手続から得られる証拠が、確かめたい事項についての結論を支えるものになっているか
正解と解説を見る

解説

家電量販店D社のポイント管理システムを題材に、特別ポイント率の入力チェック(正当性・準拠性)、基本ポイント率がポイント率設定書どおりに設定されているかの確認、商品管理システムとのインタフェースでのデータ整合性、提携先企業とのポイント交換・獲得処理における企業コードのチェックを、本文の記述と結び付けて答える問題です。公式解答例は、どれも本文に書かれた権限・ルール・ファイル名をそのまま根拠にしています。

問題の全体像

D社は全国80店舗の家電量販店で、昨年ポイントサービス制度を導入しました。ポイント管理システムは、10年前から動いている商品管理システムと日次バッチでデータ連携しています。さらに、提携先企業とのポイント交換や、引っ越し業者経由のポイント獲得も処理します。獲得ポイントは「基本ポイント率」と「店舗ごとの特別ポイント率」から計算します。基本ポイント率は営業本部長が承認したポイント率設定書に基づいて入力され、特別ポイント率は率の大きさによって店長か営業本部長の権限で決定・入力されます。公式解答例の出題趣旨では、ポイントサービスは企業の販売促進手段であり、消費者にとっては実質的な値引きに当たるため、情報システムの信頼性確保が重要だとしています。そのうえで、ポイント管理システムの特性に応じてリスク・コントロール目標・チェック内容を把握し、監査手続を実施する能力を問うとしています。答案では、本文に書かれた権限・ルール・ファイル名を正確に使うことが大切です。

設問1(a)

表の空欄aはコントロール目標「正当性」、つまり正当な権限を持つ者による入力かを確かめるチェックです。本文の〔特別ポイント率の設定〕では、①3%未満は店長の権限、②3%以上5%以下は営業本部長の権限で決定・入力すると定めています。正確性の欄は「5%以下の正の数か。」で値の範囲を確かめているので、aでは率の大きさに応じた入力権限を確かめることになります。公式解答例では「3%未満は店長権限、3%以上は営業本部長権限での入力か」という趣旨です。30字以内に収めるため、境界の3%と、それぞれの権限者(店長/営業本部長)の二つを落とさずに書きます。

設問1(b)

空欄bはコントロール目標「準拠性」なので、定められたルールに沿った設定かを確かめます。本文では、特別ポイント率の設定ルールは前年12月に決まり、今年は「同一月に1回だけ、1年間に3回まで、設定できる」と規定されています。設定回数などはポイント率ファイルに設定されるとあり、入力時にシステムで照合できます。公式解答例では「同一月に1回だけ、1年間に3回までの設定か」という趣旨です。答案の要素は、月の回数制限と年の回数制限の二つです。

設問2(1)-①

監査の目的は「基本ポイント率が適切にポイント管理システムに設定されているか」を、ポイント管理システムのファイルを用いて確かめることです。本文(3)では、基本ポイント率と適用日はポイント率設定書に記入されて営業本部長が承認し(②)、その設定書に基づいて入力され(③)、設定内容はログファイルに記録されます(④)。したがって、承認済みの原始資料であるポイント率設定書と、システムに実際に設定された記録であるログファイルを照合すれば、入力ミスや無承認の設定を発見できます。公式解答例では「ポイント率設定書とログファイルを照合し、基本ポイント率及び適用日の合致を確認する」という趣旨です。45字以内で、照合する二つの対象(設定書とログファイル)と、確認する項目(基本ポイント率と適用日の一致)を書きます。

設問2(1)-②

「ポイントサービスのシステムのインタフェース」とは、商品管理システムとポイント管理システムのデータ連携を指します。本文では、商品管理本部が入力した商品コードなどは商品マスタファイルに設定され、日次バッチでポイント管理システムに転送されます。一方、基本ポイント率は商品コード別にポイント率ファイルに設定されます。基本ポイント率を正しく適用するには、両ファイルの商品コードが一致している必要があります。商品の入替えなどで不一致が起きると、率が適用されない商品や誤った率になる商品が生じ得ます。公式解答例では「商品マスタファイルとポイント率ファイルを照合し、商品コードの整合を確認する」という趣旨です。答案では、連携元の商品マスタファイルと連携先のポイント率ファイルという二つのファイル名、キーになる商品コードを明示します。

設問3

監査の対象は、ポイント交換申込み時の提携先企業コードの入力ミスを防止するコントロールです。本文では、ポイント管理システムが企業コードの正確性をチェックし(①)、問題があれば専用ページにエラーメッセージを表示して再入力を促す(③)とされています。整備状況の確認はこうした仕組みが設計されているかを見ることですが、設問が求めるのは運用状況、つまり実際にコントロールが機能しているかの確認です。そのためにはテストデータで誤った入力を与え、システムの反応を見ます。公式解答例では「存在しない企業コードを入力し、該当するエラーメッセージの表示を確認する」という趣旨です。40字以内で、誤りを含む入力(存在しない企業コード)と、期待される結果(エラーメッセージの表示)の二つをそろえて書きます。

設問4

提携に伴うポイント獲得処理では、引っ越し業者のシステムが自社の企業コードとD社の顧客コードを送信し(②)、D社のシステムがチェックした後にポイントを加算します(③)。提携先の企業コード・提携期間・獲得ポイントは提携先ファイルに設定されています。監査の内容(3)では、受信データについてポイント管理システムのファイルを参照し、「提携内容に対応したチェック」をしているかを確かめたとあります。提携していない企業からのデータで不正にポイントが加算されないよう、受信した企業コードが提携先として登録されているかを確認するのが基本です。公式解答例では「受信したデータの企業コードが、提携先ファイルに存在するか」という趣旨です。35字以内で、受信データの企業コードと、参照先の提携先ファイルを明示します。

学習のポイント

コントロール目標(正当性・正確性・準拠性)ごとのチェック内容の書き分けを押さえましょう。また、照合型の監査手続は「何と何を照合し、何を確認するか」の形で書きます。整備状況と運用状況の違いと、テストデータ法の使い方も学習の重点です。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成22年度春期 システム監査技術者試験 午後Ⅰ 問4(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

関連する過去問一覧

IPA Advancedは非公式の学習サイトです。解説にはAIによる補助生成を含む場合があります。公式の問題冊子・解答例・採点講評を優先し、誤りは確認後に訂正します。運営・編集方針