SAシステムアーキテクト試験 午後Ⅰ

平成28年度秋期 システムアーキテクト 午後Ⅰ 問1

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問1 仕入れ納品システムの変更に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。 A社は,約500店舗を展開する中堅コンビニエンスストアである。このたび,他社との差別化を図るために,精肉を販売することを決定し,A社の仕入れ・納品の仕組み,及び取引先であるB社の商品加工ラインの仕組みを変更することになった。 〔現在の業務及びシステムの概要〕 A社では,商品を仕入れる取引先は,商品によって一意に決まっている。A社が取引先から仕入れる価格を原価,A社が店舗で販売する価格を売価という。また,商品1個当たりの原価を原単価,商品1個当たりの売価を売単価という。これらの単価及び取引先は商品マスタに登録されている。取引先での処理に必要なマスタ情報は,A社から取引先に送信され,共有されている。 現在の仕入れ納品システム(以下,現行システムという)を用いた,注文から検品に至る各業務の流れは次のとおりである。 (1) 注文業務 ・店舗では,発注用端末を使って,商品ごとに数量を入力して発注データを作成する。 ・店舗から本部への発注データの送信は随時可能である。本部では,毎日,発注データの締め処理を行い,商品マスタを用いて,それぞれの商品に対応した取引先及び納品予定日を決定して,注文ファイルに登録する。また,このとき,取引先ごとに商品別の合計数量を求めて,注文速報データを作成し,取引先に送信する。取引先は,注文速報データを基に,商品をそろえる。生鮮食品については,毎日8時に発注データを締めて取引先に送信し,当日17時までに,店舗に納品してもらう。 (2) 納品業務 ・本部では,注文ファイルの注文データから,店番,納品予定日,取引先コードごとに,納品伝票データを作成する。生鮮食品については締め処理を行った当日が納品予定日になる。伝票番号は,伝票番号マスタに店舗別に格納されている最終伝票番号に1を加算して付与し,さらに,商品コード単位に行番号を付与した明細行を作り,納品明細データを作成する。1伝票には明細が複数行表示できるが,明細行が1伝票に収まらない場合は,伝票番号に1を加算して次の納品伝票データを作成した後で,納品明細データを作成する。1店舗の処理が終了すると,終了時の伝票番号を伝票番号マスタの最終伝票番号に格納する。 ・納品伝票ファイル及び納品明細ファイルから取引先ごとに抽出したデータを,当該取引先に送信し,取引先では,これらのデータを使って納品伝票を印刷する。 ・取引先では,納品伝票に記載された商品を記載された数量だけピッキングし,納品伝票を付けて出荷し,店舗に納品する。 (3) 検品業務 ・店舗では,商品の検品を行い,検品データを本部に送信する。A社では商品が発注どおりに納品される確率が99.9%を超えているので,通常は,修正なしの情報をセットして,検品データだけを本部に送信する。検品時に納品伝票と異なる数量が納品された場合は,修正ありの情報をセットして検品データを本部に送信するとともに,検品差異データを本部に送信する。商品が納品されなかった場合は,実納品数量に0をセットした検品差異データを送信する。 ・本部では,納品伝票データ,納品明細データ,検品データ及び検品差異データを使って納品金額を決定し,買掛金システムに渡す買掛金合計データ及び買掛金明細データを作成する。 現行システムの主要ファイルを表1に示す。 表1 現行システムの主要ファイル 〔変更の概要〕 これまでA社で扱ってきた商品は,商品ごとに原単価,売単価が一律に決まる商品(以下,定貫商品という)だけであった。しかし,新たに扱う精肉については,100グラム当たりの単価は決まっているが,個包装ごとに内容量及び販売価格が異なる商品(以下,不定貫商品という)になる。 A社で扱っている肉類の商品は,取引先であるB社が購入,加工,包装,店舗別ピッキング及び配送を行っている。B社は,A社以外とも取引を行っており,地元のスーパマーケットには不定貫商品も納品している。 A社の情報システム部に所属するC氏は,次のような変更を行うことにした。 ・精肉の商品には,大パックは300グラム,小パックは100グラムという目安の重量を設け,商品マスタに,大パック,小パックを別々の商品として登録する。 ・商品マスタで,不定貫商品を取り扱うようにするために,ある属性を新たに追加する。また,既存の属性の二つについて,現在と別の意味をもたせる。 ・B社では,納品明細データを基に,後述する計量値付機を使って,包装,計量,値札発行,値札貼付を行い,納品伝票データ及び納品明細データを更新する。 ・B社は,更新した納品伝票データ及び納品明細データを用いて納品伝票を印刷するとともに,納品伝票データ及び納品明細データをA社に送信する。 ・A社の本部では,B社から送信されてきた納品伝票データ及び納品明細データで,本部のファイルを更新する。 〔B社の商品加工ラインでの作業の概要と変更要件〕 B社では,商品加工ラインで,商品の加工,包装,値札発行,値札貼付,店舗別ピッキングを行っている。値札には,商品名の他,消費期限,売価,税込売価及びバーコードを印字する。バーコードには,商品コード及び原価・売価情報を含める。 現在,A社向けには,加工肉類などの定貫商品だけを扱っている。本部から送られてきた注文速報データを基に,値札発行機で,商品ごとに,当日A社から発注された数量分の枚数の値札を発行し,手作業で商品に貼付している。その後,店舗別に,値札が貼付された商品を,納品伝票に記載された数量分ピッキングしている。 B社では不定貫商品の加工に当たり,現在,他社に納品している不定貫商品で用いている計量値付機を使用することにした。計量値付機とは,パックした商品をベルトコンベアで流し,量り部分で計量し,それを基に値札を発行し,値札を自動貼付する機械である。