STITストラテジスト試験 午後Ⅰ

平成23年度秋期 ITストラテジスト 午後Ⅰ 問4

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問4 ディジタルカメラの新製品企画に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。 D社は,ディジタルカメラの開発・製造・販売企業であり,主力製品はコンパクトディジタルカメラ(以下,ディジタルカメラという)である。 〔D社の現状〕 ディジタルカメラは競合メーカが多く,他社が高機能・低価格の製品で売上を伸ばしている中,D社は人気のある製品を開発できていない。 そこで,D社は,新たに事業方針として,ターゲットを明確にした魅力的な製品作りを掲げ,事業の改善を図ることにした。この事業方針に基づいて,ディジタルカメラの次期モデルの製品開発について検討した。 〔消費者の要望分析〕 検討に当たって,D社では,ディジタルカメラの需要に関する市場調査結果を分析し,消費者を幾つかのグループに分類した。その中で,特徴的な傾向が見られた次のグループⅠ~Ⅲを,新製品のターゲット候補とした。 ① グループⅠ 学生,社会人など,他のグループに比べて経済的に余裕のない,若年層の消費者グループである。 基本的には,携帯電話に搭載されているカメラで満足しており,ディジタルカメラの需要が少ない。しかし,背景をぼかして撮影できる機能(以下,背景ぼかし撮影機能という),仲間と一緒の写真を自分で撮影できる広角機能などの要望が多い。 ② グループⅡ 社会人としての経験が比較的長く,経済的に余裕のある消費者グループである。 ディジタルカメラの需要が最も多く,新しいモデルへの買換えも多い。子供の運動会,演奏会などで撮影するのに有効な,10倍以上の高倍率の光学ズーム機能,連写撮影機能及び動画撮影機能の要望が多い。 ③ グループⅢ 定年退職者などを含む,比較的高い年齢層の消費者グループである。 旅行,登山などをしたときの風景の撮影及び花などの近接撮影に適した,小型・軽量タイプのディジタルカメラの要望が多い。高価でも,要望に合った製品を買って,長く使い続ける人が多い。リング,レバーを回すフィルム式カメラの機械的な操作に愛着があるので,ディジタルカメラの操作,撮影した写真のデータ(以下,写真データという)の処理に対して,次のような要望をもっている。 ・液晶画面のメニューは使いづらく,ボタン,メニューによる,ズームレンズ,セルフタイマの操作になじめないので,感覚的に操作できるようにしてほしい。 ・液晶画面を見ながら,カメラを安定させて撮影することは難しいので,ファインダを見て撮影できるようにしてほしい。 ・写真データを簡単にPCに取り込めるようにしてほしい。 ・PC上で写真を閲覧しやすいファイル(以下,アルバムファイルという)に簡単に編集できるようにしてほしい。 潜在的な市場は大きいので,この要望にこたえることによって売上を伸ばせる可能性がある。 各機能に対するグループⅠ~Ⅲの要望度を,表1にまとめた。 表1 各機能に対するグループⅠ~Ⅲの要望度 〔新製品企画〕 D社は,次期モデルのターゲットをグループⅢに決定し,フィルム式カメラのような機械的な操作性と高級感とを併せもった新製品を企画した。 この新製品は,コスト増となっても高級機種に相当する基本機能を備えることにした。 〔開発技術の分析〕 D社のITストラテジストであるE氏は,システムアーキテクトのF氏に対して,新製品企画で示された基本性能・機能を満たしたディジタルカメラを開発するための技術的課題と解決方法を検討するよう指示した。後日,F氏からは次のような報告があった。 ・高倍率の光学ズーム機能は,倍率が10倍を超えると,本体のサイズが大きく重くなってしまう。 ・ファインダで見える範囲をズーム機能と連動させると,使い勝手が良くなる。そのためには,小型の液晶画面をファインダ内に実装する方式を開発する。 ・動画撮影機能は,発売中のモデルで実現済であり,技術を再利用して開発する。 ・写真データをPCに自動的に保存する機能としては,USBで接続して手動でファイルを保存する方式とは別に,無線LANを経由して定期的に写真データを送信する方式を開発する。 ・PCに自動保存された写真データからアルバムファイルを自動作成する機能は,PCで動作するソフトウェアとして開発する。 〔新製品の要求仕様及び製品戦略〕 E氏は,新製品の要求仕様を次のようにまとめた。 ・撮影した写真を確認するための液晶を搭載する。 ・光学ズームの倍率は最大5倍とし,レンズ周りのリングを回す操作方式とする。 ・セルフタイマは,レバーで操作する方式とする。 ・近接マクロ機能及び広角機能を搭載する。 ・ファインダをのぞいて撮影するタイプとする。 ・光学ズームの操作によって決まる撮影範囲を,ファインダの表示範囲に連動させる。 ・動画撮影機能は搭載するが,連写撮影機能及び背景ぼかし撮影機能は搭載しない。 ・写真データ及び撮影した動画のデータを,PCに自動保存する機能を搭載する。 また,E氏は,カメラの機能に対する要求仕様の他に,次に示す商品戦略をまとめた。 ・PC上でアルバムファイルを自動作成する,アルバム自動作成ソフトウェアを開発する。 ・アルバム自動作成ソフトウェアは,D社のディジタルカメラで撮影した写真データだけに使用できる,独自技術のものとする。 ・アルバム自動作成ソフトウェアは,利用期間を3か月とする試用版として製品に添付し,3か月以上利用する場合は有料とする。ただし,1年のメーカ保証期間を有料で3年とするメーカ保証期間延長サービスの契約をした利用者は,3か月を過ぎても無料で利用できることとする。 設問1 新製品企画と要求仕様について,(1)~(4)に答えよ。 (1) 次期モデルのターゲットをグループⅢに決定した理由を二つ挙げ,それぞれ35字以内で述べよ。 (2) 新製品のコンセプトを,35字以内で述べよ。 (3) 連写撮影機能及び背景ぼかし撮影機能を搭載しない共通の理由を,25字以内で述べよ。 (4) 要望度が“中”にもかかわらず,高倍率の光学ズーム機能を搭載しない理由を,25字以内で述べよ。 設問2 有料のメーカ保証期間延長サービスの契約をした利用者に,アルバム自動作成ソフトウェアを無料で配布することにした目的を,売上拡大を除いて25字以内で述べよ。 設問3 新製品のコンセプトを生かしながら,グループⅠ又はグループⅡへの展開を前提とした派生製品を開発する場合,どちらのグループをターゲットとすべきか。また,その理由を40字以内で述べよ。
表1 各機能に対するグループⅠ~Ⅲの要望度。レンズ系・操作系・応用撮影・データ処理系の10機能について、グループⅠ~Ⅲの要望度を◎大・○中・△小で示した表。グループⅢは広角、近接マクロ、ズーム連動ファインダ、機械的な操作、ファイル自動保存、アルバム自動作成が◎で、連写撮影と背景ぼかし撮影が△。
表1 各機能に対するグループⅠ~Ⅲの要望度。レンズ系・操作系・応用撮影・データ処理系の10機能について、グループⅠ~Ⅲの要望度を◎大・○中・△小で示した表。グループⅢは広角、近接マクロ、ズーム連動ファインダ、機械的な操作、ファイル自動保存、アルバム自動作成が◎で、連写撮影と背景ぼかし撮影が△。
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判断の根拠と仮定を区別する

