SAシステムアーキテクト試験 午後Ⅰ

平成30年度秋期 システムアーキテクト 午後Ⅰ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 システムの改善に関する次の記述を読んで、設問1~3に答えよ。 A社は、従業員2、000名を抱えるシステムインテグレータである。このたび、新中期計画において、情報技術の進展と競争激化に対応するために、人材開発の高度化が打ち出された。A社の人材開発部と情報システム部は、この新中期計画を受けて、現在稼働中の目標管理システム、受講管理システム及び資格管理システム(以下、現行システムという)の機能の改善と連携の強化を行うことにした。 〔現行システムの概要〕 現行システムの概要は次のとおりである。また、現行システムで管理している主な情報を表1に示す。 (1) 目標管理システム A社では、目標管理システムを使って、半年ごとの社員の業績及び能力開発の目標と実績を管理している。社員が設定した目標は、上司と協議して決定され、半年ごとにその達成状況の評価が行われている。能力開発の目標設定では、その期に受講予定の講座や取得を目指す資格について合意し、社員の能力開発に役立てる。 目標設定は、4月中旬及び10月中旬に行う。社員が目標を目標管理システムに入力し、その後、上司と画面を見ながら協議し、合意した内容で目標を決定する。 達成状況の評価は、9月下旬及び3月下旬に行う。社員が実績を目標管理システムに入力し、その後、上司と画面を見ながら協議し、合意した内容で達成状況の評価を決定する。 なお、A社の組織変更は4月1日と10月1日に行われる。人事異動は、毎月1日に発令され、昇進は年に1回、4月1日に発令される。 (2) 受講管理システム A社では、年間約100講座の研修を開催している。各講座は、それぞれ年に数回開催され、社員は年間10日の受講を目標にしている。 ・講座の情報として、講座基本情報と、開催スケジュール情報をもつ。開催スケジュール情報は、その講座の開催回ごとに、開催日、開催場所などの属性をもつ。 ・社員が講座を申し込むと、受講履歴情報が作成される。受講履歴情報は、申込状況、受講状況及び受講結果に関する情報をもつ。 ・社員が講座を修了すると、修了履歴情報が作成される。 ・講座の開催に当たり、受講者に講座実施案内の電子メール(以下、案内メールという)を送付し、受講者名簿、名札、座席表などの出力を行う。 ・社員の社員番号、漢字氏名、かな氏名、生年月日、所属及び役職の情報(以下、社員基本情報という)は、人事部が、別途稼働している人事システムで管理している。人事異動で社員基本情報が変更される場合は、本人に内示された後、発令日の3営業日前の業務開始前に人事システムから変更情報が連携され、直ちに更新している。 ・年度末に、受講管理システムから、社員個人別に過去3年間の年間受講日数一覧表を出力し、年間目標の達成状況を確認している。 (3) 資格管理システム A社では、資格の取得を上位役職への昇進の必要条件としている。このため、社員は資格を取得すると、資格管理システムで登録申請を行い、合格証書の写しを人事部に送付する。人事部では、合格証書の写しを確認し、登録申請を承認する。 1年間に登録される件数は約700件であり、そのうち約6割が会社で団体申込みを行っている情報技術関連の資格である。 表1 現行システムで管理している主な情報 〔実施している研修の概要〕 A社では新入社員を対象にした新入社員研修のほか、昇進した際に受講する昇進時研修、特定分野のスキル向上を目的としたスキル研修を実施している。 新入社員研修は、4月1日から5月末日まで実施される。昇進時研修は、4月上旬に実施される。昇進者は、3月中旬の役員会で決定され、3月20日までに昇進者本人に昇進が内示されて、その全員が昇進時研修の受講対象者となる。 新入社員研修及び昇進時研修は、受講対象者による申込みを行わず、人事部から情報を入手し次第、人材開発部で受講者を登録する。 スキル研修は、4月中旬から受講申込みを募集し、6月から翌年2月までの間に開催する。募集の受付は、各講座の定員に達したとき、又は各講座の開催5週間前に一旦締め切るが、定員に満たないときは、開催1週間前まで受け付ける。スキル研修は、毎年、数講座を入れ替えている。それ以外の講座については、プログラムや教材の部分的な改訂を行っているが、講座日数などの大きな変更は行っていない。 〔現在の講座の運用〕 講座の開催に当たっては、受講管理システムを用いて次のような運用を行っている。 ・業務の調整及び講座の受講準備を促すために、開催5週間前に、受講者に案内メールを送付する。ただし、新入社員研修では、受講者である新入社員に入社式で詳細を説明するので、案内メールは送付しない。 ・開催5週間前を過ぎて申込みがあった場合は、翌営業日に案内メールを送付する。 ・開催3営業日前に、開催準備作業として、受講者名簿、名札及び座席表を出力する。 ・講座を受講し、その講師が修了と判定した場合は、修了履歴に登録される。 ・開催1週間前を過ぎてからの申込みは受け付けないが、部長から特別に要請があれば、例外的に受講者の追加や変更を認めている。この場合、開催準備作業後であれば、追加や変更が行われた時点で受講者名簿及び名札を再出力するが、①再出力する受講者名簿や名札に、開催日時点の正しい所属が表示されないことがあり、手作業で修正している。 ・昇進時研修においては、上記の内容では対応できない運用があるので、特別な措置として、運用タイミングの変更を行っている。 