不定貫商品の値札には,従来のA社向け定貫商品の値札に印字している項目に加え,販売する店舗の店舗名,100グラム当たりの金額,内容量を印字する。 PCで受信した納品明細データを計量値付機に送り,計量結果を反映させた納品明細データを送り返してもらい,PCの納品明細データ及び納品伝票データを更新する。 計量値付機で行う作業は,次のとおりである。 (1) 事前作業として,注文速報データを基に,商品単位に,それぞれの目安重量に応じたパックを,当日A社から発注された数量分準備する。 (2) PCから,当該商品の商品コード,商品名,消費期限,100グラム当たりの金額を計量値付機に送る。 (3) 当該商品について,1店舗分の店番,店舗名,数量の情報を計量値付機に送る。 (4) 1パックずつベルトコンベアに流し,まず,量り部分で計量し,内容量及び売価を計算する。次に,消費税率を用いて税込売価を計算する。その結果を基に値札を発行し,ベルトコンベアを流れる商品に自動貼付する。 (5) 1店舗の数量分の作業が終了すると,計量結果データは計量値付機からPCに送信される。 (6) 一つの店舗の作業が終わったら,(3)~(5)を,全ての店舗が終わるまで繰り返す。 (7) 一つの商品の作業が終わったら,(2)~(6)を,全ての商品が終わるまで繰り返す。 定貫商品と不定貫商品の値札の例を図1に示す。 図1 定貫商品と不定貫商品の値札の例 また,B社では,不定貫商品をA社店舗に納品する際の店舗別ピッキングについて,①従来の定貫商品と同じ店舗別ピッキングでは,A社の買掛金の処理に不都合を生じさせてしまうので,②店舗別ピッキングの方法を変更することにした。 〔買掛金システムに渡すデータの作成処理〕 店舗から送られてくる検品データ,検品差異データと,A社にある納品伝票データ,納品明細データを使って,買掛金システムに渡すデータを作成している。現在の処理の流れを表2に示す。 表2 現在の処理の流れ 今回,不定貫商品を扱うに当たって,検品業務において,不定貫商品の納品数量が異なるケースを想定して,③検品差異データに,実納品原価,実納品売価の二つの属性を追加する。実納品原価,実納品売価は,実際に納品された商品の原価,売価を商品単位に合計して算出する。また,不定貫商品の検品差異データが発生した場合を考慮し,表2の検品差異データの処理を,不定貫商品については表3のように変更する。 表3 不定貫商品の検品差異データの処理 設問1 〔変更の概要〕について,(1)~(3)に答えよ。 (1) 不定貫商品について,B社から納品伝票データ及び納品明細データを送信してもらうように変更したのはなぜか。その理由を25字以内で述べよ。 (2) 商品マスタに新たに追加する属性がある。その内容を20字以内で述べよ。 (3) 商品マスタの中に,従来と異なる意味をもたせる属性が二つある。新たにもたせる意味は,二つの属性に共通している。属性名を二つ答えよ。また,どのような意味をもたせるか,20字以内で述べよ。 設問2 〔B社の商品加工ラインでの作業の概要と変更要件〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) 本文中の下線①で生じる不都合とは何か。その内容を40字以内で述べよ。 (2) 本文中の下線②で,変更したピッキング方法を25字以内で述べよ。 設問3 〔買掛金システムに渡すデータの作成処理〕について,(1),(2)に答えよ。 (1) 本文中の下線③で,二つの属性を追加した理由を,35字以内で述べよ。 (2) 表3中の[a]~[e]に入れる適切な字句を答えよ。
表1 現行システムの主要ファイル。現行システムの主要ファイル13種(発注、注文、注文速報、納品伝票、納品明細、検品、検品差異、商品マスタ、店舗マスタ、取引先マスタ、伝票番号マスタ、買掛金合計、買掛金明細)について、主な属性を示し、主キーの属性を下線で示した表。
表1 現行システムの主要ファイル。現行システムの主要ファイル13種(発注、注文、注文速報、納品伝票、納品明細、検品、検品差異、商品マスタ、店舗マスタ、取引先マスタ、伝票番号マスタ、買掛金合計、買掛金明細)について、主な属性を示し、主キーの属性を下線で示した表。
図1 定貫商品と不定貫商品の値札の例。定貫商品(粗びきソーセージ、税抜298円、税込321円、消費期限、バーコード、加工者)と不定貫商品(国産牛ひき肉(小)、100g当たり250円、内容量104g、税抜260円、税込280円、消費期限、販売店名、加工者、バーコード)の値札の例。
図1 定貫商品と不定貫商品の値札の例。定貫商品(粗びきソーセージ、税抜298円、税込321円、消費期限、バーコード、加工者)と不定貫商品(国産牛ひき肉(小)、100g当たり250円、内容量104g、税抜260円、税込280円、消費期限、販売店名、加工者、バーコード)の値札の例。
表2 現在の処理の流れ。検品データと検品差異データの処理内容を示す表。納品伝票・納品明細とキーでマッチングし、買掛金合計・明細データの作成や、実納品数量と商品マスタの単価による原価・売価の書換え及び差額反映を行う。
表2 現在の処理の流れ。検品データと検品差異データの処理内容を示す表。納品伝票・納品明細とキーでマッチングし、買掛金合計・明細データの作成や、実納品数量と商品マスタの単価による原価・売価の書換え及び差額反映を行う。
表3 不定貫商品の検品差異データの処理。不定貫商品の検品差異データの処理を示す表。納品明細データとマッチングし、実納品数量で数量を書き換え、検品差異データの空欄a,bで空欄cデータの空欄d,eを書き換え、差額を納品伝票と買掛金データに反映する。
表3 不定貫商品の検品差異データの処理。不定貫商品の検品差異データの処理を示す表。納品明細データとマッチングし、実納品数量で数量を書き換え、検品差異データの空欄a,bで空欄cデータの空欄d,eを書き換え、差額を納品伝票と買掛金データに反映する。
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変更の検討を前提から整理する

