STITストラテジスト試験 午後Ⅰ

令和3年度春期 ITストラテジスト 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 印刷会社の写真事業における新規ビジネスの企画に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。 B社は,大手印刷会社である。事業部門として出版事業,広告事業,写真事業を有しており,機能部門としてデザイン部門,研究開発部門を有している。 〔B社の写真事業〕 B社の写真事業は,全国主要都市に写真スタジオを有しており,同一都市に複数の写真スタジオを展開している。写真スタジオでは,個人向けに七五三,成人式,結婚式などのライフイベントにおける写真撮影を行っており,撮影した写真をプリントし,販売している。写真スタジオには,カメラマンと事務スタッフがそれぞれ複数名勤務している。カメラマンはスタジオでの写真撮影を行うほか,出版事業,広告事業における写真撮影も行っている。しかし,近年高性能化したスマートフォン内蔵カメラの普及によって,かつてよりもカメラマンの稼働率が下がっている。 写真事業では,撮影した写真をプリント販売するのに加え,デザイン部門の協力を得て,撮影した写真を紙のアルバムとして編集し,販売している。B社Webサイトでは顧客別の専用ページ作成が可能になっている。専用ページにはB社で撮影した写真が保存されており,顧客は個人で撮影したディジタル写真をアップロードして追加することもできる。専用ページからアルバムに収録したい写真を選定することで,七五三,成人式,結婚式などの各ライフイベントに限定したアルバムや,ライフイベントを横断的に整理したアルバムを作成できる。アルバムは,デザイン性の高さから顧客の思い出に残るものとして,非常に高い評価を得ている。 研究開発部門では,ディープラーニングの顔認識技術を研究しており,写真事業に関連する領域では,写真に写っている“顔の識別”や“表情の分析”を行う機能を開発した。また,近年の法整備やプライバシー意識の高まりを踏まえて,写真の一部に対して自動でぼかしをいれる機能も開発した。 〔小中学校の状況〕 B社は人的リソースの有効活用を事業課題とし,一層のビジネス拡大に向けて,潜在顧客として写真撮影の機会が多いと思われる小中学校を対象としてニーズの有無に関する調査を行った。調査結果の概要は次のとおりであった。 ・全国の小中学校では遠足,運動会,文化祭などの学校行事に際して写真撮影を行っていることが多い。 ・写真撮影は学校の職員が行うケースと外部のカメラマンに外注するケースがある。 ・撮影した写真は都度保護者に販売することに加え,卒業アルバムの掲載写真としても利用している。 ・学校は,卒業アルバムを思い出に残る良いものにするために毎年非常に苦労している。 B社は,学校行事における写真撮影について,近隣の大規模中学校であるC中学校にヒアリングを行った。C中学校には各学年に複数のクラスが存在し,学校行事で撮影される写真も多数に上る。C中学校では次のプロセスで学校行事の写真を保護者に販売していることが分かった。 ① 学校の職員が,学校行事に際して写真を撮影する。 ② プリントした写真を学校の職員が校内に掲示する。 ③ 保護者が来校し,購入する写真を選定する。 ④ 保護者が,購入希望の写真を注文票に記入し学校の職員に提出する。 ⑤ 学校の職員が写真の注文を取りまとめる。 ⑥ 注文票と撮影媒体を業者に渡し,業者が写真をプリントして保護者に受け渡す。 現在C中学校では,学校の職員が写真撮影を行っている。これは,同一都市の小中学校が同一日に学校行事を実施することが多く,カメラマンを調達することに苦労した経験によるものである。学校の職員は,上記プロセスを行う上で多くの手作業を行う必要があり,業務負荷が高いと感じている。また,保護者は写真の閲覧をするためだけに来校する必要があることや,掲示されている多数の写真の中から自分の子供を探し出すこと,自分の子供が良い表情で写っている写真を探し出すことが手間であると感じている。 B社は以上の状況をチャンスと見て,主要都市の大規模小中学校における行事写真ビジネス(以下,新規ビジネスという)を立ち上げることにした。 〔新規ビジネスの概要〕 ・図1に示す写真購入システムを新たに開発し,次のプロセスで写真撮影販売サービスを実施する。 ① B社が小中学校と写真撮影,販売代行契約を締結する。 ② B社カメラマンが,学校行事に派遣されて写真を撮影し,写真をストレージにアップロードする。 ③ 保護者が,B社に対して氏名,住所,電子メールアドレス,パスワード,子供の所属学校名とともにアカウントの発行を申請する。 ④ B社が,保護者に対してアカウントを発行する。 ⑤ 保護者がアカウントページから写真を閲覧し,購入希望の写真を選択する。 ⑥ B社が購入希望情報を確認し,各保護者に写真を紙媒体又はデータで送付する。 ・写真購入システムに表示する写真には“sample”のすかし文字を表示する。 ・写真購入システムには写真レコメンド機能を実装する。写真レコメンド機能では,研究開発部門で開発をしたディープラーニング技術を活用し“顔の識別”と“表情の分析”を行う。“顔の識別”ではまず,保護者が自分の子供の写っている写真を数枚選択する。すると,それらの写真に共通して写っている顔を識別し,ストレージから当該識別した顔と似た顔が写っている写真を優先してレコメンドする。また,“表情の分析”では,撮影した写真の中から表情が笑顔のものを優先してレコメンドする。 図1 写真購入システムの概要 〔保護者説明会と要望への対応〕 B社は新規ビジネスの検討を踏まえ,C中学校で新規事業のトライアルを行うことにした。トライアルに先立ち保護者説明会を実施し,今回の取組について保護者から同意を得た。保護者からはITの利用に習熟していない人にも分かりやすくしてほしいとの要望があった。また,学校の担当者からは,保護者から“自分の子供の顔が写っている写真を,他の保護者に購入されたくない”という要望が出た場合の対応方法も検討してほしいとの依頼を受けた。 保護者からの要望を受け,B社は操作方法が直感的に分かるシンプルなページにするとともに,“よくある質問”や“お問合せ先”といったページを設けて保護者の疑問点を解消できるようにした。また学校の担当者の依頼に対応するために,複数の生徒が1枚の写真に写り込んでいる場合には,B社の技術を生かした対応を行うことができるようにした。 さらにB社は一層のビジネス拡大を念頭に,学校の課題を解決でき,B社の既存ビジネスにおける強みを生かした,“写真撮影販売サービス以外の新たな提案”を行った。 設問1 〔小中学校の状況〕について,B社が新規ビジネスを展開していく上でもっている強みは何か。人的リソースの観点から35字以内で述べよ。 設問2 〔新規ビジネスの概要〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1)B社が新規ビジネス立ち上げによって対応しようとした,写真事業における事業課題の背景となる問題は何か。15字以内で述べよ。 (2)C中学校の職員へのメリットのうち,写真購入システムが提供するものを二つ,それぞれ20字以内で具体的に述べよ。 (3)C中学校の保護者へのメリットのうち,写真レコメンド機能が提供するものを二つ,それぞれ30字以内で具体的に述べよ。 設問3 〔保護者説明会と要望への対応〕について,(1),(2)に答えよ。 (1)学校の担当者の依頼に対応するために,B社が実装できる機能は何か。30字以内で述べよ。 (2)“写真撮影販売サービス以外の新たな提案”とは何か。15字以内で述べよ。
図1 写真購入システムの概要。学校、保護者、B社カメラマンとB社の写真購入システム間で、契約、写真アップロード、アカウント発行、写真選択、送付を行う流れを示す構成図。
図1 写真購入システムの概要。学校、保護者、B社カメラマンとB社の写真購入システム間で、契約、写真アップロード、アカウント発行、写真選択、送付を行う流れを示す構成図。
解き方のヒントを見る

