STITストラテジスト試験 午後Ⅰ
令和3年度春期 ITストラテジスト 午後Ⅰ 問4
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題
解き方のヒントを見る
新技術を事業へ結び付ける視点
新しい技術を用いた製品開発と事業戦略を考えるときは、技術の新しさだけで判断せず、誰にどのような価値を届け、継続的に提供できるかという一つの観点に注目しましょう。
この問題で問われていること
選択肢を読む際は、技術そのものの説明ではなく、顧客価値と事業としての成立条件がどのようにつながっているかに焦点を絞り、前提と結果の関係を丁寧に確認してください。
視点
技術の特徴を単独で評価するのではなく、利用者の課題、提供価値、実現可能性、継続性が一つの考え方の中で整合しているかを整理します。
確認ポイント
- 技術の説明と、利用者に提供する価値が混同されていないか
- 短期的な実現性と、継続的に事業として成り立つ見通しを分けて捉えているか
- 主張の前提・対象・期待される結果が、同じ条件のもとで対応しているか
正解と解説を見る
解説
D社の筋電義手事業について、市場状況と技術課題を踏まえた製品化、研究機関との協業、政策活用、海外展開及び他市場への事業拡大を考える問題です。
問題の全体像
D社は、利用者から要望の多い自由度の高い筋電義手を開発しようとしている。試作機では筋電による把持はできたが、全ての指を個別に動かす情報処理が難しく、D社単独では開発費の高騰が予想された。また、PC処理による反応速度、フィードバック不足、重量・電池、利用者ごとの調整時間などの課題もある。そこで、AI技術を持つH教授との協業、短期間での国内販売、将来の海外展開や遠隔操作ロボットハンドへの技術供与を含む事業戦略を立案する。出題趣旨では、市場・技術動向の分析、新製品企画、技術調達、開発方針及び事業戦略の立案能力が問われている。
設問1(1)
着目するのは、海外市場は既に飽和している一方、海外メーカーが国内市場への進出を狙っていること、及び開発方針に「短期間で開発し、国内市場で販売を開始する」とある点です。最初から自由度を過度に高めると開発期間が延び、国内市場への参入機会を失う。したがって、自由度を市場製品よりやや上回る程度に抑え、海外メーカーが国内市場に進出する前に販売を開始する目的を答える。公式解答例もこの参入時期の先取りを示している。
設問1(2)
本文では、D社の試作機は筋電を検出して把持できたものの、波形に基づき全ての指を別々に動かす情報処理が難しく、D社の保有技術だけで開発すると開発費が高くなるとされている。H教授はAIで個々の利用者に必要な制御を実現する研究を行っているため、外部技術の導入によって、D社単独開発による高額な開発費の問題を解決する。40字以内では、原因と解決対象を簡潔に「D社の保有技術だけで自由度の高い製品を開発すると開発費が高くなる」とまとめる。
設問2(1)
利用者の意見として、試作機について「反応速度が遅く使用に違和感がある」と報告されている。その原因は、筋電信号の抽出と指ごとのモータ制御を接続先のPCで行っていることです。そこで、PCで行っていた機能をAIチップ化して義手に組み込む方針につながる。公式解答例では、この利用者意見をそのまま要点としているため、20字以内では反応速度と使用感を押さえる。
設問2(2)
H教授は、研究したAI技術を製品に搭載し、先端技術の発展に必要な大量のフィールドデータと研究費用を継続的に取得したいと考えている。D社は製品化と利用者への提供を通じて、実際の使用現場から得られるデータをH教授に与えられる。したがって、15字以内では「大量のフィールドデータ」と答える。
設問3(1)
国は、インクルーシブ社会の実現に向け、IoT及びAIの技術開発を強化し、障害のある人のICT利活用を促進する方針を定めている。筋電義手はこの政策目的に合致するため、助成金を研究開発費に充当できる可能性を調査する。40字以内では、IoT・AIの技術開発強化、障害のある人のICT利活用促進、またはインクルーシブ社会の実現という政策要素を押さえる。公式解答例もこの二つの表現を示している。
設問3(2)
海外市場は既に筋電義手が普及しているが、本文冒頭の今後の目標では、将来的に箸、ギター、タッチタイピングなどを可能にする、軽くて自由度の高い義手を安価に提供するとしている。既存製品では満たされていない潜在需要に応える目標なので、AIによって自由度の高い細やかな制御を可能にすることを中心に書く。採点講評でも、飽和市場に対して買い替えを促す潜在需要を考慮する点が重視されている。
設問3(3)
本文では、自由度の高い義手の技術を、宇宙空間や海底などで作業する遠隔操作ロボットハンドに応用できる可能性が示されている。またD社は将来、保有技術を他市場に生かして事業を拡大する必要があると考えている。したがって、技術供与の目的は、義手で培った保有技術を他市場に展開し、事業を拡大することです。25字以内ではこの目的を簡潔にまとめる。
学習のポイント
市場・技術・政策・協業を、製品開発と事業戦略の目的に結び付けて説明する力を養う。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和3年度春期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問4(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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