〔システム改善の要望〕 情報システム部のB課長が、経営層及び人材開発部にヒアリングを行ったところ、次のような要望が提示された。 ・情報技術の進展に備え、社員を特定分野の専門家として育成するために、社員ごとに主たる専門分野とそのレベルを設定し、社員基本情報に追加したい。 ・各講座の講座基本情報にも、受講対象とする社員の専門分野とそのレベルを設定し、社員の専門分野とそのレベルに合致した講座を推奨講座として、受講を推奨できるようにしたい。一つの講座が複数の専門分野を対象とすることもある。 ・半年に1回実施している目標設定面談において、上司が部下に受講を促すことができるように、目標確認画面から、当該社員の受講履歴一覧、修了履歴一覧、当期推奨講座一覧及び取得資格一覧を参照できるようにしたい。 ・取得資格の登録業務の効率向上を図るために、団体申込みを行っている情報技術関連の資格については、資格試験を実施する主催者(以下、試験主催者という)から送付される出願及び合否の電子データを取り込むことができるようにしたい。 ・現行システムにおける手作業は、できるだけ削減したい。 〔機能改善と連携の強化についての要件〕 B課長は機能改善と連携の強化についての要件を、次のように整理した。この際に、現行システムの問題点の解決を図ることに加えて、②システムの利用シーンを想定して、システム改善の要望にはなかった新たな要件の追加を行っている。 ・社員基本情報に、専門分野とレベルの二つの属性を追加する。 ・新たに、講座番号、専門分野を主キーとし、その他の属性としてレベルをもつ、講座レベル情報を設ける。 ・現在、開催1週間前を過ぎてから申込みを受け付けた際に行っている手作業を、受講管理システムで行う。そのために、人事システムから連携される社員基本情報に適用開始日を加えて、1人の社員について複数件の情報を保持できるようにする。 ・資格管理システムで、試験主催者から送付される電子データを取り込んで、合格者の情報を登録できるようにする。ここで、試験主催者から送付される情報は、受験番号が主キーであり、属性として漢字氏名、生年月日、試験の合否区分をもっている。 ・受講管理システムから受講履歴情報及び修了履歴情報を、資格管理システムから取得資格情報を、目標管理システムへ連携して、目標管理システムの画面でそれらの情報を一覧で参照できるようにする。 ・目標管理システムで、推奨講座の中で当該社員が修了していない講座の一覧を、当期推奨講座一覧として、表2に示す手順で表示する。半年ごとの目標設定時に、当期推奨講座一覧を見ながら上司と当期に受講する講座について協議し、その場で合意した場合は、当期推奨講座一覧の当該講座を選択することによって、受講管理システムに連携し、申込手続を行うことができるようにする。 表2 当期推奨講座一覧の表示手順 〔要望の追加〕 B課長が整理した要件について、関係者に確認を行ったところ、“情報技術の急速な進展に対応するために、今後は、年度ごとに、講座の改廃、講座内容・講座日数の変更が行われることを前提に、新設講座や変更があった講座を識別できるようにしてほしい”という追加要望が提示された。 これを受けて、B課長は追加する要件を次のように整理した。 ・講座基本情報に、登録日、適用開始日及び廃止日の属性を追加する。 ・③適用開始日を講座基本情報の主キーに加える。 ・講座情報を表示する画面で、新設講座は赤色で、変更があった講座は青色で表示して、他の講座と区別できるようにする。 設問1 〔現在の講座の運用〕について、(1)~(3)に答えよ。 (1) 昇進時研修において、対応できない運用とは何か。25字以内で述べよ。 (2) (1)で対応できない運用のために、特別な措置として行っている運用タイミングの変更の内容を、35字以内で述べよ。 (3) 本文中の下線①で、正しい所属が表示されないのは、どのような受講者が、どのようなタイミングに開催される講座を受講したときか。受講者に関する条件を20字以内で、講座開催のタイミングに関する条件を30字以内で述べよ。 設問2 〔機能改善と連携の強化についての要件〕について、(1)~(3)に答えよ。 (1) 本文中の下線②で、システムの利用シーンを想定して追加した新たな要件とは何か。30字以内で述べよ。 (2) 表2中の[a]~[d]に入れる適切な字句を答えよ。 (3) 資格管理システムにおいて、試験主催者から送付される情報を取り込む際に留意しなければならないシステム上の課題は何か。30字以内で述べよ。 設問3 〔要望の追加〕の下線③について、適用開始日を講座基本情報の主キーに加えない場合、現行システムのどの機能にどのような不具合が発生するか。機能を25字以内で、不具合の内容を40字以内で述べよ。
表1 現行システムで管理している主な情報。目標管理、受講管理、資格管理の各システムが管理する情報名と主な属性を整理した表。
表1 現行システムで管理している主な情報。目標管理、受講管理、資格管理の各システムが管理する情報名と主な属性を整理した表。
表2 当期推奨講座一覧の表示手順。社員の専門分野とレベル、修了履歴を用いて当期推奨講座一覧を抽出する三段階の手順表。
表2 当期推奨講座一覧の表示手順。社員の専門分野とレベル、修了履歴を用いて当期推奨講座一覧を抽出する三段階の手順表。
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検討する対象の範囲をそろえる

