SAシステムアーキテクト試験 午後Ⅰ

令和元年度秋期 システムアーキテクト 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 レンタル契約システムの再構築に関する次の記述を読んで,設問1~5に答えよ。 K社は,法人顧客(以下,顧客という)に測定機器(以下,機器という)をレンタルする会社である。K社は,レンタル業務で利用しているレンタル契約システムの老朽化に伴い,新たな業務システム(以下,新システムという)を構築することにした。 〔現在のレンタル業務の内容〕 K社では,レンタル契約システムと物流在庫管理システムを利用し,レンタル業務をしている。現在のレンタル業務に関わる部門の業務内容は,次のとおりである。 (1) 機器管理部門 機器管理部門では,機器を検査点検してレンタル可能な状態に整備(以下,校正という)する。機器の校正には,有効期限(以下,校正有効期限という)があり,機器ごとに物流在庫管理システムで管理している。校正有効期限を超えてレンタルすることはない。K社では,顧客へレンタルする際,機器を出荷する前に必ず校正し,校正した証明である校正証明書類を提示している。機器ごとに校正に必要な日数が異なっており,校正が完了するまで出荷しない。 (2) 営業部門 営業部門では,主要な業務として,次の業務を行っている。 ① 見積業務 顧客からレンタルの問合せを受け,K社で取扱可能な機器かどうかを確認する。取扱可能な機器である場合は,物流在庫管理システムを利用してレンタル可能な機器の在庫状況を確認する。レンタル可能な在庫があった場合は,レンタル料金を試算し,見積書を作成して顧客に送付する。見積書の情報は,見積番号,機器名,型番,台数,レンタル開始希望日,レンタル期間,レンタル終了予定日,レンタル料金などである。レンタル期間は,5日から6か月未満の期間(以下,短期レンタルという)か,6か月以上の期間(以下,長期レンタルという)である。在庫がない場合は,購買部門に購入を依頼して別途対応する。取扱不可能な機器である場合は,顧客に断りの連絡をする。 ② 受注業務 顧客との見積書の合意を受け,見積書の情報から注文書兼注文請書を作成して顧客に送付する。顧客から押印済みの書類を受領した後,注文書の情報をレンタル契約システムに入力して受注情報を登録する。受注情報から決裁書を作成し,責任者が決裁する。 ③ 引当業務 K社では,レンタル開始希望日の15日前から受注情報への機器の割当て(以下,引当という)を開始する。引当の際は,物流在庫管理システムを利用して在庫状況を確認し,レンタル可能な機器がある場合は,その機器に受注情報を登録する。レンタル可能な機器がない場合は,当該受注情報に引当する機器として購買部門に購入を依頼し,購入後に引当する。 なお,説明書などの付属品が欠けている機器はレンタルしない。ただし,付属品が欠けている状態でレンタルすることを顧客と合意した場合は,レンタルしてもよいことにしている。 ④ 出荷業務 レンタル開始希望日に合わせて出荷日を決定し,出荷日の前日に機器の出荷を倉庫に依頼する。倉庫への出荷依頼は,物流在庫管理システムを利用して出荷情報を登録することで行う。出荷情報は,出荷する機器,出荷日,出荷先の住所などである。出荷後,顧客へ機器を納入した日の翌日をレンタル開始日としてレンタル契約システムに登録する。 ⑤ 満了業務 K社は,短期レンタルの場合,レンタル期間満了時にレンタルを終了する。長期レンタルの場合,レンタル期間が満了する月(以下,レンタル期間満了月という)の3か月前の第一営業日に,レンタルを延長するか又は終了するかを確認するための満了案内確認書を封書で顧客に送付する。顧客は,レンタル期間満了月の1か月前の第一営業日までに延長するか又は終了するかを封書でK社に送付する。期日までに顧客から終了する旨の通知がない場合は,延長扱いとする。延長する場合,延長料金を算出し,レンタル契約システムを利用して延長情報を登録する。