業務やデータ処理の変更を考えるときは、判断の根拠となる前提に注目しましょう。慣れた運用から補った想定と、与えられた条件とを区別し、どの前提に基づく検討なのかを確かめることが大切です。

この問題で問われていること

変更について検討する際は、その判断が与えられた条件に支えられているかを確認しましょう。条件から分かる範囲を越えて、経験や一般的なイメージを前提に加えていないか、一度立ち止まって点検してください。

視点

前提とは、検討の出発点として置く条件です。与えられた条件と自分が補った想定を分けて整理すると、判断の根拠を確かめやすくなります。

確認ポイント

  • 判断の前提を言葉にできているか
  • その前提の根拠を条件の中で確認できるか
  • 慣れた運用を無意識に前提へ加えていないか
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解説

不定貫商品の導入では、計量後の金額を納品データに反映し、値札の店舗名に従って仕分ける必要があります。商品マスタには商品区分を追加し、検品差異は実納品の原価・売価で補正します。

問題の全体像

約500店舗を展開するA社が精肉販売を始めるため、仕入れ納品システムと取引先B社の加工ラインを変更する事例です。従来の定貫商品は商品1個当たりの単価が一定ですが、不定貫商品は個包装ごとに内容量と価格が異なります。この違いが、価格の確定時点、店舗別ピッキング、検品差異の金額補正に影響します。公式の出題趣旨では、業務要件の変更を正しく理解し、業務フローやファイルレイアウトの設計へ結び付ける能力を問うとされています。

