SAシステムアーキテクト試験 午後Ⅰ

令和3年度春期 システムアーキテクト 午後Ⅰ 問2

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問2 配達情報管理システムの改善に関する次の記述を読んで,設問1,2に答えよ。 K社は全国に2、000の営業所を持つ運送会社である。このたび,宅配便サービスの差別化及び再配達率の改善を図るために,既存システムである配達情報管理システム(以下,配達システムという)の改善を行うことにした。 〔現在の業務の概要〕 K社での集荷から配達までの業務の流れを図1に示す。K社では,届け先の個人又は企業(以下,届け先顧客という)の住所での受取,配達先の営業所での受取(以下,営業所受取という)に対応している。依頼主は送付伝票を記載する際に配達予定日,配達予定時間帯及び受取場所を指定できる。 配達システムでは届け先顧客に配達予定連絡サービスを提供している。配達予定連絡サービスでは,送付伝票に配達予定日,配達予定時間帯が明記されており,かつ届け先顧客の電子メールアドレスが配達システムに登録されていた場合に,その日付と時間帯を該当の届け先顧客に通知する。 荷受け,配達先の営業所到着,配達開始,配達完了の各タイミングで送付伝票の伝票番号のバーコードを携帯情報端末(以下,配達端末という)で読み取ると,配達システムに,個々の荷物がどのような状況にあるのかを示すステータス(以下,配達状況という)が登録される。 図1 集荷から配達までの業務の流れ 営業所での主な業務とその作業内容を次に示す。 (1) 集荷・輸送業務 ・配達員が個人又は企業の依頼主を訪問し,集荷する。 ・集荷時には,送付伝票を貼り付け,送付伝票のバーコードを配達端末で読み取り,配達状況を“荷受け”にする。 ・配達システムに送付伝票の依頼主名,届け先顧客名,郵便番号,住所,電話番号,配達予定日及び配達予定時間帯を登録すると,配達システムが配達予定日及び配達予定時間帯を配達予定連絡サービスの対象の届け先顧客に通知する。 ・荷受け後,配達元の営業所から配達先の営業所に,配達業務の時間帯に合わせて輸送する。 (2) 仕分業務 ・配達先の営業所には,1日複数回荷物が輸送されてくる。仕分担当者は荷物の到着後に送付伝票のバーコードを配達端末で読み取り,配達状況を“営業所到着”にする。到着した荷物は当日に再配達する荷物と併せて仕分けする。荷物の仕分け後,配達員に次の便で配達するよう依頼する。 ・配達先の営業所受取を指定された場合は営業所倉庫に保管する。 (3) 配達業務 ・各配達員の担当区域は,営業所ごとに管理されており,配達システムには登録されていない。配達員は自分の担当区域を把握しており,担当区域外に配達することはない。 ・配達員は配達時に配達端末を携帯する。 ・配達業務は午前1便,午後2便の計3便行う。各便の出発時刻は決まっており,担当区域にかかわらず,全配達員共通である。 ・各便の全ての荷物に対して引渡し又は不在の場合の対応を実施したら当該便の配達業務を完了とし,営業所に帰還する。 ・各便の配達順序は営業所を出発する前に配達員があらかじめ決定する。 ・配達員は仕分けされた荷物を自動車,リアカー付き自転車又は台車(以下,これらを配達車両という)を利用して配達する。配達車両に荷物を積み込む際に配達端末で配達状況を“配達開始”にする。配達にどの配達車両を使用するかは配達員が判断し,配達端末に入力する。 ・配達端末は配達システムと連携している。配達員が,次の配達先の送付伝票のバーコードを読み取ると,配達システムが蓄えている過去の配達実績情報及び現在の交通情報に基づいて,使用する配達車両に応じた推奨移動経路と配達到着予想時刻を配達端末に提示する。 ・配達員は荷物の引渡しまでを担当する。届け先顧客に荷物の引渡しを終えたタイミングで,配達端末で配達状況を“配達完了”にする。届け先顧客に引き渡す際には社名と氏名を名乗っている。 ・配達時に届け先顧客が不在の場合,配達員は不在連絡票を投かんする。 ・1便目,2便目の配達業務完了後は配達車両から荷物を降ろさない。3便目の配達業務完了後に配達車両から荷物を降ろし,営業所倉庫に保管する。 ・配達時の移動経路,移動時間及び駐停車時の時間を配達端末が自動的に記録し,配達実績情報として配達システムに保存する。 (4) 再配達受付業務 ・営業所の再配達受付担当者は,不在連絡票を受け取った届け先顧客から再配達の依頼を電話で受け付ける。受取場所の変更は受け付けない。再配達を受け付ける際は,届け先顧客から再配達希望日,再配達希望時間帯を確認する。ただし,再配達希望日が当日で,かつ再配達希望時間帯の受付締切時刻経過後は,再配達希望は受け付けない。 ・再配達希望日が配達日当日の場合は,配達員に再配達希望時間帯を指示し,当日中に再配達してもらう。 〔宅配便サービスの改善要望〕 宅配便サービスの改善に当たって依頼主と届け先顧客に要望をヒアリングした結果は,次のとおりである。 (1) 依頼主 ・依頼主が誰なのかを届け先顧客に通知してほしい。 ・配達が完了したことを依頼主に通知してほしい。 (2) 届け先顧客 ・午前中(9時~12時)などは配達予定時間帯の幅が広く,配達予定連絡が来ても待ち時間にストレスを感じる。待ち時間を減らしてほしい。 ・帰宅して不在連絡票を確認しなくても再配達依頼できるようにしてほしい。 ・荷物が届く前でも再配達依頼時と同様に配達日,配達時間帯などを変更できるようにしてほしい。また受取場所の変更もできるようにしてほしい。 ・配達員として誰が来るのかが分かるようにしてほしい。 〔改善後の配達システムの新機能〕 宅配便サービスの改善要望を踏まえ,K社情報システム部のL課長は次の(1)~(5)の新機能を配達システムに追加することにした。 (1) 配達予定時刻計算機能 配達員から配達端末を用いて連携された情報を基に,推奨移動経路で移動した場合の各受取場所への配達予定時刻を計算する。 (2) 配達予定情報通知機能 配達先の営業所を出発したタイミングで,配達予定時刻と①ある情報を配達予定情報として届け先顧客に通知する。 (3) 不在連絡票通知機能 配達員が不在連絡票を投かんし,配達状況を“不在連絡済”にしたタイミングで,不在連絡票の内容を届け先顧客に通知する。 (4) 配達完了通知機能 配達員が荷物を引渡し,配達状況を“配達完了”にしたタイミングで,配達完了のお知らせを依頼主と届け先顧客に通知する。 (5) 配達条件変更機能 配達希望日,配達希望時間帯及び受取場所(以下,配達条件という)の変更を配達先の営業所の担当者が電話で受け付ける。ただし,配達状況が“配達完了”又は“不在連絡済”の荷物については受け付けない。配達条件の変更を受け付ける際は,配達条件を確認し,配達システムに入力する。配達システムは,入力された配達条件に基づいて配達状況を変更する。 受取場所を配達先の営業所以外へ変更する場合は,配達日を翌日以降に指定してもらう。また,[a]の場合,かつ[b]の場合においては,配達条件の変更を受け付けない。 入力された配達条件は,配達条件変更通知として配達端末に表示される。変更後の受取場所として配達先の営業所が指定された場合は,配達状況を“営業所倉庫保管”として,営業所帰還時に荷物を降ろすことを配達員に指示する。変更後の配達希望時間帯が当該便の配達時間帯でない場合は,配達状況を“営業所戻り”とし,当該便では荷物の配達を行わないことを配達員に指示する。 〔配達システム改善後の配達業務の概要〕 配達システム改善後の配達業務の主な変更点は次のとおりである。 ・配達員は営業所出発前に,配達時に使用する配達車両に加えて配達員の氏名を配達端末で配達システムに入力し,あらかじめ決めておいた配達順序の順番に送付伝票のバーコードを読み取り,配達状況を“配達開始”にする。 ・次の配達先に荷物を届ける前に送付伝票のバーコードを読み取る。その際に配達条件変更機能によって配達条件が変更されていた場合は配達端末にその内容が表示されるので,その内容に従い,必要に応じて届け先顧客と調整する。配達条件変更通知がなかった場合は送付伝票に記載された受取場所に届ける。 ・配達端末で配達状況を入力するケースとして次の二つを追加する。受取場所に配達員の担当区域外を指定されていた場合は,配達員が,配達状況を“担当区域外”にする。不在連絡票を投かんした場合は,配達員が,配達状況を“不在連絡済”にする。 ・配達員が配達状況を“担当区域外”にした場合又は配達システムが配達状況を“[c]”に変更していた場合には,営業所に帰還した際に,これまでの配達業務では行わなかった作業を実施する。 設問1 〔改善後の配達システムの新機能〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1) 各受取場所への配達予定時刻を計算するために,配達端末から配達システムに連携している情報が二つある。どのような情報か,それぞれ15字以内で述べよ。 (2) 改善要望を満たすために通知する,本文中の下線①の情報とは何か。二つ挙げ,それぞれ10字以内で答えよ。 (3) 本文中の[a],[b]に入れる適切な内容をそれぞれ20字以内で述べよ。 設問2 〔配達システム改善後の配達業務の概要〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1) 配達員が,配達状況を入力するケースを追加することで実現できる改善要望は何か。30字以内で述べよ。 (2) 受取場所を配達員の担当区域外に指定された場合に,配達状況の変更を,配達員自身が実施している理由は何か。30字以内で述べよ。 (3) 本文中の[c]に入れる適切な配達状況を答えよ。また,この配達状況に変更された場合に現在行っていない作業を配達員が営業所で行う必要がある。どのような作業を行うのか,作業内容を35字以内で述べよ。
図1 集荷から配達までの業務の流れ。依頼主から集荷、配達元の営業所、輸送、配達先の営業所、配達を経て届け先顧客へ至る荷物の流れを示す図。配達システムとは、荷受け、営業所到着・配達開始、配達完了の配達状況、配達予定日・配達予定時間帯の通知、再配達依頼の各データが連携する。
図1 集荷から配達までの業務の流れ。依頼主から集荷、配達元の営業所、輸送、配達先の営業所、配達を経て届け先顧客へ至る荷物の流れを示す図。配達システムとは、荷受け、営業所到着・配達開始、配達完了の配達状況、配達予定日・配達予定時間帯の通知、再配達依頼の各データが連携する。
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要件と判断の根拠を対応させる