判断の根拠と解釈を分けて整理

検討するときは、与えられた情報から直接確認できる内容と、自分が補って考えた内容を区別しましょう。もっともらしさだけで判断せず、考えのよりどころがどこにあるかを確かめることに集中してください。

この問題で問われていること

判断の根拠をたどる際は、示された事実と、そこから自分が読み取った意味の境目に注目してください。解釈に必要な前提を知らずに付け足していないか、元の情報に戻って点検する姿勢が役立ちます。

視点

情報そのものと、その情報についての解釈は分けて扱えます。判断に迷ったら、自分の考えのどの部分が示された内容に基づき、どの部分が推測なのかを整理しましょう。

確認ポイント

  • 判断の根拠となる情報はどこにあるか
  • 示された内容に自分の推測を混ぜていないか
  • 解釈のために追加した前提がないか
正解と解説を見る

解説

B社の人員配置や既存技術を、学校のカメラマン調達難、職員の手作業、保護者の写真探しやプライバシーへの要望に対応付ける問題です。設問ごとに求められる範囲を守り、具体的な効果や提案を本文から導きます。

問題の全体像

B社は、カメラマンの稼働率が下がっている写真事業で、人的リソースの有効活用と事業拡大を目指しています。一方、小中学校にはカメラマンの調達難や写真販売に伴う職員の負担があり、保護者には写真を探す手間があります。B社は写真購入システムと顔識別・表情分析の技術を使い、これらの課題を解決する新規ビジネスを企画します。公式の出題趣旨では、関係者の課題や要望を適切な解決策に結び付ける企画能力と、自社技術を活用した提案能力が問われています。人員、業務、技術、既存サービスのそれぞれについて、誰のどの課題に役立つかを整理することが要点です。