検討を始めるときは、与えられた情報から直接分かることと、自分が補って考えたことを区別しましょう。もっともらしい印象だけで判断せず、考えの根拠がどこにあるかを確かめることに集中します。

この問題で問われていること

この分野の検討では、身近な経験や好みを、与えられた条件と同じように扱っていないかに注目してください。判断につながる考えを一つ取り上げ、その考えが示された情報に基づくのか、仮定を含むのかを確認します。

視点

情報を整理するときは、根拠として示されている内容と、理解のために自分が補った内容を分けて捉えます。仮定が含まれる場合は、それを事実として扱っていないかを見直しましょう。

確認ポイント

  • 判断の根拠を、与えられた情報の中に示せるか
  • 自分の経験や好みを、根拠として持ち込んでいないか
  • 補った仮定を、示された事実と区別できているか
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解説

消費者の要望と購買特性から新製品のターゲットを選び、コンセプトに沿って要求仕様を定める問題です。機能の採否に加え、継続購入を促す製品戦略と派生製品の展開先を検討します。

問題の全体像

D社は、競合が高機能・低価格の製品で売上を伸ばす中、人気製品を開発できず、ターゲットを明確にした製品作りへ方針を転換しています。市場調査に基づいて消費者を分類し、その中から三つのグループをターゲット候補としました。グループⅢの要望に合わせた新製品について、市場性、操作性、技術的制約を結び付けて要求仕様を検討します。出題趣旨では、市場動向や利用者の要求を分析し、製品企画、製品戦略、派生製品の開発を検討する能力が問われています。

設問1(1)①

グループⅢの説明にある「潜在的な市場は大きい」と、要望に応えることで売上を伸ばせる可能性に着目します。グループⅡは現在の需要が最も多いものの、この設問では新製品による売上拡大の可能性を考えます。公式解答例では、最も売上の拡大が見込めるグループと考えられることを挙げています。35字以内では「最も売上の拡大が見込めるグループと考えられるから」とまとめられます。

設問1(1)②

グループⅢには、高価でも要望に合った製品を購入する人が多いという特徴があります。これを、新製品はコスト増となっても高級機種に相当する基本機能を備えるという企画と対応付けます。公式解答例では、高価でも要望に合う製品を買い求める人が多いことを理由としています。35字以内では「高価でも要望に合う製品を買い求める人が多いから」と、価格に対する購買特性を示します。

設問1(2)

〔新製品企画〕に示された「フィルム式カメラのような機械的な操作性」と「高級感」の二つを押さえます。リングによるズーム操作やレバーによるセルフタイマ操作は、この操作性を具体化した仕様です。公式解答例では、フィルム式カメラの操作性と高級感を併せもつディジタルカメラとしています。35字以内の答案でもこの二つを含めます。採点講評では、操作性と高級感をうまく表現できていない解答が一部に見られたとされています。

設問1(3)

表1のグループⅢの列を見ると、連写撮影と背景ぼかし撮影はいずれも要望度が「小」です。ターゲットの要望が少ないことが、両機能を搭載しない共通の理由になります。公式解答例もグループⅢの要望度が少ない機能であることを挙げています。25字以内では「グループⅢの要望度が少ない機能だから」と、対象グループと要望度を明示します。

設問1(4)

グループⅢは小型・軽量タイプを求めています。一方、〔開発技術の分析〕では、光学ズームの倍率が10倍を超えると、本体が大きく重くなると報告されています。要望度が「中」であっても、小型・軽量という要望との両立が難しいため、高倍率の光学ズームを採用していません。公式解答例では本体の大型化と重量増を理由としており、25字以内では「本体のサイズが大きく重くなってしまうから」とまとめます。

設問2

アルバム自動作成ソフトウェアは、D社のカメラで撮影した写真データだけに使用できます。このソフトウェアを継続して利用してもらうことを、次回のカメラ購入時にもD社製品を選んでもらう目的と結び付けます。公式解答例では「次回購入時にも、D社製品を買ってもらうため」としています。25字以内で継続購入の目的を示します。採点講評では、企業側の目的ではなく、消費者から見たメリットを示した解答が一部に見られたとされています。

設問3(グループ)

派生製品の展開先は、機能への要望と経済的余裕を合わせて比較します。グループⅠは経済的余裕が少なく、携帯電話のカメラで満足しているため、ディジタルカメラの需要も少ない層です。グループⅡは経済的余裕があり、機能への要望や新モデルへの買換えも多い層です。公式解答例では、展開先として「グループⅡ」を選んでいます。

設問3(理由)

グループⅡの高倍率ズーム、連写、動画への要望と、経済的余裕があるという購買特性を根拠にします。公式解答例では、機能的要望が高く、経済的余裕があり、派生製品の購入を見込めることを挙げています。40字以内では「機能への要望が高く、経済的余裕もあり、派生製品の購入を見込めるから」とまとめられます。採点講評では、機能要望と経済的余裕の両面を考慮できていない解答が多く見られたとされており、両方を含めることが重要です。

学習のポイント

市場の成長可能性、顧客の支払意思、機能要望、技術的制約を区別し、設問ごとの判断根拠を整理することが重点です。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成23年度秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問4(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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