SAシステムアーキテクト試験 午後Ⅰ

令和7年度春期 システムアーキテクト 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 不動産売買仲介システムの再構築に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。 K社は不動産会社である。業務で利用している不動産売買仲介システム(以下,現行システムという)の老朽化に伴い,新システムを構築することにした。 〔K社の不動産売買仲介の概要〕 K社は,不動産売買仲介業務として,不動産物件(以下,物件という)の調査,評価,売却希望の顧客(以下,売主という)と購入希望の顧客(以下,買主という)の仲介及び売買契約のサポートをしている。売却と購入の申込みは,電話又はWebサイトで受け付けており,専任の営業担当者が顧客と電話又は電子メール(以下,メールという)で連絡を取り合う。売主は,物件の売買を仲介するようにK社に依頼(以下,媒介依頼という)し,媒介契約を締結する。この媒介契約によって,K社は売主に代わって買主を探し,売買を成立させるための活動を行う。媒介契約には,一般媒介契約,専任媒介契約,専属専任媒介契約の3種類があり,複数社との契約の可否及び売主への営業活動報告の頻度が異なる。K社では,この報告頻度を契約別報告間隔として管理しており,一般媒介契約は20日以内に1回,専任媒介契約は14日以内に1回,専属専任媒介契約は7日以内に1回としている。 K社は,他の不動産会社と物件情報を共有できる不動産情報ネットワークに加盟している。物件情報は,自社のWebサイト(以下,自社サイトという)だけでなく,この不動産情報ネットワークのシステム(以下,不動産情報システムという)にも適切なタイミングで連携し,他の不動産会社と共有している。 〔現在の業務とシステムの概要〕 K社は,現行システムを利用し,売主と買主の顧客情報,媒介契約情報及び物件情報を管理している。また,営業担当者は,電話又はメールでやり取りした内容を折衝履歴情報として登録し,過去のやり取りを確認できるようにしている。現在の主な業務とシステムの概要は,次のとおりである。 (1)媒介依頼 売主から媒介依頼を受けると,カスタマーセンターの担当者が氏名,住所,電話番号,メールアドレス,勤務先などの顧客情報を登録する。また,物件の所在地,マンション又は一戸建てなどの物件の種類,売却理由などを媒介依頼の情報として登録する。 K社では,物件の所在地によって営業担当者が一意に決まっており,新規に媒介依頼があった場合,マネージャが現行システムに登録された媒介依頼の情報を確認し,適切な営業担当者を割り当てる。また,マネージャは,営業担当者ごとの媒介契約数を日々確認し,実績を把握している。営業担当者は,売主に電話又はメールで連絡を取り,詳細な情報を確認して現行システムに登録する。 営業担当者は,まず売主との初回面談を設定し,物件の詳細情報,売却希望価格,売却スケジュール,媒介契約の種類などを確認する。次に,外部の不動産登記情報提供サービスを利用して不動産登記情報を取得し,名義人及び抵当権を確認した上で物件の現地調査を行う。その後,営業担当者は社内の簡易査定システムを利用して簡易な査定を実施し,査定結果を基に売主に売却価格を提案する。売主の承諾を得た後,更に詳細な情報を収集し,外部の査定サービスを利用して正式な査定を実施する。査定結果を現行システムに登録し,査定書を出力して売主にメール及び郵便で送付する。 (2)媒介契約 営業担当者は,現行システムに必要事項を登録し,媒介契約書を作成して売主と媒介契約を締結する。媒介契約締結後,物件の基本情報,販売価格,物件の写真,間取り情報,物件地図などを現行システムに物件情報として登録する。この際,営業担当者は,過去のセールス内容を検索し,魅力的で効果的な紹介文を作成している。