延長した結果,校正有効期限を超過する場合の校正方法は,顧客と別途調整する。終了する場合,物流在庫管理システムに引取情報を登録し,引取手続をする。 ⑥ 引取業務 レンタルが終了して顧客から引き取った機器は,倉庫で簡単な点検を行い,機器の状態を確認する。正常な場合,物流在庫管理システムにレンタル可能な機器として登録する。異常があった場合は,修理を依頼する。説明書などの付属品が欠けている機器の場合,条件付の機器として物流在庫管理システムに登録し,販売業者から付属品を取り寄せた後,レンタル可能な機器として再登録する。 ⑦ 請求業務及び契約変更業務 省略。 (3) 購買部門 購買部門では,営業部門から購入を依頼された機器の購買業務をする。対象の機器を購入するかどうかを審議し,購入することになった場合,販売業者に発注する。販売業者から納品された後,物流在庫管理システムにレンタル可能な機器として登録する。レンタルの受注が決まっている機器の場合,営業担当者に連絡する。 〔新システムへの要望〕 営業部門及び購買部門から,新システムに対して次のような要望が出された。 (1) 営業部門からの要望 ・見積書と注文書兼注文請書を新システムで印刷できるようにしてほしい。 ・紙で回付している決裁をシステム化してほしい。 ・新システムで,レンタル可能な機器を検索して引当(以下,自動引当という)してほしい。自動引当は,決裁が下りた受注情報を対象としてほしい。原則,引当は自動引当だけとするが,例外として営業担当者が,機器の状態を個別に確認し,引当する場合がある。そのため,営業担当者が機器を検索して引当(以下,手動引当という)する機能も設けてほしい。 ・新システムに登録する出荷情報及び引取情報を物流在庫管理システムに連携してほしい。 ・業務の効率向上のために,新システムで自動的に延長処理をしてほしい。その場合,延長するレンタル期間は,当初のレンタル期間と同じとする。ただし,満了案内確認書で顧客からレンタルを終了する旨の通知があった場合は,毎月15日までに営業担当者が必要な処理をする。 ・満了案内確認書を新システムで自動的に顧客に送付してほしい。 (2) 購買部門からの要望 ・購買業務に必要な機能を設けてほしい。 〔新システムの設計〕 K社では,新システムへの要望を踏まえ,新システムの機能を次のように設計している。新システムの機能概要を表1に示す。 表1 新システムの機能概要 設問1 自動引当機能について,(1),(2)に答えよ。 (1) 引当可能な機器の条件を校正の観点から二つ挙げ,それぞれ30字以内で述べよ。 (2) 自動引当は,三つの条件を全て満たす受注情報を対象として抽出する。条件の一つは,まだ引当されていないことである。ほかの二つの条件を,それぞれ25字以内で述べよ。 設問2 手動引当機能について,(1),(2)に答えよ。 (1) 自動引当の対象とならない機器とは,どのような機器か。15字以内で述べよ。 (2) 個々の機器の状態を表示する理由を25字以内で述べよ。 設問3 満了案内機能について,満了案内確認書を顧客に電子メールで送付するために,満了案内対象の受注情報を抽出する。対象となる受注情報の抽出条件を二つ挙げ,それぞれ25字以内で述べよ。 設問4 延長及び終了機能について,延長処理を毎月15日の夜間とした理由を35字以内で述べよ。 設問5 購入機能について,受注情報を識別する番号を利用する,ある機能とは何か。表1中の機能名を用いて答えよ。また,利用する目的を25字以内で述べよ。
表1 新システムの機能概要。新システムの機能名と機能概要を一覧化した表。見積、受注、決裁、自動引当、手動引当、出荷、満了案内、延長及び終了、購入の機能を示す。
表1 新システムの機能概要。新システムの機能名と機能概要を一覧化した表。見積、受注、決裁、自動引当、手動引当、出荷、満了案内、延長及び終了、購入の機能を示す。
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条件が適用される範囲を確かめる

