STITストラテジスト試験 午後Ⅰ

平成22年度秋期 ITストラテジスト 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 エンジンメーカの生産関連のシステムの見直しに関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。 〔D社の概要〕 D社は、中小型エンジンを生産し、販売しているメーカである。D社は、標準品となるエンジン本体の型式を設定し、受注すると、標準品の本体に潤滑装置、冷却装置などの付属機器を装着したエンジンを納入している。大量の受注を見込める大手の顧客とは、長期契約を結び、顧客の要求仕様に合わせて、エンジン本体の設計を一部変更して別のエンジン本体を派生させて対応している。近年、標準品のエンジン本体の型式や付属機器の種類が多くなるにつれ、素材や部品、仕掛品、完成品の在庫が増加してきた。また、エンジンメーカ間の価格競争やサービス競争が激しく、業績を圧迫している。そこで、D社では今後、経営環境が更に厳しくなっても耐えられる体質に転換するために、次の経営方針を定めた。 ・顧客の絞込みによるエンジン本体・付属機器の整理・顧客ニーズを取り入れた品ぞろえによる売上の確保・生産工程の見直しと在庫数の削減によるコスト削減〔システムの概要〕 D社では、出荷管理システムと生産関連のシステムを運用している。大手の顧客とは長期の供給契約を結んでおり、D社は、顧客が生産計画に基づいて作成した発注予定表を、毎月受け取っている。営業部は、発注予定表に記載された納入予定日時に間に合うように、出荷管理システムに、顧客ごと、エンジン本体ごとの出荷予定日時と出荷予定数を入力する。実際の納入は、出荷予定日の間近になって顧客から受け取る納入指示に基づいて、出荷管理システムに出荷確定日時と出荷確定数を入力し、完成品倉庫に出庫指示を出すことによって行われる。顧客からの納入指示の数量は、発注予定表の数量と異なることがある。製造部は、発注予定表の数量に基づいて策定された完成品の生産計画数量を、経験によって調整し、生産している。納入指示の数量が完成品倉庫の在庫数よりも多くなり、緊急生産することもある。生産関連のシステムは、生産計画システム、工程管理システム、在庫管理システムで構成されており、それぞれ次の処理を行っている。 ① 生産計画システム・出荷管理システムの情報を基に、出荷予定日における完成品の在庫必要数を決定する。 ・生産計画の立案時点における完成品の現在庫数及び入出庫予定数を基に、エンジン本体ごとの3か月分の生産計画を立案する。 ② 工程管理システム・生産計画に基づいて、各工程に製造指示を出す。 ③ 在庫管理システム・完成品が完成品倉庫に入庫した時点で、完成品の在庫数を更新する。 ・出荷管理システムからの出庫指示によって出庫した時点で、完成品の在庫数を更新する。 〔顧客との提携についての課題〕 顧客にとっては、調達品の欠品による製造ラインの混乱を防止し、併せて調達費を低減することが重要な経営課題である。トラクタメーカなど幾つかの大手顧客から、“自社の工場内に D社の製品倉庫を設け、エンジン本体と付属機器をセットにしておき、必要なときに必要な量をこの倉庫から出庫して使用したい”という、部品供給に関する提携が持ちかけられている。D社は、営業部と製造部が参加する営業戦略会議を開き、この提携案を検討した。営業部では、“経営方針にもかなっており、顧客との関係がより緊密になるので、会社の収益に大きく寄与する”と考えている。製造部では、“顧客の工場内に設置する製品倉庫の在庫数を正確に把握しておかないと、欠品が生じるおそれがあり、顧客の製造工程に大きな影響を与えかねない”という見解であった。製造部の主要関係者の意見は、次のとおりであった。 生産計画責任者:顧客の工場内に設置する製品倉庫には、欠品が発生しないと考えられる数量を余分に在庫しておけば、顧客の細かい要求に応じてその都度製造しなくてもよいので、生産面において無駄が省ける。 製品企画責任者:顧客における、製品のモデルチェンジや新製品への切替えに伴って、D社の生産能力が不足するおそれがある。また、既存製品の生産終了によって、不良在庫や廃棄損失が発生することを想定して、あらかじめエンジン単価にリスク分を上乗せする必要がある。 在庫管理責任者:顧客の発注予定の変更によって、在庫が多くなりすぎたり、旧型品が残ったりするおそれがあるので、エンジン単価に在庫の金利分や廃棄損失分を上乗せする必要がある。これらの意見に関して営業担当役員は、一部の意見には反対であり、提携の効果を上げるためには、次の課題を克服する必要があると述べた。 ・顧客から適切な情報を得て、適正な生産能力を保つようにする。 ・顧客の工場内に設置する製品倉庫の在庫数を適正に保つことができるようにする。営業戦略会議は、これらの課題を克服することを前提に、大手顧客との部品供給に関する提携を決定した。この決定に基づいて、D社は、顧客の工場内に設置する製品倉庫の在庫数を正確に把握するために、入出庫管理システムをインストールした独立型のPCを設置し、専任者を置いて入出庫管理を行う予定である。 設問1 営業担当役員の反対意見について、(1) 、(2) に答えよ。 (1) D社における経営方針から、考えられる反対意見を、40字以内で述べよ。 (2) 顧客の観点から、考えられる反対意見を、40字以内で述べよ。 設問2 部品供給に関する提携の効果を実現するために、顧客との交渉によって得るべき情報について、(1) 、(2) に答えよ。 (1) 適正な生産能力を保つために必要な情報を、30字以内で述べよ。 (2) 顧客の工場内に設置する製品倉庫の在庫数を適正に保つために必要な情報を、35字以内で述べよ。 設問3 顧客の工場内への製品倉庫の設置に当たって、生産計画システムに必要となる機能を、35字以内で述べよ。
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連携情報を整理する視点

