STITストラテジスト試験 午後Ⅰ

平成24年度秋期 ITストラテジスト 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 食品会社における営業業務の改革に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。 B社は、加工食品の製造・販売を主力事業とする大手食品会社である。食品業界は、国内市場の飽和と長引く景気低迷によって、厳しい経営環境が続いている。また、食品に対する消費者のニーズの多様化、健康志向の高まりから、高品質で付加価値が高い製品の提供が求められている。 B社では、このような状況を踏まえた上で、事業拡大を目的として、乳製品の製造・販売を得意とするC社を傘下に加えた。これを契機に、“お客様が、健康と食べる楽しみを実感できる食”を提案する企業を目指して、営業力強化のための業務改革チームを立ち上げた。 〔営業業務及び受注業務の現状〕 B社は、本社の営業部と、全国に配置した支店で営業活動を行っている。また、全国のエリアごとに受注センタと物流センタを配置している。得意先は、全国の量販店と卸売問屋である。 (1)量販店向けの営業業務及び受注業務 ・本社の営業部の営業部員が商談している。 ・量販店の注文は、通常はインターネットを介して注文管理システムに集められる。所管する受注センタの担当者は、注文管理システムの画面で注文状況を確認し、決められた時刻に販売管理システムにまとめて送信する。 ・量販店が、締め時刻を過ぎてしまった後で注文をしたい場合、受注センタの担当者に確認の上、電話又はファックスで注文し、受注センタの担当者が受注センタの端末から販売管理システムに入力する。 ・乳製品と加工食品では、配送日や配送時間帯の指定、指定する配送日による注文の締め時刻などが異なる。 ・販売管理システムでは、入力された配送日や配送時間帯によってエリアごとの物流センタの在庫を引き当てて注文を確定し、配送日の前日に出荷指示を出す。 (2)卸売問屋向けの営業業務及び受注業務 ・支店の営業員が、エリアごとに卸売問屋と商談して、注文を受けて回るルートセールスを行っている。 ・卸売問屋の注文は、通常の注文と例外的な注文が混在している。 ・注文は、注文伝票を用いて処理される。 ・支店の営業員が注文伝票を受け取ったり、支店の事務担当者が電話又はファックスで受け付けた注文内容を注文伝票に起こしたりした後、支店の端末から販売管理システムに入力する。 ・注文伝票と注文管理システムの入力項目は統一されているが、支店では受注センタを経由する注文管理システムを利用していない。 ・締め時刻を過ぎているような例外的な注文に関しては、エリア外でも配送可能な物流センタを指定すれば可能である。この場合は販売管理システムへの入力方法が通常と異なるので、営業員が注文内容を見て、卸売問屋ごとに対応する。 同業他社との競争激化によって市場での価格破壊が進み、B社は得意先への販売価格を下げざるを得ない状況である。支店の営業員は、見込まれる販売額に関係なく卸売問屋を回っており、販売額が少ないにもかかわらず販促費を過剰に使用していることがある。また、量販店からは、“売上を拡大するためには、消費者に対して品質と付加価値をアピールする製品提案が必要である。消費者の声を反映した提案をしてほしい”という要請を受けている。 昨年からB社では、インターネット上のWebサイトで新製品を宣伝したり、有名な料理研究家による料理の献立などを紹介したりしている。また、SNSに社員、料理研究家が参加するコミュニティを開設して、消費者と交流を深めている。最近、コミュニティでは、乳製品と一般食材を組み合わせた料理の献立に関する話題がよく採り上げられている。 