STITストラテジスト試験 午後Ⅰ

平成25年度秋期 ITストラテジスト 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 警備会社のサービス拡大に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。 C社は,企業を対象にした,ビルや工場への不法侵入などの異常を監視するセキュリティサービス(以下,企業向けサービスという)を提供している警備会社であり,営業部門,警備部門,受付センタなどの組織がある。営業部門には,本社の営業企画部と,地域ごとの営業所がある。警備部門には,本社に警備管理部があり,地域ごとに複数の警備員待機所がある。受付センタは本社にあり,契約している顧客の情報と受付センタのオペレータが対応した情報を管理するシステムを運用している。 〔企業向けサービスの概要〕 C社のサービス提供形態には,常駐型と巡回型がある。常駐型は警備員が顧客の警備対象施設(以下,対象施設という)に常駐して監視する。巡回型は警備員が対象施設を定期的に訪問して監視する。巡回型では訪問の他に,対象施設に専用の端末(以下,セキュリティ端末という)を設置して,不法侵入などの異常を常時監視している。セキュリティ端末は,ネットワークでC社の受付センタに接続している。C社では,セキュリティ端末で異常を検知した場合には,次の手順で対応を行っている。 ① セキュリティ端末で異常を検知すると,受付センタに異常の種類と発生場所の通知が来る。 ② 受付センタでは,通知を受けたオペレータが最寄りの警備員待機所に出動を指示する。オペレータ名・通知時刻・対応内容・通話時間がシステムに記録される。 ③ 警備員待機所に所属する警備員は,一定時間内に対象施設に到着しなければならない。 ④ 出動した警備員及び巡回に使用する車両の位置情報は,受付センタに自動的に一定の間隔で送信される。 ⑤ 警備管理部では,対象施設への到着所要時間を考慮して警備員待機所を設置しており,対象施設の増加が見込まれると警備員待機所の見直しを行っている。 企業向けサービスの営業活動は,営業所が担当しており,営業所員が顧客からのサービス内容に関する問合せを受け付け,回答している。営業所員のスキルレベルは様々で,顧客からクレームを受けることもある。 C社では,企業向けサービスの展開が一巡したので,事業拡大のために,家庭を対象にした,不法侵入などの異常を監視するセキュリティサービス(以下,家庭向けサービスという)について検討することにした。 〔家庭向けサービスの検討〕 検討した家庭向けサービスの概要は次のとおりである。 (1)サービス対象:一戸建て住宅,集合住宅 (2)セキュリティ端末:顧客の住宅に設置し,受付センタとネットワークで接続する専用機器 ・異常時には,発生場所と異常の種類を受付センタへ通知する。 (3)サービス内容:基本サービスとオプションサービス ・基本サービスとして,顧客の住宅への巡回監視とセキュリティ端末を用いた不法侵入監視を行い,異常時には警備員が出動する。 ・オプションサービスとして,外出時に鍵を紛失した場合に備えた予備の鍵の預かり管理,長期不在時にたまる郵便物を保管する不在住宅の郵便ポスト管理を行う。 C社は,現在,企業向けサービスを提供している顧客の従業員を対象に,家庭向けサービスについてアンケートを行った。その結果をまとめると,次のような回答が多かった。 ・一戸建て住宅,集合住宅向けのサービスの利用について興味がある。特に,高齢者,子供がいる家庭を対象にした,住宅や外出先における異常への対応や安否確認をするサービスが欲しい。その場合は,警備員が異常発生現場に到着するまでの時間が短いことが重要である。 ・契約する前に,インターネット上のWebサイトでサービスの詳細について確認したい。特に知りたいのは,①サービスの内容と価格,②自分の条件に合うサービスの組合せである。 そこで,C社ではアンケート結果を踏まえて,次のようなオプションサービスを追加することにした。 (1)サービス対象:家族 (2)家族向け携帯端末(以下,携帯端末という):新しく開発した端末 ・位置情報通知機能があり,携帯端末のボタン操作によって,携帯端末番号,位置情報,異常の種類を受付センタに通知する。異常状態が解消するまで,逐次,位置情報は受付センタに通知される。 (3)サービス内容:家族外出見守りと高齢者在宅見守り ・家族外出見守りは,外出先で道に迷うなどの異常があった場合に,位置情報などが携帯端末から通知され,受付センタから警備員の出動指示を行う。家族外出見守りは,家庭向けサービスを提供する地域とその周辺地域を対象に行う予定である。 ・高齢者在宅見守りは,警備員が高齢者の住宅に出動して安否を確認するサービスで,異常発生時には家族に連絡する。 〔受付センタの現状と強化〕 受付センタは,現在,通知への対応を行うオペレータと,オペレータの対応状況を管理し指導を行う指導員で運営されている。オペレータは全員,経験が豊富であり,通知への対応には慣れているので,効率よく短時間で対応できている。しかし,C社では事業拡大に伴う受付センタの強化にも取り組むことにした。強化策は次のとおりである。 ・契約した企業,家庭からの通知及びサービス内容に関する問合せ窓口は,受付センタに集約する。オペレータが問合せを受けると,オペレータ名・受付時刻・対応内容・通話時間がシステムに記録される。 ・事業拡大に伴う通知件数の増加と業務の集約によって,問合せの種類・件数の増加が見込まれるので,オペレータの人数を増やし,システムによるオペレータへの支援機能を追加する。 ・今回の増員では,経験が浅いオペレータも多数含まれると予想されるので,顧客対応の品質を維持するための指導が必要である。 ・サービス内容,セキュリティ端末や携帯端末の操作方法などについて,同様の問合せが高齢者から何度もあると見込まれるので,オペレータが異なっても統一した対応をとれるようにするなど,回答内容の標準化が必要である。 〔家庭向けサービスの営業活動〕 営業企画部では,家庭向けサービスを提供する地域ごとに潜在顧客数を調査し,次のような営業戦略を展開することにした。 ・基本サービスとオプションサービスを組み合わせて,顧客が受け入れやすい価格で提供する。 ・営業所員による訪問に加え,地域住民への新聞折込広告と,新たなWebサイトの構築を行う。 Webサイトの構築に当たり,同業他社のWebサイトを調査したところ,サービス内容とサービスごとの価格を提供しているWebサイトは多かったが,それ以外の情報を提供しているWebサイトはなかった。 家庭向けサービスの提供に当たり,受付センタの情報を活用することで顧客対応の品質を維持し,家庭向けサービスへの警備員の対応方法について警備管理部で検討し,顧客の要望に合ったサービスを提供できるようにする。 設問1 受付センタが問合せへの対応力を強化するために行うべきことについて,(1),(2)に答えよ。 (1)家庭向けサービスの拡大に伴って,回答内容の標準化を図るために必要なシステムの支援機能を,25字以内で述べよ。 (2)顧客対応の品質を維持するために,活用すべき情報とその活用方法を,それぞれ20字以内で述べよ。 設問2 営業部門が家庭向けサービスの営業活動として行うべきことについて,(1),(2)に答えよ。 (1)営業活動において注力すべき対象を,15字以内で述べよ。 (2)他社に比べて競争優位を保てるようにするために,新たに構築するWebサイトにもたせるべき機能を,40字以内で述べよ。 設問3 家庭向けサービスの提供を開始するに当たって行うべきことについて,(1),(2)に答えよ。 (1)家庭向けサービスの導入時に警備管理部が行うべき見直し内容と参照する数値を,それぞれ15字以内で述べよ。 (2)セキュリティ端末からの通知ではなく,携帯端末から通知を受けた場合に,受付センタが出動指示をするに当たって留意すべきことは何か。40字以内で述べよ。
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判断の前提となる条件をそろえる