物件情報を登録後,売却許可の承認をマネージャに申請する。マネージャは,申請内容を確認し,紹介文にK社として不適切な記載がないかどうかを目視でチェックしている。マネージャの承認後,物件情報を現行システムから自社サイト及び不動産情報システムに連携する。これによって,自社サイトで公開し,不動産情報システムで他の不動産会社と共有する。現行システムでは,媒介契約の状況を物件ステータスとして管理しており,状況に応じて営業担当者が物件ステータスの値を変更している。営業担当者は,各物件の物件ステータスの値から成約率を計算し,確認している。成約率は,過去も含め担当した媒介契約がどれだけ売買契約の締結に至ったかを示し,営業担当者の長期的な業績や成果を評価するのに用いられる。マネージャは,営業担当者ごとに各物件の物件ステータスの値の推移を日々確認し,必要に応じて営業担当者に指示を出している。営業担当者は,物件への問合せ件数,紹介件数,自社サイトへのアクセス件数,類似物件の販売状況などを現行システムに登録し,営業活動報告書として売主へ定期的に報告する。 (3)購入依頼 買主から物件の購入依頼を受けると,カスタマーセンターの担当者が氏名,住所,電話番号,メールアドレス,勤務先などの顧客情報を登録する。また,物件の希望地域,物件の種類,購入検討理由などを購入依頼の情報として登録する。 K社のマネージャは,購入依頼の情報を確認し,適切な営業担当者を割り当てる。営業担当者は,買主に電話又はメールで連絡を取り,詳細な希望条件を確認して現行システムに登録する。その後,希望条件に基づいて適した物件を検索し,提案する。 (4)購入申込み 買主が購入を決定した場合,営業担当者は購入申込みの準備をする。購入申込書を作成し,買主に確認と署名を依頼する。購入申込書を受領後,現行システムに申込内容を登録する。その後,売買契約の締結に向けて売主と買主を仲介し,契約日,価格などの条件を調整する。 (5)売買契約 条件合意後,売主と買主の営業担当者は,必要書類を収集し,現行システムに契約条件などの情報を登録する。その情報を基に,重要事項説明書と売買契約書を作成し,社内の審査部門へ申請する。審査部門の承認後,売買契約手続を調整し,売主と買主が契約書に署名と押印をして契約を締結する。契約締結後,買主から売主へ購入代金を支払い,所有権移転の手続を進める。 (6)仲介手数料 省略。 〔新システムへの要望〕 新システムに対して,利用部門から次のような要望が出された。 ・簡易査定では,現行システムに登録した内容を簡易査定システムに入力している。正式な査定でも,現行システムに登録した内容を査定サービスに入力している。さらに,それぞれの査定結果も現行システムに入力しているので,作業の負担を軽減したい。 ・①現在の業務を踏まえ,新規の媒介依頼があった場合にシステムで営業担当者を割り当ててほしい。 ・媒介契約書及び営業活動報告書をメールと郵便で送っているので,売主から一元的に管理しにくいという不満が生じている。売主が一元的に管理できるようにしてほしい。 ・営業担当者は,媒介契約の状況が変わるたびに現行システムで物件ステータスの値を変更している。手動で変更していることによる対応漏れを防止し,作業の負担を軽減したい。 ・物件情報に関する業務において,営業担当者とマネージャの作業の負担を軽減したい。 ・現行システムを照会しながらグループウェアで顧客宛てのメールを作成しているので,入力誤りが発生している。入力誤りを減らし,作業の負担を軽減したい。 ・営業担当者の実績を可視化し,目標管理及び計画立案に活用させたい。また,マネージャが現在の業務で確認している営業担当者ごとの営業活動の状況を効率的に確認できるようにしたい。 