〔営業管理業務の現状〕 ・本社の営業部では、量販店への営業を強化するために、営業部員の売上・利益の予実を週単位で管理している。 ・営業部員は、量販店ごとの注文内容や、交通費などの間接費をきめ細かく管理している。 ・支店では、営業員の売上の予実を週単位で管理している。 ・支店の営業員は、卸売問屋との商談時に作成した製品別注文受付の内容を見ながら、間接費を精算する。営業員は提案資料の作成などで多忙なこともあって、卸売問屋1軒に対する複数の間接費をまとめて月末に精算することが多い。複数の卸売問屋に関する間接費が混同して入力されることもあり、卸売問屋ごとの正確な間接費は把握できていない。 ・支店では、卸売問屋との1回の商談で複数の注文が発生する。営業員が商談時に販売奨励金として設定したものが、卸売問屋では値引きとして処理されるなど、卸売問屋との間で取引に関する認識の違いが発生することがある。 ・卸売問屋の配送先の所在地、店舗名などの変更は、支店の事務担当者が連絡を受けるが、得意先マスタの更新は本社の情報システム部で行っている。その際、情報システム部では、支店からの変更連絡窓口も、更新のタイミングも決まっていないので、変更の遅れや漏れが発生している。 〔請求処理業務の現状〕 ・本社の経理部では、月末に得意先ごとに請求処理を行っている。卸売問屋からは、請求明細の配送先店舗名や取引内容の誤りについて問合せが多発しており、その都度、経理部は各支店に問い合わせている。 ・経理部からの問合せを受けた支店では、事務担当者が卸売問屋に配送先店舗名を確認する。また、支店の営業員は、商談時に作成した製品別注文受付の内容、注文伝票と請求明細とを突き合わせて、経理部からの問合せに回答する。注文が多かった場合、営業員は、販売奨励金などが記載されている得意先別の確定注文の明細を販売管理システムから出力して、卸売問屋に送付し、商談時の内容と認識の違いがないかどうかを確認してもらうこともある。それぞれの確認作業に手間取ることがあり、請求明細の確定までに時間が掛かっており、月次締め処理が遅れる原因となっている。 〔営業力強化に関する業務改革方針〕 業務改革チームでは、営業力強化に関する次の三つの業務改革方針を経営層に提示した。 ① 営業活動の改善 ・消費者の声を反映した、B社製品の強みを生かした企画を提案する。 ・支店の営業員は、売上・利益の確保を重視して効率よく営業活動を行う。 ② 支店における業務の効率向上と営業管理の強化 ・支店の営業業務を見直し、営業員の負荷軽減と支店における業務の効率向上を図る。 ・得意先別の売上・利益の予実を正確に管理する。 ③ 請求処理に関する業務の改善と月次締め処理の迅速化 ・請求処理業務を改善し、業務の効率向上と月次締め処理の迅速化を図る。 設問1 営業活動の改善について、(1)、(2)に答えよ。 (1)消費者の声を反映した提案を行うための企画内容を、45字以内で述べよ。 (2)支店の営業員が効率よく営業活動を行うためのルートセールスの方法を、35字以内で述べよ。 設問2 支店における業務の効率向上と営業管理の強化について、(1)、(2)に答えよ。 (1)営業員の負荷軽減と支店における業務の効率向上を図るために、卸売問屋に依頼すべき注文方法の変更を、40字以内で述べよ。 (2)支店で得意先別の売上・利益の予実を正確に管理するための、営業員の業務改善内容を、35字以内で述べよ。 設問3 請求処理業務の改善と月次締め処理の迅速化について、(1)、(2)に答えよ。 (1)支店の事務担当者の問合せ業務を削減するための改善点を、35字以内で述べよ。 (2)支店の営業員の問合せ業務について負荷を軽減するための改善点を、40字以内で述べよ。
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判断の前提と根拠を整理する

