AUシステム監査技術者試験 午後Ⅰ

平成22年度春期 システム監査技術者 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 倉庫システムの監査に関する次の記述を読んで、設問1~5に答えよ。 B社は、全国約100か所に倉庫をもつ物流会社であり、主に食品メーカ(以下、顧客という)から物流業務を受託している。B社では、本社在庫システム及び倉庫システムを運用している。今回、内部監査部では、倉庫システムの監査を実施することにした。 【B社システムの概要】 9年前から稼働している本社在庫システムは、顧客ニーズの変化や倉庫業務の迅速化には十分に対応することができなくなってきた。そこで、3年前に小規模倉庫を除く各倉庫に倉庫システムが導入された。ただし、請求などの本社一括処理機能については、従来どおり本社在庫システムを利用している。現行システムの概要は、図のとおりである。 図 本社在庫システム及び倉庫システムの概要 (1)本社在庫システムは、本社データセンタで運用しており、すべての倉庫の在庫及び入出庫情報を処理している。本社在庫システムの端末は、すべての倉庫に配置されており、小規模倉庫では、現在でも通常業務で使用している。また、入出庫予定データ、入出庫実績データ及び月次在庫残高データに関する顧客との送受信は、すべて本社在庫システムで行われている。 (2)小規模倉庫を除く各倉庫には、倉庫システムのサーバが設置されている。 (3)各倉庫システムと本社在庫システムとのインタフェースは、次のとおりである。 ① 顧客から受信した入出庫予定データは、1時間ごとに本社在庫システムのバッチ処理で入出庫指図データとして各倉庫システムに送信される。 ② 各倉庫システムの倉庫在庫DBの入出庫実績データは、1日に4回、本社在庫システムのバッチ処理で、本社在庫システムの在庫DBに取り込まれる。バッチ処理時間は、入出庫実績データ量などによって異なるので、各倉庫では正確な終了時刻を確認できない。 【システム監査の目的及び対象範囲】 近年、財務報告の信頼性に対する関心が高まっているので、経営者は、顧客に提供する情報の信頼性を重視するようになっている。この点を踏まえ、今回のシステム監査では、サービス継続性及び在庫情報の信頼性が確保されているかどうかを監査することにした。また、倉庫システムを監査対象として、次の監査要点について調査することにした。 (1)倉庫在庫DB上の在庫残高の正確性が確保されているか。 (2)顧客に提出している月次在庫残高データの正確性が確保されているか。 (3)倉庫システムに障害が発生して停止した場合でも、サービス継続性の観点から入出庫業務を継続できるか。 (4)データのバックアップが適切に行われているか。 【本調査の検討事項】 予備調査の結果及びそれを踏まえた本調査における検討事項は、次のとおりである。 (1)倉庫在庫DB上の在庫残高の正確性 倉庫在庫DB上の在庫残高の正確性を確保するために、各倉庫における在庫の棚卸しが、3か月に1回、2名の担当者(以下、棚卸担当者という)で実施されている。 ① 棚卸担当者は、棚卸しの都度、在庫がある棚の番号(以下、棚番という)、品番及び在庫数量をハンディ端末に入力する。このとき、ハンディ端末には、倉庫在庫DBの残高との差異が表示される。棚卸担当者は、この差異を倉庫在庫DBに反映させるために、棚番、品番及び在庫数量を差異記入表に記載し、事務担当者に提出する。在庫がない棚については、棚卸しを行わず、ハンディ端末への入力も行わない。また、棚卸担当者は、棚卸しに漏れがないように、棚卸実施済みの棚にシールをはる。 ② ①の手続だけでは、倉庫在庫DB上の在庫残高の正確性が十分に確保できないので、追加的なコントロールが行われていることを本調査で確かめる。 (2)月次在庫残高データの正確性 月次在庫残高データは、本社在庫システムの月次在庫ファイルに基づいて作成し、顧客に提供している。 ① 各倉庫システムの倉庫在庫DB上の在庫残高は、入力の都度、リアルタイムで更新される。一方、本社在庫システムの月次在庫ファイルは、各倉庫システムへの入出庫入力が遅れる可能性を考慮して、翌月2日目の営業日に夜間バッチ処理で当月分の入出庫実績データを抽出し、自動更新される。 ② 本調査では、顧客に提供する月次在庫残高データの正確性を確認するために、倉庫システムの倉庫在庫DBと月次在庫ファイルの在庫残高を照合する。このため、本社在庫システムの月次バッチ処理終了後、月次在庫ファイルと各倉庫システムの倉庫在庫DBの在庫残高データを本社の情報システム部から入手する。 (3)入出庫業務の継続性 小規模倉庫を除く倉庫では、倉庫システムのハンディ端末を利用することによって、以前より少ない要員で入出庫業務を運用できるようになっている。 ① 各倉庫システムのサーバで障害が発生し、復旧までに時間を要する場合には、本社在庫システムを利用して入出庫業務を継続することになっている。各倉庫の事務担当者には、小規模倉庫と同じ内容の操作マニュアルを配布し、操作研修を定期的に開催している。 ② 本調査では、小規模倉庫を除く倉庫において、本社在庫システムを利用して業務を問題なく遂行できることを確認しているかどうかについて確かめる。 ③ また、本社在庫システムを利用して業務を行う前に、各倉庫の事務担当者が確認すべき事項が明確になっているかどうかについて確かめる。 (4)データのバックアップ 入出庫実績データは、本社在庫システムの在庫DBに保存・管理されているので、各倉庫システムでは、倉庫在庫DBについては特にバックアップを取得していない。また、各倉庫では、本社在庫システムのバックアップデータを利用して復旧しなければならない障害は、過去に発生していない。 ① 本社在庫システムでは、5年前から重要なデータベースの変更は行っていないので、現在でも、そのときに改定されたデータバックアップ手順書及び復旧手順書が利用されている。 ② バックアップがデータバックアップ手順書どおりに取得され、復旧手順書について定期的にテストされているかを本調査で確かめる。また、データバックアップ手順書及び復旧手順書に不備があると考えられるので、その妥当性についても本調査で確かめる。 設問1 〔本調査の検討事項〕の(1)-②において、倉庫在庫DB上の在庫残高の正確性が十分に確保されない理由を、45字以内で述べよ。 設問2 〔本調査の検討事項〕の(2)-②において、プログラムの欠陥やシステム運用のミスなどの異常でなくても在庫残高に差異が発生する可能性があるので、照合前に調整する必要がある。差異が発生する理由を、45字以内で述べよ。 設問3 〔本調査の検討事項〕の(3)-②における監査ポイントを、40字以内で述べよ。 設問4 〔本調査の検討事項〕の(3)-③において、事務担当者が事前に確認すべき事項の内容を、40字以内で述べよ。 設問5 〔本調査の検討事項〕の(4)-②において、データバックアップ手順書及び復旧手順書にはどのような不備があると考えられるか、40字以内で述べよ。
図 本社在庫システム及び倉庫システムの概要。本社データセンタの在庫システムと各倉庫の倉庫システム、小規模倉庫、顧客、端末、データベース間のデータ連携を示す構成図。
図 本社在庫システム及び倉庫システムの概要。本社データセンタの在庫システムと各倉庫の倉庫システム、小規模倉庫、顧客、端末、データベース間のデータ連携を示す構成図。
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在庫情報の信頼性を見極める視点

