STITストラテジスト試験 午後Ⅰ

平成24年度秋期 ITストラテジスト 午後Ⅰ 問4

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問4 自動販売機の企画に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。 E社は,飲料用自動販売機メーカで,販売先は酒類と清涼飲料の製造・販売を行うG社である。E社の自動販売機には通信機能があり,自動販売機内の在庫を遠隔地から確認することができる。自動販売機の設置場所は広範・多岐にわたり,設置場所によって通信手段が異なるので,LAN,携帯電話,PHSなど,複数の通信手段に対応している。 〔G社の経営状況・経営戦略〕 G社は自動販売機による売上は順調であるが,主な販路である販売店及び飲食店においては売上が伸び悩んでいる。そこで,経営悪化の打開策として,E社に対し,E社の従来の自動販売機にはない機能(以下,新機能という)を提案するよう依頼した。G社が例として挙げたのは,G社の主な販路で売上を伸ばすことができる機能であった。 〔新機能の概要〕 G社の依頼を受け,E社のITストラテジストのH氏は次のような新機能を考えた。 ① 災害情報提供機能 ・災害時に,被災地及びその周辺で液晶画面に文字・画像を表示したり,音声を出力したりすることによって,災害の状況や避難場所などの災害情報を提供する。 ② 災害時商品無償提供機能 ・災害時に,被災地及びその周辺で,緊急支援物資として自動販売機内の商品を無償で提供する。 ③ 道案内機能 ・利用者が,最寄り駅,最寄りバス停,飲食店などの目的地を一覧から検索すると,目的地までの経路を表示する。 ・目的地までの経路を表示する機能を近隣の自動販売機と連携させ,利用者が表示された経路の自動販売機に近づく頃に“○○駅ココ右折”などの道案内を表示する。 ④ お勧め商品紹介機能 ・性別及び年齢層別に,自動販売機で販売中のお勧め商品を紹介する。 ・購入履歴を基に,利用者の好みの商品を提案する。 H氏は,システムアーキテクトのJ氏に,これらの新機能の実現方法を調査するように指示した。 〔新機能の実現方法〕 J氏は,新機能の実現方法について調査し,その結果を機能ごとにまとめ,H氏に報告した。 ① 災害情報提供機能 ・関係省庁及び自治体と連携し,災害に関する最新情報を表示する。 ・停電で外部からの電力供給が断たれたときでも,内蔵する電池を使って,最寄りの避難所までの道案内の画面表示を,1日程度続ける。 ② 災害時商品無償提供機能 ・遠隔操作又は手動操作によって,商品を無償提供する。 ・停電で外部からの電力供給が断たれたときでも,内蔵する電池を使って,商品がある限り1日程度は無償提供を続ける。 ③ 道案内機能 ・タッチパネルの操作によって,目的地を入力する。 ・道路の新設,廃止,工事中などの情報を入手し,道案内をする。 ・目的地までの経路にある,道案内機能を搭載した自動販売機は,利用者が来ると思われる時間が経過したときに道案内を表示する。 ④ お勧め商品紹介機能 ・カメラの画像から年齢,性別を判断する。 ・購入層ごとのお勧め商品情報は,毎日更新する。 ・個人を識別できる画像情報及び過去に購入した商品情報をサーバに保存し,カメラの画像から利用者を識別し,過去に購入した商品に関連した新商品を紹介する。 これらの新機能の中には,継続運用するために他企業と提携すべきもの,及び個人情報保護の面で問題となり得るものがある。また,災害情報提供機能及び災害時商品無償提供機能の実現は,技術的には可能であるが,機能実装コスト,保守コストの増加などの問題がある。 〔新機能に関するG社の提案・意向とE社の対応〕 (1) G社の提案・意向 H氏が,G社の経営者に新機能について説明したところ,G社の経営者は,道案内機能を評価するとともに,この機能を利用して,利用者を提携店に誘導する新機能を提案してきた。具体的な内容は,道案内機能と連動し,近隣店舗の情報を自動販売機に表示し,G社の商品を扱う近隣の販売店,飲食店などの提携店を優先的に紹介する機能(以下,提携店優先紹介機能という)である。さらに,G社の経営者は,次のような意向を示した。 ・提携店優先紹介機能については,E社と特許を共同出願することで,特許権を共有したい。 ・提携店優先紹介機能を含めた全ての新機能を備えた自動販売機を,半年後に市場に出したい。 (2) E社の対応 ① 提携店優先紹介機能の詳細化 H氏は,J氏に提携店優先紹介機能の詳細化を指示した。J氏が検討した結果を次に示す。 ・G社の商品を扱う販売店の集客アップのために,当日の特売品情報などを紹介する。 ・G社の商品を扱う飲食店のメニュー,“レジで○○と言うと割引になります”といったサービスなどの情報を紹介する。 提携店優先紹介機能の実現については,G社と特許を共同出願することを前提に開発を進めることにした。 ② 全ての新機能を備えた自動販売機の開発 H氏は,G社の意向どおりに全ての新機能を備えた自動販売機を開発するのは納期の面で困難と判断した。そこで,G社の経営状況を踏まえ,先行して実現すべき二つの新機能を搭載した自動販売機をまず開発して,G社に納入し,その後,ハードウェアの追加とソフトウェアの更新によって,残りの新機能を実現することで,G社との合意を得ることができた。また,H氏は,先行して実現すべき二つの新機能を実現するためにはそれぞれ,関係省庁,自治体,企業など他の組織から入手すべき情報があると考えた。 設問1 自動販売機の開発計画について,(1),(2)に答えよ。 (1) G社と合意して先行して実現することにした新機能を二つ答えよ。また,それぞれについて,その理由を25字以内,その新機能を実現するに当たって,他の組織から入手すべき情報を30字以内で述べよ。 (2) 自動販売機の納入後,ソフトウェアの保守や機能の追加が考えられる。ソフトウェアの更新について考慮しておくべき事項を,30字以内で述べよ。 設問2 新機能の実現について,(1),(2)に答えよ。 (1) 個人情報保護の面で問題となり得る新機能を答えよ。 (2) 災害情報提供機能と災害時商品無償提供機能の実現に伴う機能実装コスト及び保守コストの増加の原因を,35字以内で述べよ。 設問3 E社が,飲料以外の自動販売機向けにライセンス料収入の獲得を目的とし,他の自動販売機メーカに,G社との共同出願特許である提携店優先紹介機能をもつ自動販売機の製造・販売を許諾するに当たって,あらかじめ行っておくべきことを,15字以内で述べよ。
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検討の前提と根拠をそろえる