業務の課題や改革方針を考える際は、与えられた情報と自分の推測を分けることから始めましょう。もっともらしい説明でも、根拠が示されているかを確かめ、判断に使う前提を整理することが大切です。

この問題で問われていること

検討の焦点は、判断を支える情報がどこまで明示されているかです。状況を理解するために補った想像を事実として扱っていないかを確認し、根拠がある内容と、まだ仮定にとどまる内容を区別して捉えましょう。

視点

情報に直接書かれていることと、そこから自分が補ったことは分けて整理します。根拠をたどれるかという同じ観点で、判断の前提を点検しましょう。

確認ポイント

  • 判断の根拠を、与えられた情報にたどれるか
  • 自分の経験や一般論を、示された事実として扱っていないか
  • 明示された内容と、自分が補った仮定を区別できているか
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解説

本問は、食品会社の営業力強化を目的として、消費者ニーズに沿う企画、販売見込額に応じた訪問、受注経路の集約、間接費の適時精算、マスタ更新ルールの整備、注文確定後の内容確認を導く問題です。現状の問題と原因を結び付け、具体的な業務変更として答えることが要点です。

問題の全体像

B社は、加工食品を主力とし、乳製品を得意とするC社を傘下に加えた食品会社です。競争による販売価格の低下に対応しながら、消費者の健康志向や多様なニーズに応える提案が必要です。一方、支店では受注処理の負荷、得意先別の間接費の不正確さ、マスタ更新の遅れ、取引内容の認識差が生じています。出題趣旨では、消費者ニーズと自社製品の強みを結び付ける施策と、業務効率・品質を高める業務内容やルールの見直しが問われています。三つの改革方針に沿って、各問題の原因に直接対応する改善策を考えます。

設問1(1)

着目するのは、量販店が消費者の声を反映した製品提案を求めていることと、SNSのコミュニティで乳製品と一般食材を組み合わせた料理の献立が話題になっていることです。この話題は消費者の関心を示し、乳製品に強いC社を傘下に加えたB社の製品構成とも結び付きます。公式解答例では、この組合せによる料理の献立を企画内容としています。45字以内の答案では、コミュニティでの話題、乳製品と一般食材の組合せ、料理の献立という要素をまとめます。採点講評では、既に実施している内容を転記しただけの解答が指摘されています。Webサイトでの宣伝や献立紹介という活動の説明だけで終わらず、提案する企画の中身を示す必要があります。

設問1(2)

本文では、支店の営業員が見込まれる販売額に関係なく卸売問屋を回り、販売額が少ない得意先にも販促費を過剰に使う場合があるとされています。改革方針は売上・利益の確保を重視した効率的な営業活動なので、訪問の優先順位に販売見込額を反映させます。公式解答例では、見込まれる販売額が大きい得意先から優先順位を付けて訪問するとしています。35字以内の答案では、優先順位の基準である販売見込額と、大きい得意先を優先して訪問する方法を押さえます。単に訪問件数を減らすという表現では、本文の課題に対応する判断基準が伝わりません。

設問2(1)

卸売問屋からの注文は、支店で伝票を受け取り、又は電話・ファックスの内容を伝票に起こして入力しています。例外的な注文は営業員が個別に対応するため、負荷が生じています。一方、注文伝票と注文管理システムの入力項目は統一され、受注センタでは締め時刻後の注文にも対応しています。公式解答例では、卸売問屋に例外的な注文を選別してもらい、全ての注文を受注センタ経由にするとしています。40字以内の答案では、例外注文の選別と全注文の受注センタ経由という二つの変更を示します。採点講評では、標準的な注文以外を受け付けないという解答は出題意図と異なるとされています。例外注文を扱える経路へ集約することが要点です。

設問2(2)

支店では、間接費を月末にまとめて精算することが多く、複数の卸売問屋の費用を混同して入力する場合があります。そのため、得意先ごとの正確な間接費を把握できず、利益の予実管理に必要な費用情報が不正確になっています。公式解答例では、得意先を混同しないよう、間接費を発生の都度精算するとしています。35字以内の答案では、得意先を区別することと、発生の都度精算することを押さえます。売上や利益を管理するという目標だけを書くのではなく、費用の混同を防ぐために営業員の精算業務をどう変えるかを示します。

設問3(1)

支店の事務担当者が行う問合せは、請求明細の配送先店舗名を卸売問屋に確認する作業です。その原因として、所在地や店舗名の変更連絡を受けても、本社の情報システム部で得意先マスタの更新が遅れたり漏れたりすることが挙げられます。本文では、変更連絡窓口と更新のタイミングが決まっていないと明示されています。公式解答例では、情報システム部の変更連絡窓口と更新のタイミングを定めるとしています。35字以内の答案では、情報システム部という担当部門と、この二つのルールをまとめます。採点講評でも更新タイミングが論点とされており、現在の更新担当を踏まえて、変更情報を確実に反映させる改善を示す必要があります。

設問3(2)

営業員の確認負荷は、販売奨励金を卸売問屋が値引きとして扱うなど、取引内容の認識差が請求時に明らかになることで生じています。現状でも、注文が多い場合には確定注文の明細を送って確認してもらうことがありますが、経理部から問合せを受けた後の対応です。公式解答例では、注文確定後に確定注文の明細を卸売問屋へ送付し、内容を確認してもらうとしています。確認を注文確定後に行えば、認識差を早い段階で把握し、請求時の突合せや問合せ対応の負荷を軽減できます。40字以内の答案では、注文確定後という時点、確定注文の明細の送付、卸売問屋による内容確認を押さえます。

学習のポイント

本文の問題点から原因を特定し、担当者・対象・実施時点を明確にした改善策を、指定字数内にまとめる練習を重視しましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成24年度秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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