STITストラテジスト試験 午後Ⅰ

平成24年度秋期 ITストラテジスト 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 物流業務の改善に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 D 社は,日用品の卸売業者であり,ホームセンタ,スーパーマーケットなどを主な顧客としている。D 社では,地域ごとに複数の物流センタを設置し,自社で運用している。最近では,顧客からの注文が減少している上に,スーパーマーケットの統合などによって顧客も減少している。 D 社では,販売管理システムと在庫管理システムを自社で開発し,本社で販売管理システムを使用し,それぞれの物流センタで在庫管理システムを使用している。 (1)販売管理システムは,顧客からの注文の情報を受注情報として管理する。受注情報には,納入先,納入希望日時,品目,数量があり,営業部員が販売管理システムに登録する。注文回数を制限していないので,少量,多頻度の配送となってしまっている顧客も多い。 (2)販売管理システムは,登録された受注情報をそれぞれの物流センタに仕分けし,本社から1日に1回まとめて送信する。 (3)在庫管理システムは,品目と数量を管理する。在庫管理システムには,顧客への出荷情報が実績として記録されている。在庫管理システムに記録せずに,営業部員が販売活動用のサンプルとして在庫から商品を持ち出し,顧客に渡すこともある。 (4)物流センタから顧客への配送業務及び物流センタ間の移送業務は,専門の運送業者に委託している。顧客への配送費用,物流センタ間の移送費用の実績金額をまとめた運送費用は,毎月1回運送業者に支払っている。顧客への配送費用を調査したところ,少量,多頻度の配送が多い顧客の中には,配送を見直すことで費用を削減できそうな先があることが分かった。 〔物流業務の現状〕 (1)在庫管理業務 ・D 社が扱っている商品は,定番商品と特売用商品の2種類がある。定番商品も特売用商品も物流センタに在庫として保管している。特売用商品は一時期に大量の注文が集中するので,物流センタ内に大きな在庫スペースが必要である。 ・メーカに対して在庫補充のために発注する場合,出荷実績の傾向は考慮せず,受注情報と在庫情報に基づいて発注数量を決めている。 ・商品の在庫水準は,発注リードタイムと1日当たりの出荷数量の基準値によって決めている。定番商品も特売用商品も商品ごとに基準値を設定している。季節変動などの特性は考慮できていないので,一部の商品では欠品になったり,過剰在庫になったりしている。 ・メーカが生産を中止した商品と,一定期間に出荷実績がなかった商品は,在庫管理システムの対象から除外しているが,それ以外の見直しは行っていない。 (2)入出庫業務 ・メーカから商品を積んだトラックが物流センタに到着した後,入荷作業,検品作業,入庫作業を行う。トラックの到着スケジュールが変更になったり,複数台が同時に到着したりしても,作業スケジュールを一部見直すことで対応できている。 ・受注情報に従って出荷指示書を作成し,在庫を引き当て,商品を出荷している。しかし,在庫管理システム上の在庫数量と実在庫数量が異なり,欠品していることがある。その場合,在庫がある同一地域内の物流センタから自センタへの移送を運送業者に依頼する。 (3)配送業務 ・顧客に納品できる準備が整うと,作成した出荷伝票を物流センタから運送業者に送り,配送業務を依頼する。 〔物流業務の見直し〕 D 社では,競争力強化及び物流費用削減のために,物流センタの配置と在庫管理を見直すことにした。 (1)物流センタの配置の見直しでは,適正な在庫管理を行うために,それぞれの地域で複数箇所に設置されている物流センタを,地域ごとに1か所に統合する。 (2)在庫管理の見直しでは,従来は全ての商品の在庫管理を物流センタで行っていたが,特売用商品については在庫をもたないようにする。また,定番商品の過剰在庫を減らすために,出荷実績の傾向なども参考にする。 (3)営業部員に対するヒアリングによって,販売活動用に持ち出すサンプル商品は,入荷時点で必要数量を見込めることが分かったので,在庫差異による欠品の発生をなくす。 〔特売用商品に対応する物流業務〕 特売用商品は,必要時にメーカから出荷してもらい,物流センタに到着後,顧客ごとに仕分ける配送準備作業を行って,直ちに配送する。 (1)D 社からメーカへの特売用商品の発注情報には,品目,数量,物流センタへの到着希望日時がある。到着希望日時は,顧客納品を行う配送トラックの出発時刻を基準に決める。同じ到着希望日時が,複数のメーカに対して指定されることもある。 (2)メーカは,出荷数量が多いので,受注時に指定された到着希望日時を考慮して,数日前に出荷の予定を確定させる。特売用商品を積んだトラックが出発するときに,メーカから物流センタに,出荷した品目と数量の連絡がある。 (3)各メーカの特売用商品を積んだトラックが複数台同時に到着した場合,物流センタには,配送準備作業を同時に行えるだけの人数の作業要員はいない。配送準備作業は,顧客納品のために計画した配送トラックの出発時刻には間に合わせなければならない。 (4)メーカからの納入品が到着希望日時に全数そろわないと,計画外の配送トラックを追加手配しなければならない。できるだけ早い段階で数量の相違を検出して,関係者と調整し,追加手配を削減したい。 顧客への配送は,物流センタで在庫管理を行っている定番商品を顧客ごとに取り出し,顧客ごとに仕分けられた特売用商品と併せて,従来と同様に同じ便で配送する。定番商品と特売用商品の新たな仕組みによる顧客への配送費用は,現在より減らしたい。 設問1 物流センタを統合することによる適正な在庫管理について,在庫削減以外に期待される効果を,30字以内で述べよ。 設問2 特売用商品に対応する物流業務について,(1),(2)に答えよ。 (1)計画外の配送トラックの追加手配を削減するために,どのような情報を,どの時点でメーカから入手すべきか。それぞれ20字以内で述べよ。 (2)計画した配送トラックを予定どおり出発させるためには,どのような業務を追加する必要があるか。45字以内で述べよ。 設問3 物流業務の見直しについて,(1),(2)に答えよ。 (1)在庫差異による欠品をなくすための業務の見直しについて,40字以内で述べよ。 (2)定番商品の欠品,過剰在庫削減のための改善について,35字以内で述べよ。 設問4 顧客への配送を見直すことで費用を削減できる可能性がある。どのような検討が必要か。40字以内で述べよ。
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改善を考える前に目的をそろえる

