SAシステムアーキテクト試験 午後Ⅱ

平成29年度秋期 システムアーキテクト 午後Ⅱ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 IoTの進展と組込みシステムのセキュリティ対応について IoT の進展に伴い,ネットワークに接続される組込みシステムが増えている。ネットワークを利用して,機器のデータをアップロードする,プログラムをダウンロードして更新するといった機能の他に,ネットワークに接続された他の機器と協調して動作する,サーバと連携して動作するなど,更に高度な機能を実現することができる。 このようにIoTの進展は組込みシステムの利便性を向上させる一方で,ネットワーク経由で外部から不正に利用される懸念も増大させている。例えば,改ざんしたプログラムに書き換えられたり,なりすましによって機器を不正に利用されたりするなどの被害が想定される。最近では,自律走行車両のように,不正に利用されると物理的損害が懸念されるものもあり,それぞれの組込みシステムの特徴に応じたセキュリティリスクを特定し,適切に対応する必要がある。 セキュリティリスクへの対応策には,例えば,重要な情報を保護するためにプロセッサを物理的に分けたり,なりすましを防ぐために高度な認証方式を採用したりするなどの手段がある。しかし,その一方でこれらの対応策によって,原価の上昇,リアルタイム性の低下も発生し得る。したがって,トレードオフを考慮した適切な対応策が必要である。また,複数の機器が協調して動作する場合には,どの機器に,どのような対応策を適用するかというアーキテクチャの選択も,費用対効果の観点で重要となる。 組込みシステムのシステムアーキテクトは,組込みシステムのセキュリティリスクと不正利用防止の重要性に基づき,適切な対応策を講じなければならない。 あなたの経験と考えに基づいて,設問ア~ウに従って論述せよ。 設問ア あなたが開発に携わった組込みシステムの概要と特徴,及び特定したセキュリティリスクについて,経緯を含め,800字以内で述べよ。 設問イ 設問アで述べた組込みシステムにおいて,セキュリティリスクに対し,どのような考えに基づいて対応策を検討したか。アーキテクチャ選択の観点,トレードオフの考慮を含め,800字以上1、600字以内で具体的に述べよ。 設問ウ 設問イで述べた対応策について,費用対効果からみた評価,及び今後の課題について,600字以上1、200字以内で具体的に述べよ。
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安全性と運用負担の見極め

対策を考える際は、守る対象や想定される影響を整理したうえで、導入後の運用負担や制約との釣り合いに注目し、単一の観点だけで判断しないようにしましょう。

この問題で問われていること

複数の対策候補を比べるとき、期待できるリスク低減だけでなく、実装・更新・監視など継続的な負担との関係を同じ基準で確認することに焦点を置きましょう。

視点

安全性を高める施策は、効果だけでなく、導入後に必要となる管理、保守、性能、費用、利用環境への影響も含めて評価します。

確認ポイント

  • 守る対象と想定する影響の大きさを整理する
  • 対策の効果と継続的な運用負担を並べて確認する
  • 導入後も維持・更新できる現実性を見直す
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解説

IoTで高度化した組込みシステムを題材に、固有のセキュリティリスクを特定し、アーキテクチャ、費用、性能のトレードオフを踏まえた対応策と評価を論述する問題です。

問題の全体像

IoTの進展により、組込みシステムはデータ送信、プログラム更新、他機器やサーバとの連携など、高度な機能を実現できるようになった。一方で、ネットワーク経由のプログラム改ざん、なりすまし、不正操作などの危険が増え、システムによっては物理的損害にもつながる。そこで、開発経験のある組込みシステムを一つ設定し、その特徴からセキュリティリスクを特定する。次に、どの場所へどの対応策を適用するかを、アーキテクチャ選択と費用・性能などのトレードオフを含めて具体化し、最後に費用対効果と今後の課題を評価する。公式の出題趣旨は、セキュリティへの対応を考慮したシステム構築能力を問うものとしている。

設問ア

まず、答案全体の前提となる一つの組込みシステムを、製品や利用環境、ネットワーク接続の目的、主要な機器・ソフトウェアの構成が分かる程度に示す。続いて、リアルタイム性、可用性、他機器との協調、更新機能、扱う情報や物理制御の有無など、そのシステム固有の特徴を述べる。セキュリティリスクは一般論の列挙ではなく、特徴や開発経緯から、なぜ問題になったかを結び付ける。例えば、外部から更新する構成なら改ざんプログラムの導入、遠隔操作を行う構成ならなりすましや不正操作、制御対象が機械なら安全上の損害をリスクとして整理する。800字以内なので、概要、特徴、リスク、特定に至った経緯を一貫した事例に絞る。

設問イ

設問アのリスクごとに、予防、検知、被害抑制のどの観点で対応するかを示し、認証、通信保護、署名付き更新、アクセス制御、プロセッサや領域の分離など、具体的な手段を配置する。重要なのは対策名の列挙ではなく、どの機器・処理・通信経路に適用し、なぜそこを選んだかを説明することです。複数機器が協調する場合は、各機器に同じ機能を持たせるのか、重要な処理を中核機器やサーバに集約するのかなど、アーキテクチャの選択肢を比較する。公式問題文が示すように、対策は原価上昇やリアルタイム性低下を招き得るため、安全性だけでなく処理遅延、装置価格、通信量、消費電力、開発・運用負担とのトレードオフを具体的に述べる。800字以上1、600字以内なので、リスク、判断基準、候補比較、採用構成、効果と副作用までを因果関係が分かる順序で書く。

設問ウ

設問イで採用した対応策について、投入費用に対してどの被害をどの程度防げるか、また性能や保守費用への影響を含めて評価する。例えば、重大な物理的損害や広範囲の停止を防げるなら、装置追加や認証基盤の費用を許容できるというように、保護対象の重要度と費用を対応付ける。逆に、全機器へ高価な機能を実装せず、重要な機器に集中させた理由があれば、費用対効果の説明になる。採点講評では、担当システムに特有のリスク、コスト・性能などのトレードオフ、システムの特徴を考慮した対応策の論述が期待されている。一方、既存対策の説明だけ、リスク特定や対応策が一般論だけの答案は不十分とされるため、今後の課題も自分の構成に即して、脆弱性対応、鍵や証明書の更新、監視・インシデント対応、法令や要求の変化、性能改善などから優先順位を付けて述べる。600字以上1、200字以内で、評価と課題を具体的に結び付ける。

学習のポイント

リスク、対応策、構成選択、トレードオフ、費用対効果を一貫した事例で説明する力を身につける。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成29年度秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅱ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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