SAシステムアーキテクト試験 午後Ⅰ

平成28年度秋期 システムアーキテクト 午後Ⅰ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 売上・回収業務のシステム改善に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 E社は,関東地方を中心に建材の卸販売を行っている。現在,販売管理システムと会計システムを対象に,売上から回収までの業務及びシステムの改善を進めている。 〔現状の売上から回収までの業務と関連システムの概要〕 現状の売上から回収までの業務と関連システムの概要は,次のとおりである。関連システムは,販売管理システムと会計システムである。 (1) 売上業務 売上計上には,販売している商品の特性によって,出荷した時点で売上を計上する(以下,出荷基準という)場合と,顧客からの検収書を入手した時点で売上を計上する(以下,検収基準という)場合の2通りがある。出荷基準の場合は出荷伝票の控えから,検収基準の場合は顧客の検収書から,営業事務部門で売上伝票を起票し,販売管理システムに入力して売上を登録している。また,売上伝票の控えが経理部門に回付され,経理部門で仕訳伝票を起票し,会計システムに入力して,売上勘定と売掛金勘定に計上している。 (2) 返品業務 商品は,誤出荷や不良品出荷などによって返品されることがある。良品の返品は,倉庫在庫へ戻入れを行い,それ以外は廃棄などの処理を行う。返品の受付後,返品伝票を起票し,販売管理システムに入力することによって,必要な処理を行っている。また,返品伝票の控えが経理部門に回付され,返品に伴う修正仕訳伝票を起票し,会計システムに入力している。 なお,返品に対する再出荷は,通常の出荷と同様に処理する。 (3) 請求業務 顧客への毎月の請求は,指定請求先に対し,締日までの売上情報に基づき請求書を発行する場合と,一部の大手顧客からの支払通知書に基づき請求書を発行する場合がある。請求書は,会計システムで発行し,経理部門から顧客に送付している。 (4) 入金業務 顧客からのE社への入金は,E社指定口座への銀行振込によって行われる。また,全ての顧客の支払条件は,締日の翌月末払いとなっている。支払日が休日の場合は,その前の営業日となっている。顧客からの入金情報はファームバンキングによって入手している。 (5) 売掛金管理業務 売掛金の消し込み及び残高管理は,経理部門で行っている。 〔売上から回収までの業務に関わるシステム改善要望〕 関連部門から,売上から回収までの業務に関わる,次のようなシステム改善要望が出された。 (1) 売上業務の改善 ① 営業事務部門と経理部門での伝票の受渡しをできるだけ減らせるようにシステムを改善してほしい。 ② 経理部門での仕訳伝票起票,入力などの事務処理工数を減らすために,販売管理システムと会計システムとの連携を強化してほしい。 (2) 返品業務の改善 ① これまで返品については,返品理由が曖昧なまま安易に返品を受け付け,処理されていたケースが多かった。今後は,顧客や配送業者との確認も含めて営業事務部門,出荷部門などの関連部門で返品理由を明らかにし,自社責任による返品か否かを明確化していきたい。 ② 自社責任による返品については,販売管理システムに新たに返品受付処理を設け,返品に伴う必要な処理をシステムで連携できるようにしてほしい。 (3) 請求業務の改善 ① 顧客からの支払通知書は,今は郵送されてきているが,その入手方法をシステムで対応できるように改善してほしい。 ② 支払通知書の内容と請求内容の照合をシステムで対応してほしい。 (4) 売掛金管理業務の改善 資金繰り強化及び売掛金の不良債権化予防の一環として,売掛金未回収のリスクを減らすための情報提供をシステムで行ってほしい。 〔改善後のシステムの内容〕 システム改善要望を踏まえ,情報システム部門で検討した改善後のシステムの内容は,次のとおりである。 (1) 売上及び返品に関する処理 出荷後の出荷伝票又は顧客検収後の検収書を販売管理システムに登録し,その実績データに基づき売上計上を行う。また,出荷実績は,販売管理システムの在庫管理に反映する。売上の情報は,会計システムに連携し,自動仕訳を行い,一般会計処理で関連する勘定科目に計上する。それによって,売上伝票を起票して経理部門に回付することは廃止する。また,経理部門での仕訳伝票の起票とその入力も廃止する。 返品については,販売管理システムに新たに返品受付の処理を設ける。ここで受け付ける返品は,自社責任が明確になった返品だけとする。売上の修正が必要な返品は,売上ファイルにその修正を反映し,会計システムにもその修正を連携して反映する。また,良品の返品の場合は,販売管理システムの在庫管理に反映する。 売上及び返品に関する処理の改善後のシステムフローを図1に示す。 