物流業務の改善を考える際は、まず何を良くしたいのかという目的を、与えられた情報から整理しましょう。手段の印象だけで判断せず、検討の途中でも同じ目的に立ち返ることを意識してください。

この問題で問われていること

着目したいのは、改善という言葉が、どのような目的を指して使われているかです。与えられた情報の中で目的に関わる記述を確かめ、自分の印象で別の目的を付け足していないかを振り返りましょう。

視点

改善の手段を考える前に、何を目指す検討なのかを短い言葉で整理してみましょう。その言葉を共通のよりどころにすると、目的と自分の考えがずれていないかを確認しやすくなります。

確認ポイント

  • 改善の目的を、自分の言葉で短く表せますか。
  • その目的は、与えられた情報に基づいていますか。
  • 考えている間に、別の目的へ置き換えていませんか。
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解説

本問は、物流センタの統合による移送費用の削減、特売用商品の出荷予定の早期把握と要員を考慮した到着調整、サンプル商品の別管理、需要の変動を踏まえた発注、配送の集約を、本文の問題点から導く問題です。

問題の全体像

日用品卸売業者のD社は、注文と顧客の減少を受け、競争力強化と物流費用削減のために業務を見直します。地域内に分散した物流センタを統合し、特売用商品は保管せず、到着後に仕分けて直ちに配送する仕組みに変えます。一方、現状にはセンタ間の移送、未記録のサンプル持出しによる在庫差異、季節変動を考慮しない発注、少量・多頻度の配送という問題があります。公式の出題趣旨では、業務から課題を抽出し、システムや情報を活用した改善策を検討する能力を評価するとされています。各設問では、現状のどの問題を、どの業務変更によって解消するかを具体的に結び付けることが重要です。

