SAシステムアーキテクト試験 午後Ⅱ

平成24年度秋期 システムアーキテクト 午後Ⅱ 問3

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問3 組込みシステムの開発プロセスモデルについて 組込みシステムの開発では,システムの要求分析から出荷に至るまでの工程において,システムの品質,開発コスト及び納期のバランスをとるために,適切な開発プロセスモデル(以下,プロセスモデルという)を決定する必要がある。そのために,組込みシステムのシステムアーキテクトは,システム開発における様々なプロセスモデルの特性を理解して,システムに最適なプロセスモデルを選択し,決定する。 例えば,プロジェクトマネジメントの容易さの観点からは,開発工程が明確に分かれているウォータフォールモデルが用いられる。ただし,このプロセスモデルは,開発途中での要求仕様の変更がなく,かつ,各開発工程を手戻りなく実行することが前提になっている。 また,ユーザインタフェースの要求仕様が不明確な状態から開発する場合に用いられる,プロトタイピングモデルがある。このプロセスモデルでは,試作品の作成とその評価を繰り返し,要求仕様を明確にしていくので,工程の時間管理が重要になる。 一方,多くの機能をもつシステムを開発する場合に,システムを独立性が高い幾つかのサブシステムに分割して,サブシステムごとに順次開発し,リリースしていくインクリメンタルモデルもある。その他,スパイラルモデル,オブジェクト指向開発モデルなど多くのプロセスモデルがあり,対象システムの特徴や納期,社内の開発環境などを考慮して最適なプロセスモデルを決定しなくてはならない。 あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。 設問ア あなたが開発に携わった組込みシステムの概要について,開発目標,開発の特徴を含め,800字以内で述べよ。 設問イ 設問アで述べた組込みシステム開発で,どのような点をプロセスモデルの決定において重要と考えたか。また,その結果,どのようなプロセスモデルを採用したか。採用に至る過程を含め,800字以上1、600字以内で具体的に述べよ。 設問ウ 設問イで述べたプロセスモデルの採用は適切であったか。また,そのプロセスモデルによって開発目標を達成し,システムの品質,開発コスト及び納期の最適化を実現できたか。更に改善する余地があればその事項も含め,600字以上1、200字以内で具体的に述べよ。
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開発プロセスを見極める視点

組込みシステムの開発プロセスを検討するときは、対象の性質だけでなく、要求の変化、検証の進め方、関係者との合意形成を同じ観点で照らし合わせ、全体の整合性を確認しましょう。

この問題で問われていること

要求の変化と確認の入れ方のつながりに焦点を当て、開発の途中で得られる情報をどう扱う前提なのかを、問題文の条件と照合して整理してください。特定の名称ではなく、選定理由の筋道を確認します。

視点

プロセスを選ぶ際は、要求が固まりやすいか、変更を段階的に扱う必要があるか、試作や検証をどの順序で行うかという関係に注目します。名称の暗記ではなく、開発上の制約との対応を考えましょう。

確認ポイント

  • 要求の変化を、開発の進め方とどう結び付けて捉えるか
  • 検証や利用者確認を、どの段階で行う想定か
  • 安全性・品質・納期など、重視する制約は何か
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解説

本問は、組込みシステムの開発経験を基に、対象システムの特徴や制約を分析し、開発プロセスモデルを選択・運用・評価する能力を問う論述問題です。

問題の全体像

組込みシステムでは、要求分析から出荷までの工程で、品質、開発コスト、納期のバランスを取る必要がある。問題文は、ウォータフォールモデル、プロトタイピングモデル、インクリメンタルモデルなどを例に、それぞれに前提や適用上の注意があることを示している。したがって、単にモデル名を挙げるのではなく、自分が携わったシステムの要求変更の可能性、機能の独立性、ユーザインタフェースの不確実性、納期、開発体制などを分析し、なぜそのモデルが適切だったかを経験に基づいて論述することが求められる。出題趣旨では、各モデルの特徴と欠点に関する知識、組込みシステムの特徴を分析する力、適切なモデルを選択して運用する力を評価すると説明されている。

設問ア

まず、後続の設問イ・ウで扱う同一の組込みシステムを具体的に設定する。800字以内なので、製品・システムの用途、担当範囲、開発目標、主要な機能や制約を簡潔に示す。特に、目標は性能、信頼性、安全性、消費電力、コスト、納期など、後で評価できる具体的な観点にする。開発の特徴には、要求仕様の変動、ハードウェアとの並行開発、リアルタイム性、機能間の独立性、試作機による検証、規制や安全上の制約など、採用するプロセスモデルの判断材料となる事実を含める。単なる製品概要ではなく、設問イでモデル選定の理由を説明できる情報を残すことが重要です。

設問イ

プロセスモデルの決定で重視した点を、設問アの開発目標・特徴と対応付けて述べる。例えば、要求が固まっていて工程管理を重視するならウォータフォール、ユーザインタフェースや要求が不明確で試作評価が必要ならプロトタイピング、機能を独立性の高い単位に分けて段階的に提供するならインクリメンタル、というように、条件とモデルの特性を結び付ける。さらに、候補モデルを比較し、各モデルの利点だけでなく、要求変更への弱さ、試作反復による時間管理の難しさ、統合時のリスクなどの欠点も踏まえて、最終的な採用理由を示します。採用に至る過程として、要求分析、関係者との調整、リスク評価、納期・コスト・品質の見積り、試行やレビュー、意思決定を時系列または判断表の形で具体化する。800字以上1、600字以内なので、モデルの一般論を広げすぎず、自分の案件でどの事実が判断を左右したかを中心に書く。

設問ウ

設問イで採用したモデルを、開発後の実績に基づいて評価する。採用が適切だったかを、設問アで示した開発目標に照らして判断し、品質、開発コスト、納期の三つについて、計画と実績、得られた効果、発生した問題を具体的に述べる。例えば、手戻りの削減、段階的な検証、要求の早期確認などの効果があった一方、統合試験の負荷、重複作業、変更管理の複雑化などが生じた可能性を、実際の状況として説明する。さらに改善余地として、工程ごとの見直し、リスクの高い部分への試作の限定適用、段階的開発とウォータフォールの組合せ、レビューや自動テストの強化など、採用モデルの弱点を補う具体策を示します。600字以上1、200字以内で、結論だけでなく根拠となる事実と三つの評価軸を押さえることが重要です。採点講評では、問3について具体的な経験に基づく論述が多かった一方、対象が組込みシステムでない論述は趣旨から外れるとされている。

学習のポイント

各プロセスモデルの特徴・欠点を、実際の開発条件と結び付けて説明する力を養う。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成24年度秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅱ 問3(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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