STITストラテジスト試験 午後Ⅰ

平成21年度秋期 ITストラテジスト 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 エンジニアリング会社の社内システム再構築に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。 〔C社の現状〕 C社は、エンジニアリング会社である。主な事業は、顧客の業務システム開発を受託する情報システムの開発、機器の稼働情報を収集する端末装置などのハードウェア製品の開発、及び他社のハードウェア製品を組み合わせた案内表示システムなどの開発である。ハードウェア製品に対する顧客の要求事項は、24時間稼働や温度、湿度などの運用条件と、玄関などの出入口の外側に据え付ける製品の防水性やディスプレイに表示される文字の視認性などの設置条件である。C社では、これらの要求事項に従って、他社のハードウェア製品を購入して機能を強化したり、製品を新たに開発したりする。ハードウェア製品の開発や機能の強化は、C社で設計を行い、製造はメーカに委託する。 〔社内システムの運用状況〕 C社には、営業部門に営業管理システム、情報システムの開発部門とハードウェア製品の開発部門に開発管理システム、購買部門に購買管理システムが導入されている。それぞれのシステムは、導入当初には部門間で手渡しによってデータ連携していた。その後、担当者の異動時の引継ぎが不十分でデータの受渡しが行われなくなったり、それぞれの部門でデータを変更したりするようになり、現在ではデータが一致していないところもある。営業管理システムには、顧客情報管理、受注、検収、売上の機能がある。営業部門では、顧客を訪問した記録は営業管理システムに入力し、営業担当者間で情報共有している。開発管理システムには、プロジェクトのスケジュール管理、各工程の完了時に工程別原価の実績を集計し、予定との対比ができる原価管理、購入仕様書作成の機能がある。購入仕様書は、情報システムの開発の一部を依頼するパートナ会社やハードウェア製品のメーカへ発注を行うときに使用される。購買管理システムには、開発部門から発行される購入仕様書に基づいて、パートナ会社やメーカへの発注・検収を管理する機能がある。購買部門では、検収後に開発部門からパートナ会社の品質、コスト、納期に関する評価の報告を受け、毎年1回パートナ会社の評価をまとめ、ランク付けし、購買管理システムで管理している。また、メールのあて先の誤りによる誤送信防止やIDカード紛失防止などの情報セキュリティ強化のための活動について、パートナ会社から報告を受けている。これらのシステムは、各部門で個々に構築してきたので、情報の共有ができていないという問題を抱えている。今回、業務部門が中心となり、IT部が支援してシステム再構築の検討を行うことになった。また、経営層から、今回のシステム再構築は、部門間の情報共有の推進、損益管理の強化、顧客対応と提案活動の強化による受注の拡大が目的であり、システム再構築を確実に実施するようにとの指示があった。システム再構築に当たり、各部門からそれぞれ要望が提出された。 〔営業部門の要望〕 営業部門の要望は、顧客訪問活動の強化である。顧客訪問には営業担当者が同行せずに、開発部門の担当者だけで訪問することがある。そのときに顧客から質問を受けても、開発部門の担当者では回答できないケースがある。開発部門の担当者から営業担当者に対して、訪問時に受けた顧客からの質問内容をメールや電話で通知するが、営業担当者が対応を忘れることがある。その後、営業担当者が顧客を訪問したときに回答を催促されるなどの問題が発生している。また、顧客に納入した情報システムやハードウェア製品の稼働時期や構成などの稼働情報が、営業部門と開発部門とで不一致になっているので、見直しが必要である。稼働時期によっては、サポート期限切れや部品の劣化などの問題があり、更新の提案が必要である。 〔開発部門の要望〕 情報システムの開発部門の要望は、プロジェクト採算悪化の防止と顧客の要求を満足するパートナ会社を選択できることである。採算悪化を防止するためには、プロジェクトの問題を早い段階で検出したい。現在、品質について、設計、プログラム開発、試験のそれぞれの工程完了時に予定と実績によって評価している。加えて、月次でも評価することによって、より早い段階で問題が検出できている。プロジェクトの問題を早い段階で検出するために、品質以外でも月次で評価できるようにしたい。また、C社の顧客は情報セキュリティに関する意識が高いので、情報システムの開発の開始時には、パートナ会社を含めて、顧客の要求する情報セキュリティの水準を達成しているかどうかの確認が必要である。ハードウェア製品の開発部門の課題は、設計変更の発生の抑制である。メーカに機器の製造を委託するとき、担当者によっては、テキスト形式で記述する顧客の要求事項による運用条件や設置条件の記述内容が不十分で、設計変更が発生することがある。そのたびに、納期や金額の変更について、多くの時間を費やして交渉を行っている。 〔購買部門の要望〕 購買部門の要望は、パートナ会社とのコストダウンの交渉力強化である。パートナ会社とは、開発部門で作成した購入仕様書に基づいてプロジェクト1件ごとに交渉を行っている。発注する金額が多くなれば、有利に交渉できると考えている。業務部門では、各部門の要望を踏まえて、情報共有の推進と採算管理の強化を重点目標として検討を行い、ほかのエンジニアリング会社で導入されているソフトウェアパッケージをベースとして新システムの検討を進めることにした。 〔新システムの検討〕 ソフトウェアパッケージには、営業管理、開発管理、購買管理のサブシステムと、顧客情報、プロジェクト情報などを一元管理する共通データベースがある。営業管理には、商談ごとの進捗管理、受注・売上、顧客訪問記録管理の機能がある。顧客訪問時に受けた質問に関しては、質問内容と回答状況(回答日、回答者、回答内容)が管理される。開発管理には、プロジェクトごとのスケジュール管理、月別・工程別に原価の予定と実績を管理する原価管理、パートナ会社やメーカへの発注予定時期と発注予定金額を管理する発注計画、購入仕様書作成の機能がある。パートナ会社への発注とメーカへの発注では、購入仕様書への入力項目がそれぞれ異なる。パートナ会社への発注における入力項目は、会社名、発注案件名、スキル層別の単価と工数、予定金額、発注予定日、納入予定日、検収予定日、納入場所である。メーカへの発注における入力項目は、メーカ名、型番、数量、希望金額、発注予定日、納入予定日、検収予定日、納入場所である。購買管理には、開発部門から発行される購入仕様書に基づくパートナ会社やメーカへの発注・検収、パートナ会社の評価管理の機能がある。稼働中のシステムの機能と各部門の要望にこたえられるかどうかについて、ソフトウェアパッケージの機能を確認したところ、次の機能と情報を追加する必要があることが分かった。 ① ハードウェア製品の開発管理に関する機能 ② パートナ会社を選定するために管理する情報 設問1 新システムによって改善できることについて、(1) 、(2) に答えよ。 (1) 顧客に納入した情報システムやハードウェア製品に関する稼働情報の見直しを行うことによって、どのような提案活動ができるか、40字以内で述べよ。 (2) 新しい開発管理によって、プロジェクトの問題を早い段階でどのように検出できるか、35字以内で述べよ。 設問2 部門間での情報共有によって改善できることについて、(1) 、(2) に答えよ。 (1) 購買部門がパートナ会社との交渉において行うべきことを、40字以内で述べよ。 (2) 顧客訪問活動を改善するために行うべきことを、35字以内で述べよ。 設問3 新システムに追加すべき機能又は情報について、(1) 、(2) に答えよ。 (1) ハードウェア製品の開発管理に追加すべき機能を、35字以内で述べよ。 (2) パートナ会社を選定するために管理すべき情報を、30字以内で述べよ。
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要件整理で見るべき一つの視点