図1 売上及び返品に関する処理の改善後のシステムフロー (2) 請求に関する処理 大手顧客からの支払通知書に基づく請求については,顧客からの支払の対象となる支払明細データを事前にEDIで入手できるように顧客と調整する。その支払明細データと売上データとの照合処理を,毎月顧客ごとの締日を基準にして実施する。照合の結果,不一致が発生した場合は,人手で顧客との確認・調整を行い,確定結果をシステムに登録し,必要な売上データの修正を行う。 請求に関する処理の改善後のシステムフローを図2に示す。 図2 請求に関する処理の改善後のシステムフロー (3) 売掛金管理に関する処理 売掛金管理において,新規の管理帳票として売掛金年齢表を作成する。売掛金年齢表は,売掛金の回収を促進し,不良債権化を未然に防止するための情報を提供する管理表であり,現時点の売掛金残高に対する回収が,顧客の売掛金の支払条件に応じた回収になっているか,回収が遅れている場合はいつの売上分の売掛金残高が幾ら未回収となっているかが出力されている。 売掛金年齢表の帳票イメージを図3に示す。売掛金年齢表に例示している,顧客F社,G社,H社の売掛金の支払条件は,3社とも月末締め翌月末払いである。また,売掛金年齢表の作成は,月末入金による売掛金の消し込み処理の後に行うものとする。 図3 売掛金年齢表の帳票イメージ 設問1 売上に関する処理について,(1),(2)に答えよ。 (1) 改善後のシステムで作成される出荷実績ファイルから,システムで自動的に売上ファイルに売上計上できるデータと,売上計上できないデータがある。それはどのようなデータか。それぞれ15字以内で述べよ。 (2) 改善後のシステムでの売上ファイルから会計システムへの連携において,自動仕訳後,会計システムの一般会計処理で行われる処理について,具体的な勘定科目名を挙げて20字以内で述べよ。 設問2 返品に関する処理について,(1),(2)に答えよ。 (1) 改善後のシステムでの返品受付で入力された返品情報に基づき,販売管理システム又は会計システムで,三つの処理が行われる。一つは売上計上済商品の売上減算処理である。他の二つについて,それぞれ20字以内で述べよ。 (2) 返品受付された返品データの中で,売上を修正する必要がないデータがある。どのようなデータか。20字以内で述べよ。 設問3 請求に関する処理の中で,顧客からの支払明細データと請求予定の売上データの照合において,照合対象となるお互いのデータが発生した期間について整合がとれている必要がある。その期間はいつからいつまでか。20字以内で述べよ。 設問4 図3中の売掛金年齢表において,F社,G社,H社の中で,売掛金の回収に問題がない顧客はどの顧客か。顧客名を答えよ。また,問題がない理由を,顧客の支払条件を含めて40字以内で述べよ。
図1 売上及び返品に関する処理の改善後のシステムフロー。出荷伝票・検収書・返品伝票を端末から販売管理システム(出荷実績登録・在庫管理、検収登録、返品受付)へ入力し、出荷実績・検収実績・返品ファイルを経て売上計上・在庫管理を行う。売上ファイルは会計システム(一般会計処理・売掛金管理)に連携し、仕訳ファイル・総勘定元帳マスタ・売掛金マスタを更新するシステムフロー。
図1 売上及び返品に関する処理の改善後のシステムフロー。出荷伝票・検収書・返品伝票を端末から販売管理システム(出荷実績登録・在庫管理、検収登録、返品受付)へ入力し、出荷実績・検収実績・返品ファイルを経て売上計上・在庫管理を行う。売上ファイルは会計システム(一般会計処理・売掛金管理)に連携し、仕訳ファイル・総勘定元帳マスタ・売掛金マスタを更新するシステムフロー。
図2 請求に関する処理の改善後のシステムフロー。顧客からEDIで支払明細を受け取る会計システム(支払明細受理・支払/売上照合)が支払明細ファイル・売上ファイルを参照し、照合リストを出力する。照合不一致データを確認/調整して売上修正を入力し、請求書発行指示により会計システム(請求処理)が売掛金マスタを用いて請求書を発行する。
図2 請求に関する処理の改善後のシステムフロー。顧客からEDIで支払明細を受け取る会計システム(支払明細受理・支払/売上照合)が支払明細ファイル・売上ファイルを参照し、照合リストを出力する。照合不一致データを確認/調整して売上修正を入力し、請求書発行指示により会計システム(請求処理)が売掛金マスタを用いて請求書を発行する。
図3 売掛金年齢表の帳票イメージ。平成28年11月1日現在の売掛金年齢表(千円)。F社は残高15,000で全て10月売上分。G社は残高10,000で10月8,000・9月2,000。H社は残高8,000で10月2,000・9月3,000・8月2,000・7月以前1,000。
図3 売掛金年齢表の帳票イメージ。平成28年11月1日現在の売掛金年齢表(千円)。F社は残高15,000で全て10月売上分。G社は残高10,000で10月8,000・9月2,000。H社は残高8,000で10月2,000・9月3,000・8月2,000・7月以前1,000。
解き方のヒントを見る

