STITストラテジスト試験 午後Ⅰ

平成27年度秋期 ITストラテジスト 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 食品メーカの業務改善に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。 B社は、食品メーカである。主な製品は、パン・菓子の加工材料である。顧客には、全国の複数の工場でパン・菓子を製造している大手顧客の他に、地域の主要なベーカリチェーン(以下、地域主要顧客という)、及び個人経営のケーキショップ・ベーカリショップ(以下、ショップという)がある。東京に本社が、地域ごとに支社があり、支社が管理する地域に複数の営業所がある。また、東日本、西日本のそれぞれに、工場と製品倉庫が一つずつあり、支社・営業所ごとに倉庫が併設されている。 パン・菓子の市場は、消費者の好みが多様化し、商品のライフサイクルが短くなり、新商品の開発、商品のリニューアルをすることから、加工材料に対する顧客の様々な要求が出てきている。そのために、B社の製品も種類が増えている。また、大口の受注が期待できる顧客ごとに不定期に企画される、新商品の販売開始、商品の拡販などのイベントが増加している。一方、「食の安全」という観点から、製造品質を保証する製造トレーサビリティに加えて、顧客からは、工場、製品倉庫、倉庫での、保管時・輸送時の品質を保証する温度管理への要求がより厳しくなっている。 〔営業業務の概要と現状〕 本社の営業部が大手顧客を担当し、支社・営業所の営業部が地域主要顧客とショップを担当している。顧客から受けた注文と注文内示は、受注情報として販売管理システムに登録して管理する。本社の営業部が、販売管理システムの受注情報をまとめ、全社の販売計画情報としている。 以前、多くのショップから、他社製品も含めて一括して納入してほしいという要望があり、B社では他社製品も同時に扱うことによって、顧客を拡大してきた。他社製品の取扱い時は、次のように行っている。 ・ショップから他社製品の注文を受けると、担当する営業部員は他社に対して、納期と仕入価格について交渉し、納品日、品名、数量を基に発注している。 ・他社は、受注した製品をショップごとにこん包して支社・営業所に納品する。また、注文したショップごとに出荷情報と自社製品の製造情報を記録し、トレーサビリティの管理をしている。 ・担当する営業部員は、自社製品を倉庫の在庫から出庫して仕分作業を行い、ショップごとにこん包されている他社製品とともにショップへ納入する。 B社の製品の種類が増えて、受注の手間も掛かるようになっている。さらに、営業部員は、ショップに納入するための仕分作業もあり、地域主要顧客とショップへの訪問時間を十分に取れない。その結果、顧客から受けた定期的な注文内示は確認できているが、大口の注文となる地域主要顧客が行う特売などのイベントの企画情報の確認が不足している。また、注文の変更、小口の注文の追加が増えており、顧客からは、その都度、希望どおり納入されるかどうか、早期の回答を求められている。営業部員は生産計画の状況を把握していないので、納期を回答するために計画部に問い合わせることになる。しかし、計画部の回答は遅れがちで、顧客への納期の回答が遅くなり、顧客から不満を受けることがある。 〔物流業務の現状〕 物流部は、全ての倉庫の設置・運用管理と輸送業務を担当している。 支社の倉庫は、それぞれ個別の基準で安全在庫量を設定して在庫を管理している。製品の種類が増えたことによって安全在庫量の見直しが難しくなり、在庫が増加している。一方で、支社の倉庫の責任者によっては安全在庫量の設定を誤り、支社の倉庫の在庫が不足することがある。製品倉庫と支社の倉庫の在庫を合計すれば、B社全体の在庫には余裕があるので、製品倉庫又は在庫に余裕がある支社の倉庫に補充を依頼する。補充するときには、顧客への納入日を遅らせるように調整する場合もある。支社の倉庫によって、発注から納入までの所要日数の変動が大きく、大手顧客・地域主要顧客から、納入日数の指標を提供してほしいという要望がある。 B社の製品は、製品倉庫から支社の倉庫に輸送される。支社の倉庫に入庫されると、営業所ごとに仕分され、営業所の倉庫に輸送される。大手顧客と地域主要顧客への輸送は、支社の倉庫から輸送業者に依頼し、ショップへの輸送は、担当する営業部員が行う。輸送業者は、倉庫ごとに輸送コストが低い業者を選定している。その結果、B社は、大手業者・地元の業者など、複数の輸送業者と契約している。