設問1(1)

〔変更の概要〕にある、B社が計量値付機で計量し、納品伝票データと納品明細データを更新する流れに着目します。不定貫商品では100グラム当たりの単価が決まっていても、各パックの実際の重量が分からなければ価格は確定しません。そのため、B社で計量結果を反映したデータをA社へ送り、本部のファイルを更新する必要があります。公式解答例では「不定貫商品の価格を確定させる必要があるから」としています。25字以内の答案では、価格の確定が必要であることを押さえます。

設問1(2)

商品マスタには、定貫商品と不定貫商品を判別するための情報が必要です。両者では単価の意味や検品差異の金額補正方法が異なるため、商品ごとに処理を選べるようにします。公式解答例は「定貫商品か不定貫商品かを表す区分」で、20字以内に収まります。採点講評では、「内容量」といった誤答が見られたと指摘しています。ここでは個包装の計量情報ではなく、処理の違いを判断する区分を答えます。

設問1(3)

表1の商品マスタにある「原単価」「売単価」と、〔変更の概要〕の「100グラム当たりの単価は決まっている」という記述を対応させます。従来は商品1個当たりの金額でしたが、不定貫商品では重量に応じて価格を計算するための単価として扱います。公式解答例では、属性名は「原単価」「売単価」、共通する意味は「100グラム当たりの金額を表します。」です。意味の説明は20字以内で、基準となる重量と金額の関係を明示します。

設問2(1)

計量値付機が商品ごと・店舗ごとに処理し、その結果で納品データを更新する点に着目します。不定貫商品は同じ商品コードでもパックごとに価格が異なります。従来どおり数量だけを基準に店舗別ピッキングすると、計量時にその店舗へ割り当てたパックと別のパックが選ばれ、数量が合っていても実物の価格と納品伝票の価格がずれる可能性があります。公式解答例では、この価格の不一致を不都合としています。40字以内の答案では「実際に納品された商品の価格と納品伝票の記載価格が一致しない。」と要点をまとめられます。採点講評では、ピッキングを値札発行などを含む一連の作業と誤解した答案や、数量と内容量を混同した答案が指摘されています。

設問2(2)

不定貫商品の値札には販売する店舗の店舗名が追加され、計量値付機には1店舗分の情報を送って処理することに着目します。値札の店舗名に従って仕分ければ、計量結果としてその店舗の納品データに計上されたパックを、その店舗へ納品できます。公式解答例は「値札に印字された店舗名を見てピッキングする。」で、25字以内に収まります。採点講評でも、数量だけでなく個々のパックの納品先を意識する必要があるとされています。答案には、判断に使う情報が値札の店舗名であることを明記します。

設問3(1)

表2の従来処理では、商品マスタの原単価・売単価に実納品数量を掛けて、検品差異発生後の金額を求めています。しかし、不定貫商品では個包装ごとに原価・売価が異なるので、実納品数量だけでは、どの価格のパックが実際に届いたか分かりません。そこで、実際に届いた商品の原価と売価を商品単位に合計し、実納品原価・実納品売価として送ります。公式解答例は「商品ごとに原価,売価が異なり,数量だけでは算出できないから」です。35字以内の答案では、個包装ごとの金額差と、数量だけでは金額を算出できないことを結び付けます。採点講評でも、定貫商品と同じ方法では計算できない点が重視されています。

設問3(2)

表3は、検品差異データに追加した実績金額で納品明細データの金額を書き換える処理です。公式解答例では、a=「実納品原価」、b=「実納品売価」、c=「納品明細」、d=「原価」、e=「売価」です。文をつなぐと、検品差異データの実納品原価・実納品売価で、納品明細データの原価・売価を書き換えることになります。その前後の差額を納品伝票へ反映し、原価の差額は買掛金明細・買掛金合計にも反映します。公式解答例の備考ではa・bとd・eはそれぞれ順不同とされていますが、処理としては原価同士、売価同士を対応させて理解します。

学習のポイント

数量と重量、単価と金額を区別し、業務の変更をマスタ属性・データ連携・更新処理へ結び付けることが重点です。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成28年度秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問1(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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