業務の仕組みを検討するときは、記述された条件がどの範囲に当てはまるのかに注目しましょう。一つの条件を全体に広げて受け取らず、与えられた情報で確かめられる範囲を意識して整理することが大切です。

この問題で問われていること

考える際は、ある条件について述べられた内容を、その条件の外側にも当てはめていないか確認してください。適用される範囲が明記されている部分と、自分で補って受け取っている部分を区別すると、検討の前提を整えられます。

視点

条件の適用範囲とは、その条件を根拠として考えられる範囲のことです。記述から確認できる範囲と、推測で広げた範囲を分けて捉えましょう。

確認ポイント

  • 条件が当てはまる範囲を確認したか
  • 限定された内容を全体へ広げていないか
  • 適用範囲を自分の推測で補っていないか
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解説

本問は、測定機器を貸し出すK社のレンタル契約システム再構築を題材に、現行業務と部門の要望を具体的な機能要件へ落とし込む問題です。校正の完了時期と有効期限から機器の引当条件を定め、決裁状況と開始希望日から自動引当の対象受注を抽出します。さらに、付属品欠落時の顧客合意、長期レンタルの満了案内条件、終了処理を待って行う自動延長、購入機器と受注情報の対応付けを読み取ることが要点です。

問題の全体像

K社は、法人顧客に測定機器をレンタルし、契約管理と物流在庫管理に別々のシステムを利用しています。契約システムの老朽化に伴う再構築では、決裁や引当、満了案内、延長処理をシステム化し、物流在庫管理システムとも連携します。公式の出題趣旨では、現行業務を正しく理解し、部門の要望から必要なシステム機能を設計する能力が問われています。各設問では、本文の業務ルールを抽出条件や実行時期、例外処理、機能間の対応付けとして具体化することが必要です。

設問1(1)

機器管理部門の記述にある「校正が完了するまで出荷しない」と「校正有効期限を超えてレンタルすることはない」に着目します。機器ごとに校正に必要な日数が異なるため、引当時には出荷までに校正を完了できるかを確認します。また、貸出期間全体が校正有効期限内に収まる必要があります。公式解答例では、①「出荷までに校正が完了する機器」、②「レンタル終了予定日が校正有効期限を超えない機器」です。いずれも30字以内で、比較する時点を明確にしています。採点講評では、本文を引用するだけでなく、引当可能な機器を判定する条件として整理することが求められています。

設問1(2)

ここで抽出する対象は受注情報です。営業部門の要望にある「決裁が下りた受注情報を対象」と、現行の引当業務にある「レンタル開始希望日の15日前から引当を開始」を組み合わせます。公式解答例では、①「決裁が下りていること」、②「レンタル開始希望日まで15日以内であること」です。どちらも25字以内です。設問で示された未引当の条件も含め、三つの条件を全て満たす受注情報を抽出します。「15日前から」という業務ルールを、抽出時点から開始希望日までの日数の条件に変換するのがポイントです。

設問2(1)

引当業務では、説明書などの付属品が欠けている機器は原則としてレンタルせず、その状態で貸し出すことを顧客と合意した場合に限りレンタルできます。引取業務でも、このような機器は条件付の機器として登録されます。この例外は営業担当者による個別確認が必要なので、手動引当の対象になります。公式解答例では「付属品が欠けている機器」で、15字以内です。

設問2(2)

表1の手動引当機能では、一覧から個々の機器の状態を表示できます。その理由は、営業担当者が欠けている付属品などを確認し、その状態でレンタルすることについて顧客と合意する必要があるためです。公式解答例では「機器の状態を顧客と合意する必要があるから」で、25字以内です。答案では、状態を確認するという操作だけでなく、確認した状態について顧客との合意が必要になるという業務上の目的まで示します。

設問3

現行の満了業務では、短期レンタルは期間満了時に終了し、長期レンタルに対して満了案内確認書を送付します。長期レンタルの定義は6か月以上で、送付日はレンタル期間満了月の3か月前の第一営業日です。表1でも毎月第一営業日に対象を抽出するとしています。したがって、公式解答例では、①「レンタル期間が6か月以上であること」、②「3か月後がレンタル期間満了月であること」です。いずれも25字以内です。抽出条件には、契約の期間区分と、処理する月から満了月までの関係を示します。

設問4

営業部門の要望には、顧客から終了通知があった場合、毎月15日までに営業担当者が必要な処理をするとあります。自動延長を15日の夜間に実行すれば、その日までの終了処理を反映した上で延長対象を抽出できます。公式解答例では、延長しない場合の担当者の処理期限が理由として示されています。35字以内の答案では「延長しない場合は毎月15日までに営業担当者が必要な処理をするから」とまとめられます。採点講評では、「15日前までに引当するから」という解答は、延長処理の実行時期とは直接関係しないと指摘されています。

設問5

現行の引当業務では、在庫がない場合に当該受注情報へ引き当てる機器の購入を依頼し、購入後に引き当てます。表1の購入機能で受注情報を識別する番号を登録するのは、購入した機器の引当先を特定するためです。公式解答例では「自動引当機能」とされており、設問の指示どおり表1の機能名を用いる答案は「自動引当」です。利用する目的は「購入した機器を対象の受注情報に引当すること」と25字以内で示せます。採点講評では、「見積」や「受注」という解答が見られたとされ、購入機器をどの受注へ割り当てるかという機能間の関係を理解することが求められています。

学習のポイント

業務上の制約を日付や状態の判定条件に変換する練習が重点です。機器と受注情報の条件を区別し、手動処理の期限と自動処理の順序、例外時の顧客合意、機能間で番号を連携する目的を整理しましょう。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)令和元年度秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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