この問題では、個別の用語や手順を暗記するより、関係者が何を共有し、どの時点で更新し、判断にどう役立てるかという流れに注目して整理しましょう。情報の粒度や責任範囲にも目を向けると、選択肢の違いを比較しやすくなります。

この問題で問われていること

一つの観点として、供給に関する情報が生産側と顧客側の意思決定をどのようにつなぐかを確認し、共有対象・更新時点・利用目的の対応関係を順に見比べ、全体の整合性を考えてください。

視点

情報連携を考えるときは、誰が、どの情報を、いつ受け取り、どの判断に使うのかを整理します。個々の情報だけでなく、関係者間のつながりと役割分担が一貫しているかを確認しましょう。

確認ポイント

  • 共有される情報と利用する主体の対応を確認する
  • 情報が更新される時点と判断のタイミングを見比べる
  • 関係者の役割分担と情報の目的に整合性があるか確認する
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解説

D社は顧客工場内に製品倉庫を設置する提携を進めるが、在庫削減、調達費低減、生産能力、倉庫在庫の把握が課題となる。

問題の全体像

D社は製品種類の増加や競争激化を背景に、顧客の絞込み、品ぞろえの整理、生産工程と在庫の見直しを進めている。一方、大手顧客からは、顧客工場内にD社製品の倉庫を置き、必要時に出庫する提携が提案された。この方式を実現するには、顧客の需要変動や製品切替えを把握し、顧客倉庫の在庫情報を生産計画へ反映する必要がある。

設問1(1)

D社の経営方針には在庫数の削減が含まれている。顧客工場内の倉庫に欠品防止のため多くの在庫を置けば、D社が保有する在庫を顧客側へ移しただけで、在庫削減にならない。公式解答例も、この点を反対意見として示している。40字以内では、顧客工場内の在庫増加とD社の在庫削減が両立しないことを押さえる。

設問1(2)

顧客の経営課題は、調達品の欠品防止と調達費の低減です。製品企画責任者や在庫管理責任者の意見どおり、モデルチェンジや発注変更のリスクを単価へ上乗せすると、顧客の調達費低減に反する。公式解答例は、エンジン単価を高く設定することが顧客の調達費低減にならないと示している。

設問2(1)

生産能力を適正に保つには、将来の製品需要や生産量に影響する情報が必要です。本文では、顧客のモデルチェンジや新製品への切替えによってD社の生産能力が不足する懸念が示されているため、公式解答例はモデルチェンジ予定情報や新製品開発情報を挙げている。30字以内では、この二種類の将来計画を簡潔に示す。

設問2(2)

顧客倉庫の在庫数を適正に保つには、いつ、どの製品が、何個出庫されるかを把握する必要がある。公式解答例は、顧客の生産計画が確定した時点における、D社製品の日別出庫数の情報を示している。発注予定表だけでなく、確定した日別の出庫予定を得る点が重要です。

設問3

既存の生産計画システムは、完成品の現在庫数や入出庫予定数を基に計画を立案する。しかし新設する顧客工場内倉庫の在庫が反映されなければ、実際の在庫を踏まえた計画にならない。したがって公式解答例は、製品倉庫の入出庫管理システムから在庫数の情報を取り込む機能を挙げている。

学習のポイント

経営方針と顧客目的を分け、必要情報とシステム機能へ結び付ける練習が重要です。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成22年度秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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