設問1

〔B社の写真事業〕の「同一都市に複数の写真スタジオ」「カメラマンがそれぞれ複数名勤務」という記述と、〔小中学校の状況〕の「同一日に学校行事を実施することが多く、カメラマンの調達に苦労した」という記述を結び付けます。B社は同一都市で複数のカメラマンを確保できるため、行事日が重なる複数校にも派遣できることが強みになります。公式解答例では「同一日に同一都市の複数の小中学校にカメラマンを派遣できること」としています。35字以内では、同一日・同一都市・複数校への派遣を押さえます。採点講評では、B社の人員の状況だけでなく、学校行事の実施日の状況まで踏まえた解答が少なかったと指摘されています。

設問2(1)

〔B社の写真事業〕にある「かつてよりもカメラマンの稼働率が下がっている」に着目します。B社が掲げる人的リソースの有効活用は、この稼働率低下という問題に対応するための事業課題です。公式解答例では「カメラマンの稼働率低下」としており、15字以内でもこの表現で問題を具体的に示せます。採点講評では「スマートフォン内蔵カメラの普及」という解答が見られたとしています。普及は問題を生んだ原因であり、ここで答えるべき内容はB社が解決しようとしている稼働率低下です。

設問2(2)(a)

従来の販売プロセス②「プリントした写真を学校の職員が校内に掲示する」と、新しいプロセス⑤「保護者がアカウントページから写真を閲覧する」を比較します。写真をシステム上で閲覧できれば、職員が写真を校内に掲示する作業を減らせます。公式解答例では「写真を掲示する業務負荷の軽減」としています。20字以内では、軽減される具体的な作業として「写真の掲示」を明示します。カメラマンの派遣による撮影負担の軽減はサービス全体の効果なので、写真購入システムが提供するメリットという設問の範囲を確認することが大切です。

設問2(2)(b)

従来の販売プロセス④・⑤では、保護者が注文票を学校職員に提出し、職員が注文を取りまとめています。新しいプロセス⑤・⑥では、保護者がシステム上で購入写真を選択し、B社が購入希望情報を確認して写真を送付します。このため、学校職員による注文の取りまとめ作業を減らせます。公式解答例では「注文を取りまとめる業務負荷の軽減」としています。20字以内では「注文の取りまとめ」と「負荷の軽減」を押さえ、もう一つの回答である写真掲示の負担軽減と区別します。

設問2(3)(a)

〔小中学校の状況〕で、保護者が多数の写真から自分の子供を探すことを手間に感じている点に着目します。写真レコメンド機能の「顔の識別」は、保護者が選んだ数枚の写真に共通する顔を識別し、その顔と似た顔が写る写真を優先して提示します。これにより、自分の子供が写っている写真を探す手間が減ります。公式解答例では「自分の子供が写っている写真を探す手間の軽減」としています。30字以内では、探す対象が自分の子供の写真であることと、探索の手間が減ることを示します。来校が不要になる効果はオンライン閲覧によるものであり、レコメンド機能の効果とは区別します。

設問2(3)(b)

保護者が「自分の子供が良い表情で写っている写真」を探すことにも手間を感じている点に着目します。写真レコメンド機能の「表情の分析」は、笑顔の写真を優先して提示するため、良い表情の写真を選ぶための探索負担を減らします。公式解答例では「自分の子供が良い表情で写っている写真を探す手間の軽減」としています。30字以内では「自分の子供」「良い表情」「探す手間の軽減」を押さえます。顔の識別による子供の写真探しと、表情の分析による良い表情の写真探しを、二つのメリットとして書き分けます。

設問3(1)

要望は、自分の子供の顔が写った写真を他の保護者に購入されたくない、というものです。〔B社の写真事業〕で開発済みの顔識別と自動ぼかしの技術を結び付け、要望のあった子供の顔を識別してぼかす機能を導きます。公式解答例では「指定した子供の顔に自動でぼかしを入れる機能」としています。30字以内では、対象を指定した子供の顔に限定し、自動でぼかすことを示します。採点講評では、自分の子供以外の顔全てをぼかす解答が見られたと指摘されています。必要なのは、要望があった子供を対象とし、他の保護者が購入する場合にその顔をぼかす対応です。

設問3(2)

〔小中学校の状況〕の「卒業アルバムを思い出に残る良いものにするために毎年非常に苦労している」と、B社がデザイン部門の協力でアルバムを編集・販売し、そのデザイン性を高く評価されていることを結び付けます。学校行事の写真は卒業アルバムにも利用されるため、B社の既存のアルバム制作能力を学校の課題解決に生かせます。公式解答例では「卒業アルバムの制作」としています。15字以内では、この提案内容を端的に示します。学校の困り事とB社の既存ビジネスの強みの両方に根拠がある提案として捉えることが大切です。

学習のポイント

自社の強みを顧客の課題と結び付ける読み方と、原因・問題・解決策・効果を区別して字数内で表現する力を身に付けましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和3年度春期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

関連する過去問一覧

IPA Advancedは非公式の学習サイトです。解説にはAIによる補助生成を含む場合があります。公式の問題冊子・解答例・採点講評を優先し、誤りは確認後に訂正します。運営・編集方針