検討を始める前に、何を対象として考えるのか、その範囲を確かめましょう。広い範囲の話と一部分の話が混ざっていないかに注目し、与えられた情報の中で、同じ範囲に関わる内容を整理すると考えやすくなります。

この問題で問われていること

この分野の課題を考える際は、検討対象の範囲が途中で変わっていないかを確認しましょう。ある内容を別の範囲にも当てはめたくなったときは、そこまで含めて考える根拠が与えられているかを立ち止まって確かめてください。

視点

対象の範囲とは、今回の検討に含める内容の広がりです。範囲が異なる内容をひとまとめにせず、どこまでを扱う話なのかを意識して整理しましょう。

確認ポイント

  • 今回の検討で扱う範囲を確認したか
  • 範囲の異なる内容を混ぜて考えていないか
  • 与えられた根拠を超えて対象の範囲を広げていないか
正解と解説を見る

解説

本問では、人材開発関連の三つのシステムを改善するために、業務の時系列から運用上の問題を特定し、利用場面に応じた連携要件を導く。さらに、異なる主キーをもつ情報の照合と、過去の受講日数を正しく集計するための履歴管理を考える。

問題の全体像

A社は人材開発の高度化に向け、目標管理・受講管理・資格管理の三つのシステムを改善する。現行運用には、昇進時研修の案内時期や異動前の所属表示に問題があり、改善では推奨講座の表示、受講申込みへの連携、資格情報の取込みなどが求められる。公式の出題趣旨では、現行システムを理解した上で、利用者のニーズや将来の変更をシステム要件としてまとめる能力を評価するとしている。

設問1(1)

昇進時研修は4月上旬に開催されるが、昇進者が決まるのは3月中旬です。開催5週間前には受講者が決まっていないので、通常の案内メール送付時期に対応できない。公式解答例では「開催5週間前に案内メールを送付する運用」を挙げている。25字以内では、この送付時期と運用内容を押さえる。

設問1(2)

新入社員研修と昇進時研修は、本人が申し込まず、人事部から情報を入手し次第、人材開発部が受講者を登録する。この情報入手時点なら昇進時研修の受講者が分かるため、案内メールもその時点で送付する。公式解答例では「人事部から情報を入手し次第、受講者に案内メールを送付する。」としている。35字以内では、情報入手を送付の契機にする点を示します。

設問1(3)(受講者)

