SAシステムアーキテクト試験 午後Ⅰ

平成23年度秋期 システムアーキテクト 午後Ⅰ 問4

事例を読んで設問の答えを考えてから、解説のポイントとIPA公式の解答例・採点講評で確認しましょう。

問題

問4 組込み技術を用いた電子黒板及びタブレット端末から成る教育用システムの開発に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。 D社は,学校向けの教育用システムを開発し,販売している。近年,授業で組込み技術を用いた電子黒板(以下,電子黒板という)を使用したいという学校が増えており,D社では,電子黒板及びタブレット端末を用いた教育用システム(以下,本システムという)を新たに開発することになった。 これまでは,プロジェクタで教材をホワイトボードに投影していたのに対し,本システムでは,電子黒板及びタブレット端末,並びに電子化した教材(以下,コンテンツという)を使用して,より効果的に授業をサポートできるようにする。 〔本システムに対する要望〕 本システムの開発に当たって,学校側からD社に対して寄せられた要望を次にまとめた。 ・電子黒板に表示した内容について,拡大・縮小,ページ送りなどの操作ができるようにしてほしい。 ・電子黒板に手書き入力ができ,その表示画面を保存できるようにしてほしい。 ・電子黒板に手書き入力した文字を指定フォントで表示できるようにしてほしい。また,手書き入力した図形を補正して表示できるようにしてほしい。 ・印刷物などの資料を電子黒板に表示できるようにしてほしい。 ・2台の電子黒板を連動させて使用し,一方にコンテンツを表示させると,他方に関連した補助コンテンツが自動的に表示されるようにしてほしい。 ・教室内では,タブレット端末を使用している生徒の氏名とその座席位置との対応が分かるようにしてほしい。 ・タブレット端末に問題を表示し,解答を文字や図形で入力できるようにしてほしい。 ・タブレット端末で入力された情報を本システム内に集め,選択して電子黒板に表示できるようにしてほしい。また,全生徒の解答を集計して,クラスの正答率,誤りの傾向などが分かるようにしてほしい。 ・タブレット端末は持ち運びができ,学校内では教室を移動しても無線LANに接続できるようにしてほしい。 ・タブレット端末は,無線LANと接続されていなくても,学校内外で問題の表示及び解答の入力ができるようにしてほしい。 〔本システムの構成〕 D社のシステムアーキテクトであるE氏は,本システムに対する学校側からの要望に基づき,本システムの構成を次のように考えた。 ・各教室に,電子黒板及び無線LANのアクセスポイントを設置する。校内にサーバ及び管理用PCを設置し,各教室の電子黒板及び無線LANのアクセスポイントとLANで接続する。 ・タブレット端末は,無線LANのアクセスポイント経由で,サーバ及び電子黒板と接続する。 ・座席位置情報を記録した無線通信方式のICタグ(以下,RFタグという)を,全ての教室の全ての机に設置する。 本システムの構成を図1に示す。 図1 本システムの構成 〔本システムの運用〕 E氏は,本システムの運用について次のように考えた。 ・教師は,授業に使用するコンテンツ及び補助コンテンツ(以下,区別しない場合はコンテンツと表記)を,サーバにあらかじめ格納しておく。 ・授業を担当する教師が,利用者IDとパスワードを入力して電子黒板にログインし,必要なコンテンツをサーバから電子黒板にダウンロードする。 ・生徒には,前もってタブレット端末を貸与し,学校内外で使用できるようにする。 ・生徒は,タブレット端末の起動時に,利用者IDとパスワードを入力してログインする。教室で使用する場合は,更に机に貼られたRFタグの情報をタブレット端末に読み込ませる。 ・教師は必要に応じて,タブレット端末にコンテンツをダウンロードする。 〔電子黒板の機能及び仕様〕 E氏は,本システムに対する要望に基づき,電子黒板の機能について次のようにまとめた。 ・サーバからダウンロードしたコンテンツ及び外部接続機器を介して印刷物から読み取ったデータなどの表示及び音声出力を行う。 ・コンテンツを,電子黒板内のメモリに保持できる。 ・ディスプレイの前面に設けられたタッチパネルを用いて,表示の拡大・縮小,複数ページからなるコンテンツのページ送りなどの操作ができる。 ・タッチパネルを用いて,手書き入力をトレースして表示できる。また,表示コンテンツに手書き入力を重ねて表示できる。 ・手書き入力した情報をサーバに格納し,再表示できる。 ・手書き入力文字を指定フォントで表示できる。 ・タブレット端末からサーバにアップロードされた情報,その集計結果などを選択して表示できる。 ・同一利用者がログインしている2台の電子黒板は,LANによって相互に情報を交換して連動できる。例えば,一方にコンテンツをダウンロードして表示すると,他方に関連した補助コンテンツを自動的にダウンロードして表示する。コンテンツの表示ページが更新されると,補助コンテンツの表示ページも連動して更新される。 E氏が考えた,電子黒板の仕様を表1に示す。 表1 電子黒板の仕様 〔タブレット端末の機能及び仕様〕 E氏は,タブレット端末の機能について次のようにまとめた。 ・机に貼られたRFタグの情報を読み込み,サーバに送信する。 ・サーバから配信されるコンテンツを受信し,画面に表示する。 ・文字,図形をタッチパネルから入力し,入力した情報をサーバに送信する。 ・無線LANと接続されていなくても利用できるようにするため,受信したコンテンツ及びタッチパネルから入力した情報を保持する。 E氏が考えた,タブレット端末の仕様を表2に示す。 表2 タブレット端末の仕様 〔管理用PCの機能〕 E氏は,管理用PCの機能について次のようにまとめた。 ・コンテンツをサーバにアップロードする。 ・タブレット端末からサーバにアップロードされた情報の集計を行う。 設問1 電子黒板の機能について,(1),(2)に答えよ。 (1)本システムの方が,プロジェクタで教材をホワイトボードに投影していたシステムよりも,使用する上で優れている点を,30字以内で述べよ。 (2)LANから切断された状態で,コンテンツのダウンロード以外に使えなくなる機能は何か。15字以内で述べよ。 設問2 タブレット端末の機能について,(1),(2)に答えよ。 (1)タブレット端末の起動時に,使用している生徒を特定するための情報を,10字以内で述べよ。 (2)タブレット端末単体で語学の学習に用いる場合を想定し,外部接続機器として表2中の[a]を接続できるようにする。表2中の[a]に入れる適切な字句を答えよ。また,この外部接続機器を使うために,タブレット端末に必要となる機能を,10字以内で答えよ。 設問3 本システムの運用について,(1),(2)に答えよ。 (1)電子黒板とタブレット端末との連動を検討した。生徒に問題を解かせる場合,どのような連動機能が考えられるか。35字以内で述べよ。 (2)机に貼られたRFタグをタブレット端末に読み込ませるのは,どのような要望を実現するためか。25字以内で述べよ。 設問4 2台の電子黒板を用い,一方にコンテンツを表示し,他方に関連した補助コンテンツを表示する場合の連動機能について,(1),(2)に答えよ。 (1)教師が一方の電子黒板にコンテンツをサーバからダウンロードすると,他方の電子黒板に関連した補助コンテンツをサーバが自動的にダウンロードする。このためにサーバが必要とする電子黒板の情報を,30字以内で述べよ。 (2)コンテンツの表示ページが更新されたとき,ページ番号を他方の電子黒板に送信し,補助コンテンツの表示ページを自動的に更新する。受信した電子黒板が表示ページを連動させるために必要な情報を,30字以内で述べよ。
図1 本システムの構成。管理用PC、サーバ、LAN、各教室の無線LANアクセスポイント、電子黒板、タブレット端末、RFタグの接続構成を示す図。
図1 本システムの構成。管理用PC、サーバ、LAN、各教室の無線LANアクセスポイント、電子黒板、タブレット端末、RFタグの接続構成を示す図。
表1 電子黒板の仕様。電子黒板について、ディスプレイ、オーディオ、タッチパネル、通信インタフェース、外部接続機器の仕様を示す表。
表1 電子黒板の仕様。電子黒板について、ディスプレイ、オーディオ、タッチパネル、通信インタフェース、外部接続機器の仕様を示す表。
表2 タブレット端末の仕様。タブレット端末について、ディスプレイ、オーディオ、タッチパネル、記憶デバイス、通信インタフェース、RFタグリーダ、外部接続機器の仕様を示す表。
表2 タブレット端末の仕様。タブレット端末について、ディスプレイ、オーディオ、タッチパネル、記憶デバイス、通信インタフェース、RFタグリーダ、外部接続機器の仕様を示す表。
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要件が成り立つ前提を確認する

