STITストラテジスト試験 午後Ⅰ

平成21年度秋期 ITストラテジスト 午後Ⅰ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 地方銀行における業務改革と営業支援システムに関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。 〔A銀行の現状〕 A銀行は,110支店をもつ地方銀行で,本店所在地のB県に95支店を集中展開することで,安定した収益を上げてきた。しかし,B県内に大手銀行が相次いで出店したことによってA銀行の業績は頭打ちとなり,対抗策の必要に迫られた。そこで,営業部門の効率向上と地域ごとのマーケティング強化を併せて進めることによって,収益性の高い投資商品やローンを重点的に販売していく方針を打ち出した。 この方針の下で,営業統括部が中心となって業務改革案の策定を行っている。営業統括部では,各支店に分散していた営業担当者を地域の母店に集中し,母店と配下の支店を一つの営業単位である連合店とすることによる地域ごとのマーケティング強化を検討している。さらに,一部の営業担当者については,契約社員に置き換えていく方針である。 また,新たに営業支援システムを導入することで,これらの業務改革を一層推進することを考えている。 〔現状分析のためのヒアリング結果〕 営業統括部では,各支店の責任者にヒアリングを実施した。その結果,訪問活動,相談業務,支店運営,情報システムについて次のような意見が出された。 (1)訪問活動 ・地域のどこに顧客がいるのかに合わせた効率のよい訪問の道筋や,時間配分を考慮した訪問計画の作成は,営業担当者の経験やスキルに依存している。 ・営業活動を通じて得られた情報は,朝礼などで共有されている。これは,営業担当者が比較的少人数の支店体制では,すぐに責任者からのアドバイスが得られるので,営業活動の推進に有効である。 (2)相談業務 ・顧客の資産運用などに関する相談業務を行う際,最低でも,その顧客の総資産保有額については把握しておく必要がある。 ・顧客ごとの商品購入履歴を把握しておくことは,各顧客が,投資商品やローンに伴うリスクをどのように受け止めているかを知るための重要な情報になる。ただし,資料の作成には手間がかかる。 ・普通預金の残高や入出金の状況を確認し,残高が一定額を超えたときや大口の入出金があったとき,顧客に連絡して情報を得ることが,投資商品やローンの販売につながる可能性のある重要な作業である。しかし,単調な事務的作業であり,時間的な負担が大きい。 ・定期預金の期日管理などの定例業務に時間を取られ,投資商品やローンの販売に必要な相談業務に時間を割けない。 ・投資商品やローンにかかわる顧客への説明には,積み重ねられた経験やコンプライアンスに関する知識が不可欠である。これらについて,営業担当者をサポートし,管理する責任者の役割は重要である。そこで,責任者は,営業担当者に対し,各案件についての指示やアドバイスを,口頭又は訪問日誌で行っている。 (3)支店運営 ・各支店では効率よく営業ができても,支店間の連携が十分ではないので,地域全体としては営業効率がよくないケースもある。 ・責任者が,営業担当者を割り振ったり,各営業担当者の目標を決定したりするに当たって,情報が不足していたり,恣意的であったりしている。 ・責任者は,営業担当者の訪問活動を日々把握し,顧客の属性や購入履歴を基に,適切な管理を行う必要がある。これを怠ると,投資商品やローンに関する適切な販売が行えず,コンプライアンス上の問題が発生することもある。 ・現状の支店の営業範囲は比較的狭いので,顧客の分布,競合他行の位置・業容などを思い浮かべやすく,支店の営業推進策立案は容易である。 (4)情報システム ・支店ごとの営業を基本としていることから,ほかの支店の顧客情報については,限定的な情報しか検索できず,不便である。 ・自支店の顧客情報についても,顧客の口座番号から各種預金情報や住所が検索できるだけである。投資商品やローンについての取引情報は,それぞれ別の情報システムで検索する必要があるので,相談業務に必要な顧客ごとの購入履歴を調べるのには,多くの時間がかかる。 〔業務改革の内容〕 営業統括部では,ヒアリング結果を受け,検討を進めることにした。しかし,現場の声を吸収していくだけでなく,業務改革の方向性を具体的に示すべきという指摘が,営業統括部長から出された。この指摘を受けて取りまとめられた業務改革案の内容は,次のとおりである。 (1)基本方針 ・地域の状況に合わせて,連合店内で人員を適切に割り振ることで,効率よく連合店運営を行い,従来以上の業績を目指す。 ・投資商品やローンを販売するためにも,銀行としてのサービスの付加価値を向上させるためにも,相談業務を強化していく。 (2)具体策 ① 連合店運営 ・地域情報を母店で集中管理し,他行の状況などを踏まえて,営業担当者を効果的に割り振り,目標を設定する。 ・顧客を層別に分類して営業担当者を割り振る。具体的には,スキルのある営業担当者は,特定の層の顧客への投資商品やローンの販売に集中させる。 ・契約社員には,顧客に関するそのほかの応対をさせる予定である。毎日,最新の情報を基に訪問先を決定し,契約社員に指示する。 ② 営業支援システム ・新たに営業支援システムを導入し,連合店運営支援の観点から,訪問活動について,母店の責任者による管理を支援する機能を実現する。 ・営業活動支援の観点から,効果的に訪問活動を行えるように営業担当者を支援する機能を実現する。 営業統括部では,連合店はどのように運営されるべきかを検討し,マニュアル作りに取り掛かった。特に,連合店のかなめとなる母店の責任者の行動をどのようなものにするかは重要と考えている。また,営業統括部は,A銀行内の情報システム部門に,この業務改革案を説明し,営業支援システムの要件を明確にしていく作業も進めている。 設問1 連合店運営に必要な情報について,(1)~(3)に答えよ。 (1)投資商品やローンを効果的に販売する対象となる顧客を抽出するために必要な情報を二つ挙げよ。 (2)契約社員が訪問すべき先を抽出するために必要な情報を三つ挙げよ。 (3)地域の状況に合わせて,効果的な人員の割り振りを行うために必要な情報を二つ挙げよ。 設問2 顧客情報に関する情報システムにおいて,従来の検索機能を,どのように改善すればよいか。二つ挙げ,それぞれ35字以内で述べよ。 設問3 営業支援システムについて,(1),(2)に答えよ。 (1)営業担当者の訪問活動を支援するために必要な機能を,25字以内で述べよ。 (2)母店の責任者による訪問活動の管理を支援するために必要な機能を二つ挙げ,それぞれ30字以内で述べよ。
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目的と要件のつながりを確かめる