検討を始める前に、判断の前提となる条件を整理しましょう。事業の変化を考える際は、既に示されている条件と、自分が補っている想定を区別し、同じ前提の下で考えているかを確かめることが大切です。

この問題で問われていること

ここでは、判断の途中で前提条件が変わっていないかに注目しましょう。考えを進めるたびに、その判断がどの条件に基づくのかを振り返り、示された情報を超える想定を無意識に加えていないか確認してください。

視点

判断は、置いた前提によって意味が変わることがあります。条件として示されたことと、経験や印象から補ったことを分けて整理すると、検討の出発点を確かめやすくなります。

確認ポイント

  • 判断の根拠となる条件を確認したか
  • 明示された条件と自分の想定を区別したか
  • 検討の途中で前提を置き換えていないか
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解説

家庭向けサービスの導入に伴い、問合せ回答の検索支援、対応実績による指導対象の特定、重点顧客とWebサイトの機能、需要に応じた待機所配置、移動する利用者への出動指示を検討する問題です。

問題の全体像

C社は企業向け警備の展開が一巡したため、住宅の監視に加え、家族の外出見守りや高齢者の在宅見守りへ事業を拡大します。これに伴い、受付センタの問合せ対応、営業活動、警備員の配置と出動方法を整える必要があります。公式の出題趣旨では、市場ニーズを分析し、新サービスに対応する業務と情報活用を検討する能力が問われています。アンケートで示された要望、システムに記録される情報、固定端末と携帯端末の違いを、それぞれの部門が行う具体策に結び付けることが中心です。

設問1(1)