要件を検討するときは、その内容がどのような前提のもとで成り立つのかに注目しましょう。書かれている条件と自分で補った想定を分け、判断の根拠が与えられた情報の範囲に収まっているか確認します。

この問題で問われていること

判断に使おうとしている記述が、どの条件を前提としているかを確かめることが焦点です。条件が明示されている部分と、自分の経験から想定している部分を区別し、前提を勝手に広げていないか見直しましょう。

視点

要件を理解する際は、記述の内容だけでなく、それが成り立つ前提を意識します。自分で置いた前提は、与えられた条件と同じ根拠として扱わず、区別して整理しましょう。

確認ポイント

  • 判断に用いる前提は、与えられた情報に基づいているか
  • 自分の経験や思い込みで条件を補っていないか
  • 記述が適用される条件を、根拠なく広げていないか
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解説

学校側の要望を、電子黒板・タブレット端末・サーバなどの機能と連携に落とし込む問題です。電子黒板の保存・再表示、ログイン情報による生徒の特定、氏名と座席位置の関連付けを押さえ、連動相手を特定する情報と教材のページ対応を区別することが要点です。

問題の全体像

D社が、従来のプロジェクタとホワイトボードによる授業を発展させ、電子黒板と生徒用タブレット端末を用いた教育用システムを開発する事例です。電子黒板は教材の表示や手書き入力、タブレット端末は問題の表示や解答入力を担い、サーバなどと連携します。公式の出題趣旨では、利用者の要望を分析し、システムアーキテクチャと機能仕様を検討・策定する能力が問われています。学校側の要望を出発点に、それを実現する機器、機能、連携に必要な情報を具体化することが中心です。

