STITストラテジスト試験 午後Ⅰ

平成26年度秋期 ITストラテジスト 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 洋食レストランの競争力の向上に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。 T社は,10年前から大都市の住宅地で洋食レストランを営んでいる。店の近くには駅があり,地元では名の通ったレストランである。50のテーブル席を配した内装も,店の外観もヨーロッパアルプスのロッジ風に統一し,“ヨーロッパの家庭料理を味わっていただく”ことをコンセプトにしている。 〔他社との競合状況〕 最近,大手イタリアンレストランチェーン(以下,U社という)が,T社の最寄り駅の駅前広場に面して,若年層・ファミリー客向けのレストランを開店した。この店は,安価なメニューアイテムを取りそろえている。また,お得感のある多数のセットメニューを取りそろえ,客単価(客1人当たりのオーダ金額合計)を引き上げている。U社では,オーダが多いセットメニューについて,事前に途中まで調理しておき,オーダを受けたら直ちに仕上げて品出ししている。 T社は,U社の進出に対して客層が重ならないように,店内の装飾を豪華にし,料理と飲物の質を上げて,メニューの価格帯も少し高めに設定した。一方で,U社の店舗よりも雰囲気が良く,気軽に入店しやすいというイメージをもたせられるよう配慮した。しかし,実際は,売上高,来店客数,原価率ともにU社に比べて悪く,早急に改善が必要である。 〔店舗の運営状況〕 1.オーダの受け方とメニューの構成 ホールスタッフは,前菜,メインディッシュ,デザートについて,メニューアイテムごとにオーダを受ける。オーダが多いメニューアイテムは決まっており,これに飲物と1~2アイテムを加えることが多い。 メニューブックは,昼と夜とで別のものを用意している。毎月,旬の食材リストに基づいて,メニューブックの構成・内容を変え,印刷している。しかし,予定した魚,野菜などの食材が,天候不順などによって仕入先に入荷しないこともよくある。このような場合は,即座にメニューブックを変更できないので,ホールスタッフが本日のメニューを口頭で客に伝えている。 2.予約の受付状況 予約は,電話で受け付け,予約管理表に記入する。予約に対して,食材の確実な仕入れと下ごしらえなどの準備ができるように,受付の際にはできるだけメニューアイテムをオーダしてもらう。 3.ピーク時の対応状況 最近,テレビのレストラン紹介番組で,T社のレストランが取り上げられたことをきっかけに,遠方からも客が来店するようになった。しかし,客が増えるにつれ,現在の手作業によるオーダ処理では効率の良い店舗運営ができない状態になった。 来店客数がピークとなる平日の昼食と週末の夜間の時間帯では,通常10分で提供できる料理が20~30分も掛かることがある。この影響で,予約客を長時間待たせてしまうことがある。 また,ピーク時には,ホールスタッフが客の食事の進み具合を見守る余裕がなくなり,“客の追加オーダの気配に気づかない”,“品出しが遅れている事情を説明しない”など,客に対する心遣いが十分にできなくなっている。 4.ちゅう房での調理状況 ホールスタッフからのオーダ票に基づいて,オーダの順番に調理を行っている。ピーク時には3名のシェフが休む間もなく調理しているものの,様々なメニューアイテムのオーダが来ると,メニューアイテムごとに調理の手順が異なるので,順番に調理していては手間が余計に掛かり,オーダを順調にさばけていない。 5.食材の仕入状況 シェフは,卸売市場の仕入先まで出向いて,良質の食材を仕入れている。その際,品出しの実績に基づいて仕入量を決めているにもかかわらず,食材ごとに余ったり,足りなくなったりしている。また,高価な牛肉などの食材を仕入れても,予定した品出し数に達しないことがある。その場合は傷んでしまう前に,低価格のメニューアイテムに流用している。それでも余った食材は,期限を定めて廃棄している。 ホールスタッフは,オーダを受けてちゅう房にオーダ票を回す段階で,食材が欠品していることが初めて分かる。また,閉店時刻に近づくにつれて,余っている食材を使ったメニューアイテムを客に勧める,といったことができていない。 オーダの取り方に工夫が必要である。 〔競争力の向上策〕 T社は,競争力を増すために,次の施策を立案した。 ・客がまた来店したいと思えるようなサービスの提供 ・遠方の客へのアピール また,日々の業績管理において,次の指標を意識する必要があると考えている。 ・来店客数 ・客単価 ・テーブル回転率(1日当たりの来店客数÷テーブル数) ・食材のロス率(食材ごとの目標原価率-実際原価率) 〔店舗運営のIT化〕 1.オーダエントリシステム 最近,導入費用,運営費用が安価なクラウドコンピューティングサービスによるレストラン向けオーダエントリシステムが普及している。このシステムは,上記のような指標に加えて,メニューの品出し実績,ちゅう房のオーダの調理待ち状況,オーダごとの滞留時間,主要食材の残量などの情報がリアルタイムに表示できる。T社は,このシステムを導入するつもりである。 2.レストラン紹介サイト テレビのレストラン紹介番組でT社のレストランが取り上げられたことを契機に,インターネットのレストラン紹介サイトの営業員から,サイトへの登録を提案されている。このサイトには,店名,店内レイアウト,所在を示す地図などの固定情報と,当日のメニューなどの可変情報が掲載される。可変情報については,サイトに掲載された内容と当日の店の運営状況との間に差が生じないように,T社が内容を随時差し替える必要がある。また,このサイトには予約を受け付ける機能があり,サイト内に予約情報として蓄積できる。遠方の客にアピールするために,このサイトを活用するつもりである。 T社は,これらの競争力の向上策及び店舗運営のIT化について,社員と認識を共有し,競争力のある店づくりを目指すことにした。 設問1 客単価とテーブル回転率を高めるための方法について,(1),(2)に答えよ。 (1)客単価の向上策を,25字以内で述べよ。 (2)ピーク時におけるテーブル回転率の向上策を,35字以内で述べよ。 設問2 オーダエントリシステムから得られる情報を使って,ホールスタッフが行うべきことについて,(1)~(3)に答えよ。 (1)オーダを受けるときに,食材のロス率の低減に寄与できることを,35字以内で述べよ。 (2)ピーク時にオーダを受けるときに,ちゅう房の負荷の平準化に寄与できることを,40字以内で述べよ。 (3)オーダごとの滞留時間を判断して,客に対処すべきことを,30字以内で述べよ。 設問3 レストラン紹介サイトに登録するに当たって,整備すべき仕組みを二つ挙げ,それぞれ40字以内で述べよ。
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改善の目的と検討内容のつながり