〔受付センタの現状と強化〕にある、同様の問合せが繰り返され、オペレータが異なっても統一した対応をとる必要があるという記述に着目します。回答内容をそろえるには、受けた問合せに対応する回答をオペレータが参照できる支援が必要です。公式解答例では「問合せ内容から回答内容を検索する機能」としています。25字以内の答案では、検索の手掛かりが「問合せ内容」、検索する対象が「回答内容」であることを示します。「回答を標準化する」と目的だけを書くのでは、必要なシステム機能の説明になりません。

設問1(2)(活用すべき情報)

経験が浅いオペレータの増員に対して、顧客対応の品質を維持するための指導が必要という記述と、システムに記録される項目を結び付けます。誰の対応かを識別するオペレータ名に、対応内容と通話時間を組み合わせることで、指導が必要な対応実績を把握できます。公式解答例では「オペレータ名と対応内容と通話時間」としています。20字以内では、この三つの項目を具体的に挙げます。採点講評では「企業や家庭からの問合せ情報」という解答が挙げられており、問合せ全般ではなく、オペレータの対応実績を表す情報を答えることが求められています。

設問1(2)(活用方法)

活用の目的は、経験が浅いオペレータも含めて顧客対応の品質を維持することです。対応内容や通話時間をオペレータ名と結び付けて確認し、指導が必要な担当者を見つける用途を答えます。公式解答例では「指導すべきオペレータを特定する。」としています。20字以内では「指導対象の特定」まで具体化します。採点講評では、対応実績の活用によって指導すべきオペレータを特定する解答を求めたと説明しています。「標準的な回答を作成する」は設問1(1)の回答標準化に関わる内容であり、この回答単位で求める情報の活用方法とは異なります。

設問2(1)

アンケート結果の「特に、高齢者、子供がいる家庭」を対象に、異常への対応や安否確認のサービスが欲しいという記述に着目します。この要望を受けて、家族外出見守りと高齢者在宅見守りが追加されているため、営業で重点的に働き掛ける対象も、このニーズを持つ家庭になります。公式解答例では「高齢者や子供がいる家庭」としています。15字以内では、一般的なサービス対象である住宅の種類ではなく、重点対象となる家庭の特徴を示します。

設問2(2)

顧客が契約前に知りたい情報は、サービスの内容と価格に加え、自分の条件に合うサービスの組合せです。一方、他社のWebサイトはサービス内容とサービスごとの価格を提供するにとどまっています。さらにC社は、基本サービスとオプションサービスを組み合わせて提供する方針です。公式解答例では「自分の条件に合うサービスの組合せとその価格を確認できる機能」としています。40字以内では「自分の条件」「サービスの組合せ」「その価格の確認」を押さえます。個別サービスの紹介だけでなく、顧客が希望する組合せと価格を確認できることが、他社との差につながります。

設問3(1)(見直し内容)

企業向けサービスの手順⑤では、対象施設が増える見込みがあると警備員待機所を見直すとされています。家庭向けサービスでも警備対象が増え、顧客は異常発生現場までの到着時間が短いことを重視しています。そのため、需要の広がりに合わせて待機所の配置を見直す必要があります。公式解答例では「警備員待機所の数と場所」としています。15字以内では、待機所について「数」と「場所」の両方を示し、何を見直すのかを具体化します。

設問3(1)(参照する数値)

〔家庭向けサービスの営業活動〕で、営業企画部がサービス提供地域ごとに潜在顧客数を調査したという記述に着目します。導入時の待機所配置は、今後どこにどれだけ需要が発生しそうかを踏まえて検討するため、この調査値を参照します。公式解答例では「地域ごとの潜在顧客数」としています。15字以内では、地域別の需要見込みを表す数値であることを示します。採点講評では、到着所要時間などの制約条件を答えた例に触れています。到着時間は配置を考える際の条件ですが、この設問で求められている参照値は需要見込みです。

設問3(2)

住宅に設置するセキュリティ端末と異なり、携帯端末の所有者は通知後も移動する可能性があります。本文では、異常状態が解消するまで位置情報が逐次通知されるとされており、この更新情報を出動指示に反映する必要があります。公式解答例では「位置情報を追跡して,携帯端末の所有者を確認するように指示する。」としています。40字以内では「位置情報の追跡」と「所有者の確認を指示すること」を押さえます。採点講評では、最初に通知された位置だけに基づく指示や、所有者の登録情報への連絡という解答に触れており、位置が変化する端末の特性を踏まえた対応が求められています。

学習のポイント

本文のニーズ・記録情報・端末の特性を、具体的な機能や業務上の判断に結び付け、設問ごとの字数内で表現する力を養います。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成25年度秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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