社員基本情報は、人事異動の発令日の3営業日前に変更情報が連携され、直ちに更新される。したがって、所属表示の問題が生じる対象は、その人事異動によって所属が変わる社員です。公式解答例では「人事異動の発令を受けた社員」としている。20字以内では、人事異動の対象者であることを明確にする。

設問1(3)(タイミング)

変更後の所属は発令日の3営業日前に登録されるが、実際に異動が発効するのは発令日です。その間に開催される講座の名簿を再出力すると、開催日時点ではまだ旧所属なのに、新所属が表示される。公式解答例では「異動発令日の3営業日前から前日までに開催される講座」としている。採点講評でも、異動後に旧所属が出るという逆の説明が多かったと指摘している。30字以内では、この期間を正確に示す。

設問2(1)

当初の要望は、目標確認画面から当期推奨講座一覧などを参照できるようにすることです。整理後の要件では、面談中に受講を合意した講座を選択し、そのまま受講管理システムで申込手続を行う機能が追加されている。公式解答例では「当期推奨講座一覧から受講管理システムに連携すること」としている。30字以内では、一覧から申込みにつながる連携を示します。採点講評でも、既存の要望を満たす対応と新たな要件を区別する必要性を指摘している。

設問2(2)(a)

表2の項番1では、社員基本情報から推奨講座を選ぶための条件を取得する。改善要件で社員基本情報に追加されるのは「専門分野」と「レベル」であり、項番2では同じ条件をもつ講座を講座レベル情報から取得する。公式解答例ではaは「専門分野」です。aとbは順不同とされている。

設問2(2)(b)

専門分野が同じでも、社員の習熟度に合った講座を選ぶ必要がある。本文では社員の専門分野とレベルに合致した講座を推奨するとしているため、専門分野と組み合わせるもう一つの条件は「レベル」となる。公式解答例ではbは「レベル」であり、aとbは順不同とされている。

設問2(2)(c)

表2の項番3は、推奨講座から当該社員が既に修了した講座を除外する処理です。受講履歴は申込みや受講状況も含む一方、修了履歴は講師が修了と判定した場合に登録される。修了の事実を確認する情報なので、公式解答例ではcは「修了履歴」としている。空欄の後に「情報」があるため、記入する字句は「修了履歴」となる。

設問2(2)(d)

項番3では修了履歴情報から、当該社員が修了した講座を取得し、項番2で抽出した講座から除く。これにより、専門分野とレベルが合致し、かつ未修了の講座だけが当期推奨講座一覧に残る。公式解答例ではdは「修了した講座」です。申込み済みの講座ではなく、修了した講座を除外する点に着目する。

設問2(3)

試験主催者の情報は受験番号を主キーとする。一方、表1の取得資格情報は社員番号と資格名を主キーとしており、受験番号だけでは登録先の社員を直接識別できない。公式解答例では、主キーが異なる二つの情報をどう照合するかが課題とされている。30字以内なら「主キーが異なる二つの情報をどう照合するか。」と要点を示せる。漢字氏名や生年月日は照合を検討する材料だが、公式解答例は特定の照合方法まで示していない。

設問3(機能)

現行システムでは、年度末に社員個人別の過去3年間の年間受講日数一覧表を出力する。講座基本情報には講座日数があり、過去の受講日数を集計するには受講当時の日数が必要となる。このため、講座の変更履歴を保持できない影響を受けるのは、この一覧表の出力機能です。公式解答例も同機能を挙げている。25字以内なら「過去3年間の年間受講日数一覧表の出力機能」と示せる。

設問3(不具合の内容)

適用開始日を主キーに加えなければ、同じ講座番号について変更前後の講座基本情報を別々に保持できず、更新によって古い講座日数が失われる。その結果、過去の受講実績にも変更後の日数を使ってしまい、年間受講日数を正しく計算できなくなる。公式解答例では、講座日数の変更時に年間受講日数が正しく計算できない不具合を挙げている。40字以内なら「講座日数の変更時に過去の年間受講日数を正しく計算できない。」と示せる。採点講評でも、履歴の消失と過去3年間の集計を結び付ける必要性を指摘している。

学習のポイント

業務上の発効日と情報更新日の違い、要望と追加要件の対応、情報連携時の識別方法、履歴保持と過去集計の関係を学ぶ。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成30年度秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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