検討するときは、判断の根拠となる要件を一つ定め、その要件がどの記述に基づくかを確認しましょう。自分が普段の業務から想像した条件と、設問で明示された条件を混ぜず、根拠との対応を意識することが大切です。

この問題で問われていること

この問題では、業務上の要件を判断の根拠として扱う際に、その根拠を設問の記述へ戻って確かめる視点を持ちましょう。判断に必要だと思った条件が実際に示されているのか、それとも自分で補ったものなのかを区別してください。

視点

要件は判断の根拠になりますが、経験から思い浮かぶ前提がそのまま要件になるとは限りません。判断に使う条件と、それを裏付ける記述との対応に注目しましょう。

確認ポイント

  • 判断の根拠にした要件は何か
  • その要件を裏付ける記述はどこか
  • 根拠に自分の推測を加えていないか
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解説

顧客の改善要望を、配達予定の計算・通知、配達条件の変更、配達状況に応じた作業へ具体化する問題です。情報の連携元、受付不可の複合条件、現行業務との差分を本文から読み取ることが要点です。

問題の全体像

全国に2、000の営業所を持つK社が、宅配便サービスの差別化と再配達率の改善に向けて配達システムを改修する事例です。依頼主と届け先顧客の要望を受け、配達予定時刻の計算、各種通知、配達条件の変更を追加します。公式の出題趣旨では、現行業務と既存システムを理解した上で、改善要望から新しい機能を定義し、業務プロセスと情報システムを設計する能力を問うとしています。本文に示された情報の所在、受付条件、荷物の扱いを結び付けて解答します。

設問1(1)①

改善後の配達業務にある、営業所出発前に「あらかじめ決めておいた配達順序の順番」にバーコードを読み取る記述に着目します。各受取場所の予定時刻を計算するには、どの順番で訪問するかが必要です。この読取りによって配達順序をシステムに連携できます。公式解答例では「あらかじめ決めた配達順序」としています。15字以内の答案では、事前に決めた訪問順序という要素を押さえます。採点講評では、端末から連携していない情報を挙げた解答が多かったと指摘しており、計算に関係する情報を一般論で列挙しないことが大切です。

設問1(1)②

現行業務で、配達員が使用する配達車両を判断して端末に入力し、システムがその車両に応じた推奨移動経路と到着予想時刻を提示する記述に着目します。自動車、リアカー付き自転車、台車では移動条件が異なるため、予定時刻の計算にも使用車両の情報が必要です。公式解答例では「配達時に使用する配達車両」としています。15字以内では使用する車両を端的に示します。過去の配達実績情報や現在の交通情報は本文に登場しますが、この解答欄で公式解答例が挙げている情報は使用車両です。