この種の問題では、関係者が共有したい目的と、再構築によって変わる業務上の前提を切り分けます。そのうえで、情報の意味、利用場面、確認者、合意の範囲を順に整理し、要件同士のつながりを落ち着いて確認してください。

この問題で問われていること

一つの観点に絞るなら、情報が誰の判断や作業に使われるのかを確認してください。その利用目的と判断の前提が部門をまたいでも同じ意味で共有されるか、関係者の認識を照らし合わせて見極めることが大切です。

視点

要件を考えるときは、情報そのものだけでなく、利用する主体、利用する場面、期待される判断との関係を整理します。表現の違いが単なる呼び方なのか、意味や責任範囲の違いなのかを確認し、関係者の認識をそろえる視点を持ちましょう。

確認ポイント

  • 誰がその情報を使い、どの判断や作業につなげるのか。
  • 部門ごとに同じ言葉の意味や前提がずれていないか。
  • 再構築後も確認すべき利用目的と責任の境界が保てるか。
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解説

C社では部門ごとに個別構築したシステム間で情報が共有されず、顧客対応、プロジェクト採算、購買交渉に問題が生じていた。新システムで情報を一元化し、各部門の業務改善につなげる点が中心テーマです。

問題の全体像

C社は営業、開発、購買の各部門が個別システムを運用してきたため、顧客情報、稼働情報、プロジェクト情報、発注情報などが一致せず、情報共有にも支障があった。再構築では、共通データベースを中心に、顧客への更新提案、プロジェクト採算の早期把握、購買交渉、顧客訪問後の対応を改善する。さらに、既存パッケージに不足するハードウェア開発機能とパートナ会社選定情報を追加することが狙いです。

設問1(1)

営業部門では、納入済みシステムやハードウェア製品の稼働時期・構成が営業部門と開発部門で不一致であり、稼働時期によってはサポート期限切れや部品劣化が起きる。したがって、稼働時期を基に対象製品を確認し、更新を提案する内容を書く。公式解答例も、稼働時期を基に対象を確認して更新提案を行うとしている。

設問1(2)

開発部門は、品質だけでなく、原価についても月次で評価し、問題を早期に検出したいと要望している。新システムには月別・工程別の原価予定と実績を管理する機能があるため、毎月両者を比較し、差が大きい場合に警告するという流れを示します。公式解答例も、月ごとに予定と実績を評価し、差が大きい場合に警告するとしている。

設問2(1)

購買部門は、パートナ会社への発注額が多いほど有利に交渉できると考えている。開発管理の発注計画には、発注予定時期と予定金額が蓄積されるため、複数案件の発注予定金額を集計し、総額を根拠に価格交渉を行う。公式解答例も、発注計画から予定金額を集計して価格を折衝するとしている。

設問2(2)

開発部門だけで顧客訪問した際の質問が営業担当者にメールや電話で伝えられても、対応忘れが発生している。そこで、顧客訪問時の質問内容と、回答日・回答者・回答内容などの回答状況をシステムで営業部門と開発部門が共有する。公式解答例も、質問内容と回答状況を両部門で共有するとしている。

設問3(1)

ハードウェア開発では、顧客の運用条件・設置条件の記述が担当者によって不十分なため、設計変更や納期・金額交渉が発生している。したがって、運用条件と設置条件を入力でき、主要項目の妥当性を確認できる機能を追加する。公式解答例も、この入力機能と主要項目の妥当性チェックを挙げている。

設問3(2)

パートナ会社の選定では、品質・コスト・納期の評価に加え、顧客の要求する情報セキュリティ水準を満たすことが重要です。本文では、パートナ会社から誤送信防止やIDカード紛失防止などの活動報告を受けているため、その情報セキュリティ強化活動の評価結果を管理する。公式解答例も、この評価結果を管理情報としている。

学習のポイント

業務上の事実を、必要な機能・情報・改善効果へ結び付けて短文で表現する練習が重要です。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成21年度秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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