判断の前提となる条件を整理する

この分野を学ぶ際は、判断の前提となる条件に注目しましょう。扱う内容を先に決めつけず、与えられた条件と自分が補った想定を分けて整理すると、何を根拠に考えているかを確かめやすくなります。

この問題で問われていること

検討するときは、ある判断がどの条件を前提としているかを意識してください。知っている事例から何となく条件を補っていないかを確かめ、与えられた範囲に立ち戻って、判断の根拠を整理しましょう。

視点

条件として明示されていることと、経験から想定したことは区別して扱います。判断を支える前提がどちらに属するかを意識すると、考えの根拠を整理しやすくなります。

確認ポイント

  • 判断の前提としている条件は何か
  • その条件は与えられた情報に基づいているか
  • 経験や思い込みで条件を補っていないか
正解と解説を見る

解説

本問は、売上計上基準と返品条件を踏まえて販売管理・会計の連携処理を整理し、締日による照合期間と支払条件による回収状況を判断する問題です。業務上の条件を、データの更新対象と処理のタイミングに結び付けることが要点です。

問題の全体像

建材卸売業のE社は、販売管理システムと会計システムを連携させ、伝票の受渡しや仕訳入力を減らそうとしています。併せて、自社責任の返品受付、EDIによる支払明細の入手と照合、売掛金年齢表による回収管理を導入します。出題趣旨では、業務の改善要件を理解し、処理設計・入出力設計・システム間連携の設計に落とし込む能力を問うとされています。各設問では、処理を行う条件と時点を本文や図から読み取ることが重要です。

設問1(1)売上計上できるデータ

現状の売上業務にある「出荷した時点で売上を計上する」という出荷基準の定義に着目します。改善後も計上基準は変わらないので、出荷基準の商品なら、出荷実績ファイルのデータだけで売上計上の条件を満たします。図1でも、出荷実績ファイルから売上計上処理へデータが渡されています。公式解答例では「出荷基準の商品のデータ」とされており、15字以内では計上基準と対象データを示します。

設問1(1)売上計上できないデータ

検収基準では、顧客からの検収書を入手した時点で売上を計上します。出荷実績は出荷した事実を示しますが、検収書の入手を示すものではありません。そのため、出荷実績ファイルだけからは売上計上できず、図1の検収実績ファイルのデータが必要になります。公式解答例では「検収基準の商品のデータ」とされています。売上計上そのものができないのではなく、出荷実績だけでは計上できないという意味です。