業務改善や情報システムの活用を考えるときは、まず何を目指しているのかを整理しましょう。そのうえで、検討する内容と目的とのつながりに注目し、何を確かめる必要があるかを考えてみてください。

この問題で問われていること

この問題では、示されている内容を、目指す目的との関係という一つの観点から整理してみましょう。目的を自分の言葉で捉え直し、各内容とのつながりを考える際に、どの情報を根拠にしているかを意識してください。

視点

目的と検討内容のつながりを、短い言葉で整理してみましょう。そのつながりを説明するときは、与えられた情報を根拠にし、自分で補った想定が含まれていないかを確かめることが大切です。

確認ポイント

  • 目指す目的を自分の言葉で整理できているか
  • 検討する内容と目的とのつながりを説明できるか
  • そのつながりの根拠を与えられた情報に求めているか
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解説

T社の競争力向上には、セットメニューによる客単価向上、事前調理による提供時間短縮、リアルタイム情報を使った接客改善が必要です。紹介サイトの活用では、メニュー変更の迅速な反映と、サイトと店舗の予約情報の同期を押さえる。

問題の全体像

T社は、競合するU社の進出に対して料理の質や価格帯を上げたが、売上高、来店客数、原価率の改善が必要な状況にある。店舗では、ピーク時の調理遅延、接客の不足、食材の余剰や欠品が生じている。公式の出題趣旨では、競争力向上策の構想力、店舗運営を合理化する具体策の提案力、IT化に伴う問題発見力を問うとしている。各設問では、こうした課題と、オーダエントリシステムや紹介サイトの機能を対応付けて考える。

設問1(1)