〔新システムの方針〕 K社情報システム部のL課長は,現行システムの機能を踏襲しつつ,新システムへの要望を踏まえ,新システム構築の方針を次のように定め,内容を検討した。 (1)社内システム及び社外サービスとの連携強化 ・新システムと社内システム及び社外サービスとのデータ連携を自動化する仕組みを導入する。取得した情報を即時に新システムに反映させることによって,手動でのデータ入力の工数を削減し,業務効率の向上を目指す。 (2)AI技術の導入 ・K社の業務ルールに沿ったAIによる文章作成及び校正支援サービスを導入し,物件情報に関する工数の削減効果を検証してから業務への適用を決定する。 (3)売主との接点強化 ・売主との接点を強化するために,売主が取引状況を確認できる売主専用のWebページ(以下,売主マイページという)を作成する。媒介契約を電子契約で実施し,媒介契約書及び媒介契約の情報を売主マイページ上で表示できるようにする。また,営業活動報告書を売主マイページで報告できる機能を追加する。営業担当者が営業活動報告書を作成して送付すると,売主マイページに表示されるようにする。 (4)業務自動化 ・新規の媒介依頼登録時に自動で営業担当者を割り当てる。 ・新システムにメールを送受信できる機能を導入し,顧客とのメールのやり取りを一元管理できるようにする。また,メールでのやり取りを自動で②ある情報として登録し,経緯の追跡に役立てる。 ・営業活動報告書の報告漏れを防ぐために,直近の営業活動報告書の提出日を基に③報告期限までの残日数を算出し,報告期限の3日前時点で営業活動報告書が未報告であった場合,営業担当者へアラートを通知する。 ・処理内容に基づいて自動で物件ステータスの値を更新する機能を導入し,対応漏れを防止する。物件ステータスの値を更新した際,必要に応じて自社サイト及び不動産情報システムに情報を連携する。 新システムで検討している物件ステータスを表1に示す。 (5)データの可視化 ・営業担当者とマネージャが視覚的にデータを確認できるように,ダッシュボード機能を導入する。営業担当者には,媒介契約数,折衝履歴件数及び成約率を確認できるようにし,マネージャには現在の業務で確認している営業担当者ごとの状況を確認できるようにする。 (6)マスター管理 ・地域マスターを管理し,営業担当者の担当地域を登録する。 ・メールテンプレートマスターを管理し,顧客とメールでやり取りする際のテンプレートとして活用する。 設問1 〔新システムへの要望〕の本文中の下線①について,新システムでどのように営業担当者を割り当てるかを〔新システムの方針〕に基づき40字以内で答えよ。 設問2 〔新システムの方針〕のAI技術の導入について,K社が検証しようとしているのは,物件情報に関して誰が何をすることに関する工数の削減効果か。45字以内で二つ答えよ。 設問3 〔新システムの方針〕の業務自動化について答えよ。 (1)物件ステータスの値が“物件登録中”の媒介契約のうち,誰が何をした後に物件ステータスの値が“公開中”となるか。現在の業務内容を踏まえ25字以内で答えよ。 (2)本文中の下線②のある情報とは何か。10字以内で答えよ。 (3)本文中の下線③に示す,報告期限までの残日数を算出する方法を45字以内で答えよ。 設問4 〔新システムの方針〕のデータの可視化について答えよ。 (1)営業担当者のダッシュボードに成約率を表示する際の計算式を表すとしたら,次の式で示すことができる。 aに入れる適切な字句を,表1中の物件ステータスの値を用いて35字以内で答えよ。 (2)マネージャのダッシュボードに,マネージャが現在の業務で確認している営業担当者ごとの状況を表示する際の内容を35字以内で答えよ。
表1 新システムで検討している物件ステータス。
表1 新システムで検討している物件ステータス。
営業担当者の成約率を算出する式。
営業担当者の成約率を算出する式。
解き方のヒントを見る