設問1(1)

〔電子黒板の機能及び仕様〕の「手書き入力した情報をサーバに格納し,再表示できる」に着目します。従来のホワイトボードへの投影に比べ、授業中に書き込んだ文字や図形を保存し、後で再表示できる点が利点です。公式解答例では「電子黒板に手書きした文字や図形を保存し,再表示できる。」としています。30字以内では、手書きした文字・図形、保存、再表示という要素をまとめます。採点講評では、教育用システム全体の機能を述べた解答が散見されたとされており、電子黒板の機能に焦点を合わせる必要があります。

設問1(2)

〔電子黒板の機能及び仕様〕には、同一利用者がログインしている2台の電子黒板が「LANによって相互に情報を交換して連動できる」とあります。この連動はLANを通じた情報交換に依存するため、切断されると利用できません。一方、電子黒板内のメモリに保持したコンテンツの表示などは、LAN経由の情報交換を必要としません。公式解答例は「2台の電子黒板の連動」です。15字以内では、この連動機能を簡潔に示します。

設問2(1)

〔本システムの運用〕に、生徒はタブレット端末の起動時に「利用者IDとパスワードを入力してログインする」とあります。起動時に使用者を特定する根拠は、このログイン時の情報です。公式解答例では、これを「ログイン情報」とまとめています。10字以内では、この語で要点を表せます。RFタグから読み込む情報は座席位置を把握するためのものであり、生徒本人を特定するログイン情報とは役割が異なります。

設問2(2)(a)

設問の条件である「タブレット端末単体で語学の学習に用いる場合」と、表2の音声信号入出力用オーディオコーデックに着目します。語学学習では教材の音声を聞くとともに、自分の発音を入力する用途が考えられます。この音声の出力と入力に対応する外部接続機器として、公式解答例では「マイク付きヘッドフォン」を挙げています。採点講評では、教材と直接関係しない外部機器を答えた解答が散見されたとされており、語学学習での使い方に即して機器を選ぶことが重要です。

設問2(2)機能

マイク付きヘッドフォンを接続すると、学習者の発音を入力し、教材の音声や自分の発音を聞くことができます。その学習用途を実現するには、音声を録音し、再生する機能が必要です。表2のオーディオコーデックは音声信号の入出力を支える仕様ですが、ここではタブレット端末に必要な機能を答えます。公式解答例は「音声録音再生」です。10字以内では、録音と再生の両方を含めて表します。

設問3(1)

学校側には、タブレット端末に問題を表示し、文字や図形で解答を入力したいという要望があります。また、電子黒板には授業で使用するコンテンツが表示されます。これらを授業の流れに沿って連動させると、電子黒板に表示している内容に対応する問題を生徒のタブレット端末へ配信する機能になります。公式解答例は「電子黒板の表示内容に対応した問題のタブレット端末への配信」です。35字以内では、表示内容との対応、配信する問題、配信先のタブレット端末を押さえます。

設問3(2)

〔本システムに対する要望〕の「生徒の氏名とその座席位置との対応が分かるようにしてほしい」に着目します。机のRFタグには座席位置情報が記録され、端末はその情報を読み込んでサーバへ送信します。ログイン情報で特定した生徒と、この座席位置情報を組み合わせることで要望を実現できます。公式解答例は「生徒の氏名と座席位置とを関連付ける。」です。25字以内では、RFタグを読む手順ではなく、その目的である氏名と座席位置の関連付けを述べます。

設問4(1)

〔電子黒板の機能及び仕様〕の「同一利用者がログインしている2台の電子黒板」が連動するという条件に着目します。サーバが補助コンテンツを他方へ自動的にダウンロードするには、どの2台がその教師の連動対象なのかを特定する必要があります。公式解答例は「教師がログインしている2台の電子黒板を特定する情報」です。30字以内では、教師のログインと対象の2台の特定を含めます。採点講評でも、連動する2台に共通する情報を考慮することが解答の手掛かりとして示されています。

設問4(2)

設問では、更新されたコンテンツのページ番号を他方の電子黒板へ送信するところまでが示されています。受信側が補助コンテンツの表示ページを決めるには、その番号が補助コンテンツの何ページに対応するかを知る必要があります。両コンテンツの対応ページが同じ番号であるとは記載されていません。公式解答例は「コンテンツと補助コンテンツとのページ番号の対応」です。30字以内では、両者のページ番号の対応関係を示します。受信するページ番号そのものと、表示先を決めるための対応情報を区別することが要点です。

学習のポイント

設問の対象機器と利用場面を絞り、要望・運用・仕様を対応付けて読む練習が重要です。機器間の連動では、相手を特定する情報と処理内容を対応付ける情報を分けて考えます。

出典:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)平成23年度秋期 システムアーキテクト試験 午後Ⅰ 問4(公式資料:問題冊子(PDF) / 解答例 / 採点講評)

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