設問1(2)

現状の売上業務では、経理部門が会計システムに入力し、「売上勘定と売掛金勘定に計上」しています。改善後は伝票の起票と入力が廃止されますが、両勘定への計上は自動仕訳と一般会計処理によって行われます。公式解答例では「売上勘定と売掛金勘定への計上処理」とされています。20字以内の答案には、二つの具体的な勘定科目と計上処理を含めます。採点講評では、勘定科目を一つしか答えていない解答が見られたと指摘されています。

設問2(1)①

売上計上済商品の返品では、設問に示された売上の減算だけでなく、その売上に伴う売掛金も減らす必要があります。改善後の説明では、売上の修正を会計システムにも連携して反映するとあり、図1でも返品ファイルが会計システムへ渡されています。公式解答例の一つ目は「売上計上済商品の売掛金減算処理」です。20字以内では、売上計上済の商品が対象であることと、売掛金を減算することを押さえます。

設問2(1)②

現状の返品業務にある「良品の返品は、倉庫在庫へ戻入れを行い」という記述と、改善後の「良品の返品の場合は、販売管理システムの在庫管理に反映する」に着目します。良品は再び在庫となるため、返品数量を在庫へ加算します。公式解答例の二つ目は「良品の返品の在庫への加算処理」です。20字以内では、良品という条件と在庫への加算を示します。不良品などは廃棄等の対象なので、全ての返品を在庫へ加算するわけではありません。

設問2(2)

検収基準の商品は、出荷していても検収前には売上が計上されていません。その段階で返品された場合、減算すべき売上がないため、売上修正は不要です。公式解答例では「検収基準での出荷商品の返品データ」とされています。20字以内では、この計上基準と返品データを示します。採点講評では、検収前は売上未計上であることに加え、検収後の返品は発生しないか、発生しても自社責任ではなく返品受付処理の対象にならないという本問の前提が説明されています。したがって、検収基準の返品を一律に修正不要と考えず、受付対象と計上時点を合わせて判断します。

設問3

改善後の請求処理では、支払明細データと売上データを「毎月顧客ごとの締日を基準にして」照合します。双方が同じ請求対象期間を表していなければ、対象期間の違いによる不一致が生じます。前月締日までの分は前回の請求対象なので、今回の対象はその翌日から今月締日までです。公式解答例では「前月締日翌日から今月締日まで」とされています。20字以内では開始日と終了日を示し、顧客ごとの締日を単純な月初・月末に置き換えないことが重要です。

設問4顧客名

図3は平成28年11月1日現在の帳票で、10月末入金の消し込み後に作成されています。3社とも月末締め翌月末払いなので、9月以前の売上分は既に支払期限を迎えています。F社には10月売上分の15、000千円だけが残り、9月以前の未回収額はありません。一方、G社には9月分が、H社には9月以前の分が残っています。このため、回収に問題がない顧客は、公式解答例では「F社」とされています。残高合計の大小ではなく、期限を過ぎた残高の有無で判断します。

設問4理由

F社の10月売上分の支払期限は11月末なので、11月1日時点で残っていても遅延ではありません。9月以前の売上分が残っていないことから、支払条件どおりに回収できています。公式解答例では「支払条件である月末締め翌月末払いのとおりで,支払の遅れがないから」とされています。40字以内では「月末締め翌月末払い」という条件と「支払の遅れがない」という判断を含めます。採点講評では、設問が求める支払条件を記述していない解答が見られたと指摘されています。

学習のポイント

出荷基準と検収基準の違い、返品による各残高の増減、締日と支払期限の区別を重点的に学習します。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成28年度秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

関連する過去問一覧

IPA Advancedは非公式の学習サイトです。解説にはAIによる補助生成を含む場合があります。公式の問題冊子・解答例・採点講評を優先し、誤りは確認後に訂正します。運営・編集方針