設問1

着目するのは、〔物流業務の現状〕の入出庫業務にある、欠品時には同一地域内の別の物流センタから商品を移送するという記述です。本文では、この移送を運送業者に委託し、移送費用が発生しています。地域ごとにセンタを1か所へ統合すれば、地域内で分散していた在庫が集約され、欠品対応のためのセンタ間移送を削減できます。公式解答例では『商品欠品時の物流センタ間の移送費用を削減できる。』としています。30字以内では、欠品時のセンタ間移送と、その費用削減を押さえます。設問が『在庫削減以外』と指定しているため、在庫量の減少だけでは問いに答えられません。

設問2(1)

〔特売用商品に対応する物流業務〕では、メーカは数日前に出荷予定を確定する一方、D社への品目・数量の連絡はトラックの出発時になっています。また、到着希望日時に全数がそろわないと、配送トラックの追加手配が必要になります。数量の相違を早く把握して調整するには、連絡を出発時まで待たず、予定が確定した段階で商品、数量、到着予定日時を入手する必要があります。公式解答例では、情報を『商品,数量と到着予定日時』、時点を『出荷の予定が確定した時』としています。それぞれ20字以内で、情報の三要素と入手時点を分けて記述します。発注時にD社が指定する到着希望日時と、メーカの出荷計画に基づく到着予定日時を区別しましょう。

設問2(2)

着目するのは、複数メーカに同じ到着希望日時を指定することがあり、トラックが同時到着すると配送準備作業を並行して処理するだけの作業要員がいないという制約です。特売用商品は到着後に仕分けるため、その作業が配送トラックの出発時刻までに終わるよう、要員の割当てを踏まえて入荷トラックの到着時刻を決める必要があります。公式解答例では『作業要員の割当てを考慮してメーカからのトラックの到着時刻を決定する業務』としています。45字以内では、作業要員の割当てとメーカ側トラックの到着時刻の調整を一つの業務として記述します。採点講評では、到着スケジュールと作業要員の一方だけを条件とした解答が多かったと指摘しており、両者を関連付けることが重要です。

設問3(1)

在庫差異の原因は、営業部員が在庫管理システムに記録せず、一般在庫からサンプル商品を持ち出すことです。システム上は出荷できる数量が残っていても、実物はサンプルとして持ち出されているため、出荷時に欠品が判明します。見直しでは、サンプルの必要数量を入荷時点で見込めることが分かっています。そこで、入荷時にその数量を確保し、顧客への出荷に使う一般在庫と別に管理します。公式解答例では『サンプル商品は,入荷時に必要な数量を確保し,一般在庫と別管理する。』としています。40字以内では、入荷時の必要数量確保と一般在庫からの分離を押さえます。採点講評では、必要数量の上乗せや棚卸の実施など、在庫差異の発生要因を捉えていない解答もあったとされています。

設問3(2)

現状では、発注数量を受注情報と在庫情報から決め、出荷実績の傾向を考慮していません。また、在庫水準には商品ごとの基準値を使っていますが、季節変動などの特性を考慮できず、欠品や過剰在庫が生じています。改善では、在庫管理システムに記録された出荷実績の傾向に加え、季節による需要の変動も発注判断に反映します。公式解答例では『出荷実績の傾向と季節変動などを考慮してメーカに発注する。』としています。35字以内では、出荷実績の傾向、季節変動、それらを考慮した発注という要素をまとめます。需要が増える時期と減る時期の違いを反映することが、欠品と過剰在庫の双方を減らす考え方です。

設問4

本文冒頭では、注文回数を制限していないため、少量・多頻度の配送となっている顧客が多いと説明されています。配送費用の調査でも、そのような顧客の中に見直しによる削減余地があるとされています。したがって、注文回数の多い顧客について、複数回の注文分をまとめて配送できるかを検討します。公式解答例では『注文回数が多い顧客について,まとめて配送が可能かどうか検討する。』としています。40字以内では、対象となる顧客と、まとめて配送することの可否を押さえます。定番商品と特売用商品は既に同じ便で配送する前提です。採点講評でも、混載や別々の配送を挙げるなど、配送費用を見直せる関係を理解していない解答が指摘されており、注文・配送の頻度に着目する必要があります。

学習のポイント

問題の原因と改善策を対応させ、情報の入手時点や作業要員の制約まで含めて、具体的な業務として記述する力を身に付けましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成24年度秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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