STITストラテジスト試験 午後Ⅰ
平成21年度秋期 ITストラテジスト 午後Ⅰ 問4
事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。
問題
解き方のヒントを見る
要求と提案のつながりを確かめる
検討の軸を、提案の根拠が要求につながっているかという一点に置きましょう。知っている用語や印象だけで判断せず、与えられた条件と提案の関係を整理し、そのつながりを自分の言葉で説明できるか確かめます。
この問題で問われていること
技術提案や事業戦略を考える際は、判断の理由をどの要求に結び付けているかに注目します。一般論としての評価をそのまま当てはめず、その理由が今回の条件に基づいているかを、条件との対応から振り返りましょう。
視点
要求と提案の関係を整理するときは、判断の根拠を明らかにすることが役立ちます。与えられた条件に書かれている内容と、自分が補っている前提を分けると、要求とのつながりを確かめやすくなります。
確認ポイント
- 判断の理由を、与えられた要求に結び付けているか
- その結び付きに、自分で補った前提が混ざっていないか
- 要求と判断のつながりを、自分の言葉で説明できるか
正解と解説を見る
解説
E社の画像監視技術を新交通システム向けに展開するため、無線通信技術の取込み、自動異常検出と遠隔設定調整による差別化、他事業者への提案と追加機能による収益確保を整理する問題です。
問題の全体像
自動車向け小型カメラを製造するE社が、業績回復に向けてH市の新交通システム向け市場に進出する事例です。H市は、少人数での運用、異常発見時の迅速な対応、車両からの無線画像送信、設置後の保守を求めています。一方、E社には画像監視技術があり、競合には常時画像を送信するF社と、無線指示で無人搬送車を動かすG社があります。出題趣旨では、顧客要求と保有技術を整理し、新市場での製品企画・提案を推進する能力を評価するとしています。技術の不足をどう補い、自社技術をどの機能で差別化につなげ、将来の収益をどう確保するかが中心です。
設問1(課題)
要求事項(2)の「車両内の監視カメラの画像は、必要に応じて無線で監視室に送る」に着目します。E社の保有技術として説明されているのは、小型カメラと画像監視機能であり、無線通信技術は示されていません。G社には無線による経路指示の実績があります。こうした顧客要求とE社の保有技術の差から、公式解答例では「無線を用いた通信技術の取込み」を課題に挙げています。要求をそのまま繰り返すのではなく、E社が補うべき技術として表現します。
設問1(取組)
課題で挙げた無線通信技術を、どのように取り込むかを記述します。公式解答例では、無線通信技術をもつメーカとの共同開発や、技術又は部品の購入を検討するとしています。E社に不足する技術を外部から取り込む具体的な方法を示すことが要点です。50字以内では、「無線通信技術をもつメーカとの共同開発や、技術・部品の購入を検討する。」という粒度で、対象技術と取込み方法をまとめられます。
設問2①(提案項目)
H市が少人数で運用し、異常発見時には最寄りの駅員がすぐに対応できることを求めている点に着目します。F社の方式は常時画像を表示・記録し、多数のカメラに対してモニタの増設や手動選択が必要です。G社の画像監視は、走行方向の障害物との衝突防止を目的としています。E社の画像監視技術を生かして監視作業を支援する特徴として、公式解答例では「異常状態の自動検出機能」を挙げています。画像を表示するだけでなく、顧客が求める異常を自動的に検出する点が差別化につながります。
設問2①(検討内容)
E社の既存技術は、指定された動きや一定時間以上の動きの停止を検知するものです。一方、H市が求めるのは、不審物、転倒者、動かなくなった者、暴力行為などの検出です。既存技術があることだけで、要求される異常をすべて検出できるとは判断できません。公式解答例では、自社の保有技術で要求された異常状態を検出できるか否かを検討するとしています。40字以内では、「自社の画像監視技術で、要求された異常状態を検出できるか。」と、技術と要求の適合性に絞って記述します。
設問2②(提案項目)
要求事項(4)の、高所などに設置したカメラは運用開始後の保守が難しいという条件に着目します。さらに、画像認識・解析には調整すべき設定値が多く、カメラごとに運用実績を見ながら調整する必要があります。このため、設置場所での調整作業を減らせる機能が顧客にとって有用です。公式解答例では「遠隔からの設定値調整機能」を提案項目としています。単に保守しやすくすると書くのではなく、継続的に必要となる設定値の調整を遠隔で行える特徴として示します。なお、公式解答例では二つの提案項目は順不同です。
設問2②(検討内容)
画像認識・解析の設定値は、設置場所の人の流れや環境によって異なり、各カメラの運用実績に応じた調整が必要です。遠隔調整を実現するには、何を、どの範囲で、どのように変更できるかを具体化する必要があります。公式解答例では、遠隔調整の対象となる設定値、設定範囲、設定方法を検討するとしています。40字以内では、「遠隔調整の対象となる設定値、設定範囲及び設定方法を検討する。」と、三つの検討要素をまとめます。
設問3①
E社は新たな市場展開による業績回復を目指しており、今回の受注だけでは開発コストを回収できないという条件があります。そこで、今回開発するシステムを他の顧客にも提案し、販売機会を広げる戦略を考えます。公式解答例では、同様な交通システムを有する事業者へのシステム提案を挙げています。30字以内では、「同様な交通システムを有する事業者にシステム提案を行う。」と、展開先と行動を具体的に示します。単に販路を拡大すると書くより、今回の開発成果を生かせる顧客を明確にすることが要点です。
設問3②
もう一つは、受注後の機能追加を通じて収益を得る戦略です。要求事項(4)でも将来の機能追加が想定されており、導入時の販売収益に加えて、追加提案による収益機会を考えられます。公式解答例では、付加機能を順次提案し、その機能導入で収益を確保するとしています。30字以内では、「付加機能を順次提案し、その機能導入で収益を確保する。」と、追加提案と収益確保を結び付けます。他事業者への展開と、付加機能による収益という二つの異なる戦略を示すことが要点です。
学習のポイント
顧客要求と保有技術の差を見極め、差別化する機能、その実現に向けた検討内容、将来の収益戦略を区別して記述する練習が重点です。
出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成21年度秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問4(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)
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