検討を始める前に、与えられた条件と自分で補った想定を区別しましょう。判断の根拠がどの条件にあるかを確かめると、経験や印象だけで結論を急がず、示された範囲に沿って考えやすくなります。

この問題で問われていること

考える際は、判断の前提が与えられた条件に支えられているかという一点に注目してください。自分の知識から補った想定が混ざっていないかを振り返り、根拠をたどれる範囲で検討を進めましょう。

視点

前提とは、検討の土台に置く条件です。与えられた条件と、経験から補った想定を分けて捉え、判断に使う前提の根拠を確認しましょう。

確認ポイント

  • 判断の前提は、与えられた条件に基づいているか
  • 自分で補った想定を、与えられた条件と混同していないか
  • 判断に使った前提の根拠をたどれるか
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解説

G社の主な販路の売上を伸ばすため、提携店優先紹介機能と、それに連動する道案内機能を先行開発します。既存の通信機能を使う更新計画、個人情報の取扱い、電池の搭載・交換費用、共有特許の許諾に必要な同意も押さえます。

問題の全体像

飲料用自動販売機メーカのE社が、顧客G社の経営悪化を打開する新機能を企画する事例です。G社では自動販売機の売上は順調ですが、主な販路である販売店・飲食店の売上が伸び悩んでいます。半年後の市場投入に全機能の開発が間に合わないため、経営課題に効く機能を先行し、残りを後から追加する計画が必要です。公式の出題趣旨では、顧客の経営状況を踏まえた先行開発、バージョンアップの計画、新機能の実現上の課題、共同出願特許の留意点を問うとしています。

設問1(1)①新機能

〔G社の経営状況・経営戦略〕にある、販売店及び飲食店の売上の伸び悩みに着目します。提携店優先紹介機能は、G社の商品を扱う近隣店舗を優先的に紹介し、利用者を誘導する機能です。主な販路の集客と売上の改善につながるため、公式解答例では「提携店優先紹介機能」を先行開発する機能として挙げています。なお、公式解答例では①と②は順不同です。