〔他社との競合状況〕にある、U社がお得感のあるセットメニューによって客単価を引き上げている点に着目する。T社でも、注文の多い料理に飲物と1~2アイテムを加えることが多く、組合せをセットとして提示する手掛かりがある。公式解答例では「お得感のあるセットメニューを設ける」としている。客が複数の品目を選びやすくなり、1人当たりの注文金額の増加につながる。25字以内では、お得感とセットメニューの導入を押さえる。

設問1(2)

〔ピーク時の対応状況〕では、通常10分で提供できる料理に20~30分掛かり、〔ちゅう房での調理状況〕では、調理手順の異なる注文を順番に処理することが負担になっている。調理がボトルネックなので、料理の提供時間を短縮する具体策が必要です。U社が注文の多いセットメニューを事前に途中まで調理していることが手掛かりとなる。公式解答例では、注文の多いメニューアイテムを事前に途中まで調理しておくとしている。35字以内では、対象が注文の多い料理であることと、事前に途中まで調理することを示します。採点講評では、ちゅう房の負荷軽減を想定しない解答や、「調理効率の向上」など具体性のない解答が指摘されている。

設問2(1)

〔食材の仕入状況〕では、余った高価な食材を低価格の料理に流用し、それでも余れば廃棄している。また、ホールスタッフは余っている食材を使った料理を勧められていない。オーダエントリシステムでは主要食材の残量を確認できるため、注文を受ける時点で余りそうな食材を把握し、その食材を使う料理を勧められる。公式解答例も、この働き掛けを示している。食材を適切な料理として販売する機会を増やすことで、低価格の料理への流用や廃棄を減らす。35字以内では「余りそうな食材を使う料理を客に勧める」という要素を押さえる。

設問2(2)

〔ちゅう房での調理状況〕にある、料理ごとに調理手順が異なり、様々な注文を順番に処理すると余計な手間が掛かる点に着目する。システムの調理待ち状況を確認し、待っている料理と同じ料理の注文を受けられるように客を誘導すれば、同じ手順の調理をまとめやすくなる。公式解答例では「調理待ちのメニューアイテムと同じオーダが取れるように客を誘導する」としている。40字以内では、調理待ちの料理と同じ注文を取るための働き掛けを示します。採点講評では、ホールスタッフが注文受付時に行うことを考慮せず、ちゅう房の調理手順を答えた解答が指摘されている。

設問2(3)

〔ピーク時の対応状況〕では、ホールスタッフが品出しの遅れている事情を説明できず、客への心遣いが不足している。システムでオーダごとの滞留時間を確認できれば、提供が遅れそうな注文を把握できる。公式解答例では、品出しが遅れそうな場合に客へ事情を説明するとしている。滞留時間の把握を、客への具体的な対応につなげることが要点です。30字以内では「品出しが遅れそうな場合は、客に事情を説明する」とまとめられる。

設問3①

〔オーダの受け方とメニューの構成〕では、天候不順などで予定した食材が入荷せず、当日のメニューを変更することがある。〔レストラン紹介サイト〕では、掲載内容と当日の運営状況に差が生じないよう、可変情報を随時差し替える必要があるとされている。公式解答例では、当日のメニュー変更を迅速に紹介サイトへ反映させる仕組みを挙げている。40字以内では、変更対象、反映先、迅速な反映という要素を押さえる。採点講評では、サイトの管理画面の使い方をスタッフに教えるといった準備事項の解答も見られたとされている。ここでは、情報の更新を実現する仕組みを記述する。

設問3②

〔予約の受付状況〕では、電話予約を店の予約管理表に記入している。一方、紹介サイトでも予約を受け付け、サイト内に予約情報を蓄積できるため、予約情報が二つの場所に分かれる。公式解答例では、紹介サイトの予約情報と店の予約管理表を同期させる仕組みを挙げている。両方の予約を整合させ、予約の把握漏れや重複を防ぐために必要です。40字以内では、同期する二つの情報源と同期の仕組みを示します。採点講評では、この仕組みの正答率が低く、二か所に分散した情報を同期する必要性に気付いてほしいとされている。

学習のポイント

改善する指標、利用する情報、実際に行動する担当者を結び付け、具体的な業務改善策として記述する練習をする。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成26年度秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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