要件を考えるときは、示されている目的と、そのために求められることとのつながりに注目しましょう。用語の印象だけで判断せず、目的を根拠として要件を捉えられるか、対応関係を丁寧に確かめることが大切です。

この問題で問われていること

この分野では、業務の目的とシステムへの要求を結び付けて考える視点が役立ちます。検討している内容がどの目的に関わるのかを意識し、そのつながりを与えられた情報から説明できるか確かめてみましょう。

視点

目的と要件のつながりを、与えられた情報に基づいて整理しましょう。関連がありそうだという印象と、関連を説明できる根拠とを区別すると、書かれていない意図を補わずに検討できます。

確認ポイント

  • 検討している要件は、どの目的と結び付くか。
  • その結び付きを支える情報は何か。
  • 結び付きを説明する際に、示されていない意図を補っていないか。
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解説

本問は、地方銀行の連合店化と相談業務の強化を、必要な情報とシステム機能に具体化する問題です。顧客選定、定例業務の分担、地域に応じた人員配置、取引情報の一元検索、訪問計画と管理支援を本文に即して整理します。

問題の全体像

A銀行は大手銀行との競争によって業績が頭打ちとなり、営業効率の向上と地域ごとのマーケティング強化を進めています。改革の中心は、営業担当者を母店に集める連合店化、スキルに応じた役割分担、相談業務の強化です。公式資料の出題趣旨では、業務改革の企画と、営業支援システム・顧客情報システムの機能を整理する実践的能力を評価するとしています。各設問では、改革後の業務に必要な情報を特定し、営業推進とコンプライアンスの徹底につながる機能へ具体化することが求められます。

設問1(1)

