AUシステム監査技術者試験 午後Ⅰ
平成22年度春期 システム監査技術者 午後Ⅰ 問4
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題

解き方のヒントを見る
監査手続と確かめたい事項の対応を考える
監査手続を検討する際は、まずその手続で何を確かめたいのかをはっきりさせることが出発点です。手続の名称や作業内容だけで判断せず、確認したい事項と、手続から得られる証拠が噛み合っているかという一つの観点に絞って考えてみましょう。
この問題で問われていること
この問題の中心は、入力段階と連携段階のそれぞれで、監査人が確かめたい事項と実施する手続の目的が一致しているかという観点です。手続が見ている対象範囲と、確かめたい事項との間にずれがないかに注意しましょう。
視点
監査手続は、確かめたい事項に対して証拠を集めるための手段です。同じように見える作業でも、何を対象にどの範囲を見るかによって、得られる証拠が支える結論は変わります。そのため、手続の良し悪しは作業内容だけでは決まりません。確かめたい事項と照らし合わせて初めて判断できます。まず確かめたい事項を言葉にし、次にその手続がそこへ届いているかを考える順序で整理すると、検討がぶれにくくなります。
確認ポイント
- その手続で何が適切に行われていることを確かめたいのかを、自分の言葉で説明できるか
- 手続が実際に見ている対象や範囲が、確かめたい事項を過不足なくカバーしているか
- 手続から得られる証拠が、確かめたい事項についての結論を支えるものになっているか
正解と解説を見る
解説
家電量販店D社のポイント管理システムを題材に、特別ポイント率の入力チェック(正当性・準拠性)、基本ポイント率がポイント率設定書どおりに設定されているかの確認、商品管理システムとのインタフェースでのデータ整合性、提携先企業とのポイント交換・獲得処理における企業コードのチェックを、本文の記述と結び付けて答える問題です。公式解答例は、どれも本文に書かれた権限・ルール・ファイル名をそのまま根拠にしています。
問題の全体像
D社は全国80店舗の家電量販店で、昨年ポイントサービス制度を導入しました。ポイント管理システムは、10年前から動いている商品管理システムと日次バッチでデータ連携しています。さらに、提携先企業とのポイント交換や、引っ越し業者経由のポイント獲得も処理します。獲得ポイントは「基本ポイント率」と「店舗ごとの特別ポイント率」から計算します。基本ポイント率は営業本部長が承認したポイント率設定書に基づいて入力され、特別ポイント率は率の大きさによって店長か営業本部長の権限で決定・入力されます。公式解答例の出題趣旨では、ポイントサービスは企業の販売促進手段であり、消費者にとっては実質的な値引きに当たるため、情報システムの信頼性確保が重要だとしています。そのうえで、ポイント管理システムの特性に応じてリスク・コントロール目標・チェック内容を把握し、監査手続を実施する能力を問うとしています。答案では、本文に書かれた権限・ルール・ファイル名を正確に使うことが大切です。
設問1(a)
表の空欄aはコントロール目標「正当性」、つまり正当な権限を持つ者による入力かを確かめるチェックです。本文の〔特別ポイント率の設定〕では、①3%未満は店長の権限、②3%以上5%以下は営業本部長の権限で決定・入力すると定めています。正確性の欄は「5%以下の正の数か。」で値の範囲を確かめているので、aでは率の大きさに応じた入力権限を確かめることになります。公式解答例では「3%未満は店長権限、3%以上は営業本部長権限での入力か」という趣旨です。30字以内に収めるため、境界の3%と、それぞれの権限者(店長/営業本部長)の二つを落とさずに書きます。
設問1(b)
空欄bはコントロール目標「準拠性」なので、定められたルールに沿った設定かを確かめます。本文では、特別ポイント率の設定ルールは前年12月に決まり、今年は「同一月に1回だけ、1年間に3回まで、設定できる」と規定されています。設定回数などはポイント率ファイルに設定されるとあり、入力時にシステムで照合できます。公式解答例では「同一月に1回だけ、1年間に3回までの設定か」という趣旨です。答案の要素は、月の回数制限と年の回数制限の二つです。
設問2(1)-①
監査の目的は「基本ポイント率が適切にポイント管理システムに設定されているか」を、ポイント管理システムのファイルを用いて確かめることです。本文(3)では、基本ポイント率と適用日はポイント率設定書に記入されて営業本部長が承認し(②)、その設定書に基づいて入力され(③)、設定内容はログファイルに記録されます(④)。したがって、承認済みの原始資料であるポイント率設定書と、システムに実際に設定された記録であるログファイルを照合すれば、入力ミスや無承認の設定を発見できます。公式解答例では「ポイント率設定書とログファイルを照合し、基本ポイント率及び適用日の合致を確認する」という趣旨です。45字以内で、照合する二つの対象(設定書とログファイル)と、確認する項目(基本ポイント率と適用日の一致)を書きます。
設問2(1)-②
「ポイントサービスのシステムのインタフェース」とは、商品管理システムとポイント管理システムのデータ連携を指します。本文では、商品管理本部が入力した商品コードなどは商品マスタファイルに設定され、日次バッチでポイント管理システムに転送されます。一方、基本ポイント率は商品コード別にポイント率ファイルに設定されます。基本ポイント率を正しく適用するには、両ファイルの商品コードが一致している必要があります。商品の入替えなどで不一致が起きると、率が適用されない商品や誤った率になる商品が生じ得ます。公式解答例では「商品マスタファイルとポイント率ファイルを照合し、商品コードの整合を確認する」という趣旨です。答案では、連携元の商品マスタファイルと連携先のポイント率ファイルという二つのファイル名、キーになる商品コードを明示します。
設問3
監査の対象は、ポイント交換申込み時の提携先企業コードの入力ミスを防止するコントロールです。本文では、ポイント管理システムが企業コードの正確性をチェックし(①)、問題があれば専用ページにエラーメッセージを表示して再入力を促す(③)とされています。整備状況の確認はこうした仕組みが設計されているかを見ることですが、設問が求めるのは運用状況、つまり実際にコントロールが機能しているかの確認です。そのためにはテストデータで誤った入力を与え、システムの反応を見ます。公式解答例では「存在しない企業コードを入力し、該当するエラーメッセージの表示を確認する」という趣旨です。40字以内で、誤りを含む入力(存在しない企業コード)と、期待される結果(エラーメッセージの表示)の二つをそろえて書きます。
設問4
提携に伴うポイント獲得処理では、引っ越し業者のシステムが自社の企業コードとD社の顧客コードを送信し(②)、D社のシステムがチェックした後にポイントを加算します(③)。提携先の企業コード・提携期間・獲得ポイントは提携先ファイルに設定されています。監査の内容(3)では、受信データについてポイント管理システムのファイルを参照し、「提携内容に対応したチェック」をしているかを確かめたとあります。提携していない企業からのデータで不正にポイントが加算されないよう、受信した企業コードが提携先として登録されているかを確認するのが基本です。公式解答例では「受信したデータの企業コードが、提携先ファイルに存在するか」という趣旨です。35字以内で、受信データの企業コードと、参照先の提携先ファイルを明示します。
学習のポイント
コントロール目標(正当性・正確性・準拠性)ごとのチェック内容の書き分けを押さえましょう。また、照合型の監査手続は「何と何を照合し、何を確認するか」の形で書きます。整備状況と運用状況の違いと、テストデータ法の使い方も学習の重点です。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成22年度春期 システム監査技術者試験 午後Ⅰ 問4(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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