STITストラテジスト試験 午後Ⅰ

平成26年度秋期 ITストラテジスト 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 小売業におけるリフォーム事業の拡大戦略に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。 M社は、全国の大都市近郊に出店している大手ホームセンタである。地域ごとに、中核となる大型店舗と、数店舗のM社が標準として定める売場面積をもつ店舗(以下、標準型店舗という)で、家具・照明などのインテリア商品、日用雑貨、DIY用品、資材、園芸用品などを販売している。M社では、国内外の仕入業者からの大量仕入れで仕入原価を抑えることによって、低価格で商品を提供し、事業を拡大している。 〔リフォーム事業の概要〕 M社では、数年前から大型店舗でキッチン・バス・トイレ・リビング・寝室などの小規模な増改築を中心とするリフォーム事業を展開している。 店内には、消費者のライフスタイルに合わせた、和風、洋風などの様々な仕様のリフォーム展示ブースを複数設置している。 大型店舗には、設計に関して責任を負う社員(以下、設計責任者という)、施工管理に関して責任を負う社員(以下、施工責任者という)、建築関連の知識をもつ社員(以下、リフォーム担当者という)及びインテリア関連の知識をもつ社員(以下、インテリア担当者という)を配置している。 リフォームに関する客からの相談・問合せからリフォーム完了までの流れは、次のとおりである。 ① リフォームに関する客からの相談・問合せは、大型店舗の店頭又は電話でリフォーム担当者が受ける。その際、客の住所、氏名、電話番号、住宅に関する情報などの属性情報、及びリフォーム箇所や希望などのリフォームニーズを確認し、設計責任者の支援を受けて、相談・問合せに回答する。リフォームニーズが具体的でない場合は、客にリフォーム展示ブースを見ることを勧め、具体化している場合は、リフォーム担当者と設計責任者が客先に出向いて現場を調査する(以下、訪問調査という)。このとき、リフォームニーズに合った仕様のリフォーム展示ブースの見学を勧めることがある。 ② 設計責任者は、リビングや寝室のリフォームの場合など必要に応じてインテリア担当者と相談して、リフォームニーズに合ったリフォームプランを作成する。 リフォーム展示ブースを見学した客に対しては、客の具体的な声を聞いてリフォーム内容を設計できるので、客の満足度が高い。 ③ 施工責任者は、設計段階で地域の工務店、建築事業者及び土木事業者(以下、これら3者を総称して施工事業者という)を選択し、施工事業者と調整して見積書を作成する。 ④ リフォーム担当者と設計責任者は、設計したリフォームプランを客に提案して、契約を結ぶ。 ⑤ 工事開始後、リフォーム担当者と施工責任者は、客先に出向いてリフォームプランと現場の状況を見比べ、工事の進捗状況を確認する。工事完了後は、客に工事の内容を確認してもらう。 ⑥ 工事完了後に、実施したリフォームの仕様に合ったインテリア商品に関する問合せを客から電話などで受けることがある。その場合は、リフォーム担当者が客先に出向き、商品のカタログ、商品が掲載されているチラシを見せて、来店を勧める。客が来店したら、インテリア担当者が客のニーズに合ったインテリア商品を推奨する。 〔リフォーム事業の課題〕 ・リフォーム担当者は、設計責任者とともに客との打合せを行ったり、施工責任者とともに工事現場を訪問したりする。そのため、設計責任者、施工責任者との日程調整に手間取る場合がある。 ・施工事業者ごとに、それぞれ対応できるリフォームの仕様が異なるので、施工責任者は、リフォーム案件ごとに、施工が可能かどうか、工事に必要な作業員数、工事の日程・費用を施工事業者に問い合わせている。リフォーム案件が重なった場合は、施工責任者は施工事業者の選定と調整に時間が掛かり、客から苦情を受けることがある。 ・相談・問合せをした客は、休日に来店してリフォーム展示ブースを見学することが多い。客からは、リフォーム展示ブースに来る予定日時を事前に知らせてもらうことはないので、設計責任者、インテリア担当者は適切に対応できない場合がある。 ・施工後の写真がないので、インテリア担当者は工事完了後に来店した客に、リフォームの仕様に合わせてトータルコーディネートしたインテリア商品を推奨できていない。 