設問1(1)①理由

理由は、機能の特徴をG社の経営課題に結び付けて説明します。G社が求めているのは、主な販路で売上を伸ばせる機能です。提携店への誘導はこの要望に直接応えるため、公式解答例では「G社の主な販路の売上を伸ばせる機能だから」としています。25字以内では「主な販路」と「売上を伸ばせる」を押さえます。採点講評では、G社との合意を得た状況を踏まえていない理由の解答が一部に見られたと指摘しています。

設問1(1)①情報

〔E社の対応〕の「提携店優先紹介機能の詳細化」に着目します。販売店については当日の特売品、飲食店についてはメニューや割引サービスを紹介するとあります。これらは店舗から入手する必要がある具体的な情報です。公式解答例では「当日の特売品,メニュー,サービスなどの情報」としています。30字以内では、紹介内容を具体的に列挙し、単に「店舗情報」とまとめてしまわないことがポイントです。

設問1(1)②新機能

G社が提案した提携店優先紹介機能は、本文で「道案内機能と連動」すると明記されています。店舗を紹介して利用者を誘導するには、その機能と組み合わせる道案内機能も先行して実現する必要があります。公式解答例では、もう一つの新機能を「道案内機能」としています。機能を個別に評価するだけでなく、優先する機能の実現に必要な連動関係まで読み取ります。

設問1(1)②理由

着目するのは、提携店優先紹介機能が道案内機能と連動するという記述です。提携店優先紹介機能を先行する方針に合わせ、その基盤となる道案内機能も実現します。公式解答例では「提携店優先紹介機能と連動した機能だから」としています。25字以内では、連動先の機能名と連動関係を押さえます。「利用者に便利だから」という一般的な利点だけでは、今回の先行開発の理由を十分に説明できません。

設問1(1)②情報

〔新機能の実現方法〕の道案内機能に、「道路の新設,廃止,工事中などの情報を入手」とあります。目的地まで案内するには、道路の変化や通行に関わる情報を反映する必要があります。公式解答例では「道路の新設,廃止,工事中などの情報」としています。30字以内では、本文にある道路情報の種類をまとめて示します。提携店の販促情報とは、利用する機能と目的が異なる点を整理してください。

設問1(2)

冒頭の既存の通信機能と、納入後にソフトウェアを更新して残りの新機能を実現する計画を結び付けます。自動販売機は広範・多岐にわたる場所に設置されるため、通信機能を利用して更新用ソフトウェアを取得できる設計が有効です。公式解答例では「通信機能を使ってダウンロードできるようにしておく。」としています。30字以内では、通信機能によるダウンロードを可能にする点を押さえます。採点講評では、納入後の保守や機能追加に関連しない解答が一部に見られたとしています。

設問2(1)

〔新機能の実現方法〕のお勧め商品紹介機能に、個人を識別できる画像情報と過去の購入商品情報をサーバに保存するとあります。さらに、カメラ画像から利用者を識別し、購入履歴に応じた新商品を紹介します。個人を識別する情報と購入履歴を結び付けて扱うため、個人情報保護上の問題となり得ます。公式解答例では「お勧め商品紹介機能」としています。答案では機能名を答え、学習上は画像情報の保存と個人識別の記述を根拠として確認します。

設問2(2)

災害情報提供機能と災害時商品無償提供機能には、停電時でも内蔵電池を使って1日程度動作を続けるという共通条件があります。電池の搭載には機能実装の費用が掛かり、交換には保守の費用が掛かります。公式解答例では「電池を搭載したり,交換したりするための費用が掛かる。」としています。35字以内では、搭載と交換の両方を含めます。採点講評でも、機能実装コストと保守コストの一方だけを記述した解答が多かったと指摘しています。

設問3

提携店優先紹介機能の特許は、E社とG社が共同出願し、特許権を共有する前提です。設問は、E社が他の自動販売機メーカに製造・販売を許諾する前に必要な対応を問うています。共有する特許について第三者への許諾を行うため、公式解答例では「G社の同意を得ておく。」としています。15字以内では、同意を得る相手がG社であることを明示します。飲料以外を対象とする場合でも、共同出願・共有という条件に着目する必要があります。

学習のポイント

経営課題から開発の優先順位を導き、機能間の依存関係、納入後の更新、実装と保守の両面、共有特許の条件を本文の根拠と結び付けること。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成24年度秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問4(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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