倉庫システムの監査では、在庫情報を単なる数量として見るのではなく、記録の作成から更新、参照、復旧までが一貫して管理されているかという観点で整理すると、判断材料を漏れなく確認できます。

この問題で問われていること

今回の検討では、在庫情報が通常時だけでなく、入力・更新の途中や障害後にも追跡可能な状態で扱われるかに焦点を置き、管理上の根拠と確認方法を順序立てて照合してください。

視点

信頼性と継続性を考えるときは、情報が誰によって、どの時点で、どの記録に基づいて扱われるかを整理し、平常時と例外時の確認可能性を同じ枠組みで見比べます。

確認ポイント

  • 在庫情報の生成・更新・参照の各段階で、確認すべき記録や担当範囲を整理できているか
  • 通常運用と想定外の事象を分け、情報の追跡や確認に関わる観点を抜けなく置けているか
  • 一時的な不整合や利用停止が起きた場合も、後から経緯を確認する視点を含めているか
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解説

倉庫在庫の正確性、月次データの信頼性、障害時の業務継続、バックアップの妥当性を、システム間連携と運用手続の観点から監査する問題です。

問題の全体像

B社は、本社在庫システムと各倉庫の倉庫システムを連携させて物流業務を行っている。監査の主眼は、倉庫在庫DBや顧客へ提供する月次在庫残高の正確性、倉庫システム障害時の入出庫業務の継続性、そしてバックアップ・復旧手順の妥当性です。解答では、問題文に示された棚卸し方法、システム間の更新周期、代替運用、古い手順書から、追加確認すべき統制や監査ポイントを具体化する。

設問1

棚卸担当者は在庫がある棚だけを入力し、在庫のない棚は棚卸しも入力もしない。このため、未実施の棚について、本当に在庫残高がゼロなのかを確認できない。公式解答例はこの点を、未実施の棚に倉庫在庫DB上も在庫残高がないことが確認されていない、と整理している。45字以内なので、「未実施の棚」「DB上の在庫残高ゼロの未確認」という二つの要素を押さえる。

設問2

倉庫在庫DBは入力の都度リアルタイム更新されるが、本社在庫システムの月次在庫ファイルは、翌月2営業日の夜間バッチで当月実績を抽出して更新される。したがって、異常やミスがなくても、両者を比較する時点によって反映済みデータの範囲が異なる。公式解答例の「更新のタイミングが異なる」という内容を、45字以内で簡潔に示す。

設問3

倉庫システムが停止した場合は、本社在庫システムを使って業務を継続する。しかし、通常はハンディ端末によって少ない要員で処理しているため、代替運用で同じ量をタイムリーに処理できるとは限らない。したがって監査では、ハンディ端末を使わずに入出庫業務を適時実施できる業務量かを確認する。これは公式解答例の監査ポイントに対応する。

設問4

本社在庫システムを代替利用する際、倉庫側の最新入力が本社側にまだ反映されていないと、古い在庫情報で処理する危険がある。そのため、事務担当者は、倉庫システムのデータが本社在庫システムにいつの時点まで更新されているかを事前に確認する。40字以内では、確認対象を更新済みデータの時点に絞る。

設問5

倉庫在庫DBは通常バックアップされず、本社在庫システムのバックアップを利用して復旧する想定です。一方、手順書は5年前に改定されたままであるため、倉庫システムのデータをどのように復旧するかが記載されていない可能性がある。公式解答例では、この復旧手順の欠落の可能性を指摘している。40字以内では「倉庫システムのデータ復旧手順がない可能性」を示します。

学習のポイント

監査では、処理の仕組みだけでなく更新時点と現場運用の実効性を確認する。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成22年度春期 システム監査技術者試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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