〔リフォーム事業の拡大戦略〕 近年、消費者のリフォーム需要が増加していることから、M社では、リフォーム事業の拡大を決定し、次のような戦略を立案した。 ・客に対して、大型店舗をもっているM社の強みを生かしたリフォームを提案する。 ・客の利便性向上と業務の効率向上を両立できるようにして、全店舗及びWebサイトを活用したリフォーム事業を展開する。 ・標準型店舗にもリフォーム担当者を配置し、大型店舗の設計責任者、施工責任者と連携したリフォーム対応を行う。 ・全店舗のリフォーム担当者と大型店舗の責任者などがリフォームに関する情報を連携するためのリフォーム管理システムを構築する。リフォーム担当者には、写真撮影が可能なタブレット端末を配布する。 ・施工責任者が迅速に施工事業者を選定し、リフォーム案件ごとの見積りを作成するための施工事業者選定システムを構築する。施工事業者は、施工に関する情報及び施工責任者からの要請に対する回答を、施工事業者選定システムに登録する。 〔リフォーム事業の拡大戦略における新たな業務〕 リフォーム事業の拡大戦略では、新たに次のような業務を実施する。 ・Webサイトからリフォームの相談・問合せを受けるために、必要な情報・内容を客に入力してもらう。客から店頭又は電話で相談・問合せを受けた場合は、リフォーム担当者がリフォーム管理システムに必要な情報・内容を入力する。 ・Webサイトからの相談・問合せに対しては、客の居住地域にある最寄りの店舗のリフォーム担当者が対応する。リフォーム担当者は、大型店舗の設計責任者のアドバイスを得て、客の相談・問合せに電子メール又は電話で回答し、訪問調査の日程を調整する。 ・リフォーム担当者は、訪問調査を行い、タブレット端末で撮影した現場写真と調査結果をリフォーム管理システムに登録する。また、客に対しては大型店舗のリフォーム展示ブースの見学を勧める。設計責任者は、相談・問合せの内容によって、必要に応じて訪問調査を行う。 ・設計責任者とインテリア担当者は、客の来店時にリフォーム管理システムに登録されている情報を参照して、リフォームニーズに合った仕様のリフォーム展示ブースを案内し、リフォームプランを提案する。設計責任者は、現場写真、調査結果及び客の具体的な声を基に、リフォームニーズに合ったリフォーム内容を設計する。 ・施工責任者は、施工事業者選定システムを活用して迅速に施工事業者を選定し、見積りに必要な情報を入手して見積書を作成する。 ・工事期間中は、リフォーム担当者が客先に出向き、タブレット端末を活用して施工責任者と連携して工事を管理する。施工責任者は、必要に応じて客先に出向き、工事内容を確認する。 ・工事完了後に、客からWebサイト又は電話でインテリア商品に関する問合せを受けた場合は、リフォーム担当者がインテリア担当者と相談した後、客先に出向いて、タブレット端末で具体的な商品を推奨し、来店を勧める。 設問1 リフォーム事業の拡大戦略における新たな業務のうち、リフォーム担当者の業務について、(1)、(2)に答えよ。 (1) 訪問調査を行って、客がリフォーム展示ブースの見学を希望した際に行うことを、35字以内で述べよ。 (2) インテリア商品に関する問合せを受けて、客先に出向いたとき、タブレット端末を用いて行うことを45字以内で述べよ。 設問2 リフォーム事業の拡大戦略における新たな業務で、リフォーム管理システムが取り扱う情報について、(1)、(2)に答えよ。 (1) 設計責任者が客の相談・問合せに対してアドバイスするときに、Webサイト及びリフォーム担当者から引き継いで参照する情報を、二つ答えよ。 (2) 施工責任者がリフォーム担当者と連携して工事を管理する際に、リフォーム担当者と共有して参照する情報を25字以内で述べよ。 設問3 施工責任者が、施工事業者選定システムで迅速に施工事業者を選定して見積りをするために、施工事業者が実施すべきことについて、(1)、(2)に答えよ。 (1) 施工事業者が施工事業者選定システムに事前に登録する情報を、25字以内で述べよ。 (2) 施工責任者からの要請に対して施工事業者が回答する内容を、25字以内で述べよ。
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目的と手段の対応を確かめる