業務整理と情報の見通し方

判断するときは、個別の機能名や印象だけで決めず、業務の流れを分解し、どの情報がどの場面で共有・更新されるかを確認して、全体のつながりから考えます。作業と情報の関係に注目しましょう。

この問題で問われていること

一つの観点として、業務上の作業と情報の流れが対応しているかを確認してください。入力、共有、更新、参照の各場面を順に見比べ、担当者間で認識がずれないかを考えると整理しやすくなります。

視点

業務を作業単位に分け、各作業で扱う情報の状態と受け渡しを並べて考えます。個別機能の多さではなく、業務全体を一貫して捉えられるかという観点で整理しましょう。

確認ポイント

  • 業務の開始から完了までを、順序に沿って区切れているか
  • 各場面で必要な情報と、その確認相手を区別できているか
  • 作業の変化が後続の判断にどう影響するかを追えているか
正解と解説を見る

解説

不動産売買仲介業務を題材に、現行業務の担当者・情報・承認・状態遷移を読み取り、新システムの自動割当て、AI支援、業務自動化、可視化へ結び付ける問題です。

問題の全体像

K社は、媒介依頼の受付から媒介契約、物件公開、購入申込み、売買契約までを現行システムで管理しています。しかし、担当者の割当て、査定や紹介文作成、メール、物件ステータス更新、営業活動の報告や確認に手作業が残っています。新システムでは、社内外サービスとの連携、AIによる文章作成・校正、売主マイページ、業務自動化、ダッシュボードなどを導入します。出題の狙いは、現在の業務の流れと新システムへの要望を正しく対応付け、必要な機能や計算方法を具体化することです。

設問1

現在は、媒介依頼の物件所在地によって営業担当者が一意に決まり、マネージャが担当者を割り当てています。一方、新システムの方針では地域マスターを管理し、営業担当者の担当地域を登録します。したがって、物件の所在地と地域マスターに登録された担当地域を照合し、該当する営業担当者を自動的に割り当てると答えます。

設問2①

現行業務では、営業担当者が過去のセールス内容を検索し、魅力的で効果的な物件情報の紹介文を作成しています。AIによる文章作成支援の工数削減効果を検証する設問なので、営業担当者が魅力的で効果的な物件情報の紹介文を検討することを押さえます。

設問2②

紹介文は、営業担当者が作成した後、マネージャがK社として不適切な記載がないか目視で確認しています。AIによる校正支援の対象として、マネージャが物件情報の紹介文に不適切な記載がないかチェックすることを挙げます。

設問3(1)

現在の業務では、物件情報を登録した後、営業担当者が売却許可の承認をマネージャに申請し、マネージャが申請内容と紹介文を確認して承認します。新システムで物件登録中から公開中へ進む契機は、このマネージャによる売却許可申請の承認です。

設問3(2)

本文では、営業担当者が電話やメールのやり取りを現行システムに登録し、過去の経緯を確認できるようにしています。新システムはメールのやり取りを自動登録するため、下線②の情報は折衝履歴情報です。

設問3(3)

媒介契約の種類ごとに営業活動報告の間隔が異なります。まず、当該契約の直近の営業活動報告書の提出日に、その契約の報告間隔を加えて次の報告期限を求め、その期限と当日との差を計算します。一般媒介は20日、専任媒介は14日、専属専任媒介は7日という契約別報告間隔を使う点が重要です。

設問4(1)

本文の成約率は、担当した媒介契約がどれだけ売買契約の締結に至ったかを示します。表1では、成約後の状態として成約済、決済済、売却済が並ぶため、分子にはこれら三つの物件ステータスの媒介契約数の合計を入れ、担当した媒介契約数で割って100を掛けます。

設問4(2)

マネージャは現在の業務で、営業担当者ごとの媒介契約数を日々確認し、各物件の物件ステータスの値の推移も確認しています。したがって、ダッシュボードには営業担当者ごとの媒介契約数と、各物件の物件ステータスの値の推移を表示します。

学習のポイント

業務記述から、機能の契機・対象者・対象情報・集計方法を正確に抽出する力を身に付けます。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和7年度春期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

関連する過去問一覧

IPA Advancedは非公式の学習サイトです。解説にはAIによる補助生成を含む場合があります。公式の問題冊子・解答例・採点講評を優先し、誤りは確認後に訂正します。運営・編集方針