設問1(2)①

届け先顧客の「配達員として誰が来るのかが分かるようにしてほしい」という要望に着目します。改善後は、配達員が営業所出発前に氏名を端末から入力するので、出発時の配達予定情報に氏名を含めれば、到着前に配達員を知らせられます。公式解答例では「配達員の氏名」としています。10字以内の答案では、誰の氏名なのかを明確にします。

設問1(2)②

依頼主の「依頼主が誰なのかを届け先顧客に通知してほしい」という要望に着目します。依頼主名は集荷・輸送業務で既に配達システムへ登録されるため、配達予定情報と一緒に通知できます。公式解答例では「依頼主名」としています。10字以内ではこの情報名を示せば要点を押さえられます。配達完了の通知は別の新機能で対応するため、ここでは出発時に知らせる情報を選びます。

設問1(3)(a)

現行の再配達受付業務にある、希望日が当日で、かつ希望時間帯の受付締切時刻を過ぎた場合は受け付けないという条件に着目します。改善要望は、荷物が届く前でも再配達依頼時と同様に配達日や時間帯を変更できるようにすることです。そのため、変更受付にも当日の締切制約を反映します。公式解答例ではaを「配達希望日が当日」としています。20字以内の答案では、希望日と当日という条件を示します。aだけで受付不可になるのではなく、bも成立する必要があります。

設問1(3)(b)

aと組み合わせるもう一つの条件は、希望する時間帯の受付締切時刻を過ぎていることです。公式解答例では「配達希望時間帯の受付締切時刻経過後」としており、20字以内に収まります。「配達希望日が当日」かつ「その希望時間帯の受付締切時刻経過後」のときに受付不可となります。採点講評では、「配達完了」や「不在連絡済」など、複合条件として成立しない内容を挙げた解答が多かったとしています。これらの配達状況は直前の本文で既に受付対象外とされているため、空欄には当日受付の締切条件を入れます。

設問2(1)

追加する入力ケースのうち、不在連絡票を投かんした際に配達状況を「不在連絡済」にする処理に着目します。この入力が不在連絡票通知機能のきっかけとなり、不在連絡票の内容が届け先顧客へ通知されます。顧客は帰宅して紙の連絡票を確認する前に、再配達を依頼できるようになります。公式解答例では「不在連絡票を確認しなくとも再配達依頼ができること」としています。30字以内では、連絡票の確認が不要になることと、再配達依頼ができることを結び付けて示します。

設問2(2)

現行の配達業務にある、担当区域は営業所ごとに管理され、配達システムには登録されていないという記述が根拠です。システムは変更後の受取場所がその配達員の担当区域内かどうかを判断できません。一方、配達員は自分の担当区域を把握しているため、自身で「担当区域外」へ変更します。公式解答例では「各配達員の担当区域は配達システムに登録されていないから」としています。30字以内では、担当区域の情報がシステムに未登録であることを理由として示します。

設問2(3)(c)

配達条件変更機能で、変更後の受取場所が配達先の営業所になった場合の処理に着目します。本文では、配達状況を「営業所倉庫保管」にし、営業所帰還時に荷物を降ろすよう指示するとしています。これは帰還時に追加作業を必要とする状況なので、公式解答例ではcを「営業所倉庫保管」としています。「営業所戻り」は当該便で配達しないことを指示する状況であり、ここで問われる荷降ろしと倉庫保管に直接対応する状況は「営業所倉庫保管」です。

設問2(3)作業内容

現行業務では、1便目と2便目の終了後に荷物を降ろさず、3便目の終了後に降ろして倉庫へ保管します。受取場所が営業所へ変更された荷物は、顧客が営業所で受け取れるよう、当日の全配達業務が終わる前でも帰還時に降ろして倉庫へ保管する必要があります。公式解答例では「当日の配達業務完了前に荷物を降ろし,営業所倉庫に保管する作業」としています。35字以内では、当日の配達業務完了前というタイミング、荷降ろし、営業所倉庫への保管を押さえます。単に倉庫へ保管すると書くだけでは、現行業務から変わる点が伝わりません。

学習のポイント

要望と機能の対応、情報を把握する主体、複合条件の論理、状態変更に伴う実作業の設計を重点的に学習します。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和3年度春期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問2(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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