着目するのは、相談業務のヒアリング結果にある「顧客の総資産保有額」と「顧客ごとの商品購入履歴」です。総資産保有額は資産運用の相談に必要な情報であり、購入履歴は投資商品やローンに伴うリスクを顧客がどう受け止めるかを知る手掛かりになります。改革案では顧客を層別に分類し、スキルのある営業担当者を特定層への販売に集中させます。この対象選定に対応して、公式解答例では「顧客の総資産保有額」「顧客の購入履歴」の二つを挙げています。

設問1(2)

契約社員には、スキルのある営業担当者が集中して行う投資商品やローンの販売以外の応対を担当させ、毎日最新の情報で訪問先を指示する方針です。相談業務のヒアリングには、定期預金の期日管理、普通預金残高の確認、大口の入出金などを契機とする顧客への連絡が挙げられています。これらから訪問対象を抽出するため、公式解答例では「定期預金の期日」「普通預金の残高」「普通預金の入出金の状況」の三つを示しています。第三の情報には「大口の入出金」という表現も示されています。

設問1(3)

設問は「地域の状況に合わせた」人員配置に必要な情報を問うています。支店運営のヒアリングでは、従来の狭い営業範囲なら、顧客の分布や競合他行の位置・業容を思い浮かべやすく、営業推進策を立案しやすいと述べています。連合店化後は、母店でこれらの地域情報を集中管理して配置判断に使う必要があります。公式解答例では「顧客の分布」「競合他行の位置・業容」を挙げています。顧客がどこにいるかと、競合がどこでどのような業務を展開しているかの二つを押さえます。

設問2(1)

第一の改善は、同一顧客の取引情報を一元的に検索できるようにすることです。現状では、口座番号から預金情報や住所を検索できても、投資商品とローンは別々のシステムで調べるため、購入履歴の把握に時間がかかっています。公式解答例では、同一顧客のすべての取引情報を一元的に検索可能にするとしています。35字以内の答案では「同一顧客のすべての取引情報を一元的に検索可能にする」のように、顧客単位で取引情報をまとめて検索する要素を示します。

設問2(2)

第二の改善は、検索範囲を連合店内の支店に広げることです。現状は支店ごとの営業を前提としており、ほかの支店の顧客情報は限定的にしか検索できません。母店と配下の支店を一つの営業単位にする改革では、この制約が連合店内での情報活用を妨げます。公式解答例では、連合店内について支店に限定されず検索可能にするとしています。35字以内では「連合店内の顧客情報を支店に限定されず検索可能にする」とまとめ、連合店内という範囲を明示します。

設問3(1)

訪問活動のヒアリングでは、顧客の所在地に応じた効率のよい訪問の道筋や、時間配分を考慮した計画作成が、担当者の経験やスキルに依存しています。この課題に対応するのが、訪問計画の具体的な内容を提示する機能です。公式解答例では「訪問の道筋や,時間配分を提示する機能」としています。25字以内では「訪問の道筋や時間配分を提示する機能」とまとめ、道筋と時間配分の両方を含めます。「訪問計画を支援する機能」だけでは、支援内容が具体的に伝わりません。

設問3(2)(1)

責任者には、担当者の訪問活動を日々把握し、顧客の属性や購入履歴を基に適切な管理を行うことが求められています。本文は、これを怠ると不適切な販売やコンプライアンス上の問題につながると指摘しています。そこで、訪問の状況と顧客情報を随時確認できる機能が必要です。公式解答例では「訪問記録と顧客の属性・購入履歴を随時照会できる機能」としています。この表現は30字以内に収まり、訪問記録、属性、購入履歴、随時照会という要素を押さえています。

設問3(2)(2)

もう一つは、責任者の判断を営業担当者に伝える機能です。本文では、責任者が各案件の指示やアドバイスを口頭又は訪問日誌で行い、少人数の支店ではすぐに助言を得られることが営業推進に有効だとしています。連合店化後も、責任者が把握した状況に基づく指示・助言を担当者へ伝えられるようにします。公式解答例では「営業担当者への指示・アドバイスを伝達する機能」としています。この表現は30字以内です。前の回答が管理に必要な情報の照会、本回答が担当者への働き掛けに対応します。

学習のポイント

業務上の判断に必要な情報と、それを活用するシステム機能を区別し、改革の目的から要件を導く練習が重要です。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成21年度秋期 ITストラテジスト試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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