輸送中の製品の温度管理は輸送業者に任せているが、温度管理ができていない業者もある。 〔計画業務の現状〕 計画部は、本社の営業部から通知された販売計画情報を基に販売予測情報を作成し、生産計画を作成する。販売予測情報は、過去の販売実績を考慮して作成している。しかし、製品の種類が増える一方で、製品のライフサイクルが短くなり、製品ごとに蓄積される販売実績の情報が少なくなっている。そこで、計画部の判断で見込情報を加えて販売予測情報を作成している。使用している計画システムでは、営業部員が販売管理システムに入力した顧客ごとの受注情報に対応して、生産計画の予定と実績が分かるように情報を管理している。計画システムと販売管理システムは接続していない。 製品の種類が増えたことによって、各製品の製造量が少ない多品種少量生産となり、注文の変更、小口の注文の追加も多いことから、生産計画の見直しを行って対応している。しかし、イベントなどで大口の注文が急にあると、生産計画の変更が間に合わず、受注できていない。 〔競争力向上の方針〕 B社では、市場の変化によって、製品の種類が増加し、製品ライフサイクルも短くなり、販売予測のずれなどから、在庫も増加してきた。そこで、企画部では、競争力向上の方針として各業務の現状を踏まえて、在庫削減、コスト改善と食の安全への対応を行うこととした。企画部は、物流部に物流業務の改善検討を指示した。 〔物流業務の改善検討〕 在庫削減とコスト改善のために、工場の近傍に新たに物流センタを設置し、自社製品と他社製品の在庫を一括管理する。自社製品にも他社製品にも製造ロット番号が付いている。物流センタに倉庫管理システムと仕分装置を、物流センタと各倉庫に温度管理システムを、それぞれ導入する。 倉庫管理システムには、入庫管理、在庫管理、出庫管理、出荷情報管理、トレーサビリティ管理の機能をもたせる。出荷情報管理では、出荷先の顧客ごとに、納入先、日付、製品名、数量で構成する出荷情報を記録し、管理する。トレーサビリティ管理では、出荷情報と出荷した製品の製造ロット番号を関連付けて管理する。 物流センタでは、製品の仕分を顧客ごとに行う。大手顧客と地域主要顧客への配送は、物流センタから行う。ショップへ納入する製品は、支社・営業所の倉庫に輸送し、従来どおり、担当する営業部員が倉庫から持ち出してショップへ納入する。 輸送業者を1社とするが、選定基準は輸送コストの削減に協力する業者とする。 物流部はこれらの検討結果を企画部に報告したが、企画部は、輸送業者の選定に関して、輸送コストの削減に加えて基準を追加するように指示した。 〔営業業務の改善〕 物流業務の改善検討によって、支社・営業所の営業部員の負担が軽減され、担当する地域主要顧客とショップへの訪問時間を確保し、営業業務が改善される見込みである。 また、企画部は、営業部員が顧客の不満を解決できるように、計画システムと販売管理システムを接続して、業務に必要な情報を共有するために、計画部に検討を指示した。 〔他社製品の取扱いの見直し〕 他社製品の発注は、営業所ではなく、本社の営業部でまとめて行う。また、これまでのように支社・営業所に個別に納品するのではなく、物流センタにまとめて納品し、仕分もB社で行う。この点については、他社も了承済みである。 企画部は、他社製品の取扱いの見直しによって期待される利益改善について、本社の営業部に検討を指示した。一方、他社は、今後も継続して、製品ごと、ショップごとにトレーサビリティの管理をするために、物流部に対して必要な情報を提供するように要求した。 設問1 物流業務の改善検討について、(1)、(2)に答えよ。 (1) 輸送業者の選定に関して追加する基準について、25字以内で述べよ。 (2) 顧客の要望に対して可能となった点を、理由とともに40字以内で述べよ。 設問2 営業業務の改善について、(1)、(2)に答えよ。 (1) 企画部が、計画システムと販売管理システムを接続するように計画部に検討を指示したことによって、顧客の不満をどのように解決できるかを、理由とともに40字以内で述べよ。 (2) 営業業務の改善によって、支社・営業所の営業部員が確認すべき情報を、30字以内で述べよ。 設問3 他社製品の取扱いの見直しについて、(1)、(2)に答えよ。 (1) 企画部が本社の営業部に指示した利益改善の施策を、その施策を実現可能とした理由とともに35字以内で述べよ。 (2) 物流部が他社に提供すべき情報を、30字以内で述べよ。
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情報を使う目的に着目する