業務や情報システムについて考えるときは、達成したい目的と、そのための手段との対応に注目しましょう。記載された内容をすぐに評価せず、何を目指す話なのかを捉えてから、同じ観点で考えを整理します。

この問題で問われていること

問われている内容を、目的と手段の対応という一つの観点から捉えてください。自分で置いた前提を根拠に混ぜていないかを確かめ、与えられた情報の範囲で、判断に必要なつながりを整理しましょう。

視点

達成したいことと、そのために用いるものを分けて捉えると、考えを整理しやすくなります。両者の対応を検討するときは、与えられた情報と自分の推測を区別し、目的とのつながりに立ち返って考えましょう。

確認ポイント

  • 何を達成したいのかを捉えているか
  • 手段そのものを目的として扱っていないか
  • 目的と手段の対応を、与えられた情報に基づいて考えているか
正解と解説を見る

解説

M社のリフォーム事業拡大では、店舗とWebサイトを通じた相談受付、専門担当者との情報連携、施工事業者の迅速な選定が必要になる。現状の課題を踏まえ、各業務の時点に必要な行動と情報を具体的に特定することが要点です。

問題の全体像

M社は、大型店舗で展開してきたリフォーム事業を、標準型店舗とWebサイトにも広げようとしている。現状では、専門担当者との日程調整、施工事業者の選定、展示ブース見学客への対応、施工後の仕様に合うインテリア提案に課題がある。拡大戦略では、リフォーム管理システム、写真撮影が可能なタブレット端末、施工事業者選定システムを使って情報を連携する。公式の出題趣旨では、新たな業務に必要な仕組みを検討する能力と、必要な情報を特定する能力を評価するとしている。各設問では、課題と新たな業務を対応させ、誰がどの時点で何を行い、どの情報を使うかを読み取る。

設問1(1)

着目するのは、客が展示ブースに来る予定日時を事前に知らせないため、設計責任者やインテリア担当者が適切に対応できないという課題です。新たな業務では、来店時に両担当者が情報を参照して展示ブースを案内し、プランを提案する。その対応を準備するには、訪問調査時に見学予定日時を決め、リフォーム管理システムに登録する必要がある。公式解答例では「リフォーム展示ブースの見学予定日時を決めて登録する。」としている。35字以内の答案では、対象となる見学予定日時と、「決める」「登録する」の二つの行動を押さえる。採点講評では正答率が低かったとされ、見学客に対応できない現状の課題から具体的な施策を導くことが求められている。

設問1(2)

着目するのは、施工後の写真がなく、リフォームの仕様に合わせてトータルコーディネートしたインテリア商品を推奨できていないという課題です。新たな業務では、リフォーム担当者がインテリア担当者と相談した後、客先でタブレット端末を用いて具体的な商品を推奨する。したがって、答案では端末を使うという操作だけでなく、どのような商品を推奨するかを示します。公式解答例では「リフォームの仕様に合わせてトータルコーディネートしたインテリア商品を推奨する。」としている。45字以内で、リフォームの仕様との適合、トータルコーディネート、インテリア商品の推奨を押さえる。

設問2(1)

設問が対象とするのは、設計責任者が相談・問合せへのアドバイスを行う時点です。従来の相談受付では、客の住所、氏名、電話番号、住宅に関する情報などの「属性情報」と、リフォーム箇所や希望などの「リフォームニーズ」を確認している。新たな業務でも、Webサイトでは客が、店頭や電話ではリフォーム担当者が必要な情報を入力するので、この二つを設計責任者に引き継ぐ必要がある。公式解答例では「属性情報」「リフォームニーズ」の二つを挙げている。現場写真や調査結果は訪問調査で登録する情報であり、相談受付時に引き継ぐ情報とは業務の時点が異なる。

設問2(2)

着目するのは、従来はリフォーム担当者と施工責任者が一緒に現場へ出向き、工事の状況を確認していた点です。新たな業務では、リフォーム担当者が現場を訪問し、タブレット端末を使って施工責任者と連携する。施工責任者が現場の状況を把握するには、写真撮影した工事の内容と進捗状況を共有する必要がある。公式解答例では「写真撮影した工事の内容と進捗状況」としている。25字以内の答案でも、写真による工事内容の把握と進捗状況の両方を含める。採点講評では、「リフォームの仕様」など工事開始前に共有しておく情報を答えた例が指摘されている。工事期間中に確認する情報であることが判断の鍵となる。

設問3(1)

着目するのは、施工事業者ごとに対応できるリフォームの仕様が異なり、施工責任者が案件ごとに施工可能かを問い合わせているという課題です。施工事業者が対応可能な仕様を事前登録すれば、施工責任者は案件の仕様に合う事業者を迅速に選定できる。公式解答例では「施工が可能なリフォームの仕様」としている。25字以内の答案では、単に「リフォームの仕様」とせず、その事業者が施工可能な仕様であることを明確にする。

設問3(2)

本文の課題では、施工責任者が案件ごとに、施工可能かどうか、必要な作業員数、工事の日程・費用を問い合わせている。設問3(1)の対応可能な仕様を事前登録した上で、個別案件の要請に対しては、施工の調整と見積りに必要な具体的条件を回答する。公式解答例では「工事に必要な作業員数,工事の日程・費用」としている。25字以内の答案では、作業員数、日程、費用の三つを漏らさず挙げる。事前登録する施工能力と、案件ごとに回答する施工条件を区別することが要点です。

学習のポイント

課題から新たな業務要件を導き、相談時・工事中などの時点に応じて必要な情報を区別する力を身に付ける。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成26年度秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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