業務改善と情報管理を考える際は、扱う情報が何のために使われるのかという一点に着目しましょう。情報の多さや名称だけで判断せず、課題の中で示される目的とのつながりを丁寧に捉えることが出発点です。

この問題で問われていること

この分野では、情報そのものの説明と、その情報を使って達成したい目的を区別して捉えることが大切です。検討するときは、与えられた条件を手掛かりに、情報と目的の関係を自分の言葉で整理してみましょう。

視点

情報と利用目的のつながりを整理する視点です。目的を曖昧なままにせず、与えられた内容を根拠として、その情報を使う理由を考えます。

確認ポイント

  • 情報を使う目的を言葉にできているか
  • その目的を捉える根拠は与えられた内容にあるか
  • 情報と目的のつながりを思い込みで補っていないか
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解説

本問は、食品メーカの在庫偏在、納期回答の遅れ、イベント情報の把握不足などを、物流集約と情報共有によって改善する事例です。温度管理、納入日数の指標、迅速な納期回答、集中発注による価格交渉、トレーサビリティに必要な情報を、それぞれの業務変更と結び付けて理解する。

問題の全体像

B社では、製品の多様化とライフサイクルの短期化に伴い、在庫の増加や偏在、生産計画の変更、営業部員の負担が問題となっている。顧客からは、温度管理による品質保証や早期の納期回答も求められている。改善策は、物流センタへの在庫・仕分の集約、計画システムと販売管理システムの接続、他社製品の集中発注です。公式の出題趣旨では、物流改善による顧客要求への対応、生産計画に活用する情報、他社との業務見直しを分析する能力を問うとしている。各改善策が、どの問題をどのように解決するかを読み取ることが中心となる。

設問1(1)

着目するのは、顧客の温度管理への要求が厳しくなっている一方、輸送中の温度管理ができていない業者もあるという記述です。競争力向上の方針には「食の安全への対応」が含まれているが、提示された輸送業者の選定基準はコスト削減への協力だけです。また、物流センタと各倉庫への温度管理システムの導入だけでは、輸送中の品質保証まで確保できない。そのため、追加すべき基準は輸送中の温度管理能力となる。公式解答例では「輸送中の製品の温度管理が可能なこと」としている。25字以内では、管理する場面が「輸送中」であることと、製品の温度管理が可能であることを押さえる。

設問1(2)

顧客の要望は、大手顧客・地域主要顧客が求めている「納入日数の指標」の提供です。現状では、全社の在庫に余裕があっても支社の倉庫で不足が生じ、他の倉庫から補充するために納入日を遅らせる場合がある。物流センタで在庫を一括管理し、これらの顧客へ直接配送することで、支社ごとの在庫不足に伴う補充や納入遅延の要因を解消できる。公式解答例では「在庫の不足がなくなるので,納入日数の指標が提供できる。」としている。40字以内では、在庫不足の解消という理由と、指標の提供という効果を組み合わせる。採点講評では、営業業務の改善を答えた例が多く、在庫の一括管理によって倉庫間の補充をなくせる点に着目してほしいと指摘している。

設問2(1)

顧客の不満は、注文変更や追加注文に対する納期回答が遅いことです。営業部員が生産計画を把握できず、計画部への問い合わせと回答待ちが必要になっている点が原因となる。計画システムには、顧客ごとの受注情報に対応した生産計画の予定と実績が管理されている。販売管理システムと接続して情報を共有すれば、営業部員が生産計画情報を直接確認でき、納期回答を早められる。公式解答例では「営業部員が生産計画情報をいつでも確認できるので,納期の回答が早くなる。」としている。40字以内では、営業部員による情報確認と納期回答の迅速化を示します。納入自体が早くなるという説明では、ここで問われる不満の原因を捉えられない。

設問2(2)

着目するのは、営業部員が訪問時間を十分に取れず、地域主要顧客の特売などのイベント企画情報を確認できていないという記述です。定期的な注文内示は既に確認できているため、改善後に重点的に把握すべき情報はイベントの企画情報となる。物流センタで仕分を行うことで営業部員の負担が軽減され、訪問時間を確保できる。そこで大口注文につながるイベント情報を早期に把握することが、生産計画の変更が間に合わず受注できない問題への対応につながる。公式解答例では「地域主要顧客が行う特売などのイベントの企画情報」としている。30字以内では、顧客の種類と、確認すべき情報がイベントの企画情報であることを明確にする。

設問3(1)

従来は、ショップから注文を受けた営業部員が、他社と個別に仕入価格を交渉していた。見直し後は、本社の営業部が他社製品の発注をまとめて行う。発注を集約することで価格交渉の優位性が高まり、仕入価格の削減を交渉できることが、B社の利益改善につながる。公式解答例では「本社でまとめて発注するので,仕入価格の削減を交渉する。」としている。35字以内では、集中発注という理由と、仕入価格の削減交渉という施策を組み合わせる。採点講評では、顧客への訪問時間の確保や他社の物流コスト改善を答えた例が多く、本社による発注集約が価格交渉の優位性を高める点を捉えてほしいと指摘している。

設問3(2)

従来は、他社がショップごとに製品をこん包し、ショップ別の出荷情報と製造情報を記録していた。見直し後は、他社が物流センタにまとめて納品し、B社が顧客ごとの仕分と出荷を行うため、他社だけでは最終的なショップ別の出荷状況を把握できない。倉庫管理システムは、納入先・日付・製品名・数量からなる出荷情報と、製造ロット番号を関連付けて管理する。この対応関係を他社に提供すれば、製品ごと、ショップごとのトレーサビリティ管理を継続できる。公式解答例では「他社の製品に関わる顧客への出荷情報と製造ロット番号」としている。30字以内では、他社製品の顧客向け出荷情報と製造ロット番号の両方を押さえる。

学習のポイント

設問ごとに対象業務と求められる効果を区別し、問題文の現状・改善策・効果を因果関係でつなぐ練習をする。理由を求める設問では、施策や効果だけで終わらせない。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成27年度秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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